イタリア ファシスト政府を前に

階級的力関係の転換の実現には
何よりも労働者の闘いが必要だ

反ファシズム闘争と階級闘争の結集追求を

フランコ・トゥリグリアット

 欧州では例外的に日本によく似た労働運動の極度の後退があるイタリアでは、ファシスト起源の「イタリアの同胞」党首であるジョルジャ・メローニが首班の政権が登場した。この政権は今のところ、民衆から大きな挑戦を受けていないが、そこには労組連合の消極性が大きく影を落としている。労働者の闘いの欠落が何を生み出すかを考える上で重要な現在進行形の事態と言える。以下では、当地の同志がこの現象に関わる諸関係を説明すると共に、労働者の闘いの再建に向けた課題を論じている。(「かけはし」編集部)
 DPEF(政府財政計画)は何を表現しているのだろうか? イタリア情勢はフランスと、しかしまた英国やドイツとどのように違うのだろうか? 闘争とストライキ行動の道を作り上げるために労働者の大衆的会合を組み上げることが決定的だ。
 4月25日と5月1日は、単なる象徴としてではなく、わが国における階級闘争の、また労働者階級の活力ある役割の具体的表現であるふたつの日付けだ。極右政府は、その反動的で親経営者の諸目標を実行する点で引き続き邪魔されていない(少なくとも今のところ)。それは今、諸機構内で、またイタリアの資本主義システムに埋め込まれた主な公的な、あるいは経済的な諸構造の中で鍵を握る管理的部署を占め続けている。

DPEFとはどういうものか


 4月の年次経済財政計画文書(DPEF)は、経済情勢、およびブルジョアジーとEU資本主義諸機構、さらにその延長におけるイタリア政府諸機構の現在の基本的選択、がもつ一定の特徴を確証している。それを概括すれば以下のようになる。
▼ひとつの特殊に困難な経済情勢がある。それは、IMFが1990年以後で最も弱い成長と極めて脆弱な金融システム(まさに、いくつかの銀行破綻のことを考えよう)を予想するほどのものだ。そしてそれらはまた、資本主義経済のいわゆる脱グローバリゼーション(極めて相対的な)の矛盾した進展、そしてもちろんウクライナでの戦争に結びついた、生産のネットワークにおける部分的再編の結果でもある。
▼それは、インフレに対する闘いを優先する決定、したがって緩和政策局面を終わりにする決定、換言すれば財政赤字の縮小、および過去の年月われわれが知ることになったような緊縮政策の純粋かつ単純な刷新という決定を必要としている。つまりこのすべてが意味するものは、公衆衛生と社会的支出、年金における一層の重要な切り下げ、そしてもちろん、利潤を起点とするインフレが労働者階級から盗み取ったものを取り戻そうとする労働者階級のあらゆる闘争を止める政府の行動だ。
▼したがって政府は今公共的支出を絞ろうとしている。その目的は、社会の最も弱い層の条件に対する攻撃、年金削減、また諸々の俸給の抑制を通じて、国家債務を引き下げ大きな基礎的黒字(2024年と2026年に60億ユーロ、次の2年には450億ユーロに達する黒字)を確保することだ。このすべては、一方で大ブルジョアジーの利潤と金融地代に従って経済を管理しつつ、最も多様な活動を行っているプチブルジョアジーと中規模ブルジョアジー(メローニ政権の主な社会的かつ選挙上の基盤)の経済的特権を保護すること、に対するメローニ政権の焦点化と組み合わされている。この政権は、ブルジョアジーの基本的な利益を保証しなければならないということを完全にわきまえている。軍事支出は増大し続けている。

 したがってわれわれが今見ているものは、資本主義経済の新しい条件に従って修正された、ドラギ政権(前「国民統一」政権)の政策の継続にほかならない。これが、労働者階級向けに偽の敵と目標を作り出すために不可欠な、権利に関するイデオロギー的、文化的、また退行的な攻撃と組になっているのだ。
 それは、政府の諸選択が内包する反労働者階級の実体を押し隠そうともくろんでいる。この政府は、まさに4月25日(ファシズムからの解放記念日)と5月1日に記念の行動が行われる、労働者階級の闘争がもつ重要な意味を根絶することを目的に、この国の歴史のイデオロギー的物語り(偽の意識)を構築し続けている。
 われわれはまたこの政府の次の選択も誤解してはならない。つまり、中、低所得者にかかるいわゆる税分担引き下げのために、計画された赤字と実際の赤字の小さな差額から自由になる30億ユーロを使うという政府の選択だ。しかしそれは、最良のシナリオでも(しかし確実ではない)、影響は月当たり40ユーロの方策であり、かれら自身が自認していることによれば、狙いは、賃金に関する緊張とその引き上げを求める労働者の要求から経営者をかばうことにあるのだ。
 事実としてこの少額の減税は、30年にわたる貧困化とふた桁のインフレに苦しむ賃金労働者の必要とは何の関係もない。高い生活費と経営者に振り向けられた生産性上昇で奪い取られたものを埋め合わすためには、見たようなくだらない策では確実に不十分だ。
 必要なのは、全員に対する最低でも300ユーロの大幅引き上げ、そして、3つの労組連合と政府とコンフインダストリア(経営者の全国ロビー組織)間の恥知らずな合意によって30年前に取り消された賃金の自動的で永続的なスライディングスケールだ。

他の欧州諸国との大きな違い

 賃金のスライディングスケールの導入が今イタリアではなくドイツのような国で議論が進行しているということは、ほとんどこの世のこととは思われない。その上、現在の経済シナリオと資本主義諸企業の途方もない利益を前にしながら、フランスや英国やドイツで何ヵ月も進行を続けてきたもののような大衆動員が今も組織されていないということは、わが国の労働者階級にとって全くまずいことだ。
 イタリアでわれわれが今目撃中なのは、一層困難を増している孤立した闘争でそこここで中断される、経営者に全面的な利益になっている道理を欠いたある種の社会的和平だ。われわれは、大会演壇からの多少とも戦闘的な表現にもかかわらず、全面的にへつらう労組連合指導部を今見ている。労働者の主な歴史的かつ政治的な敵が、つまり極右が政府内に到達していてさえ、それはかれらをあわてさせてはいず、労組官僚機構の政策を真剣に変更させていないのだ。
 CISL(イタリア勤労者組合同盟、公式にはキリスト教民主主義派に近い労組連合のひとつ)の立場は驚きではない。それはある時期、権力内の他のいかなる政党よりももっと親政府だったことがある。それは、調達規則や差違ある地域自治のような一定の決定的な課題に関し、メローニと意見を異にしていない。CISLの圧力の下で、これらの方策に対する反対は3労組連合の共同政綱から取り下げられている。言葉の上では政府の諸政策への確固とした反対を言明しているCGIL(イタリア労働総同盟、歴史的に左派として存在してきた:訳者)やUIL(イタリア労働連合、カトリック系でも共産党系でもないとして形成)の労組連合ですら、最後はあらゆる実質的な動員を拒絶しているCISL指導部の尻尾に成り下がることに終わっている。
 こうして、CGIL書記局による激しく幅広い闘争という声高く繰り返される宣言は、実際的な結果を伴わない言葉のままだ。山場、すなわち3連合の諸々の集会は、古典的な大山鳴動ネズミ一匹の原因となった。つまり、ストライキも階級的決起の真剣な計画も一切ないままの、土曜日に開催される三つの都市の広場における大きく象徴化されたみっつのデモだけであり、そこにはいかなる作業停止も、つまりどんな事業活動への影響もない。
 それは、不十分な動員というだけではなく、完全に象徴的化された行動でもあり、政府と経営者と対決する不可欠な実体ある社会的衝突を犠牲にして、指導部の顔とその衰えつつある信用を救い出すことだけに関係した偽物の闘いを作り上げるものだ。われわれは今、こうした人びとによく知られた表現を用いれば、組合最低基準以下で活動中だ。
 疑いなく、受動的で譲歩の年月の後では、ストライキが成功する可能性に関し懸念があり、その建設には慎重な準備が必要になる。職場総会の不可欠な発展は事実として、以下の場合にのみ有益かつ効果的になるだろう。つまり、指導部が真剣でありたいと思っていること、すなわち、達成されるべきで永久に先延ばしにはされない原則的目標として、強力なストライキに向けた条件構築に本当に尽力していることが、労働者から見て明確になる、という場合だ。
 他の国々で今起きている最中のことは、その後次第に奪われたがイタリアの労働者階級が偉大な成果を達成するのを過去に可能にした決起を再開するための、1例として、また刺激として利用されなければならない。
 われわれは、労組連合指導部が前進に向けたそのような道を選ぶところからは遠く隔たったところにいる。その多くはストライキに進みたいと思っているようには見えない。ストライキは、政府にだけではなく、僅かのおこぼれをもぎ取るという期待の下に合意を追い求めているその相手の雇用主たちにも影響を及ぼすと思われるのだ。
 しかし現実には、政府の寿命を難しくするだけではなく、労働者階級からかれらが盗み取った、また今盗んでいる最中のものを取り戻す(少なくとも部分的に)ことも可能になると思われるのは、労働者の諸条件に第一に責任がある資本家自身を苦しめることによってのみだ。

ストライキ闘争の構築に全力を


 異なった道を活性化し、大幅賃上げ、新たなスライディングスケール、さらに賃下げなしの労働時間短縮に向けた闘いの政綱を見極めつつ、フランス、英国、ドイツでのようにわれわれが行わなければならないことを提案するために、職場での大衆総会が、労組の戦闘的活動家によって利用されなければならない。これは、闘いとストライキを全体化でき、こうしてわれわれに再び勝利することを可能にすると思われる強さと統一の条件を組み上げると思われる決起の道、そして搾取の引き下げを意味するだろう。
 われわれが落ち込んでいる、また労働者階級の大多数から志気を奪っている泥沼から抜け出すことは簡単ではない。しかし先のことが混乱から抜け出すために挑むただひとつの方法だ。
 上述した連合の待機と様子見の方式は、草の根の労組にイニシアチブと信用性に向け少しばかりの余地を残すことができたのかもしれない。それらの労組は、4月と5月の間にストライキ行動の僅かの日数を確認していた。しかしながらそれらも、別々の時期の個々のストライキに決めていた。
 これは昨年と比べ後退した1歩だ。昨年の場合は、要求の政綱と決起のタイミングの双方でひとつの合流が達成されていたのだ。この分断は、見てきた構図の中で、闘争の有効な道をもっと困難にし、傾いているとはいえまだ残る多数派労組指導部の「信用度」をへこませる試みを弱めることになる。
 われわれは、諸々の限界を抱えつつもフランスで闘いを今先導している構造、フランスの労組間共闘からは遠いところにいる。
 われわれの労組活動家は、連合内外のあらゆる階級的労組間の合流を促進することにこれからも尽力し続ける。CGIL内左翼反対派の献身と役割は重大であり、その結果として何らかの推進力が、イタリア最大の労組連合と一体感を抱いている多くの戦闘的活動家内部に維持されている。
 ひとつの組織としてのまた個々の戦闘的活動家としてのわれわれにとってまさに中心的な、この代わりとなる社会的活動と労組活動はわれわれから見て、急進左翼内の他の政治勢力では同じ程度の重要性をもっているようには見えない。われわれから見て、それは部分的に存在しているだけ(時として多数派官僚機構に従属してさえいる形で)であり、他方最大の関心は依然選挙にとどまっているように見えるのだ。
 選挙への介入は重要だ。しかしそれは今日確実に、階級間力関係を変える上では決定的な領域ではない。この観点からもものごとは変わらなければならない。
 それまでは、4月25日と5月1日というこの象徴的なふたつの日付けに際し、反ファシズムと階級的な社会的決起の全面的な合流を求めて活動しよう。(2023年4月15日、「シニストラ・アンティカピタリスタ」より英訳)
▼筆者は、元上院議員でイタリアにおける第4インターナショナル2組織のひとつである「シニストラ・アンティカピタリスタ」の指導部の1員。(「インターナショナルビューポイント」2023年5月4日)    ろうどうろろろろろろろ

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