移 民 扉閉ざす要塞のEU
地中海ルートは一層危険に
ドミニク・ピエール
2023年第1四半期は、2017年以後では地中海を渡る移民にとって最もいのちが危険にさらされた時期だった。
「移民のための国際組織」(IOM)は4月12日、欧州に達しようとする中で少なくとも441人が死亡した、と公表した。この死者数は、チュニジアの沿岸警備隊によれば、チュニジアの沿岸から離れた移民の小舟が沈没する中で20人が死亡することで、4月はじめに更に増えた。
国連の代表もまた、舟が行方不明の数件を調査中であり、そこでは、生存者の兆候も、舟の破片の兆候も全くなく、捜索や救援の作戦は全く行われていなかった。
移民への障害
地中海の墓場
これらのぎょっとするような数字は、ありふれたことに、「いつものこと」になろうとしている。2月26日にカラブリアの浜で発見された250人の人びとのことを誰が覚えているだろうか? かれらには名前と家族と出身国があった。しかし、遺体がこれからも決して見つからず、親類にも情報が決して伝わることのないその何人かの場合、かれらの歴史と独自性は、欧州でのより良い生活というかれらの夢を呑み込んだ荒れた地中海の水の中に、無名のまま2月のその日消えた。
この死を呼ぶ地中海の墓場ルートを利用する難民たちは、ほとんど、コートジボアール、ギニア、そしてパキスタン出身であり、さらに時に家族と共に渡りを敢行するチュニジア人の比率も高まっている。2021年のカイス・サイエド大統領のクーデター以後の政治危機と組になった深刻な経済危機が、多くのチュニジア人を可能なあらゆる方法で国を離れるよう押しやってきた。加えて、サイエド大統領のサブサハラアフリカ人敵視の外国人排撃的レトリックが排除の波に引き金を引くことになった。
イタリアでの
一層過酷な法
IOMの確信では、捜索や救援の作戦の遅れが、海中での441人の死のうち127人の死に責任がある。何年もの間、海上救援NGOsは、EU財源の欠如とイタリアを含む一定の諸国によってかれらに加えられる妨害の両者を嘆いてきた。イタリア議会は、2023年1月2日に署名されたひとつの条項を付属させた法を採択したが、それは、人道作戦の船に一度に一回の救援しかしないことを義務づけ、その後すぐ陸揚げ港に到着する義務を課している。そしてその港はしばしば救助海域よりも遠く離れているのだ。
この法の採択からほんの数日後の1月7日、人道船のジェオ・バレンツが、一回しか救助をしなかった後、シチリアの港で20日間留め置かれ、約1500㎞も遠くのイタリアのアンコーナ港(イタリア中部のアドリア海沿岸:訳者)に行くよう強要された。
「SOS地中海」や「国境なき医師団」のようなNGOsは、海上遭難では誰をも救助するという原則に反するとして、この条項を糾弾した。しかしEUの諸政府と諸機構は、イタリア首相の犯罪的な政策を止めるために何もしようとしていない。それは民衆的懸念を呼ぶ問題だ。(「ランティカピタリスト」よりIVが英訳)
▼筆者はNPA指導部の1員。(「インターナショナルビューポイント」2023年4月21日)
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