ロシア メーデーアピール2023年5月1日 ロシア社会主義運動(RSD)
半端な連帯と偽の平和主義反対
被抑圧者への連帯欠落は国際主義を無意味に
メーデーは国際的な労働者の日であるだけではなく、抑圧された民衆および市民の反戦不服従と連帯する日でもある。たとえば人は、米帝国主義のベトナム侵略に反対した、ワシントンにおける1971年のメーデー抗議行動を思い起こすことができる。その時期、反戦運動の立場は明確だった。すなわち、戦争の停止、米軍部隊の完全撤退、そしてベトナム人民の自決権支持として。
平和主義が
曖昧な昨今
昨今では、左翼はまた平和主義に傾きつつあるが、その現在の繰り返しははるかにもっと曖昧だ。それは依然米帝国主義、核戦争阻止という課題を強調し、さらに紛争解決手段としての戦争と軍事化を糾弾しつつも、侵略者を正確に識別するという点での試練に直面し、ロシアによるウクライナ領土の併合、およびそこでのロシア軍の継続的存在を大目に見る意志を示している。こうして、今回の平和主義のバージョンは、抑圧された民衆との実のある連帯をなくしている。
左翼の陣営主義が、左翼は西側の覇権に抵抗する体制を支持しなければならない、あるいは少なくともそこへの批判は控えなければならないと暗示するイデオロギー的傾向が、一般にウクライナへの支援を妨げている。このアプローチは、他の帝国主義を大目に見、そこの「反帝国主義標榜の」独裁者と対決して闘っている世界的周辺の活動家がもつ見解を無視している。
ウクライナとの連帯に対するもうひとつの障害は、西側左翼の反軍国主義の見方であり、それは、一国の政府の軍事的準備との、あるいは「民主主義の防衛」というレトリックとの連携のあらゆる形態を、道義的に問題ありとするものだ。ちなみに後者のレトリックは、ユーゴスラビア、イラク、またアフガニスタンへの「人道的介入」を正統化した。
われわれは、そのような平和主義はいくつかの理由から偽物だと強調したいと思う。
現実の情勢の
直視が必要だ
まずそれは、現在の諸環境に照らして再度考えを深めることを欠いた古い教条で武装されている。「具体的な情勢の具体的な分析」を拒否する左翼は、左翼運動の諸概念と諸原則の価値を引き下げ、それらを単なる抽象へと変えている。「反帝国主義」は米帝国主義とNATO拡大との闘争に切り縮められ、その一方平和主義は、侵略者に反対する闘争のツールから、侵略者を宥め静めるツールへと変えられている。
「偽の」平和主義は、中立、あるいはウクライナへの限定された支援を推し進めている。しかしながらわれわれが確信していることは次のことだ。つまり、左翼がグローバルノースの資本主義社会に適用している同じ批判の基準の適用は、ウクライナに対する本格的な支援を意味し、それは、ウクライナが民族解放の戦争を今闘っている最中にある一方、ロシアは、ウクライナ領土の一部をすでに併合し、12万人以上の民衆を殺害、数百万人にのぼるウクライナ民衆の住む場所を奪ったからだ、と。
その上、プーチン体制は反帝国主義の防波堤として仕事をしているわけではない、ということを認識することが基本になる。それは、反動的な権威主義的資本主義のひとつの型を代表しているのだ。プーチンの体制は、ひとつの階級として生き延びることを目的に、また影響圏の再分割を目的に、ウクライナとの戦争に取りかかっている。それゆえ、被抑圧者との連帯の欠落は、そして抑圧者への糾弾の欠落は、国際主義を無意味にする。
ロシアの敗北
は絶対必要だ
第2に「偽の平和主義」は、戦争を終わりにするための実現可能な解決策を提案することができていない。現状維持の容認を含むどのような犠牲を払っても平和をというその要求は、今ある特殊な諸環境を軽視している。「偽の平和主義」は、ウクライナが「平和」の代わりに解放を必要としている、ということを考慮していない。「どんな条件でも平和を」は、侵略者との取引を意味するだけではなく、単なる休戦になるだけだろう。プーチン体制が権力を失う危険を犯すことなしには戦争を止めることができないような段階にすでに入り込んでいるからだ。
ウクライナとロシアの民衆双方がプーチン体制の軍事的敗北を必要としている。これだけがかれら双方にとっての変革という展望を、また社会主義の課題設定の潜在的な促進という展望を開く。プーチン体制は、本国の被抑圧民衆の闘いだけではなく 隣国のそうした闘いをも妨げている。
ロシアに関する限り、われわれは早くから、ロシア内の不平等レベルはプーチン指導下の20年間にかなりの程度上昇した、と強調してきた。プーチンは、民主主義のあらゆる形態の敵であるだけではなく、労働者階級の敵でもあるのだ。政治への民衆参加や自発的な市民団体はロシア内で疑いをもって扱われている。
プーチンは、本質的に反共産主義者であり、左翼が20世紀にそのために闘った、また21世紀の今闘っているあらゆることの敵なのだ。それゆえ、プーチンの抑圧的独裁の崩壊なしには、ロシアとウクライナにおける労働者階級の条件の前向きな変化を期待することは、どんなものでもほとんど現実的でない。そして軍事的敗北だけがこの崩壊を容易にできる。
さらにグローバルな展望からもっと言えば、プーチン体制がこの戦争を罰せられることなく切り抜けることを許すことは、国際関係にもうひとつの危険な前例を置くことになる。それは核戦力をもつあるいは強力な軍をもつ他の諸国への、併合戦争が大目に見られる
との、また国際社会は侵略者を止めるために何もする意志がないとの合図になるのだ。
ナゴルノ―カラバフ危機は今、いくつかのアルメニア領土をすでに占領しているアゼルバイジャンによる再緊張緩和に反する言葉で彩られている。2022年から2023年のイラクとシリアにおけるトルコの空爆、また2023年のガザとレバノンへのイスラエルの空爆は、同じように国際的な注目を受けなかった。
強者は弱者を打ちすえる権利があるというようなプーチンの世界観は、ウクライナで厳しい一撃を加えられなければならない。そうでなければ、再緊張緩和に反する流血の戦争が世界中で正統化されるだろう。こうして、この戦争でのウクライナの勝利は、世界での血の海が普通のことにされることを阻止するためにも必要なのだ。
平和主張の陰に
自己中心主義が
最後に、左翼のスローガンの下に偽装された「偽の平和主義」は、自己中心主義を特徴とするプチブルジョア的本性を露わにする。「偽の平和主義」は、それが一国の国民政府との闘争に還元されるがゆえにエゴイスティックなのだ。一国の政治的主流に対する反対がウクライナ民衆との連帯よりも優先されている。
「偽の平和主義」は、それがまず第1に西側諸国の労働者階級への潜在的なはね返りに、またウクライナに対するより精力的な支援の結果としての西側自身への戦争の広がりに関係しているように、利己心が推進力になっている。言葉を換えれば、「偽の平和主義」はこの戦争からの離反と要約される。
何という興味深い転換だろうか。50年前左翼運動は、グローバルサウスにおける戦争に対する無視、および物質的安楽という社会安定策を理由に西側の消費主義社会を批判した。しかし今や左翼自身が、安全な距離からこの戦争に向き合おうとしている。「偽の平和主義」はウクライナの社会主義者とロシアの社会主義者の要求を聞き取ることを避けている。そしてその社会主義者は、ウクライナへの道義的あるいは人道的支援だけではなく、プーチン体制とのあらゆる妥協の拒絶、ウクライナの抵抗権に対する確認、さらにウクライナへのさらなる武器移送の承認をも力説しているのだ。
ウクライナ民衆
への全面連帯を
かれらの政治的主流と付き合うことに対して左翼に熱意がないことは理解できる。しかしながら中立は、ウクライナ支援への参加のどんな形態よりも左翼の将来性を殺す。左翼はもう当然、かれらにかれらの政治的主体性を保持することを可能にさせると思われる彼らの設定課題を前に進めていい頃だ。そのような課題には、以下の要求が含まれるかもしれない。
1.ウクライナにその併合された領土の取り戻しを今後可能にする武器のウクライナ移転の増大を。
2.ウクライナ領からのロシア軍部隊の完全撤退。
3.軍事支援増大の重荷の再配分。戦争の費用を負担しなければならないのは、労働者階級ではなく、ロシアとのビジネスを行ってきた、また今も行っている、それによって間接的にその権威主義体制を支えている政府と諸企業だ。
4.ウクライナの債務の帳消し。
5.住む場所を奪われたウクライナ人と抑圧と徴兵から逃れているロシア人をもっと多く収容することを可能にする移民プロセスの緩和。ロシア人の点では、われわれは、獄中であれ前線であれ政治活動への取り組みは極度に挑戦的だ、と繰り返したいと思う。
6.その金融資産が以前の制裁ではほとんど影響を受けていないプーチン派エリートをこれから標的にする制裁の導入。
7.秘密外交の廃止、およびあらゆる交渉の人民全体の前に完全に公開された管理。
左翼にとっては、自身を抑圧を受け恥をかかされたと考えた諸国の支配階級から、抑圧に対し闘っている民衆と社会にかれらの連帯を移すことが必須だ。左翼は、そのような連帯を促進するために、かれらの視野と共感をあちこちに広げる能力を発展させなければならない。この考え方からは、ウクライナの民衆と連帯しないことはあり得ない。
ウクライナやロシア内だけではなく、世界的広がりでも存在する抑圧された人びとは、凝り固まった地政学的思考や陣営主義よりも、むしろ水平的な連帯と共感を必要としている。労働者運動はその時はじめて勝利でき、平和と社会主義への道を開くことができる。
▼RSDは、第4インターナショナルロシア支部のプペリョード(「前進」)運動とソーシャリスト・レジスタンスの2組織によって2011年3月に創立された。それは、2011年と2012年の不正選挙への抗議行動の中で形成された連合の左翼戦線に参加している。(「インターナショナルビューポイント」2023年5月2日)
The KAKEHASHI
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009 新時代社