米国 貧困層脅かす政府資金めぐる党派闘争

ダン・ラボッツ

 国家債務をめぐる共和党と民主党間の闘争がこの国の貧困層の助けになっている社会計画を脅かしている。
 下院指導者のケヴィン・マッカーシーは、この国の予算を統制する下院で過半数を確保している共和党を代弁する者だが、予算カットがなければ債務上限を、つまり国が借り入れできる額の引き上げを拒否すると脅してきた。そして彼の党は、国の最貧困市民に向けられるチャイルドケアやヘルスケアの基金をカットすることを主唱している。前大統領のドナルド・トランプももちろん共和党に、「引き下がるな」と告げてきた。
 共和党が万一6月まで債務制限の引き上げを拒否するようなことがあれば、米国は史上初めて債務返済不履行になる可能性もある。そこでは、米国と世界の経済にとっての悲惨な結末が伴われることもあり得る。
 民主党が貧困層向け予算のカットという共和党の要求を受け入れるならば、それは党の政綱と公約に反することになり、この国が2024年の大統領選挙に用意を整える中で、大統領のジョー・バイデンと彼の党にとっての敗北になると思われる。
 債務上限と予算は、常に一体に結びついていたというわけではなかった。各々は別々であり、通常別々に処理される。共和党は、ふたつを一体に結びつけることで、かれらが求める予算カットを、下院とバイデンに無理強いし、強要する強力なテコをつくり出してきた。共和党の諸政策は単純かつ粗野――税金を引き下げ、社会サービス予算をカットする――だが、しかしあらゆる要素はもっと複雑だ。
 エコノミストや政治家や公衆を心配させていることは、成長を保っている国内総生産(GDP)に対する債務の比率だ。米国は31・46兆ドルの債務を抱えている。しかしもっと重要な対GDP債務比率は2020年に134・84%に達し、これは第二次世界大戦期よりも高い。
 米国の負債は米国予算の大きな部分の資金になっているが、その予算の50%は軍事支出向けであり、他方公衆衛生は僅か5%、教育は7%、そして食糧と農業はたった1%にしかならない。ペンタゴンが確保している予算の半分は両党から聖域とみなされている。つまりバイデンの軍事予算は事実上トランプのそれと同じなのだ。それでも財政責任を看板として主張する共和党は、公衆衛生と食糧計画向けの予算をカットしたいと思っている。
 「チャイルドケアから、公衆衛生から子どもがはぎ取られることに結果し、高齢者には破壊的になる提案をもち出すのは道理に反する」、バーモント州の進歩派無所属上院議員のバーニー・サンダースはこう語った。「われわれは、脅迫されて、最も傷つきやすい人びとを困らせて予算を均衡させられ、最も豊かな者たちだけを残してはならない」、と語った進歩派民主党下院議員のアレクサンドラ・オカシオ・コルテスは、マッカーシーは債務上限を阻止するために過半数を呼び集めることはできないだろう、と確信している。
 サンダースと他の進歩派上院議員は、下院の債務上限票決を完全に無視し、大統領令によって国家債務の拡大を単純に指令するようバイデンをせき立てる手紙を回覧させてきた。かれらは、大統領は米国憲法修正14条を使ってこれを行うことができるだろう、と主張している。
 南北戦争後の1868年に、そして奴隷制廃止と共に採択されたそれは、男全員(女性にではなく)に同権を保証した。しかしそれはまた、「法律によって認められ、年金や蜂起あるいは反乱鎮圧の職務に対する報奨金の支払を負う債務を含む米国の公的債務の有効性は、疑問に付されないものとする」と述べた条項も含んでいた。この条項は、以前一度も使われたことがなく、他の者は、米国の司法部門はそうした手続きを差し止める可能性もある、と恐れている。
 この1ヵ月間、この国は、共和党が強要し、民主党が抵抗する中で心配しながら待ち続けてきた。共和党が万一デフォルトに至るまで債務上限引き上げを止めるならば、2008年のそれのような再度の深刻な景気後退に導く可能性もある、と恐れられている。各々の政党は他の党を責めると思われるが、犠牲になるのは労働者階級と貧困層だろう。
(2023年5月21日)(「インターナショナルビューポイント」2023年5月22日)

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