スーダン 破たんした国際社会の外交

民衆の民主的な力量強化なしに平和の創出は絶対にありえない

現地の抵抗委員会が未来の種をまいている

エリート外交が
混乱と暴力の源

 米国および他の西側諸政府は、今スーダンを暴力が渦巻くカオスに投げ込んでいるクーデター指導者たちに取り入った。スーダンにおける平和と民主主義に対する本物の唯一の希望は、今反戦を組織し続けている諸々の民衆抵抗委員会にかかっている。
 スーダンは前月を通じて、ふたりのライバル関係にある軍事指導者間の権力闘争が総力戦に突入する中、暴力により激しく揺さぶられてきた。家から避難を強いられた30万人以上のスーダン人に加え、数百人の人びとが殺害され、さらに数千人が負傷した。
 権力を求めているライバルは、アブデル・ファター・アルブルハンとヘメティとして知られるモハメド・ハムダン・ダガロだ。この二人の男は以前、軍事クーデター敢行のために、また民主主義を求めて闘争を続けていたスーダンの革命運動を残忍に弾圧するために、2021年10月に力を合わせた。しかし今や、互いに銃を向け合っている。
 暴力への転落は、クーデター煽動者を正統化し、彼らを軸とする交渉プロセスを築き上げようと追求した米国と他の西側諸政府のやり方の信用を失わせている。このやり方はクーデター後に始まったものではない。すなわち、2019年以来、国際社会の外交は、ふたりの将軍を権力にとどめる連携の仕組みを強力に支持し、それが文民支配への移行に帰着するだろう、と主張してきた。
 しかし、オマル・アルバシルの独裁を打倒した諸々の抵抗委員会は今、今回の紛争による荒廃から諸コミュニティを守るために現場で組織化を続けている。スーダン民衆にとってのより良い未来の種を今播いているのはかれらの努力なのだ。

権力闘争から
戦争への転落


 数週間、スーダンの首都、ハルツームの軍事化がかなり水準を高め続けてきた。2021年のクーデターが起きる以前でさえ、スーダン軍(SAF)と即応支援部隊(RSF)の兵士と軍事車両は、首都とスーダン内の他の多くの都市ではすでに見慣れた光景だった。RSFはダルフールに展開されたジャンジャウィードの民兵を起源とする準軍事勢力だ。
 それでも、今回のエスカレーションは違っていた。それは、破綻した移行政権の文民元連携相手と軍部間の交渉進展という公式ニュースとは著しい対照状態になっていた。討論にとっての鍵になった問題は、SAFとRSFの合同という問題だった。
 4月15日の朝、アルブルハン指揮下のSAFとヘメティのRSFの間で戦闘が勃発した。4時間も経たない内に、軍のジェット戦闘機が首都を爆撃していた。理解すべき重要なこととして、戦闘中の両派とも居住地域の真ん中に立地する建物を彼らのものとして確保している。そこには、軍の本部といくつかのRSFの建物が含まれる。そして後者は兵舎に転用されていた。そしてこれが首都を時限爆弾にした。
 抗議に決起した者のスローガン、「軍は兵舎に戻れ、RSFは解散せよ」はもはや、単に軍の諸分派に政治的決定策定から引き上げることを訴えるものではなくなった。それはまた、居住地域からの軍と民兵の物理的撤去をも求める要求になった。

民衆権力憲章が
草の根から登場


 2021年10月25日のクーデター以来1年以上の間、スーダン抵抗戦線は、居住地域抵抗委員会に率いられた毎週抗議行動を組織してきた。諸々のデモは、無料の教育と医療ケア、公共の安全、軍の兵舎への撤退、さらにRSFの解体を訴えるスローガンを唱和している。
 クーデター首謀者たちとの話し合いと合意を主唱しかつそれを促進することに努力を注いだ国際社会の外交は、先の要求を非現実的かつ未熟だと判断した。しかしながら諸抵抗委員会は現場でかれらの努力を続け、クーデター政権の自らを正統化する能力を引き下げるために街頭で抗議し、その上で、かれらがスーダンのために追求する未来を練り上げる全国的な討議プロセスに取りかかった。
 8千以上の居住地抵抗委員会がこのプロセスに取りかかり、それは「民衆権力確立に向けた革命憲章」を生み出した。これは、地方評議会から始まり執行機関を選出しそれを監督する全国立法機関にいたるまでの全過程の、底辺からの政府を再建することに向けた行程を含む文書だった。
 それらの委員会は、スーダン民衆が抱える中核的な問題に取り組み、政治的決定策定への平等な参加をかれらに可能とすると思われる持続可能な平和への道、としてこの設定課題を提出した。この国の、また国際社会のエリートたちはこのビジョンを無視するかあざ笑った。

抵抗委員会の
経験が自助へ


 戦闘が勃発した時、スーダン民衆の救出に形を表したのは民衆的組織化の諸経験とそのツールだった。ハルツーム居住地抵抗委員会諸団体は、2日目に「われわれはわが国の軍事化に反対する平和的な闘争に取りかかっている以上、公平ではない」と、かれらの立場を明確にする共同声明を発した。
 この声明は、アルブルハンとヘメティにスーダン革命の敵と烙印を押し、人びとに自らをまかなう組織化を促している。これは、たとえSAFとRSF両者共が彼ら自身の大義をスーダン民衆とかれらの革命の大義を同等視するプロパガンダ作戦を行ってきたとしても、依然民衆の観点だ。
 SAFとRSFがかれらの戦争に向けた主張のために革命の言葉とスローガンを借りてきたという事実は、ほとんどの国際的機関によって無視されたとはいえ、革命の諸組織がスーダン内の政治をどれほどまで変えてきたかを明確に示す印だ。それでもこれらのプロパガンダ作戦は、抵抗戦線にとっての優先が依然現場での民衆的必要であった中で、ほとんど成功を見ることはなかった。

早期戦争終結
の展望は皆無


 「反乱者」に対するすぐさまの勝利を約束するSAFの諸言明にもかかわらず戦闘は続き、他方でRSFは「クーデター諸部隊」と対決するその進歩性について豪語した。現実には、戦闘の早期終結は全く視界に入っていなかった。
 RSFは、首都で医療品の蓄えが備蓄されていた地域である病院地区や電力供給部署を含むより多くの地域を確保した。SAFは、家々や学校を戦争の矢面に立たせる形で空爆の利用に焦点を絞る中で、人間の命へは最低限の配慮しか示さなかった。
 軍の優先は、大統領官邸と国有ラジオ局への支配を取り戻すことだった。軍は、人びとの生活や健康に現実に直接の影響を及ぼしている病院や発電所、あるいは他の諸機関からRSFを排除するために同じ努力を払わなかった。
 スーダン軍は何十年もの間、国の予算と資源の最大の部分を支配下に置いてきた。それは、腐敗と非効率、そして私的な部門の代役――今回の場合はRSFの民兵――の台頭によって弱体化したもうひとつの政府機関であるという正体を露わにした。

戦争ノー、
人民イエス


 現場では、いくつもの居住地グループが、その居住地の住民向けに諸サービスを提供することに焦点を当てて、WhatsAppのようなメッセージアプリ上で生み出された。この活動は、どの店やパン屋が開いたか、また飲料水や電力源の利用可能性、さらにリスクの高い地域からの避難に伴う安全なルートと支援に関する情報、などについての最新版提供を含んでいた。
 これらのグループは、戦闘が続き、また脆弱なハルツームのインフラが崩壊する中、今到達不可能になっていた病院の代役として、以前に閉鎖していた公衆衛生センターを稼動させはじめた。首都の住民が他の地域に逃げるにつれ、避難した人びとに住居や食糧や必要であれば薬物治療を提供するために、国中で似たようなグループや居住地抵抗委員会が組織化をはじめた。
 ハルツームと他の地域を結ぶ道路に沿って、若者のグループが配置につき、移動する人びとに水や軽食を提供し、またかれらの村にとどまるよう人びとを招待した。何千人もの追われたスーダン人が、かれらを支援する国際組織が全く存在していない北部のエジプト国境で動けなくなっていると気づいた時、いくつかの民衆的なイニシアチブが彼らの支援に現れた。最北の都市であるドンゴラの抵抗委員会が国境に達しかれらに必要なものを提供する自動車部隊を組織したのだ。
 ハルツームに戻れば、新しく形成された緊急室が戦争で打撃を受けた地域で電力供給を回復するために技術者たちと連絡を取り合った。これらの事例と他の多くのことは、現場で抵抗委員会がかれら自身の力を頼りに、「戦争ノー」のスローガンをスーダン民衆に対する実際的支援と組み合わせてきた、ということを示している。

エリート外交は
無力があらわに


 国際社会の外交団もまたこの都市から逃げ出し、ポートスーダンという新たな臨時首都に移動した。かれらは、かれらの以前の努力を批判的に検証することもないまま、両方の戦闘相手との話し合いを続け、次から次へと破綻した休戦を公表した。スーダン民衆はそれらの努力を笑いものにし、各々の「休戦」がどのようにして単純に以前のものよりももっとひどい暴力に終わったかについて、冗談を飛ばした。
 軍部との破綻した「連携協定」を、またジュバ和平合意をスーダン民衆に押しつけたのもまさにその同じ外交官たちだった。ちなみにわれわれは、後者からクーデターへの直接的なつながりを描くことができる。これらの者たちは、クーデターと戦争と関係する将軍たちを正統化してきた上で、以前の失敗に説明責任を全く果たしていないにもかかわらず、ともかく今も自らを、暴力を終わりにする能力をもつ専門家だと考えているのだ。これは、いくら控えめに言っても、国際社会からの建設的な介入に対するどのような期待も薄弱なものにしている。
 この言明は、スーダンに対してだけではなく、国際外交が不正と紛争の根にある根拠に取り組むよりも戦争犯罪人との取引を優先してきた他の多くの紛争地帯に対しても、真実を保っている。外交官たちは「現実主義」を名目に、SFAとRSFの指導者たちをスーダンの兵器と富を支配する位置に残す仕組みを支持し、他方ともかくも、彼らがそれを彼らの権力拡大のためには利用しないだろう、と期待した。
 真の抵抗と持続可能な取り組みは今、この戦争に直面するスーダンの民衆によって生み出されようとしている。スーダン民衆がかれら自身の暮らしと諸資源に支配を及ぼすにつれ、将軍たちが戦闘を続けるために利用できる力と富は消えゆくだろう。この革命的なシナリオの中で、民衆の力が自身を全国的な抵抗戦線へと組織するにつれ、戦争が終わる可能性が生まれる。
 この闘争の渦中にあるスーダン民衆に対する支援は、現存する国際諸組織から現れることは決してないだろう。それらは民衆の意志に奉仕する真の民主主義には何の関心もないのだ。スーダンの民衆はただ、国際外交の活動に対する説明責任と倫理的指針を求めつつ、平和と正義を求める仲間の革命派と戦士たちから助けを求めることができるだけだ。どのような国際社会の介入もさらなる破壊をスーダンに押しつけないことを確実にするために、世界中のわが同志たちの支援は決定的だ。中心的なスローガンは今も「戦争ノー、人民イエス」のままだ。(「ジャコバン」誌より)

▼筆者は「民衆を中心に置くイノベーション・科学・テクノロジー・シンクタンク―スーダン」の共同創設者。(「インターナショナルビューポイント」2023年6月6日)   

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