ギリシャ 議会選

左翼の敗北が残した疑問

アンドレアス・サルツェキス

 再選挙が6月25日に行われる。新民主党(ND)によって、右翼が大差で勝利となるように見える。しかし、NDの大勝とシリザのかなりの後退(直前、5月28日の選挙結果:訳者)を誰も説明できない以上、あらゆることが依然あり得る。ちなみに、そのシリザの大敗は、ND、また何よりも、NDと共にトロイカへの服従を共同で進めた後で再浮上に向け挑戦中の前左翼政党のパソクを利するものとなった。
 新民主党はまた、6月25日を前に選挙は安泰と装っているが、それでもNDがどれほど確固としたものに強化されるか、に自信をもてないでいる。もしNDが勝利すれば、NDに統合されたものとは別にさまざまな部分と共に極右が8%から9%を獲得したような全体構図の中で、ブリュッセルからの緊縮再勧告を条件に、諸々の攻撃が悪化するだろう。

右翼の根づき
その深さは?
 あらゆる兆候は、負けないとしても少なくともND得票率(2019年には39・85%)の急落を示していた。つまりNDは、その支持者に向けた使命を200%にもなる形で満たしていたとはいえ、同時に諸々の困難(降雪で麻痺したアテネ、エヴィア島〈エーゲ海西部〉での火災対処における無能力、テンビの鉄道大惨事〈旅客列車と貨物列車の衝突、死者35人〉に対する最大の責任、その他)を前にした無能力をもさらけ出していたのだ。さらにNDは、社会的、文化的攻撃と抑圧に立ち向かう強力な抵抗を受け、諸々のスキャンダルと違法行為(盗聴、難民送り返し)にも巻き込まれてきた。
 しかしそれでもNDは、1%、15万票上乗せし、現在17歳から24歳の若者の内部で第1位(シリザの28・8%に比べ31・5%)の政党だ。
 ある者たちはこれを、階級意識の深い低落と見ている(ポスト新型コロナ)。そして、NDとつながっているオリガルヒが支配するほとんどのメディアによる「洗脳」作用について、いくつもの問題が今問いかけられている。恐怖を基礎に置いたキャンペーン、また土壇場でのばらまきもまたその役割を演じたのかもしれない。
 しかし、当日に投票先を選択した有権者の20%はその51%がNDに、13%がシリザに投票したことを条件とすれば、また投票者の43%はNDの勝利を左翼の弱さで、25%はメディアの支援で、そして28%だけが政府の実績で説明しているとき、右翼に傾いている力関係は脆い可能性がある、という事実はそのまま残っている。

左翼にとって
  展望が問題
 5月28日以来、他の左翼政党を利することを伴わない(ギリシャ共産党、KKEに対しては僅かの利益として+1・9%、+13万票、ヴァロファキスのメラの場合マイナス0・8%、マイナス4万票、アンタルシアの場合、+0・13%、+8500票)シリザの驚くような低落(マイナス11・5%、マイナス60万票)について、数々の問題が問いかけられてきた。ある者たちは、6月にはこの低落がもっと深くなることさえあり、崩壊の予告になる、と恐れている。KKE、パソク、また右翼のような他の者はそれを期待している。予測は短期的であっても困難だ!
 シリザの最初の成功以来われわれがこの場で強調し続けてきたことは、その弱さだ。つまりシリザは、党員数で3万人から17万人へと成長したとはいえ、自身を戦闘的政党として建設したことは一度としてなく、諸闘争内部での存在感はほとんどない(KKEが勝利した最新の学生の選挙では、その潮流が得た得票率は4%……)。
 「中道左翼」というそれが意図した位置取りは多くの人々を納得させていない。そしてパソクに向けた「進歩の政府のために」というそのキャンペーンは、何よりも後者の指導部が、その提案に唾をかけつつその活力を取り戻すことを可能にした。
 しかし、改良主義者の袋小路という枠組み内部でのこの戦略的行き詰まりにもかかわらず、確かなことは、ギリシャの株式市場が今週幸福感に包まれたとすれば、それはシリザの敗北が理由だったということだ。資本家は、政治的左翼の指導者のほとんどとは違い、シリザの勝利は、ウルトラ自由主義の強盗クラブに異議を突きつける決起の「危険」を伴う、何よりも労働者の勝利になっていただろう、と分かっている。
 そして、シリザの左に位置するグループすべては、シリザの11・5%下落にもかかわらず、合わせて僅か2・8%の上昇でしかなかったという事実は、情勢が緊迫したものであることを示している。アンタルシアが正しくも求めているように、強力な反資本主義左翼と共に、右翼と対決する労働者階級と民衆の左翼を統一するために、可能なことすべてを行おう。(2023年6月1日、「ランティカピタリスト」からIVが英訳)

▼筆者はギリシャの第4インターナショナルメンバー。(「インターナショナルビューポイント」2023年6月3日)  

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