アフリカ キリスト教原理主義の浸透

各国で反動的十字軍の役割

ポール・マーシャル

 米国のキリスト教右翼が今、この大陸上に登場してきたいくつもの福音派教会に依拠して、女性と性的マイノリティの権利に関するアフリカの政策に影響を与えようと何百万ドルも費やし続けている。
 大統領のムセヴェニが同性愛を敵視するひとつの法令に効力を与えたウガンダでの近頃のできごとは、米国内キリスト教右翼の役割を浮き立たせている。この右翼は、一貫してウガンダでの同性愛排撃キャンペーンを支えてきた。「オープンデモクラシー」ウェブサイトによる調査は、これらの組織が2007年以来米国外の活動家たちに資金を提供するために2億ドルも費やしてきた、と示している。

福音派教会
と米国右翼
 アフリカ諸国には5300万ドル近くが振り向けられた。そしてそのほとんどにはいわゆる福音派教会がある。深く反動的なそれらは、男女間の平等、婚外性関係、避妊、中絶、そしてもちろん同性愛に反対している。
 米国内のウルトラ反動と先の教会は、前記のイデオロギーを基礎にして一体的に活動した。2000年代、ウガンダ大統領の妻であるジャネット・ムセヴェニは、HIVの広がりに対する解決策として差し出された性的禁欲を支持するキャンペーンを率いた。同時期ジョージ・W・ブッシュ大統領は、彼の「エイズ救援大統領緊急計画(PEPFAR)」を始動させた。ウルトラ保守の被選出代表たちは、ウガンダの成功と言われたものを引き合いに、先の計画の中心的戦略のひとつであるとされた性的節制を求めるキャンペーンを上首尾に行った。2005年、PEPFAR資金の3分の2は禁欲を進めるために使用された。

性教育ではなく
道徳的秩序回復
 専門家たちは、「ゲイ問題、隠された全体と暗い問題」と銘打ったカンパラ(ウガンダの首都:訳者)における2009年3月の会合がウガンダ初の反同性愛法に責任があった、と確信している。そこには、反ゲイ組織である「エクソダス・インターナショナル」と「家族の防衛」の米国人指導者たちが参加していた。
 「ヒューマン・ライフ・インターナショナル」や「ハートビート・インターナショナル」といったいくつかの組織は、アフリカ諸国に直接介入している。ハートビートは人道援助という口実の下に、母親向け公衆衛生センターを開設してきた。それらの目的は、若い少女と妊娠した母親たちを中絶をあきらめるよう説き伏せることにある。ウガンダのこれらのセンターは、禁欲を主唱することで若い少女に避妊利用を思いとどまらせている。
 「ファミリー・ウォッチ・インターナショナル」は今この大陸上の少なくとも10ヵ国で、性教育禁止のためのキャンペーンを率いている。この団体は、道徳的秩序回復を目的にした諸計画の交渉の仕方を教えるために、アフリカ諸国政府高官向け訓練コースを組織している。

キリスト教右翼
にも注視が必要
 米国のウルトラ保守は、家父長的秩序維持のためにアフリカの福音派教会を頼りにしている。これらの教会は、「家族世界大会」のような一定の組織が欧州極右と結びつきがあることなど気にかけていない。
 住民のますます多くの部分が貧困、安全の欠如、展望のなさに直面している諸国では、福音派教会が、精神的な、また時に物質的な避難所として機能している。それらは数百万人を引きつけ、権力を握るアフリカの諸政府にとってひとつの政治的問題になろうとしている。この大陸の諸政権の多くは、そのメンバーである閣僚、あるいは大統領まで含む者を通じて、福音派教会から影響を受けている。
 湾岸諸国によって支えられたイスラム原理主義者たちがアフリカで果たしている有害な役割には正しくも光が当てられているが、同様な政治的課題設定に基づく、米国内の過激なキリスト教右翼が支える福音派の役割も忘れられてはならない。(2023年6月8日、「ランティカピタリスト」紙よりIVが英訳)

▼筆者はIV通信員。フランスの第4インターナショナルメンバーで「アフリケ・アン・リュッテ」誌編集者。(「インターナショナルビューポイント」2023年6月12日)

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