パレスチナ ジェニンでの破壊行為
アパルトヘイトの次の局面
イスラエル当局の遺憾表明は欺瞞
アミアド・イラキ
エリ入植地での銃撃死を受けた、先週の入植者の大虐殺の恐ろしい光景は、そしてその中で数百人のイスラエル人がヨルダン川西岸占領地のパレスチナ人村落中で暴れ回ったその光景は、イスラエルの治安当局を非常に居心地の良くない片隅に押しやった。
入植者の暴虐
その前に空爆
焼き討ちされた家、黒焦げの車両、破壊された事業所に当惑して、軍、警察、さらにシン・ベット(軍情報局、モサドと並ぶイスラエルの3主要情報機関のひとつ)まで共同でこの攻撃を、「あらゆる道徳とユダヤの価値に背く」ような「民族主義的テロリズム」と糾弾した。IDF(イスラエル国防軍)は特にしきりと、法と秩序を回復する責任機関として自身を押し出し、「パレスチナ人の町の中で暴力と極端なやり方で行動する」者たちに対し、必要な手段を講じると約束した。
軍は入植者に資源、保護、さらにそのような暴力を行使する自信を与えている基本的な機関のひとつだ、というあからさまな事実を脇に置いた、この公的な関係筋の策動にはもうひとつの理由がある。
6月19日、まさにこの大殺戮の前日、イスラエル軍のアパッチヘリコプターが、急襲部隊とパレスチナ戦士間の激しい戦闘の中で、西岸の都市であるジェニンにミサイルを発射した。噂では、負傷兵士の退避のための「援護提供」だと言われている。そして、15歳の少年を含む5人のパレスチナ人が死亡し、90人が負傷した。
2日後イスラエル軍のドローンが、ジェニン近くのパレスチナ戦士の小部屋を攻撃した。検問所を含むいくつかの攻撃に責任のある狙撃者を標的にしたと言われている。このふたつの作戦は、エリの銃撃とそれに続く入植者の暴力によってその後の数日後景に引いた。
ガザでのやり方
を西岸でも実行
この空からの猛襲は、1回限りの事件どころか、イスラエルの占領の進化における危険な局面をあからさまにしている。空襲は、報道ではこの20年で西岸では初めてであり、第2次インティファーダの時ヘリコプターの攻撃で負傷し、あるいは遮蔽物を求めて走り回った多くのパレスチナ人の悪夢を呼び覚ました。とはいえその当時空からの戦争は、ガザ回廊でのやり方になっていたのであり、2005年のイスラエルの入植地撤退、およびハマス引き継ぎに続いた領域の全面的封鎖によって加速された、。
軍事支配のこの再形成は、意図的に、西岸とガザ間の物理的かつ心理的隔離をつくり出すものだった。それは、ファタハとハマス間の兄弟殺し的競合関係によって強められた。その距離が当たり前になるにつれ、ふたつの領域は分離され、比較できないと考えられるようになった。善意の主張者ですら――入植と併合を圧倒的に焦点化する中で――しばしば、ガザを戦時の視野外に忘れるというワナに落ち、ガザを「一国家」という全体関係における例外と思った。
しかし、多くの活動家、学者、専門家が警告してきたように、ガザを閉じ込め抑圧するために利用された諸構造は、イスラエルの方法論からの逸脱ではなく、むしろその自然な延長なのだ。そしてそのことは、先週ジェニンの空ではっきりさせられた。
イスラエルの
支配のモデル
ガザ同様、ジェニンは長い間、パレスチナ人の社会生活と政治的抵抗の中心――そしてそのようなものとして、悪どい抑圧の標的――だった。1年以上の間イスラエル軍は、地上部隊が市民の住宅に侵入し、公共施設を破壊しながら、1週間近くこの地域を繰り返し封鎖しつつ、死を呼ぶような、また長期の作戦をこの都市で行ってきた。絶望と死しか知らない若者が率いたパレスチナ人の武装グループは、容赦のない闘いを続け、かれらはこの間、イスラエル軍部隊の侵略をもっと困難にすらできる、と示してきた。
それこそが、先週軍を空軍力に絶望的に向かわせた事実だ。都市に対する集団的な処罰と一体的な、人口が密集した領域への空爆は、恒常的な介入を求める「テロリズムの汚水だめ」とするジェニンに対する悪魔視によってさらに正当化されている――2、3㎞離れた細長い土地に適用されている「芝刈り」と、本質的には同じドクトリン――。
そのようなものとして、ガザはイスラエルのアパルトヘイト支配に対しほとんど例外ではない。むしろそれは、終局的なバンツースタンだ。つまり、それを取り囲む入植者の社会にとって最小費用になるような、基本的な必要を手配する現地支配者を伴う、近代兵器と技術を利用した、包囲された空間内の先住民の支配と弱体化に向けたモデル、ということだ。
欺瞞の中進む
西岸のガザ化
それ以前に封鎖と侵略のさまざまな形態にさらされているジェニンやナブルスのような西岸の中心は今、これから来るもののおぼろげな感覚を感じ取っている。そこの多くの民衆にとって、イスラエルに関する主な経験はもはや急襲部隊や入植者の略奪ではなく、飛び回るジェット機やうなりを上げるドローンになっているのかもしれない。パレスチナ人の排除は不可能と思われるとしても、ガザ化がかれらの未来になるだろう。
それこそが、入植者の大殺戮の翌日、IDF参謀長のヘルツル・ハレヴィから聞こえるものが病的な冗談である理由だ。彼は、軍の創立記念式典で、「パレスチナ人の住宅に火焔瓶を投げる意図をもつイスラエル市民を見て、傍観する将校は、将校であることはできない」などと説教したのだった。
軍は、「民族主義的テロリズム」を犯した入植者に関し悲痛であるふりをしているのかもしれない。しかし軍はその兵士に、制服で行われる限り同じことをやるようあからさまに命じているのだ。どちらの方法にしろ、ハレヴィの主張にかかわらず、ガザでの残忍な暴力を監督している一イスラエル人が、政治家に転身する将軍になる道を簡単に見つけ出すことができることははっきりしている。他方、西岸での同じ暴力を扇動しているもうひとりのイスラエル人は今や、国家保安相になることを熱望できる。(2023年6月30日、+972マガジンより)
▼筆者は、+972マガジンの編集者で記者。シンクタンクのアルシャバクでの政策分析者でもあり、以前は、アダラー法律センターの弁護指揮者だった。ハイファを基盤とするパレスチナ人イスラエル市民。(「インターナショナルビューポイント」2023年7月6日)
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