リビア 選挙の先延ばし画策
マフィア的徒党が権力掌握
ポール・マーシャル
選挙に関する話しはあるがその組織化は皆無。これが権力を分かち合う、そして一層苦しんでいる住民の犠牲で自らを富ませている2陣営の戦略であるように見える。
包括的な合意がない中での、2021年12月に行われることが予定されたリビアの選挙は、無期限に延期された。その時以来、この国のふたつの権力――トルコが支援し国際的に認知されたアブデルハミド・ダバイバのトリポリの権力、およびワグネルのロシア人傭兵により支援されけしかけられている、そしてマーシャル・ハフタルが率いる東部の権力――間の諸会議が、衰えることなく続いてきた。
選挙めぐる
新しい試み
2021年の選挙実施の破綻以後、国連の特別全権大使、セネガルのアブドゥライエ・バシリーは、自由で透明な選挙に導く道をきっちりまとめるために、政治指導者、NGO指導者、部族長、女性および若者といったリビア社会の諸部分からなる高位パネルを招集することでプロセスを再開させると決定した。ハフタルに近い議会、およびトリポリ政府が頼りのリビア国家評議会を結集する6+6委員会がすぐさま設立された。目的は、選挙に対する支配を取り戻し、それが実施されないようにするために可能なことすべてを行うことだ。
この目的が今達成されかかっている。今年に向け選挙が公表されているとはいえ、大統領選のための資格基準をめぐって、また統一移行政府の形成をめぐって2陣営間の不一致がしつこく残っている。これらは2021年の選挙構想を無力にしたものと同じ不一致なのだ。
マフィアの
一時的妥協
2019年のトリポリに対するハフタルの攻勢の失敗をもって、新たなページがめくられている。両陣営とも、双方が軍事的優位を得ることはないだろう、と実感した。各々の側が自身の領域内で合法、非合法のビジネス、特に人身売買から利益を得ることに基づいて、一時的妥協が成立している。ハフタルは、下位には置かれないと決意した。移民輸送から民兵が得ることができる利益に加えて、このあさましい活動はかれらにEUとの対話相手を用立てている。
リビア国有石油会社の新しい会長としてファルハト・オマル・ベングダラを指名するというひとつの合意が、2陣営間でまとまった。各陣営に公平に、かつ何よりも大盤振る舞いで利益を流し込むことが彼の任務だ。それは、2017年以前習慣への回帰だ。
配慮されない
住民の苦しみ
米国とEUは早急に実施される選挙を見たいというかれらの切望を変わることなく主張しているが、現在の情勢に十分満足しているかもしれない。現に、ふたつの権力のさまざまな民兵は、移民が旧大陸に達しようと試みることを防止するために国境で警戒活動中であり、石油は今自由に流通できている。ロシアに関する限り、それはこの国で軍事的存在感を維持し続け(ワグネルの危機がカードを切り直すこともあり得るとしても)、トルコは、リビア海域での石油探査のためにこの情勢を利用し続けている。
リビアはマフィア一派の支配下に落ち込んでいる。そしてその者たちは、それらが同伴する民兵と一体となって、この国の富を略奪中だ。そしてその中で、公衆衛生、教育、文化といった国家の社会的諸組織は混乱の中にある。選挙を求め、指導者の腐敗を糾弾する2022年の民衆的デモは、ハフタルとトリポリの権力両者によって残忍に弾圧された。(2023年6月29日、ランティカピタリストより英訳)
▼筆者はIVの通信員。フランス内の第4インターナショナルメンバーで「アフリケ・アン・リュッテ」誌編集者。(「インターナショナルビューポイント」2023年7月3日)
週刊かけはし
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009 新時代社