イラン「女性、いのち、自由」運動経て

人々は今教訓を議論している

ベフロズ・ファラハニー

前例を超えた
蜂起の諸特徴
 昨年9月以後にイラン国内で起きたことからいくつか教訓を引き出すことは、後知恵の点からは容易い。
 日々の街頭デモは9月から今年1月まで国中あらゆるところで起きた。これは、どこか分からないところから現れた突然のできごとではなかった。2017年と2019年の蜂起の経験がそこにはあり、それらがこの闘争に参加した若者たちによって利用された。
 この高揚のフェミニスト的特性はそれを他のすべてものから別ものにした。女性の活力ある存在は否認できない。抑圧諸部隊に立ち向かう彼女たちの勇気は全世界を眩惑し、地球上のあらゆるところから連帯のほとばしりを引き起こした。同時に、諸々の都市の公共空間におけるベールを外した女性の存在は、全体の抗議運動に市民的不服従の前例のない性格を与えた。
 学生の参加は、2017年と2019年の蜂起におけるかれらの役割を思い出させる。しかし巨大な学生の関与の規模は以前の運動におけるかれらの活動をはるかに超えていた。大学の地理的広がりは、学生の参加が抗議行動の範囲を広げたということを意味した。
 同時にそれは、学生世界のヒロイックな現代史のおかげで、運動の要求に相当な刺激を与えた。学生の世界は、過去70年、民主主義と社会的進歩を求める諸要求の前衛だったのだ。
 この運動の中には、新たな宗教的資本家ブルジョアジーを例外として、中流下層階級、また不安定雇用の若い労働者、失業者、小規模小売店主その他が有力な形であらゆる社会階級が登場してきた。ストライキは、社会のあらゆる部門で起きた。ストライキは、商店やショッピングセンターで、特にクルディスタン、北部のギーラーン州で、テヘランで、そしていくつかの他の大都市で起きた。
 連帯ストライキも、イスラム体制の歴史的基盤だったテヘランバザール内を含んで起きた。これもまた新しく、「女性、いのち、自由」運動の固有の特徴だ。
 2017年と2019年の抗議行動には関わらなかった医師や弁護士といった社会グループも、それら自身のやり方でこの運動に現れた。この前例のない事実は、この蜂起の「みんな一緒に」という性格が過去におけるよりもはるかに幅広かったことを示している。
 国全体が混乱の中にあった。すなわち、北から南まで、東から西まで、大と小の都市で、国の中央部と遠く離れた地域の人びとの巻き込みだ。
 クルド、アゼリ、ロル、そしてバルチといった民族的マイノリティは、存在しただけではなく、かれらを敵視する者たちによる「分離主義」との言いがかりをはねつけて、あらゆるデモ参加者との連帯、としてそこにいた。女性、クルド、そして学生がこの運動の3本の主柱だった。
 現在の蜂起に対する海外に四散したイラン人の連帯は特に述べる価値がある。10万人以上のイラン人が欧州のあらゆるところからやってきた昨年12月のベルリン集会は、四散したイラン人の歴史では前例がなかった。
 しかしこの運動にはひとつの大きな欠落があった。つまり、街頭の抗議行動に参加する市民としてではなく、階級としての労働者による政治ストライキだ。イランは、生産の資本主義的関係が支配する国だ。あらゆる多様性の中にある都市の賃金稼得者が、住民の過半を構成している。労働者階級の参加がなければ、急進的な、あるいは底深いものはイランで起きないだろう。
 都市と学生のデモの成功は、1978―79年の反王制革命で示されたように、労働者のストライキが同伴することを必要とする。残念なことに、イラン人民と現体制間の今回の最新衝突はこの不足を埋め合わせることができなかった。

転換点印した
 団体の憲章
 転換点は、大デモの終わりと2月15日の労組と市民団体20団体による憲章(本誌3月20日号に紹介:訳者)公表によって、はっきりさせられた。この憲章は、イスラム共和国の枠組み内では達成され得ない経済的、政治的、社会的諸要求を組み合わせた、社会運動の最小限要求を提示した。
 この憲章は転換点だった。それは、イラン内の社会運動の進歩的な指導者たちの成熟を証明している。それは、次の政治的で社会的な「嵐」に向け良好な基礎を提供する可能性を秘めている。
 体制が大規模な毎日のデモに終止符を打つことに成功して以来、労働者によるストライキと争議行為が増大基調になっている。被雇用者、年金生活者、教員がかれら自身の要求をもち出してきた。
 政治的目標に基づく運動と原理的に抗議運動であるものとの間にはひとつの落差がある。この落差がある限り、アヤトラ体制に反対する蜂起の成功は傷を受けるだろう。そして、イラン社会運動内の活動家たちの間に起きている生き生きとした討論の焦点になっているのはこの主題だ。この主要な問題が解決されないならば、次の民衆的な蜂起での成功のチャンスは極めて僅かなものだろう。

▼筆者はテロ支援国家(SSTI)に関わる活動家。(「インターナショナルビューポイント」2023年7月8日)

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