フランス 年金決起総括:明暗混合の展望

反動派の社会的戦争継続を前に
新自由主義拒絶を政治的表現へ

労組含む社会的かつ政治的共同戦線構築へ

レオン・クレミュー

 6月の最初の2週間は、エマニュエル・マクロン大統領と民衆諸階級、労組運動、社会運動、さらに政治的左翼の間における6ヵ月にわたる衝突にひとつの終わりをもたらした。確かにキュロス王の勝利(損害が大きくて割に合わない勝利を表現する慣用句)が、この時期の終わりにおけるマクロンの状況にもっとも良く当てはまる用語だ。

闘争がつくり出した現下の情勢

 彼は、彼の反動的な改革を押しつけることに成功した。一方彼の社会的基盤をさらに縮小することで自らを孤立させつつ、国民議会と上院でこの改革を通過させるためにドゴール派の共和党(LR)の支持を必要とした。彼は、64歳まで退職年齢を引き上げたと自慢することができる。しかし彼はこれまでのところ、今彼が通過中のふたつの危機を克服することができていない。
 まず、国民議会内の彼の弱さ、および上院内での彼の存在感ゼロを条件とした議会的な危機は、彼の法案通過のためのLRおよび極右の国民連合(NR)に対する高まる依存により、今日なお一層明白だ。次いで、正統性の、社会的基盤の危機も、年金問題に関してであれ、全体としての政府の政策に関してであれ、マクロンと彼の支持者がこの国で今も否認されている以上明白だ。
 他方社会運動の場合、結果は必然的にいわばいろいろなものがまぜこぜに詰め込まれた袋だ。年金法が公布されてほぼ2ヵ月後になる6月6日の14回目になる行動日には、250の抗議行動があった。5月1日に比べ平均で3分の1のデモ参加者は、デモ参加者数――警察によれば、28万1000人、CGTによれば90万人――の点でこの運動の始まり以後では最低だった。しかしこの数は、たとえ少なくなっていたとしても、この法に対する頑固な拒絶、および政府の改革と闘う意志を映し出している。その上最新の世論調査は、まさに非常な多数が常にマクロンは彼の法の通過に成功するだろうと考えていたとしてさえ、圧倒的多数による改革拒絶と運動に対する支持を指し示している。
 労組間共闘は、62歳退職年齢への復帰を求める票決を追求して無所属議員グループのLIOTによって提案されたひとつの法案が国民議会で2日後に票決にかけられる予定になっていたことを理由に、6月6日という先の行動日を呼びかけた。しかしこの最後の制度上の戦闘は起きなかった。政府は、この票決が確実に行われないようにするために、承服困難なる言い分、を引っ張り出して議員たちが憲法の付帯条項(今回の場合は40条)を確実に利用するよう、あらゆる努力を払ったのだ。
 国民議会法務委員会がその前にそれは許容されると思っていた中で、前例がないことに、「方策の資金欠如」を理由に野党が提案した法案が葬られることを示したのは、ここで再びLRグループの支持だった。それゆえに最後の行動は実現しなかった。
 マクロンは明らかに1月以来、彼の法案の拒絶になるような年金に関する議員の本物の票決は欲しくなかった。実効性はない――反動的な上院の多数派はこのイニシアチブを阻止したと思われたことを理由に――としてさえ、こうした拒絶の見せつけはマクロンと彼の政府には耐え難かった。
 6月15日夜に行われた労組間共闘の最後の会合は、その統一、年金改革へのその反対、さらに秋からの他の諸課題で行動するその約束を再確認した。しかしその確認にも、政府や雇用主に立ち向かう共通の社会的要求の定式化、あるいは1月のはじめ以後の運動の中で数十万人の労働者と活動家からなる新たな決起を準備するどのような具体的な呼びかけも欠けていた。
 今、労組運動、社会運動、NUPES(新人民連合・環境・社会、左翼諸政党の連合)、そして急進左翼はしたがって、これからの数ヵ月の中でかれらの責任と向き合っている。政府は社会的かつ民主的な攻撃というその政策を加速するつもりであり、そして逆説的だが、こうして左翼が周辺化されるのを見ているほとんどの編集者の歓喜になるほど、世論調査でマリーヌ・ルペンが彼女の帆に風を受けているからだ。

諸々の見通し―連続ストの問題


 重要な問題が諸々現れている。第1に、社会運動は民衆諸階級への政府の攻撃を阻止するに十分な力関係をいかに生み出すことができるだろうか?
 この観点から見れば、この6ヵ月の収支決算は明らかに矛盾している。この運動は、全住民の圧倒的多数からの支持に基づいて被雇用者の広大な多数を統一し、極めて意義のある強さを保持していた。労組間共闘は、必然的にバラバラにならないようにとの総意に立って機能を果たし、政府および議会内の被選出議員に十分な圧力をかけるとの目的に基づく、大規模行動日(1月から6月の14回)の方向性に従った。
 これはしたがって、国内でのマクロンの孤立が彼と彼の首相のボルヌに後退を強いるだろう、との根拠に依拠する世論をめぐる戦闘だった。しかし政府は、かれらの議会内少数という状況があるとしても、かれらにそれに対する無視を許すことを可能にする制度的なツールがある、ということを分かっていた。
 議会での投票がマクロンを阻止するだろうとの何らかの希望があったとしても、そこでは、マクロンへの反対をはっきりさせたいとの切望と、この反動的な法案と符合する原理的に新自由主義的な路線との間で引き裂かれた、共和派右翼(LR)の危機に依拠することが必要だった。2022年大統領選のLR候補者(ヴァレリー・ペクレス)は、年金開始年齢の65歳への引き上げに基づいて自ら運動していた。
 したがって制度的な領域では、RNが依然この法に対し拒絶の姿勢を維持していたとしても、社会運動はなお反動的な議員の多数とぶつかっていた。だからこそ運動は、その希望のほとんどを、右翼内部の見たような危機や議会内の諸々の動きに置いてはならなかった。
 労組間共闘のこの路線に対抗して、1月にソリデールによって、またより鮮明さは小さかったがCGTによって提起されたオルタナティブは、世論内の闘いにだけではなく、経済生活を止めることによる雇用主への直接圧力にも依拠して、「国を立ち往生させる」ための連続ストライキだった。多くは、連続ストライキに入るいくつかの部門、そして主には大規模ストライキデーに参加する他の部門として、運動は二本柱で進むことも可能だ、と考えた。
 曖昧さは運動には役立たなかっただろう。連続ストライキを一斉に開始することは、専門職部門のかなりの部分には簡単なことではなかった。金銭的な理由はそれほどはない(連続ストライキ運動に加わらなかった多くの被雇用者は、1月から6月までの多くの日にストライキを行うことになる)。基本的な問題は、労組間共闘がいかなる時も、ひとつの目標として、全被雇用者へのひとつの合図として、たとえ1週間か2週間だとしても、連続ストライキへの一斉突入を呼び掛けなかったことだ。したがってこのことは、先の方向で共に行動することに確信を与えなかった。そして、ストライキ行動日と週毎のデモというパターンは、早々に連続ストライキへの乗り出しと矛盾するようになった。
 この数ヵ月における私有部門の特に実質賃金引き上げをめぐる激闘的ストライキの多くは、組織化率が高くなく低賃金の、またしばしば共同の労組戦線もない企業で、数週間続いてきた。しかしそこには決意があった。そしてそれは、企業を止めることで、かれらの力を押しつけることで、全員が同じ方向で圧力をかけることで、勝つことが可能だ、というこれらの企業のストライキ労働者に共有された感覚から出てきたものだ。
 経済生活を止める強さをもっているのは僅かの部門だけだが、他方で数百企業の追加は、集団の強さを与え、法令拒絶をも可能にしたと思われる新たな政治的衝突情勢と力関係を生み出すことができる。連続行動開始という7つのCGT産別の呼びかけ、そして同じ方向のソリデールからの呼びかけと組になった、労組間共闘の「国を立ち往生させる」というわざと曖昧にされた定式によって、すべての者が3月7日、われわれはそうした情勢の創出に近づいた、と感じた。
 企業の最大限の数で同時的な連続ストライキを目標にすることは、確かに達成が容易な任務ではなかった。そしてここで、労組の分裂が多くの企業で重要であることとまさに同じく、労組運動の諸勢力を個別撃破する攻撃すべての結果が重要になる。
 しかしこの展望は明白に、政治的には弱いがゆえに実行が容易いとは思われないとしてもなおのことこの法で硬直している政府を前にした時、最も現実的だった。われわれは、闘う準備はできているが、労組官僚によって口止めされ邪魔されているという、何百万人もの被雇用者に対する素朴な考えを捨てなければならない。その上、職場全員総会の弱さもデモの大規模さと対照的だった。

課題は資本に挑戦する戦線構築


 今日ページはめくられ、特に、連続ストライキを求める要求と労組間戦線維持のための闘い双方を支えた労組である、CGT、ソリデール、FSUの中で、これから収支決算に関する多くの論争が起きるだろう。労組運動は、特に小企業の私有部門被雇用者の中で、被雇用者内部での支持率を改善し、この1月以来10万人の新組合員を獲得し、この国の中の重要な社会的、政治的な場を占めたことを誇ってよい。
 しかし、6月15日の声明で再確認された、自らを維持し他の戦線に道を開くという労組間共闘のただひとつの約束では明らかに十分でないがゆえに、先のような諸課題で前進することが必要になるだろう。6月半ば以後も社会運動は死んでいず、退職年齢の問題に焦点を絞った諸勢力はなおも活動的で存在している。しかしそれらは共通の合流点を失った。
 問題は、年金への攻撃同様生活条件を悪化させる反動的な社会的攻撃を阻止するために、民衆諸階級による攻勢を建設する問題、として残っている。つまり、富の再配分を目標にすることを躊躇しない、職場と全体としての社会で押しつけられている資本の支配を問題にする、緊急の社会的要求を押し出す戦線の構築だ。
 したがってこの戦線は、単一の参照点としての、全労組連合からなる全国労組間共闘によっては可能でないだろう。それらの連合のいくつかは、新自由主義諸政策をこれまで支持し、今も支持しているからだ。CFDT、CFTC、CGCの指導部がこの間年金改革と明確に闘ったとしても、それらはしばしば、雇用主や政府が求めた要請を受け入れている。その1例が2月の全国職業間合意だった。それは、大インフレという全体背景の中で、ボーナス、利潤分かち合い、貯蓄計画に焦点を絞り、賃上げ問題を完全に除外した。 同様に、賃金をめぐるいくつかの争議がそれまでに勝利していた一方で、たとえば繊維企業のヴェルトボーデの件では、賃上げゼロで、総額で控除後765ユーロになる2回のボーナスのみを認める、最低NAO(義務的年次交渉)協定が3月にCFTCとCGCによって署名された。これに対し、CGT、特に新書記長のソフィー・ビネーが間に入り支えた2ヵ月以上の労働者のストライキが、控除後で90から140ユーロになる賃上げ獲得、また無期条件による30人の臨時労働者の雇用、を可能にした(本誌7月3日号7面参照)。
 そのように、決起の新たな力学の創出、および政府との社会的衝突の建設は、決起を通した最大限に幅広い労組戦線を集めようと挑むことによって、可能な限り近い形で緊急の必要を基礎に置く闘争単位を建設することが必要になるだろう。それはまた、環境の打撃、女性の権利、住宅、差別、レイシスト攻撃に関する緊急の必要をめぐって決起し、それらを防衛する社会運動との結びつきと協力を発展させることをも意味する。それは、あらゆる緊急の社会課題に関する決起という目標を与えることによって、この6ヵ月にわたって生み出された社会的空気を維持し拡大するということだ。
 このことが重要だ。6ヵ月間の民衆的決起の強さが社会的怒りに、また被った絶え間ない攻撃に基礎を置いていたとしても、資本家の利益とかれらの税軽減を標的にし、富の異なった配分を力説しつつ、現場できちんと他の緊急的社会要求と結びつきを造ったのは、しばしばCGT、ソリデール、FSUの活動家だけだったからだ。

反動派戦線による社会的戦争


 したがってマクロンと彼の政府は前進し続け、移民や最も不安定な層を標的にすることで、議会の麻痺を恐れることなくLRとRNとの連携を作ることができる諸課題で分裂を図ることで、政府と雇用主から社会的怒りをそらし、年金問題の先へと進み孤立を脱したいと思っている。こうしてマクロン、ボルヌ、内相のダルマナンは、ほとんどの場合アンサンブル(マクロン派)、LR、RNの議員からなる反動的な戦線に基づいて、社会保障や住宅を含むいくつかの戦場で民衆諸階級に対する社会的戦争に乗り出している。こうして、カシャリアン―ベルジ法という住宅に関する致命的な法が出てきた。それは紛れもなく不安定な借家人に対する戦争宣言であり、家賃不払いの場合の僅かな保護をも粉砕し、加速的な追い立ての増加を可能にしている。これが、社会的緊急性の問題が現に社会住宅に対する労働者階級の利用権の問題である時のことなのだ。
 手ごわい仕組みが機能している。一方で永続的な利率上昇と労働者家族の購買力低下が、以前の年月には住宅を入手するか社会住宅からもっと高価な私的な貸家に移動するための手段をもっていた人たちに対し、それを可能にした小規模な流れを止めることになった。同時に、2021年/2022年における社会住宅(HLM)建設は、公式に計画された25万戸より25%少なかったが、それ以前に大きく不十分だった。現に、230万家族が社会住宅を求めて待機中であり、そしてフランスにはホームレスが少なくとも30万人、貧困な住宅に住む者が410万人いる。
 こうして政府は、第1級の重要性をもつ社会的課題を前に、借家人に罰を与え、ホームレスの犯罪視を今選んでいる。右翼と極右のこの連合は、ひとり親家族を、したがって女性を最大に苦しめることになるひどい法を通過させただけではなく、NUPESが家賃凍結を提案した中で、2022年に通過させられた3・5%に加えて、2023年にも3・5%と、家賃を引き上げる地主の権利をも支持する票決を行った。
 同様につい先頃、政府は社会保障による歯科ケア補填を70%から60%に引き下げることも指令した。かれらは、社会保障不正追及分子によって標的にされた民衆階級を今犯罪視している。ちなみにこの不正なるものは、二重国籍をもつマグレブ出身者を標的にする明確なレイシズムの背景をもつ「病休の乱用、正当化できない給付」、および非正規移民のためになり、公的公衆衛生支出の0・5%を占める国家医療援助の「乱用」とされている。
 政府とRN双方が合法であろうがそうでなかろうが移民を、また労働者階級の「不正常習者」を標的にし、他方法人の脱税は(合法的な控除最高活用にはふれないまでも)、年当たり800億ユーロから千億ユーロに、企業による社会保障申告漏れは200億ユーロから250億ユーロに当たり、そしてそれは付加価値税表示の不正に相当する額なのだ。同様にダルマナンは、反動的な有権者を喜ばせるためにRNおよびLRと競争しつつ、移民と闘う新たな法を僅かな月数で導入したがっている(1980年以後30回目)。
 この反動的な進路は、権威主義的かつ抑圧的な国家政策の展開と歩を並べて進んでいる。そしてその政策は、デモと集会の権利への新たな制限、民主的な権利を攻撃する反テロ法と例外的な警察の仕組みの利用という形で(2024年オリンピック向けに計画されたドローンカメラによる自動識別化されたビデオ監視を含んで)、その抑圧的な武器庫を拡大している。
 サンソリーヌの大規模貯水池に反対するデモに続いて、最新の環境運動のデモが、リヨン・トリノ間TGVに反対して6月17・18日に行われた。サボア県のマリエンヌ渓谷に5千人以上が結集した。この300億ユーロの巨大計画は、千ヘクタールの農地を人造物に変え、年間6千万トンから1億3500万トンの排水を毎年押しつけるもので、フレジュス隧道を複線化するために計画されている。このデモはスイスとイタリアから数百人の活動家を結集すると思われたが、政府は、イタリアの環境活動家が乗る7台のバスの到着を阻止するために反テロ諸法の武器庫を使用した。それは、内務相の恣意的なIAT(フランス入国に関する行政的禁止)行為によるものであり、その行為はあらゆる司法の介入を迂回し、正当化される必要さえないものだ。
 政府は今日はっきりと、気候運動周辺の社会的闘争ネットワークの支えをできれば切り落としたいと思っている。気候運動の勢い、戦闘性、そして若者内部での影響力は、年金改革に反対する決起の心臓部で高まっているのだ。ダルマナンが振り回している「地球の蜂起」(農民連合、ATTAC、ソリデール、アルタナティバが含まれている)の解散という非道な脅しは、先の運動が占めている政治的な場に対する政府の怖れを例示している。

政治的オルタナティブの追求


 年金改革に反対する運動は、2010年以後では最も幅広く決起した、もっとも強力な社会運動になった。それは、特に以前の社会的決起の外に多くの場合取り残された、しかし2018年の黄色のベスト運動の中ですでに非常に活動的になっていた、小さな町や地方の地域で並ぶもののない深さをもっていた。それは、退職年齢の64歳への後ろ倒しに表現された民衆諸階級に対する正面攻撃によって動機付けられた。そしてその後ろ倒しはこれから、退職年齢に近い被雇用者の不安定化、および年金のさらなる減少、特に骨の折れる仕事で働いてきた者たちにとってのふたつの最良な条件の年金の喪失、という具体的な作用を及ぼすことになるのだ。
 しかしそれ以上に、日々の生活のあらゆる社会的苦しみが、それほど深くまたそれほど長続きする形でこの決起を打ち固めてきた。それは、仕事のつらさ、骨が折れ長い時間の通勤、惨めな住宅条件、社会住宅の減少、低賃金、パンデミックとインフレで増大した生活費、医療ケアをまかなう不可能性、地方の公共サービスのはっきりした切り下げによる日々の生活の困難さ、最低限の行政手続きの実行をもっと困難にしている「オンラインサービス」の浸透、といったことだ。さらに、家族の場合、高齢者のますます高価になるケア、しばしば嘆かわしい条件の老人ホームの途方もない費用、若者の雇用や就職の困難さもある。
 それゆえ、この運動によって問われ、表され、しばしば次々と中継されたものは、社会的問題、世界的な社会的課題、したがって民衆的利益の場と防衛に関係する政治の問題なのだ。それゆえ挑戦課題はこの間、この階級的課題に政治的可視性を、ひとつの具体性を与えることだった。そして今もそうだ。またその手段は、先のような社会的攻撃に反対ししたがってオルタナティブを、社会的必要の満足を基礎に置いた反資本主義的選択肢を求める闘いを基礎にした、政治的オルタナティブの追求だ。

反新自由主義への高まる敵意


 人は、公式の新自由主義の教条から「逸脱する傾向」すべてと闘おうとして、むしろ粉砕しようとして、この数週間資本主義イデオローグたちが全力を挙げて熱を込め続けてきた情熱に印象を深くしている。NUPESは、不合理、無能、左翼主義とイスラム主義の言いなり、経済的信用度ゼロと、毎日標的にされている。1980年代のレーガンとサッチャーが偲ばれるTINA(オルタナティブなど全くない)が今、特にマクロン主義のスポークスパーソンと僅かの資本家億万長者が所有する総合メディアの編集者たちの中で、突出した場を占めている。
 反応は時に局所的な伝染性をもつ。これは、今年のカンヌ映画祭でパルムドールを勝ち取った後の、ジャスティーヌ・トリエ監督の言葉に続いた事例だった。彼女は敢えて、「年金改革に反対した抗議行動を政府が否認したショックを呼ぶやり方」を糾弾するスピーチを行った。それに続いて彼女は「新自由主義の政府が擁護する文化の商品化」を酷評した。あらゆる職業別労組がこのスピーチを共有し支持した一方、見ものだったのは、政府と新自由主義的取り巻きたちから出てきた敵対的反応の速度と暴力性を見たことだ。「知的エリート」が支配階級の議論を分かち合うと想定されているような文化的方向性のひとつがカンヌ映画祭の威信である以上、彼女のスピーチの信用を落とそうと挑むことはなおのこと重要だったのだ。1968年のカンヌ映画祭の亡霊は明らかに今も何人かの記憶の中にある。
 もっと驚くことは、若いマクロンの良き指導者のひとりだったエコノミストのジャン・ピサニ・フェリーと財務監察官のセルマ・マフフーズによって書かれた報告への反応だった。新自由主義エコノミストから出てきた環境的移行の資金問題に関するこの報告は、必要な資金捻出の重要性と緊急性を前提に、かれらの金融資産の5%の額に応じてかつて払われた税である、「フランス人民中の最富裕層10%に対する特別税」、の実行を敢えて表に出している。これは、即時に1500億ユーロを集めると思われる。
 債務を差し引いた資産総額(不動産と金融)の半分を所有する裕福な家計を敢えて標的にしたことは、明らかに容認できないことだ。そのような提案を行えるのはNUPESの左翼だけだろう。こうして、かれらの身内のひとりから裏切られたボルヌと彼女の財務相のブリュノ・ルメールは、即刻かつ激しくこの仮説を退け、それを、税の重荷の軽減という政府の全体政策に反する、と判定した。

必死のNUPESバッシング


 これらふたつの事例は、資金と社会の課題に可能な対応はひとつしかないと断言したいという切望を示すものだ。この切望は、反資本主義の主張に対してだけではなく、この数ヵ月街頭にいた人びとが、また労組運動やNUPESや急進左翼の部分が取り入れた反新自由主義の主張に対しても、信用を傷つける努力を必要とする。そして重要なことは、新自由主義諸政策に対するオルタナティブを代表はできない、そしてRNよりも危険な選択肢、としてNUPESの信用を落とすことだ。
 この観点から、その指図には大メディアの編集者が幅広くしたがい、「NUPESバッシング」にふけり、次の選挙に向けこの政治連合が信用できる勢力として現れるのを妨げようとしている。先の名簿には、社会民主主義左派の懐旧者というもうひとつの補足物があり、それらは、民衆諸階級の懸念と思われる「深刻な」日々の懸念を犠牲にして、特定社会的な課題(LGBTQ+運動、気候やフェミニストや反レイシストの運動に対する理解)を優先しているとして、不服従の左翼(LFI)とEELV(ヨーロッパ・エコロジー=緑の党)の左翼の信用を落とすことを狙った小曲を演奏している。
 しかしながら、民衆諸階級の中では、日々の暮らしの苦しみすべては、次のような場合こそひどくなるのだ。つまり、しばしば低賃金でひとり親家族の支え手であり、しばしば暴力、虐待、仕事での差別を受けている女性である場合、また、日々の暮らしにおける差別、空間的格下げ、国家的レイシズム、また警察の暴力に苦しんでいる植民地解放後世代出身である場合だ。これらの社会的課題は、民衆諸階級の外部にある特定社会の懸念ではなく、何百万人もの男と女に降りかかる日々の問題の統合的な一部だ。同じことは、環境の懸念でも真実であり、それは、特に民衆諸階級によってもそこで経験された緊急性を証言している。

共通の活動家のるつぼ建設へ

 しかし、社会的必要を基礎とする政治的表現の問題、新自由主義諸政策に対するオルタナティブを世界的に概括することは、実のところ現在の情勢におけるひとつの弱点だ。確かなこととして、反新自由主義左翼のNUPESはメディア内で毎日信用を傷つけられ、それが受けている戯画化にまさる形で、首尾一貫した声を聞き取らせる困難さを抱えている。政府周辺とその支持者たちがRNの脱悪魔視をはっきり選択したこと、そしてそれを、「危険なLFIのイスラムびいき左翼とエコテロリスト」に反対する、まじめで責任ある野党として扱っていることも本当だ。
 それにあらゆる限界があるとしても、NUPESだけが新自由主義諸政策拒絶として見えている。これは明らかに、ある者たちができれば蘇生させたいと思っている社会民主主義の遺物に関しては事実でない。
 そしてこれは明らかにRNに関しても事実でない。それは、ジョルジャ・メローニ同様、マクロンの反動的な諸法に関し彼に従い、ただもっとレイシズム的な差別の毒を加えて、見てきたような新自由主義諸政策に全面的に専念している。
 こうしてシステムの防衛者にとって主な危険は、社会的要求と政治的オルタナティブの間に通路を作る勢力のあり得る出現となっている。フランスはこの観点から見た時、EU内で特殊な情勢を、至近の社会運動の強さを、そして意味のある選挙上の強さと圧倒的な反新自由主義を維持している左翼に基づいて、当面他のところの現情勢と逆にこの国を置いているNUPESの存在を抱えている。
 それゆえ、RNがこの数ヵ月の唯一の勝者としてメディア内と世論調査で確実に見えるようにするために、あらゆることが行われてきた(最新の世論調査によって、たとえNUPESが前進し、前倒し選挙のあかつきには相対的な多数を得ると思われるとしても)。
 残念だが、この成長と左翼の側の困難は、メディアの策動の反映だけではない。明らかにひとつの不足があり、それは昨年秋から存在してきた。すでに幅広く分析されているが、それは、共通の、統一的な、労組も巻き込んだ社会的で政治的な戦線に到達する点での不能性から現れた。
 NUPESは、そうした情勢におけるその共通の責任を心配するよりもむしろ、諸都市や地域内の共通の活動家組織すべてを拒絶している。LFIは、内部の民主的な組織と機能という考えにはいかなるものにも疑いをもち、地方的なあるいは全国的な性格をもつ共通の結集を促進するためのイニシアチブは、国民議会の外部では全くとられていない。
 NUPESの各部分は、LFIは別として、今日共通の表現をさがすよりもむしろ、迫るEU議会選での特定の表現にもっぱら関心を寄せているように見える。この状況は、LFI内部の批判に、いくつかのファーラムにおける、NUPESの青年組織の指導者内部での統一を求める共通の呼びかけに導いている。いずれにしろこの社会運動後でもNUPESの指導者たちは、マクロンと対決する共通の社会的かつ政治的な諸提案に向けイニシアチブを発揮することができず、それらの選挙協定が内包する諸限界を強めているように見える。
 急進的左翼の中では、NPA、およびフェミニスト、労組、環境派、アナーキスト、また市民運動の活動家数百人が、7月はじめの「長期的に新たな民主的かつ多元的な勢力を建設するための」社会フォーラム開催に向け、地方と地域の会合の進展を訴えて声を上げたばかりだ。
 概して言えば、新自由主義諸政策と闘う政治的なオルタナティブを信頼できるものにするために、統一した、労組を巻き込んだ社会的かつ政治的な共同戦線を建設することが目下の任務とならなければならない。このオルタナティブの綱領は、特にCGT、ソリデール、またFSU内の戦闘的な労組諸潮流の中で、また社会運動の活動家団体の中で作られた要求の中に全く多く存在している。LFIとNUPESは、前回選挙の中でその諸要求の多くを代表するスポークスパーソンになった。しかし問題は今、建設されるべき決起の基盤となることができ、論争ができ、組織化ができる共通の活動家のるつぼを建設することなのだ。(2023年6月18日)(「インターナショナルビューポイント」2023年6月19日) 

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