ポルトガル 左翼ブロック:ホルゲ・コスタへのインタビュー (上)

われわれは労働者運動と社会運動にしっかりした参照点を提供する

社会変革に社会自由主義からの自立は絶対条件

 ポルトガルの左翼ブロックは、第4インターナショナルの同志たちも重要な役割を果たしている急進左翼の政治勢力だが、議会内と議会外の社会運動の双方で四半世紀の実績を重ね、国政にも少なくない影響力を行使してきた。以下では、それらの活動、社会変革を引き寄せる考え方、およびそこに現実の活動がどう位置づけられているか、などが広範に論じられている。提示された観点は、豊富な具体的経験に基づき実に興味深く、日本のわれわれにも示唆に富んでいる。非常な長文だが一部割愛の上2回に分けて紹介する。(「かけはし」編集部)
 1999年の創立以来の左翼ブロック(ブロコ・デ・エスクエルダ、BE)指導者であるホルゲ・コスタは、15歳で政治活動に入り、第一次湾岸戦争への抗議運動に参加した。その後コスタは、2009年から2011年、および2015年から2019年に国会議員に選出され、現在は党の常任指導部の一員だ。
 コスタは以下の広範な分野にわたるインタビューで、社会党(PS)が政権に戻って以後のポルトガル政治の展開、BEのPSに対する変化する関係、チェガ(もうたくさん!)という形態での極右の台頭、ポルトガル共産党(PCP)とBEの関係、そしてBEが若手活動家の一世代の流入を得て成長に戻っている中で党が直面している挑戦課題、に答えている。
 このインタビューは、5月26~28日にリスボンで開催されたBE第13回大会後に行われた。次の2年にわたる党の活動を決定するために、658人の大会代議員(1万人弱の党員を代表)は、動議Aおよび動議Eとして提出された2つの政治展望を巡って選択しなければならなかった。コスタが支持した動議Aが大会代議員の83%から支持を勝ち取り、動議Eは15%の支持を引き出し、2%が棄権した。
 インタビューは、社会主義刷新の国際誌、「リンクス(左翼)」向けにディック・ニコラスが行った。

社会党政府とBE、変わる関係


――BEは2017年にマデイラ島地方議会で2人の議員を失ったことを始めとして、その年以後選挙における支持を半減させてきた。党は、2019年総選挙で票を減らしたものの国会の19議席を維持したが、その後2021年大統領選で65%の票を、同年の地方政府選挙では12の地方議会の3分の2を失い、さらに2022年1月の前倒し総選挙での、19議席中の14議席喪失が続いた。このがた落ちについて、どれだけが党の支配を超えた要素が原因で、どれだけが党自身の欠点が原因か?

 BEがPS政府を支持する上での基礎を形作った両党間の協定は、2015年にまとめられた。遡れば当時、PSは総選挙で二番手となり、課題は、右翼が続いて統治しその前例のない緊縮方策に基づく略奪が続くのを阻止することだった。社会党の4年の任期が終わり、協定が満期となった2019年に、BEは得票率10%(50万票)を獲得した。そしてそれは前回4年前(これまででわれわれの最善の結果)とほぼ同じだった。
 それゆえ、2022年1月の結果に対する説明は、徐々に進んだ悪い選挙結果という何らかの連続性の中に見つけられるものではない。むしろわれわれは、2019年10月との比較で、得票が半分に、国会議員数が4分の1に突然落ち込んだ。
 その理由は、交渉後にわれわれが決めた態度、つまりPS政府の予算案を支持することへの拒絶だった。われわれはこれらの交渉の中で、われわれが受けた委任を全面的に尊重した。そしてそれは、労働者階級と住民多数にとっての重要な利益に達するためにわれわれの影響力を使う、ということだった。その利益とは、第1に労働法と関係し――特にトロイカ期の労働法を終わりにする点で――、そして第2に、国民医療サービス(SNS)への投資に関するものだ。しかしながらわれわれはPSとの間で、これらの目標を達成すると思われた合意に達することができなかった。
 したがってわれわれは、国家予算支持の投票を行う根拠をもっていなかった。その決定、つまりPSからの戦略的自立に向けた決定は、BE支持者の大きな部分から明確には理解されなかった。しかしわれわれは、われわれの投票を決めるに当たってかれらの基準を使わなかった。つまりわれわれは戦略的基準――われわれの自立した政治構想という基準――を使ったのだ。
 選挙直前の日々、BEのひどい結果に大いに貢献した2番目の要素が現れた。つまり、全国的な世論調査が、右翼の諸政党は合計してPSの得票に匹敵しそうになっている、と示したのだ。極右の得票を合わせた場合右翼の勝利をも指し示すこの世論調査は、PSに向けて一定の左翼の民衆を動員する怖れの波をつくり出した。
 結局のところ恐れられた右翼の勝利は起きなかった。そしてPSの議会内絶対多数という結果になった。それゆえ世論調査は、間違っていたか、それとも投票意図の移行に最後の日々に直接貢献したか、のどちらかだ。どちらの場合でも、この最後の世論調査もまた、PSへの左翼票動員では非常に重要だった。このふたつが、2022年のわれわれのひどい結果を説明するものだ。

――そうすると、BE(およびPCP)の貧弱な結果が示すものは、SNSの過小投資が「左翼の人びと」の相当な部分にとって――当時――最も重要な問題ではなかった、ということか? BEは民衆の気分を見誤ったのか?

 私が言ったように、われわれはわれわれが受けた委任を、労働者階級にとっての戦略的な課題、たとえば労働法をめぐって圧力をかけるために使った。われわれは変わることなく、PSの付属物であることを、政府の車の5番目の車輪であることを拒否するだろう。
 そしてそれゆえ当時の環境では、PSへの従属かそれとも自律かに対し、われわれは選択を行った。われわれは自律を選択し、総選挙結果が出てきた後われわれは縮小した。それは確かだ。われわれは重みを多く失った。しかしわれわれはわれわれの背骨を無傷に保ち、今撃ち返すことができている。そしてわれわれはそれを行っている最中だ。
 われわれは、以前よりもはるかに小さくなっている議員団で、しかし、ポルトガルで今回答が必要な大問題に回答する点でのPSの無能力とその傲慢さに反対して登場中の、民衆的運動との一直線的で一貫した関係をもつ議員団に基づいて、PSの絶対多数に立ち向かっている。

民衆の苦難に無回答のPS政府


――2015年から2019年のゲリンゴンカ(奇妙な仕掛け)――一連の特定された約束を基礎としてBE、PCP、さらに他の勢力によって閣外から支えられたPS政府――とは異なって、現PS多数派政府は、この国が今苦しんでいる多くの社会的危機に対する土壇場でのバンドエイド的手当と組にされた、ポルトガル大資本との諸々の約束から、その安定性を引き出してきた。それは今、最近の世論調査での平均29%――野党の社会民主党(PSD)と同等――、そして2022年1月の得票率41・4%を大きく下回る支持率という形で、先の姿勢に対し大きな対価を払っているように見える。最近の世論調査はまた、BEが8%から10%のレベルまで支持を回復していることも示している。この移行を説明するものは?

 今は多くの異なった世論調査があり、それらには選挙への異なった態度が反映されている。確かに、いくつかは次の選挙でBEが回復することを、あるいは今選挙があれば、はるかに好成績を得ることを指し示している。
 PS絶対多数の政策を特徴づけているものは、大きな傲慢さ――野党に回答することの拒絶、過ちを説明するために開催されるべき議会にやって来ることの拒絶――だけではなく、政府のほころびでもあり、後者は多数の(現在まで13人)閣僚の失脚によるものであり、その理由は大小のスキャンダル、利益の対立、ビジネスと公共圏の間の癒着だ。
 しかしそれは主に、社会的危機とインフレサイクルに対する展望の欠落、回答の不在が理由だ。人びとは、政府と経営者の約束の結果、また欧州中央銀行(ECB)が指令した金利引き上げとインフレからの組になった作用の結果として、賃金停滞の圧力下にある。ポルトガルは、多くの人々が家賃を払えず、際限なく落ち着く場所を探しているという形で、巨大な住宅危機を抱えている。われわれはまた今、公共サービスの、主には教育と公衆衛生の正常な機能という点で巨大な困難にも直面している。こうしてわれわれは、2022年を通じて、教育におけるこれまでで最大とも言えるストライキの波を、また公衆衛生サービスでの非常に重要なストライキを経験した。その理由は、政府が医師、看護師、教員の最低限の要求に対し拒絶を続けたからだ。
 ポルトガルにはまた、大規模で持続不可能な観光に基礎を置いたモデルの発展もある。これは、GDP成長が生活水準の対応した上昇をつくり出していない理由を説明するもののひとつだ。人びとは代わりに、国の富の配分における賃金比率が縮小し続けているために、今より貧しくなり、大損し続けている。しかしPSは、民衆とは余りに切断されすぎており、今さらに貧しくなっている人びとがGDP成長の大きな数字を見て喜ぶだろう、などと考えているのだ。
 GDPのこの成長は、ポルトガルのこの発展モデルとEUの規則から利益を得ている保護された経済部門と金融部門に向かっている。そして後者は、投機的な金融操作を促進する一方で、公的な投資と親労働者的政策を禁じているのだ。それこそが、ECBとIMFの統計によれば、インフレ率の半分が利益の成長によって説明されるべきである理由だ。

PSOEとPSは本質的に同じ

――BEの元代表のフランシスコ・ルカ(FIの同志であり、大統領選候補者にもなった:訳者)は、「ディアリオ・デ・ノティシアス」でのインタビュー(5月26日)で、PS政府はすでに「SNSを断念している」と語った。彼はまた、国有航空会社のTAP―エア・ポルトガルの計画済み私有化を、「国の経済戦略の観点からは無分別」とも説明した。PS政府は、スペインの社会労働者党(PSOE)政府とは異なりなぜそのような方針を今実行しているのか? それは、PS自身の支持基盤を掘り崩していないのか?

 ポルトガルとスペインは、同じ権力構造、つまりEU委員会、ECB、EU評議会、ユーログループ〔ユーロゾーン財政閣僚の〕というEU諸構造の下で機能している。それゆえ、両政府の主な性格は――スペインの場合は、閣僚という形での左翼諸政党の参加があるとしても――それほど違っていない。つまりそれら両者共EUの支配を受け容れている。
 より小さな国として、EUの秘密会議においてポルトガルにはより小さな交渉力しかない、ということは本当だ。われわれの前にはまた、より厳格でより有毒な、EU規則とユーロ通貨政策の適用のやり方と従属形態もある。そしてそれが、われわれの停滞では主な原因のひとつだ。
 しかし、われわれがECB総裁のクリスチーヌ・ラガルドのリスボン訪問を見る時、住宅ローンの利率を上げ続けているように、この権力の途方もない傲慢さを理解する。彼女は、住民の大きな部分が変動利率の住宅ローンを抱え、その返済の巨大な上昇に直面しているポルトガルのような国にやってきて、さらに、「それが人生だ、あなたはそれに耐えなければならない。ECBのわれわれは利率を上げ続けるつもりだ」――あたかも、勤労民衆が余りに多くを消費しすぎるためにインフレが引き起こされたかのように――などと言うのだ。
 これは真実ではない。これはでっち上げの物語だ。それは労働者と貧困層に対する階級的戦争であり、ラガルドとEU諸機構は、この戦争で今EU諸国内のブルジョアジーに味方し、その戦争がブルジョアジーの勝利になるよう組織化し続けているのだ。

街頭に左翼の参照点を与える

――BEの代表に新たに選出されたマリアナ・モルタグアは、6月14日の「ジャーナル・デ・ノティシアス」によるインタビューで、現今のポルトガル政治情勢を「泥沼」と表現し、次のように語った。つまり「2019年にこのPSは、ふたつ目の文書化された合意である第二次ゲリンゴンカを、また左翼に向かう新たな政治に幕を開ける可能性を拒否することで、左翼的政策に今後余地はない、と国に告げた。……その時以後の選択は、悪い――その絶対多数を抱えたPS政府――ともっと悪い――右翼政府――の間となった」と。PS政府はどれほど安定しているのか? 次の選挙まで2年以上あることに対し、BEは――PSの左にある他の諸政党と組になって――アントニオ・コスタ(PS首相)路線に一定の変化を強制できるのか? それとも、いわばゲリンゴンカ2・0は単純に遅すぎるのか?

 PSは絶対多数を確保している。つまりかれらは政策変更に当たっていかなる余分の票も必要としていない。われわれは、どんな変化の達成にも街頭に出なければならない、と理解している。それゆえBEは今、諸々の社会運動と労働者の組織化に、またそれらにしっかりした政治的参照点を与えることに非常に大々的に取り組んでいる。
 私が言ったことだが、われわれはこの数年、非常に意味のある抗議運動を見てきた。たとえば、公立学校教員のこれまで最大と言えるデモ、医師と看護師の繰り返されたストライキ、長期に続いてきた公共交通のストライキだ。
 全体としての労働者、そして特に公共サービスの労働者に答えることに対する政府からの連続した、全面的な拒絶がある。そしてこの公共サービスは、結果として若手労働者がこれらの分野でキャリアを積むのを今拒否しているほどに諸条件が貧しいために、交代要員を見つけ出す点に問題を抱えて、ますます古くなり、止まろうとしているのだ。
 われわれはまた、LGBTIQとフェミニストの運動の政治化、および極右の台頭を伴う保守的な圧力へのそれらの抵抗をも見ている。これらの運動とそれらの政治化は、若者たちの巨大なデモという形で、この間に重要な役割を果たしてきた。それらは、社会的抵抗の光景の決定的な部分だ。
 それゆえBEの役割はまさに今、これらの運動とそれらが表現する大衆的な部分に左翼の政治を提供するという、左翼の参照点になることなのだ。それこそが、政府に立ち向かい、そこから政治的な変更を引き出すためにわれわれが今行っていることだ。

――もし何かあるとして、BEの問題(それは、「政治構想としての首尾一貫性の喪失と希薄化」と言われている)に対する動議Eの診断にはどんな真理があったのか? そしてそれは「政治的イニシアチブの中心としてほとんどもっぱら議会を強調し、民衆の諸闘争を脇に下げ、政府による強力な攻撃にさらされた労働者の諸闘争と距離までとった」ことが原因、とされている。

 われわれの全国大会に出席し、その活動を見守った者は誰でも、BE活動家のものすごい参加、そしてポルトガルの社会運動の活性化で引き受けている大きな責任を証言することができる。
 われわれは多元的な党であり、あらゆる見解の自由な表現に開かれている。われわれの大会はメディアに開かれ、われわれの反対派は、表現の自由、および党内での組織化の自由に関する規約上の保証を確保している。
 しかし言われなければならないこととして、動議Eに含まれたタイプの批判は、昨今では前回大会ほどの豊かさをもっていない。したがって、それは、尊重されるべきで正統なものだが、しかし党内の小さな少数派を代表する特定の観点だ。

選挙は社会変革の戦略ではない

――1999年以後をよく見れば、BEの得票はポルトガルの諸政党では最も移ろいやすい部類のものだった。その支持におけるジェットコースター的動きをBEがなだらかにできることは何かあるか? 左翼の支持者を、右翼を止めるためにPSに投票しなければならないわけではないと、大事なことは左翼票全体で右翼の票を超えること、と理解するまでにもってゆくことは可能か?

 われわれはそのジェットコースター的な動きに神経質にはなっていない! 選挙は、国の社会的な環境と階級闘争における力関係の歪んだ鏡だ。だから、社会変革に向けた戦略として選挙上の着実な成長を期待する者は誰でも失望するだろう。そして私はこれがどこでも真実だと考える。
 われわれはまさに、フランスを、そしてそこでの近頃の政治的展開を、街頭における肯定的な発展を、しかしまたジャン・ジャック・メランションの不服従のフランスの台頭をもよく見なければならない。そうして長期に生き残るために、左翼はまた急激な政治の変化にも準備し、移ろいやすい政治的全体構図に介入し主導性を発揮することにも用意ができていなければならない。
 われわれは、首尾一貫し、またここポルトガルで抱えているような、経済に関して左翼的な見方を放棄してしまっている労働者政党や社会主義諸政党のような、社会自由主義陣営から自立していなければならないのだ。勤労民衆は、もしそれが行うすべてがかれらはもっと貧しくならなければならないという説明であるならば、そうした左翼を必要としない。選挙では、良い時も悪い時も、上昇も下降もあるだろう。そして選挙結果はしばしば、良かろうが悪かろうが、戦略的選択の質を見せるわけではない。
 重要なことは、搾取された民衆の側にとどまり、変わることなく、街頭闘争の中で、また議会の中で、適宜に行動することだ。

――ポルトガルの次の選挙は、マデイラ島における地域議会のものだ。BEは、その地域議会での存在を再び勝ち取る上で、どのような好機をもっているか?

 われわれは2017年にほんの僅差で代表を失った。マデイラは総計で15万人を抱えるふたつの島からなる群島だ。それは自治政府をもつ1地域だ。世論調査は、われわれには議会に戻る大きなチャンスがあることを今指し示している。そしてそれは、われわれがまさに今マデイラでそれを求めて戦っている最中のことだ。

チェガの出現が意味するもの


――チェガは、欧州における極右反動の波ではいわば遅れた到来であり、われわれの何人かが丁度、スペインとは違ってポルトガルには、1974年4月25日のカーネーション革命ゆえに極右はまったくいない、と語っていた中で現れた。それは、欧州の他の極右とどんな特徴を共有しているか? それに関するポルトガル的特性とは何か? それはなぜそれほどまで遅れて登場したのか? それは、国家諸機構、司法、軍隊、警察の中に、言ってみればスペインのVoxが確保しているような支持の度合いを確保しているのか?

 多年の間、ひとつの党、人民党(CDS―PP)があった。それは、独裁の名残、その最後の年月から引き継いだ政治要員を一体に集めた類のもので、教会やブルジョアジーや雇用主団体、その他との密接なつながりをもっていた。その選挙上の頂点でCDS―PPが得た支持は、チェガが今日得ているものと同じ約12%だった。CDS―PPは政治の光景から消え、その基幹活動家たちは今は孤児になっている。かれらはチェガ内にはいない――かれらは極右の政治家にはならなかった――。
 しかし極右は、先の党が保持していた民衆の票を吸収し、それゆえあなたはこれを、右翼の草の根からの、その投票基盤からの、ある種のアッジオルナメント(アップデイト化)と見ることも可能だ。
 あなたがこの新たなウルトラ右翼の諸政党――チェガだけではなくイニシアティヴァ・リベラル(IL、リベラル・イニシアチブも)――にいる政治的な人々に注目するならば、それらは伝統的右翼諸政党の中間活動家出身だ。それゆえわれわれの前にいるのは、急進化した右翼の――トランプやオルバンの、またそれに加えて欧州中のウルトラ自由主義右翼の――諸要素を取り入れている、以前から存在している右翼の諸形態の断片化と再編から生まれている部分なのだ。
 チェガの場合、われわれはさらにその組織的な脆さにも注目しなければならない。たとえば、地方議会役員に選出されたそのメンバーは3分の1が昨年離党した。何らかの政治的な相違からではなく、個性のぶつかり合いや個人的野心からだ。その上党の前回大会は、憲法裁判所によって無効と裁決された。
 したがってこれは、依然として弱体な組織で、その議員や候補者を、今も党自身とは非常に緩いつながりしかない人びとから得ていて、実体的な社会的存在感の欠落を映し出している。確かにチェガは、議会での可視性は非常に高い。それは極めてカリスマ的な指導者のアンドレ・ヴェンチュラ(PSD出身)を抱えている。しかしそれは、街頭への動員力がほとんどない非常に緩い組織だ。
 その組織された隊列内の極右的な実体的影響力をもつ唯一の部分は、警察だ。他の部門には、抗議の他の表現の中には、チェガは比較できるものをまったくもっていず、それは、教員や看護師のような大挙して決起した部門でも同じだ。他のどこでも、極右は全く動員力がない。
 とはいえ極右は、ポルトガル右翼の伝統的な主題と今もつながっている。反ロマ・レイシズム、懐旧的植民地主義とサラザール主義、ファシスト独裁の正規化、さらにヒロイックな叙事詩として見られている植民地獲得戦争、といったことだ。このすべてが、懐旧的な男誇示主義と非常に強力なフェミニズム拒絶を付随している。これらがチェガが代表する、ポルトガル極右の話の主な特徴だ。
 次いで、右翼のもうひとつの急進化した政党であるILがいるが、しかしそれは非常に異なっている。ILは、このタイプの数多い欧州政党のひとつとして、ハイエク主義から力を得たウルトラ自由主義の政党だ。それは、税率引き下げのような経済問題に焦点を絞った課題設定に基づく、過激な自由主義政党で、反マルクス主義だがウルトラ保守派ではない。
 ILは、高所得の支持基盤を保持し、富裕な都市中心部の環境への集中がはるかに高い。その典型的な支持者は、若くより高い教育を受けた者たちだ。それは、おおっぴらに外国人嫌悪やレイシズムの考えを表現することはなく、それらを党の設定課題にすることを拒否している。

極右との闘いに何が不可欠か


――Voxに関するPSOE政権同様、コスタも、ポルトガル民主主義の最良の反チェガ防波堤としてPSを見せることに、またPSDとチェガの共謀に光を当てることに、継続的な政治的利点を見ている。この戦術は、右翼を分裂させ、左翼支持者を恐れさせてそれへのシェルターを探させることで、PS票を積み増すというものだ。BEは、PSが唯一の反ファシスト政党であると装うようなこの指し手にどう対抗するか?

 BEがこれに対処している主なやり方は、チェガはいわば「不満連合」――新自由主義政策、および賃金、公衆衛生、教育などのその結果に対する不満の――だと説明することによるものだ。このすべてが、これらの必要に応える政策がないにもかかわらず、あるいは新自由主義のもっと急進的な型であっても扇動されている。
 これは、PS政府の左翼的政策を拒絶する悪政の直接的結果だ。したがってわれわれの極右に対する回答は、ファシズム、レイシズム、ミソジニー、ホモ嫌悪、あるいはトランス嫌悪に抵抗する運動における最大限の統一を見つけ出すこと、しかしまたPSの新自由主義に対するわれわれの反対も強調すること、そして代わりとなる経済・社会政策の領域で応答すること、によるものだ。
 この路線は、PSの絶対多数の最初の1年半に抵抗がどのように発展してきたか、に合致している。出現したあらゆるデモは、左翼の諸要求を携えて到来している。それが、教員の、公衆衛生労働者の、司法システムの労働者の要求であり、フェミニストの要求、LGBTIQ+の運動の要求、住宅を求めて今闘っている若者たちの要求だ。
 それらはすべて、左翼と、そしてわれわれの左翼の要求と結びついている。それらはこれらのデモの中で、極右とのつながりは全くなく、その存在感も全くない。街頭におけるコスタ政権に対する反対は極右的な反対では全くないがゆえに、これは非常に、非常に重要だ。それは主に、左翼諸政党と左翼野党と、PCPかBEのどちらかと直接に結びついている社会運動と諸労組によって率いられている。
 エマニュエル・マクロンという、ポルトガルPSに非常に近い支配的中道派を抱えているフランスを注視してみよう。そしてそこでは一方に強力な極右がおり、他方には不服従のフランスが率いる強力な左翼がいる。イタリア、ギリシャ、スペインでは極右が台頭中であり、フランスでもそれが非常に強力、ということは確かだ。しかし、フランス左翼の実績が示す――その選挙結果が示す――ことは、それが首尾一貫し自立している限り、もうひとつの種類の左翼反対勢力には余地がある、ということだ。
 それは、PSの新自由主義諸政策が理由でショック状態にあり、さらに極右のデマゴギーにもっと脆くなる可能性もあるような労働者階級の中で、それらの社会的諸層を味方に引き入れることができる引力のある左翼的極をつくり出すことを可能にする方法だ。

――スペインでは、主に富裕層と非常に裕福な郊外から出ているVox支持票の一部はまた、地中海沿岸に沿った最貧困地域内部にも集中している。その後者には、多数の北アフリカとサハラ南部の労働者がいる。ここで、Voxのレイシズムとイスラム排撃が、最も見捨てられたスペイン語を話すバリオス(都市周辺部)の中で支持を見つけている。ポルトガルの状況は似ているのか? もしそうならば、チェガの影響力に対抗するために、BEは何を提起しているか?

 ポルトガルの移民の特性はスペインとはまったく異なっている。チェガはここでは、農業におけるわれわれの集約的な単一栽培の利益に、経営者に、密接に結びついている。そしてこの農業は、移民の労働力に非常な程度まで依存しているのだ。それゆえチェガはそのメッセージを、ロマ排撃、政治の腐敗、LGBTIQ+やフェミニストの懸念をめぐるウルトラ保守主義、さらに安楽死や中絶への反対に移してきた。これらは、一直線的なレイシズムや反移民の立場にもとづいてというよりも、むしろ極右がそれにそって独自性を築き上げようと挑んでいる主な諸課題、路線だ。それは、ある一定の点で、それ自身の支持者、資金提供者、南部の集約農業の経営者といった者たちのある部分の利益とぶつかると思われる。
 またチェガの支持者は、かれらのVoxという相手とは異なっている。典型的なチェガの支持者は、男、中年から高齢層、そして民衆諸階級から、というものだ。私が言ったように、スペインならばVoxに投票するかもしれないより教育の高い、都市の右翼支持者は、ポルトガルではILに投票する傾向がある。

社会的抵抗と対抗的政策の強化


――今のBEの政策である動議Aは、「全民衆にとっての好ましい生活」としてBEを推進する大望を表現し、これを、「快適な住宅、諸権利のある労働、質の高い公共サービス、住むことができる地球上で人生を楽しむ時間、文化の権利、個人的また集団的な幸福。好ましい暮らしは尊厳ある生存のための物質的な条件を必要とする。しかしそれはそれ以上のものだ。つまりそれは、われわれがありたいと思うものに関する自己決定であり、われわれの選択に対する自由と尊重だ。それはケアと相互依存だ。それは将来の、賃金の、また年金の安全の保証だ。それは、他者との競争や市場の専制に依存しない世界の中での、ひとつの場の平和だ。それは、共有材の分かち合いと決定する民主主義であり、それはすなわち社会主義の真髄だ」とまとめている。この再定式化はなぜ必要だったのか?

 これは理論的な刷新では全くなかった。われわれは、非常に単純な考えにひとつの単純な定義を与えようと試みた。基本的な商品とサービスの入手は、社会のますます大きくなる諸層に今も否定され続けている。それは、不平等が成長し、新自由主義諸政策がかれらに損失をもたらしていることに付随していることだ。それゆえわれわれは、好ましい暮らしを求める闘いについて語る場合、われわれは今ひとそろいの要求について語っている。そしてそれは、あらゆる者が公正だと認め、基本的な権利――住宅、公正な賃金、教育、医療ケア、文化――からなっているとみなすもので、かつ今日の全体的脈絡の中ではBEが提案する類の社会主義的政策を通じてはじめて達成可能なものだ。したがって私は、あらゆるところで左翼はその宿題に取り組み、その社会主義の観点を伝える言葉と有効な方法を見つけ出そうと挑まなければならない、と考える。われわれが好ましい暮らしについて話す場合、われわれはまた、南米の先住民衆から到来したこの考えにも刺激を受けている。
 われわれは今、基本的な権利であるもの、公正であるもの、全員が確保しなければならないもの、今日あるように危険にさらされずに保証されなければならないものに関し、非常に単純な考えを表現しようと挑んでいる。万が一にもそれが危険でなければ、われわれは好ましい暮らしを得るだろう。これはわれわれの政治的提案を示すわれわれのやり方を要約している、と考える。

移民労働者の闘いで一定の役割


――大会への両動議とも、移民労働者のまたレイシズム反対の、ポルトガルにおける大きな抗議を特記している。BEは今、移民労働者内部での支持とそこへの根付きを強化する目標をどのように進めようとしているか? この労働者たちは、地中海諸国内でのように、清掃、世話、高齢者介護、また観光として、低賃金の臨時労働に大きく集中している。

 BEの活動家は、左翼が移民労働者に対処するふたつの最も重要な戦線にいる。第1は、南部の集約農業におけるもので、移民労働者はそこに集中している。われわれは、呆れるほど不十分な住宅(集約農業の労働者にとっては極めて冷酷な存在条件)で生き延び、「違法な」状態で(居住許可書類をもたずに)働いているかれらのために闘う目的で、かれらの団体のネットワークを通してこれらの労働者とつながろうと挑んでいる。われわれは、これらの農業の本場になっているPCPが管理する自治体でも、余りに多く注意を逃れているこれらの諸条件を強く非難する努力の中心にいる。それゆえ、左翼では、過少賃金、劣悪な労働条件、またこの労働者の悲惨な住宅に対処している主要な勢力はわれわれだ。
 第2の戦線は、移民労働者の大きな塊――ブラジル人、アジア人、アフリカ人――を雇用している配送企業のデジタルプラットホームをめぐるものだ。これらのデジタルプラットホームに一端雇われたかれらは、結局は過剰搾取を受け、過少賃金になる。われわれはここでも、発展中の介入で、非常に困難だがしかしわれわれにとっては新しい経験を積んでいる。われわれは、これらのコミュニティを連帯と自助のネットワークに引き込むことによって、この経験を発展させようとしている。
 この経験は非常に重要だ。近いところでは6月半ばわれわれは、これらの「ウーバー化」部門における臨時労働に反対する新しい法を議会で通すことができた。これは、これらのプラットホームにおける労働者の労働契約、および労働条件の点検を始めるものだ。われわれは今、この部門で組織化された労働者と共に、そこではびこっている残酷な諸条件を変えるために、先の進展を極めて綿密に追いかけている。
 最後にわれわれは、レイシズムの犠牲者であり、主に前ポルトガル植民地からの移民の孫とひ孫から構成される、非常に大きなポルトガル人コミュニティを抱えている。われわれは、反レイシスト運動の中で、またこの民族的に類別されたコミュニティへの抑圧を見えるものにする闘いの中で、これらの人々としっかりつながり、かれらを味方につけようと挑んでいる。われわれはそれを、反レイシスト運動への、黒人民衆の運動への、そして党内のわれわれの実践への参加を通して行っている。
 この取り組みには、BE指導部内とわれわれの選挙候補者に関し、黒人民衆と民族的にラベルを貼られた人びとに卓越性を与えることが含まれる。たとえば、リスボン市議会で執行的地位を確保した最初の黒人女性は、われわれの代表であるビートリッツ・ゴメス・ディアズだ。
 しかしながらアジア、アフリカ、さらにラテンアメリカでの帝国主義的で植民地主義の歴史、また奴隷制と搾取の長い歴史を抱えるこの国では、今後も長い道のりが残っている。われわれは今、ポルトガルの植民地であった諸国で行使された抑圧の暴力の意味の自認、尊厳、そして歴史の記憶を求める闘いの中で、ポルトガル国内の黒人と民族的に類別された人びとの力を高める要求と歴史的素材を集めている最中だ。わが国のこの部分は、数世紀にわたってポルトガルの支配階級とその筋がそこで強要した政策の対価を今なお払い続けている。(つづく)

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