ポルトガル 左翼ブロック:ホルゲ・コスタへのインタビュー (下)
エコソーシャリスト的移行とは公正かつ持続可能な経済の創出
閣外支持が予算の選択肢論争を大衆化
住宅とSNSの危機への対応
――先進資本主義世界のほとんどに共通している手頃な住宅の入手可能性の危機は、特にポルトガルで鋭い。そこでは平均住宅価格が10年もたたずに2倍になり、スペイン同様この悲惨な状況は観光への経済的依存によって悪化させられている。この住宅危機を解決するBEの提案は何か?
ポルトガルは今日、住宅市場の投機的で金融化された力学によって、もっとも厳しい打撃を受けている国のひとつだ。
われわれの巨大な住宅危機は、都市中心部から可能な限りもっと遠くの都市外縁部への民衆の排除、つまり高級化都市再開発の結果だが、また大都市――主に、ポルト、リスボン、アルガルベ、マデイラ――での非住民からの住宅需要増大の結果でもある。これは、銀行住宅ローン利率の上昇と一体的な、住民の急速な貧困化を推進している要素のひとつだ。
こうした環境の中で、BEの提案は以下のようになっている。
◦まず、入手可能な家賃での公共住宅在庫増大への巨額投資。
◦第2に、非住民への住宅売却の禁止。理由は、この国でこうした住宅はほとんど完全に投機と贅沢なライフスタイルに向けられているからだ。
◦第3に、主に中国、ブラジル、ロシア、ウクライナからのオリガルヒである富裕な外国人への良質な住宅売却を推し進める仕掛けになっている「ゴールデン・ビザ」を終わりにすること。
◦第4に、私的な住居の所有者が法外な家賃を押しつけないようにするための、家賃の上限設定。
銀行に関する限り、われわれは、どんな家族でもかれらの住宅ローン返済に振り向けざるを得ない額の対収入比率に制限を求めている。ユリボー金利(欧州銀行間取引金利:訳者)の上昇に伴って、住宅ローン返済に今費やされている家族収入の部分は、非常な早さで高まり続け、大きな数の家族の場合、非常な高さになろうとしている。
ユリボー金利の高騰が始まった時と比較した、今日適用されている住宅ローン返済月額との差は、銀行の記録的な利益――少なくともこの15年で最高――から手当てされなければならない。
――BEはSNSへの適切な資金供給を求めるキャンペーンに、大会でも大きく取り上げられた6月3日の全国デモの形で、深く関わっている。このキャンペーンは今どのように進んでいるか?
SNS防衛の運動は戦略的なものだ。公衆衛生サービス私有化は今まで数年間進行してきた。そしてそれは、公共医療サービスにおける投資撤退を通して起きている。結果として人びとは、かれらのSNS医師に対するタイムリーな指名を得るのがまずます難しくなっているのに気づき、また待機のリストがよりどんどん長くなる中で、急を要する場合ですら、手術にこぎ着けるのが非常に難しいと気づいている。
こうして多くの人びとが私的部門の医療ケアに動くにつれ、医療提供と医療保険への私的なビジネス投資に向けドアが開かれた。しかしながらこれは、私的提供者との間でSNSが直接交わした契約を介して、国家予算からの助成金対象にたまたま(!)されている。
これは、公的資金の管理としてひどいやり方だ。その資金は、医療を必要とする全員にとって入手可能でタイムリーな、それを普遍的にするための、公的医療提供能力の拡大に向けられなければならないのだ。その要求は、6月はじめに始められ、看護師、医師、また病院と公衆衛生センター職員だけではなく、それらのサービスを利用しまたそれらを守りたいと思っている市民をも結集した新しい運動の中心にあったものだった。
これらの問題は解決されなければならないが、しかしその職業の者たちだけではそれができない。かれらは、コミュニティの精力的な連帯を得なければならない。これが、「もっと多くのSNSを」と呼ばれている運動の中でわれわれが今取り組んでいる挑戦課題だ。その名称は、適切に資金提供された全国的な公共医療サービスを求める闘いを、公衆衛生部門を超えて、そしてあまねく社会にもっていくために与えられている。
財政構造変革への重要な経験
――BEの綱領には、支払う余裕のある者たちからのより大きな拠出による、公共サービスおよび環境移行のためのインフラ向け資金の増大に基づく、国家財政の非常に異なったタイプ、という含みがある。BEは、その優先性を可視化するために利用できるようなオルタナティブな財政プロセスを発展させてきたのか?
国家財政の優先性の可視化は、左翼諸政党とPS間の協定があった時期の主な特性のひとつだった。当時行われた交渉過程は、社会運動や社会的抗議行動や労働組合を毎年の新しい予算に関する交渉と結びつけた。
この進展は、何週間も何ヵ月も日々のメディアで、その4年の毎年非常に見ることができるものだった。予算は、そっくりそのまま、その主な優先性から特殊な詳細まで議論された。この交渉は、議会自身が左翼とPS政府の間の一種の交渉舞台となるにつれ、予算の選択肢をめぐる論争に非常な公開的姿を与えたために、極めて重要だった。
右翼はこの進展で周辺化され、この交渉の大きな部分は普通の市民には良いニュースだったとはいえ、左翼の圧力について、またこの交渉の結果について不平をこぼすまでに引き下げられた。それはまた、右翼がかれら自身の代わりとなる社会的・経済的設定課題を主張することも非常に難しくした。その交渉が勤労民衆に利点をもたらしたからだ。
それゆえこれは、われわれがこれまでに得た主な経験、議会の経験だが、しかし予算のプロセスが何であるかについての良好な可視化を与えた非常に大衆的な経験でもあった。
もちろん、われわれがもしも政府の一員だったとしたら、この交渉ははるかにもっと目立たなくなり、はるかにより密室で行われ、はるかに点検が雑になっていたと思われる。他の諸国では左翼諸政党が社会党との連立に参加しているが、われわれはそうしていない。われわれは、議会の中では外側からPS政府を支えていた。しかしわれわれは、議会内のPS議員と、また政府と永続的な対立状態にあった。これは永久的な交渉過程であり、私の考えでは、それに関与したわれわれすべてにとっては、非常な成長性を秘めた過程だった。
もちろん2019年以後、この過程は右翼の圧力と脅しに対処する強さが十分ではなかった。そして私がすでに述べたように、政府に反対票を投じることは簡単ではなかった。しかしあなたは、協定のあった期間(2015年から2019年)の中で、BEはこの交渉過程をうまく利用でき、それが協定終了時に非常に良好な選挙結果を再現した、ということを考慮に入れなければならない。
――エコソーシャリスト的移行のための計画に関する政策的開発と具体化の道では、BEがなお開発しなければならないものがどれだけあるとあなたは感じているか?
エコソーシャリスト的移行に関する限り、以下のふたつのことの間にわれわれが見つけ出さなければならないバランス――そしてそれこそ、BEが今達成しようと挑んでいるものだ――がある、とわたしは考える。つまり、移行に向けた非常に詳細で正確な計画を発展させることと、社会的力関係が実際上の具体的変化を強要するためにわれわれに与える好機を全面的に利用することとの間のバランスだ。
われわれは、エコソーシャリスト的移行は気候の不正に反対する社会闘争の成果として生まれる、と考えている。もちろん左翼は、それ自身の提案をもつべきであり、われわれはわれわれのものをもっている。われわれはそれを、われわれの全国的な計画の一部としてそれを示した。
エコソーシャリストの計画作成は、社会と気候の公正基準によって決定される経済的計画作成だ。これが意味することは、われわれが生産と配分における移行を遂行しなければならず、しかしふたつの側面を内的に繋ぐ経済的進歩をもたらすやり方で行わなければならない、ということだ。つまり、エコソーシャリスト的移行は公正かつ持続可能な経済の創出なのだ。この過程は、気候問題をめぐる労働者階級の全般的意識を発展させるような、気候運動と労組内部の論争を伴わなければならない。
同時にもちろん、われわれは国のいたるところで、炭素排出を止めるための選択肢に関する、技術的な仕事を行っている人びとの会合を行ってきた。
ポルトガル共産党との関係
――ディアリオ・デ・ノティシアスのインタビューでルカは「PCPとBEの関係は具体的な全国政策と方策に関して、今ずい分と収斂しつつある」と語った。その関係は今、ロシアのウクライナ侵略との関係で大きく分かれ、ますますそうなっている。最新のPCP大会の決議はそれとして、「支配的なイデオロギー的環境への従属〔および〕帝国主義の狙いとの提携」として、BEを軽蔑してはねつけた。
「不平等からなる政府の諸政策に対する拒絶を示している左翼のあらゆる政治的諸部分の収斂」および「働く者たちに有利に力関係を変える幅広い民衆的左翼戦線」は、BE―PCP競合への解決なしにどうすれば――戦略的合意を通してか、それともPCPの周辺化(見込みがあるわけではないが、少なくとも短期的に)を通してか、のどちらかで――可能だろうか?
BEと共産党の関係は、戦略的合意か周辺化のどちらかを通して発展しそうにはない。
われわれがPCPに関係するやり方は、国際的問題やLGBTIQ+、トランスジェンダーの権利、ドラッグ政策、さらに教育のような社会的進歩をめぐる諸問題に関してわれわれが抱えている大きな違いをはっきりと確認することによっている。われわれは、これらの決定的な問題をめぐってわれわれが抱えている大きな違いを、可能な限り見えるものにしたい。しかし同時にわれわれは、共産党の同志たちや、PSの絶対多数とその新自由主義政策に対決して結集すべき左翼の他の翼との間で、社会的闘争のための共通の土台も追求している。
われわれはまさに今それを行っている最中だ。われわれはそれを、住宅運動の中で行っている。そこでは、左翼が共同アピールを軸に、また大規模デモとして結集している。われわれはさらに、医療ケアをめぐる運動の中でもそれを行おうと挑んでいるが、しかしそこでは、それがもっと難しい。理由は、共産党がその部門内の労働組合運動の諸部分を支配し、党員が支配する構造を介して排他的な動員を公然と実現しようと試みていることとして、かれらがよりセクト的な路線を保持していることだ。
さまざまな経験に基づき常に、政府の新自由主義政策に反対する決起の、可能な限り最も統一された形態を追求することがわれわれの方向性だ。
――近頃の世論調査は、BEがその歴史的なレベルの9%から10%に支持率を取り戻していること、他方PCPはまだ4%から5%のレベルにとどまっていること、を示している。ロシアのウクライナ侵略に関するPCPの立場がその原因の一部か?
ウクライナはある種極めて劇的な画期になり、PCPにとっては悪い年だった。かれらが非常に公然と、ロシアの立場やその侵攻を正当化する物語りと一体化したからだ。それは、それ自身の党員と支持基盤の諸部分を含めて、非常に気分を害して受け取られた。
PCPはさらに、BEへの敵対および労組運動内の権威主義的方法を理由に、おそらくもっと活動的な諸界隈で、一定の対価をも払った。ポルトガル労働者総連合(PCP支配下のCGTP)内の少数派潮流すべては、CGTP指導部レベルでかれら自身の提案を提出し討論することを妨げられていることに、今公然と抗議中だ。これは健全な労組運動では信じ難いことだ。しかしそれがまさに今、CGTP指導部内で起きていて、それが公然のニュースになっている。
共産主義者が経済的かつ社会的な諸問題に関し多くの提案と観点を分かち合っている一政党であるBEに対し、労組運動内の権威主義的実践に基づいてとられたPCPの敵対は、左翼の諸部分内で成長中のこの党に向けられた一定の懐疑の理由になり、同時に近年その影響力を拡大できないことの根源にある。
ウクライナの自己決定権が核心
――多数派の動議A、つまり今のBE政策は、次のように述べている。つまり「世界的な米国のヘゲモニーの存在は、ウクライナに対するロシアの侵攻の帝国主義的な性格を変えるものではない。ブロックはそれを、何年もプーチン体制を糾弾してきたことと同じ明晰さで糾弾した。左翼は、オリガルヒの独裁と軍事的冒険主義からは他にどんなものも期待してはならない」と。それは、「国連とEUの提携下におけるウクライナ和平会議」、および兵器競争を終わりにすることを求めている。その動議は、ウクライナへのポルトガルによる武器供与には沈黙し、即時休戦を求めていない。
対照的に動議Eは、ロシアの侵攻を「激しく」糾弾しつつも、即時休戦を求め、ウクライナに関するBE議員も支持したEU議会決議に言及し、次のように述べている。つまり「BEは、この従属〔米国の政策に対するEUの〕の体裁を取り繕ういかなる決定にも結びつけられたままであってはならない」と。
休戦に関する、またウクライナへのポルトガルによる武器供与に関するBEの政策とは何か?
ウクライナ侵略の始めから、BEにとっての主な問題は、ウクライナ民衆の自己決定権だった。それは、テーブル上にある原則的問題だった。侵略の翌日の2月25日、BEは声明を出し、ドンバス地域における休戦、およびこの地域内の全民衆の平和的な共存確立を目的とした交渉、に向けた条件を具体的な言葉で確定することを、ポルトガル政府がEUに求めることを訴えた。
同時にBEは、休戦を求める要求は、2月22日に侵略された領域からのロシア軍部隊の撤退要求と結びつけられなければならず、またそれは、和平協定到達を目的にした交渉に対する具体的な提案にも結びつけられなければならない、と語った。つまり、部隊撤退、休戦、そして交渉開始は同時的でなければならないのだ。
防衛用兵器入手に関する限り、大事なことはウクライナ国家の主権とその領域の完結性に対する尊重だ。ウクライナの軍事的防衛には侵略者を排除する正統性がある。それゆえ、西側の帝国主義諸国によってウクライナに供給されてきた銃器は主に、ウクライナの民族的抵抗の奮闘に必要な防衛的な兵器だ。
キーウの政府にNATOによって今提供されている保護は、ウクライナの民族的抵抗の性格を変えるわけではない。侵略者や植民地権力と対決して解放を求める民族的闘争が、あれやこれやの一時、これらの民族的闘争を支援するかもしれない類の帝国主義諸勢力に応じて性格を変えるような事例は、これまで一度もなかった。
それゆえわれわれは、この論理はウクライナにも当てはまると考える。つまり、われわれが今扱っているのは民族解放闘争だということだ。そしてわれわれは、ロシア軍の撤退を基礎に置いた休戦を精力的に支持し、ロシアとの和平合意への道を探しているだけではなく、またウクライナへの防衛用――私は防衛用、と強調する――兵器の供給に反対してもならない。
EUは改良不可能な反民衆機構
――動議Aは、EU委員会における緊縮への回帰という見通しを特記し、次のように語っている。いわく「EU諸国家間の協力は、民衆の主権、社会的諸権利と環境的計画化の発展を受け容れる民主的な転回を条件に、急進化した右翼を食い止める点でひとつの重要な要素だ」と。確かに望ましいこの見通しは、移民敵視の国境政策、軍事支出の増大、西サハラ解放闘争に対する戦争でのモロッコ王制への支援、そして自己決定権に対する事実上の否認によって、現時点のEUからははるかなかなたにある。
そのような民主的な転回をありそうにするために、EU内での政治的な潮の流れをどのようにして変えることができるだろうか?
さて、EUは社会的諸権利に対する戦争機構だ。あなたが、その核心にあり、EU諸機構(ECB、EU委員会、EU評議会)がその中で結びつき行動を義務づけられている方法を述べている諸条約を読めば、それらが民主的統制を逃れ、民衆が直接選出した代表による点検を逃れ、新自由主義的改革と労働者と民衆諸階級にとっての後退を永久に押しつけるために――そして他に決定する国民の能力をほとんどなくして――設計され、構築された、ということを知るだろう。それがEUの本性なのだ。
BEがEU諸国家間の協力について発言する場合、われわれは、実際に存在するEUのことは語っていない。それは改良不能なものであり、主権国家間協力の新しい形態でのみ代わりになることができる。
BEはこのテーマについて長い論争を重ねてきた。そして以前だけではなく、10年前のポルトガルに対するトロイカの干渉後も、ギリシャへのトロイカの干渉と当時のシリザ政府の屈服後も、EUに関するその観点をアップデートし続けてきた。したがってわれわれは、EUがもつ可能性のある役割について、いかなる種類の誤った幻想ももっていない。われわれは、主権の尊重、社会的権利の発展、また気候変動に対処できる環境政策は、完全に異なった枠組みの中でのみ達成されるだろう、と分かっている。
動議Aは、BEの労組における存在(通信、公衆衛生、教育、さらに警備業における)の成長ともっと良好な組織化を特記している。これらの前進についていくらか詳しく話せますか? 縮小中であり、活力を失い、若手の労働者が集中している分野への広がりも得ていないように見えるポルトガル労組運動で、またより官僚主義的になりつつあるCGTPというその主な組織された隊列との関係で、あなた方はBEのより多くの参加を構築するために、どのように挑んでいるか?
BEの社会的根付きは、この何年かを通じて着実に成長を続けてきた。そして今日、特定の労組とCGTPの機能にPCPが今も行使しているヘゲモニーと権威主義を理由に高まっている大きな困難にもかかわらず、一定の部門、職種、労組にわれわれの影響力を高めるような、われわれにとっての余地が生まれてきた。
挙げられた部門――通信、公衆衛生、教育、警備業――は、中でも近年の闘いに最も取り組んできた労働者階級の部分だ。われわれはまた、私が以前にも言ったように、デジタルプラットホーム、文化とアート、そしてどこであれ臨時化と労働者階級の新たな搾取形態が現れているところの労働者内部でも、建設を継続中だ。
われわれはこれらの経験から利益を得つつあり、それらを結びつけ、労組にとっての、また企業を基礎とした下部委員会にとっての役割を含んで、労働者の階級闘争が今日のポルトガルであるべきもののオルタナティブなビジョンを前進させる政治的な論争を全体化しよう、と今挑んでいる。われわれは、この論争に極めて豊かな素材を提供する興味ある経験をいくつか得ている。
われわれはまた、公衆衛生部門の中で局面を抜本的に変えるものをも発展させ続けてきた。わが同志たちは、医師と看護師の団体で左翼の立候補者の陣形を率い続けてきた。これは、公衆衛生制度の防衛において公衆衛生部門の諸労組と「もっと多くのSNS」運動と提携する豊かな経験となった。これは今その最初の数歩を進めつつあり、われわれは次の時期にそこで非常に活力ある役割を果たすことを期待している。
次いで教員の闘いがあり、それは、この時期に中心的となり、そこでは、この部門で登場した小さな少数派労組を軸にした組織的な諸々の闘争とストライキの一定の増大が起きてきた。それは今も非常に小さいままだが、しかし伝統的な労組が情勢を理解できずにいた時、運動を始める主導性を発揮した。この少数派は、教員内部には巨大な怒りがあったと、またそこには闘う意志があったとつかみ取り、そしてかれらは前進し、伝統的諸労組をかれらの後ろに引き連れた。これは、労組内でのPCP支配の役割を、労組の官僚化と労働者への回答不在として、表に引き出した。
――BEは他にどんな領域で成功を得たのか? 今も最も注意が必要な領域は何か? BEを完全な全国組織にする上で、達成されるべきものとして残っているものは何か?
領域という条件では、BEは今日、国の中小規模の都市で非常に広範な存在感を確保している。もちろんわれわれは、総選挙結果を受けてわれわれの公的機能における大きな低落を経験し、それは、われわれの領域的な組織を発展させ得る方法にいくつかの結果を残した。しかしわれわれは、この問題を解決し、前に進もうと今挑んでいる。
BEの社会的根付きと機能強化
――動議Aは、BEはその投票結果が不幸に見えて実は天恵だったとして、公的資金への依存を引き下げた、「自己資金調達の強化……は深められることが必要な内部文化における一つの変化だ」と語っている。どのようにか?
われわれは、自己資金調達の諸要素の導入、およびわれわれが取りかかっている各々のかつすべての大衆的イニシアチブの中での募金の要素の確保という、全面的な資金キャンペーンの組み合わせを通して、公的資金への依存引き下げというわれわれの目標に今取り組んでいる。さらにそれは、節約、および近い将来にわれわれの財政の自己資金部分の巨額増大に向けた能力を確保することも目的に、われわれの支出と宣伝の構造を変えることも方策にしている。
これは、われわれの現在の諸困難の原因を全員が十分に分かっているために、メンバーたちによく理解された。
分派の永続化防止と若者の役割
――BE大会前の意見表明の中で消えることのなかった不平は、その大会が――他の欧州左翼諸組織の大会とは異なって――競合的な動議にしたがって組織化されている、そしてそれらの動議に多くの党員はどれに対しても100%の同意はなく、こうした決定作成手法は永続的分派が要塞化される傾向をもつ、というものだった。
他方で大会組織化のこの手法はまた、PCP流の事前調整された単一の文書(通常は膨大な)に対する何百もの修正討論に時間を浪費する代わりに、党員と代議員がかれらが組織のために望むものを決定することを必要とする。
BE大会手続きが改善される可能性があるやり方についてあなたは何か見ているか?
どの主要政綱にも関わっていない同志たちにも、われわれの大会に参加する余地がある。確かに、あなたが党指導部候補として立候補できるのは、全体的政綱の下でのみだ。しかしあなたは、全体的政綱とは自立した地方的政綱の下で代議員候補として立候補できる。
地方の政綱は、それらの間で結合し、共有された政治的独自性を作り上げる可能性をもつ――そしてそれらはこれを行っている―ー。それらは、次いで自らを大会に表現し、どんな主要政綱の一部にもならずにそれらの大会討論をつくる。これは党の伝統だ。大潮流間の論争で大会が支配されないようにするためには、それは非常に重要だ。そして、これが現在までわれわれの経験になってきた。
――BEは、それだけではないが主により若い、また「BEのエコソーシャリスト、反レイシスト、反保守主義の基本姿勢に強い一体感をもった」1000人近くの新メンバーの流入をこの間経験した。将来に組織を指導する責任を引き受けることができるように、この「吸い込み」を教育し訓練する仕事を、あなたはどう考えているか?
この挑戦課題を扱うやり方は、新メンバーのための特別な迎え入れ会合を実施すること、そして責任のある領域を占めるようかれらを勇気づける政策を適用することだ。われわれは同時に、党の被選出機関と選挙候補者に若者の十分な存在を確保するよう常に務めている。
若いBEメンバーは、別の組織内に閉じ込められてはいず、われわれは、別の青年組織をもつことを拒否している。これが意味することは、BE組織を貫いて若者の存在が常にある、ということだ。かれらは党の内部にいて、年配の同志と関わり合っているが、しかしもちろん、かれら自身の関心事を扱う特別の場をもって、だ。そしてかれらは、かれら自身の全国的教育プログラムとかれらの年次全国キャンプを組織している。
しかしながら、BEの機関と日々の活動に関する限り、彼らは全面的な権利をもつメンバーだ。
左翼と社会民主主義:対照的なポルトガルとスペイン
――社会民主主義の左に位置するスペインの左翼のアプローチとそのポルトガルの対応勢力である特にBEのそれの間には、くっきりした対照がある。スペインでは、非PSOE左翼はPSOEと連携して統治しなければならない、そして政府内に「われわれの人びと」を確保することがPSOE官僚に仕事を任せるよりも良好な結果を保証する、ということがまさに受け容れられている。
BEのアプローチは、ゲリンゴンカというものだった。つまり、一連の合意された約束を基礎に右翼と対決するPSを閣外から支え、先の合意から外れた領域ではPSの政策に圧力をかけ、それを批判し、対案を示すために組織を自由にする、というものだった。ポルトガルのゲリンゴンカの4年(2015年から2019年)、およびPSOE政権内の少数派連携相手としてのウニダス・ポデモス(UP)によるスペインの「同居」の3年半(2019年から2023年)を経て、どちらのアプローチが選ばれるべきかについて、あなたはどんな結論を引きだすのだろうか?
BEが2022年にその票の半分を失った時、当時のポデモス指導者だったパブロ・イグレシアスは、ポルトガルの経験、当時の呼び名の「ポルトガル・モデル」、の収支決算を行うために公開論争に飛び込んだ。彼は、PS政府の外側にとどまるというわれわれの選択を酷評した。われわれは、影響力を確保するために、左翼に投票することは政府の可能なメンバーを選出し、慣行を変え、政府の政策を代えるため、とわれわれの支持者に理解させるために、政府の中にいるべきだった、と彼は語った。確かに、イグレシアスはいつも、ポルトガルの経験に関しまずい診断を下した。
しかし事実は、私がすでに言ったように、「ポルトガル・モデル」終了時点(PS政府との4年の協定の条項が履行された2019年)で、BEはその影響力を維持し、19人の議員を再選させた、ということだ。したがって、その路線から引き出される収支決算に否定的なものは何もない。
われわれの支持票半分の喪失は、それから2年以上経ってから起きた。そしてその時われわれは、PS政府との合意は皆無という条件で、政府に影響力を行使するためにその代表たちを利用する自律的な左翼勢力であることと、PSに対する無条件的支持者になることとの間で選択しなければならなかった。われわれは第1の選択肢を選んだ。われわれは、われわれが過ごしたいついかなる時でも、PS政府の本性について、自由主義中道派の政府という本性についていかなる疑いももったことはない。われわれはそれを、進歩陣営の部分とは、左翼政府とは一度も見なかった。われわれはそれをいつも、政治的合意を通して労働者階級にとっての利益を引き出すための好機を提供するものと理解した。
対照的に、われわれがスペインのPSOE―UP政権の4年近くの終わりにおける収支決算を注視する場合、われわれは正直でなければならず、左翼がPSOEによる政府への参加から得た前進は薄っぺらで僅か、と言わなければならない。これは、社会政策や改悪労働法のような分野においてだけではなく、国際的レベルの問題でも本当だ。前者では、PSOE―UPの政権合意に明記された2012年の右翼による労働法改悪の完全な廃棄が放棄された。後者では、たとえばサハラ人民に敵対するモロッコ王制とスペイン政府間の犯罪的な取引――近年のスペイン史では初めて、スペイン外交政策におけるこの転回を左翼が回避できなかった――がある。
したがって戦略的な論争は、右翼と極右の権力への道を阻止する選挙での多数を構築しつつ、同時に、これらの多数内部で、自由主義中道派(PSやPSOE)との公然とした対立を可能にする方法をいかに見つけるか、をめぐっている。すなわちわれわれは、多数のための政策を作ることのできる左翼から戦略的なオルタナティブをいかに築き上げるかについて考える必要がある。
われわれは、自由主義の諸政策実行を続け、EUとユーロ圏の通貨政策と財政政策への完全な従属にとどまる政府の、左翼的な縁側にはなりたくないのだ。
ヨランダ・ディアスとペドロ・サンチェスが率いた労働法改革の、あるいは過去4年のスペイン政府による全体としての社会政策の収支決算をまじめに行うならば、人は、そこに左翼の品質証明を見つけ出すためには一定の努力を払わなければならない。これにもかかわらずこれらのあらゆる勢力――ポデモス、統一左翼、ヨランダ・ディアスのスマール(先頃行われた総選挙に向け新たに形成された左翼連合:訳者)――は、本質的な点について完全に一致している。つまりそれらの目標は、社会党が率いる政府内に閣僚を配置する、ということだ。
この総意は、スマールの立候補に関わった組織された諸部分間の暴力的な衝突を伴って動乱へと移った。次の議会では、現政権内に閣僚を確保した諸政党(ポデモス、スペイン共産党/統一左翼)は、スマールと合計したPSOE議員からなる過半数がたとえ生まれることになるとしても(実際は過半数に達せず、それは右翼も同様:訳者)、最良でも確保する議員数は10人だろう。こうして、スペインの左翼における新たな構図形成という流れの中で、前PSOE―UP政権に署名した諸政党の周辺化は、何らかの意味をもたなければならない。
2022年にわれわれがポルトガルで選挙上の影響力を失った時、それはもちろん、ひとつの問題だった。しかしスペインでは、政権への左翼統合(右翼との衝突の明らかに必然的結果として)の定着は、左翼の実体的政治的影響力という問題を提起している。
われわれは本当に、右翼と極右の政権到達を阻止するためにあらゆることを行わなければならない。しかしわれわれは、PSの単純な自由主義中道支配と区別するのが難しいような「進歩的ブロック」に向かうことで、左翼とその目標を決して消し去ってはならないのだ。(「リンクス」より)(了)
▼ホルゲ・コスタは、BEの議員でBE指導部の1員、ジャーナリストでもある。(「インターナショナルビューポイント」2023年8月4日)
【訂正】本紙8月14日号の「滝山病院」の見出しを「滝山病院事件」に、本文の「のさばらせてき」を「のさばらせてきた」に訂正します。
(編集部)
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