米国 UAWの動員が進展

協約満了が近づく中

新指導部が組合員を鼓舞

ダイアン・フィーリー

 デトロイト・スリー(米国の3大自動車会社)とUAW(全米自動車労組)の労働協約が9月14日深夜で満了となる中で、その企業には交渉解決の意志がほとんどないように見える。この10年で2500億ドル以上をたっぷり稼いだ後で、かれらは、「記録的な利益は記録的な協約に値する」との、新たに選出されたUAW会長のショーン・フェインの要求に今難色を示している。
 8月20日のUAW第1地域支部集会には、「階層化を終わりに」、また「譲歩ノー」のTシャツを身につけて、数百人の労働者とその家族が、満足できる協約を求める闘いの意志をはっきり示すために現れた。そこでの短いプログラムの呼び物は、フェイン、第1地域支部代表のラショウン・イングリッシュ、そして下院議員のハーレイ・スティーヴンスだった。
 フェインは、UAWは期待を余りに高めすぎた、との議論に反論した。CEOたちがかれらの分け前の詰め合わせとして40%の増額で自分に報いているのはOKなのに、労働者がそのような要求をするのがなぜ悪いのか、と。
 賃金は1世代にわたって停滞し、国家資金投入での自動車会社救済中に放棄された生活費調整(COLA)はまだ回復されていない。そして労働者の階層化は、一定の労働者が極端な低賃金と諸手当切り下げになっていることを意味する。これらの問題は、強制的な時間外労働を終わりにすること、仕事の保障と職場外の生活両者を確保する権利と並んで、企業の再構築の中で必須なものとして勝ち取られなければならない。
 UAWと諸企業との交渉は、伝統的に、派手な撮影の中で組合会長が行う各企業のCEOとの握手で始まった。今年それはなかった。その代わりにフェイン会長は、フォード、GM、ステランティスの工場で労働者たちの手を握り、労働者たちの要求を聞き取り、質問に答えた。
 同時にUAWのスタッフはカードを配り、文書やEメールで週毎の最新情報を受け取るために、登録を申し込むよう組合員を促した。その時以来フェインは、短い、週毎のフェースブック・ライブの最新情報提供を維持し続けてきた。
 UAWのウェブサイトとフェースブックページには、フェースブック・ライブの最新情報に加えて、労働者の境遇の話を含む短いビデオもある。最新放映は、4世代にわたるフォード労働者を呼び物にしている。そしてその労働者は、フルタイム労働者になる以前、6年間4つの違う工場で臨時労働者として働いたシングルマザーとしての経験をつまびらかにしている。
 この全組合員に対する包括性と透明性は、この半世紀にわたってUAW指導部が機能してきたあり方からのめざましい変化だ。過去では、交渉が組合員から隔てられ、またUAW広報部局もメディアの質問に型にはまった「ノーコメント」の回答を行うのが通例だったのだ。
 対照的に、新しく選出されたUAW指導部――郵便投票の一人1票で初めて直接選出された――は、協約満了が急速に近づく中、戦闘的な「ノー譲歩、ノー階層」の戦略を進展させた。かれらは、組合員の要求の明確なリストを規定して企業の陣形に対抗し、協約キャンペーンを準備するよう地域支部と各支部を促し、諸労組の組織化部局を通じて、労組員が仲間の労働者とともに行動を進める力がつくよう、オンラインの訓練を始めるよう励ました。
 これらには、UPS(米国最大の宅配会社:訳者)におけるチムスター(米国の最大規模の運輸・建設関連産別労組:訳者)の協約キャンペーンの中で進められた手法を借りて、週毎の最新情報提供を受け取る目的で組合員が登録申込カードをもつこと、毎水曜日の労働でメンバーにスローガンが書かれたバッジや赤シャツをまとうことを求めること、10分の駐車場集会とピケ実施を励ますこと、が含まれている。自動車労働者は、各支部指導部がこのキャンペーンに結びつけられているか否かに関わりなく、精力的に関わるよう励まされている。
 フェインは各支部に、交渉が進まないならば、スト権委任を認めるための投票を行うよう訴えた。そして、大勢の感情に合わせる形で「ひとつの労組としてわれわれは、経済的公正さを求める――われわれ自身のためばかりではなく、全労働者階級のためにも――闘いを先導しなければならない」と付け加えた。明らかに、UAWのウェブサイト上のスローガン、「わが世代は今ビッグ・スリーで画期を定めようとしている」は、9月15日が近づくにつれ、自動車労働者の気分をとらえている。(「アゲンスト・ザ・カレント」より)

▼筆者は退職自動車労働者で、下部組合員グループの「自動車労働者キャラバン」で活動している。また「アゲンスト・ザ・カレント」編集者。(「インターナショナルビューポイント」2023年8月)

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