第4インター第38回青年キャンプ

現代世界の課題を実感もち共有

明るく解放的な場を自己組織化

現実の闘争を軸に戦略的討論が機能

ベッキー・ブラウン

 今年7月23日から同29日の日程で、フランス中央部のヴィエールを会場に第4インターナショナル青年キャンプが行われ、欧州中からの200人の若者が、世界化した資本主義という流れの中に、また同様に国際連帯の流れ内部に、かれら自身の政治的全体構図がどのように位置しているかをより良く理解するために結集した。キャンプそれ自身は、反資本主義、反レイシズム、フェミニズム、またLGBTI+解放の諸価値を理解することを軸に自己組織化された。そして全員が、安全管理、バー、清掃、翻訳、「相談」チーム(紛争や懸念に対処するための)の交代を分かちあうことによるキャンプの維持に参加し、われわれの価値と考えを生きたものとして実感することを可能にした。

青年キャンプ
の理念と実際


 最初のFI青年キャンプは1984年に開催され、今年が38回目になる(新型コロナ感染の2年の間隔が空いたことを示す)。それは、若者たちはかれらの考えを共に確かめ発展させるための場を与えられなければならない、との理念を維持し、若者の政治教育は古参者による講義を受けることを基礎としてはならない、と強調している。
 同様にそれは、キャンプに参加するすべてのグループと個人が、正確に同じ政治を保持するためにキャンプに参加するとは期待しない。それは、健康な討論を築く上での共通の十分な土俵として、国際連帯、非スターリニズム、および非改良主義への傾注を見ている。
 戦略的な討論が、党建設や各自の自由主義的/保守的な国家への請願というよりも現実の闘争に焦点を絞るように向けられ、どのようにして現場の推進力を構築し、連帯活動に精力的に取りかかるか、に関するさまざまな考えを共有することをわれわれに可能にしたがゆえに、私はこれが十分に機能したと分かった。
 同様に私は、キャンプ中の様々なグループの経験を聞き取ることが有益とも気づいた。そのグループのいくつかは、どんな政党とも関係をもっていない小グループから来ていた。また他のものは、極左政治勢力や極左政党ブロックの若者部分だった。
 参加者たちは主に、フランス、デンマーク、スペイン、ベルギー、スイス、ポルトガル、スコットランドの若者であり、また何人かの同志は、欧州を越えたところから鍵を握る考え方と経験を提供できる南米諸国から来た。国際連帯は、単なる形ばかりのレトリックの形態ではなかった。これは、キャンプそれ自身の組織化によってうまく例証された。そこでは、参加費が各国の購買力に応じて換算された。ビールを買いたい時はどうなるか? その時あなたは、あなたのユーロを同様に換算された両替率で「トクラマー」と換えるために銀行に行かなければならないだろう。

現代の鍵が
中心テーマ


 プログラムは日毎に違ったテーマが中心になった。それらは、イースター期間にアムステルダムでの代表者会議によって選ばれていた。これは、キャンプの前とその期間を通じ主に参加者自身によって、公開性と内部民主主義を意識的に追求するやり方で、このキャンプが進められたやり方をうまく示している。
 これらのテーマは、現瞬間の闘争の鍵になる場として選抜された。われわれが直面しているものが、世界中で洪水、山火事、干ばつのもっとも新しい猛襲に、また生計費危機のスパイラルへと導いてきた環境殺し的世界資本主義のシステムだからだ。同様に、反動的諸政策と運動の現在の成長もまた、反レイシズム、フェミニズム、またLGBTI+解放の問題が、資本主義の再生産と社会的再生産の中でそれらが果たす中心的な役割を認めた上で、革命的運動の中でどのように中心化されなければならないか、を強く示してきた。
 各々の日程は、「教育課程」として知られる集いで始まり、それは、各々のテーマ――エコソーシャリズム、反レイシズム、フェミニズム、LGBTI+解放、社会運動、そして党と戦略――が現代の全体構図の中にどのように位置付いているかの徹底的な分析を伝えた。
 この教育課程は、レイシズムかつ環境殺しその他のシステムを永続化することから支配階級がどのように物質的に利益を得ているかの問題を前面に押し出しつつ、マルクス主義の分析手法が各主題にどのように適応可能かを示した。キャンプ参加者は15歳から30歳までの広がりがあり、それゆえそれらは、広範囲の経験とこの分析手法への優先的な接触を含んでいた。
 このことを考えた時有益だったことは、この唯物論的分析に立ち戻り続け、たとえば、レイシズムは単なる道義の問題ではなく、資本家の支配階級の利益にとって有益なツールとして役立っている、という共有された理解の上で、全キャンプ参加者がかれらの検討を確実に発展させるようにしたことだ。

LGBTI+
めぐる諸問題


 LGBTI+の抑圧はしたがって、社会的再生産の理論を使って、異性愛―家父長主義的家族の枠組みを通して分析された。われわれの「私的生活」やアイデンティティと想定されているものの問題が、われわれがその下で生きている経済的なシステムからどれほど切り離せないかを例示しつつ、LGBTI+のアイデンティティが、資本主義がこれまで公私の空間で労働力を組織してきたやり方にどのようにひとつの異議を提起しているかが示された。
 このキャンプは、資本主義が人びとのアイデンティティとどのように交叉してきたかに関し、民衆はさまざまな経験を重ねてきたことを認識した。それゆえ、キャンプ組織化の鍵となった部分は、いくつかの「閉じた」場に特権を与えたことだった。そしてそれによって、(1)レイシズム差別を受けた、(2)LGBTI+である、(3)女性と思う(トランス包括的観点から)、(4)トランスジェンダーであるという経験を抱えた人びとは、そのグループに入ると自認した者たちだけに取っておかれた場で、討論時間の割り当てを受けた。
 このことはかれらに、戦略的な問題に、たとえば、解放闘争が発展させられる可能性や最も影響を受けている人びとが先頭に立つ可能性を確実にしつつ、レイシズム差別を受けたマイノリティをわれわれの組織内にいかに組織するか、あるいはトランス排撃への反攻の組織化に、焦点を絞る機会を与えた。
 反レイシズムに関する教育課程は、FIキャンプは1980年代や1990年代以来女性とLGBTI+の閉じた場を確保してきたこと、そしてこれは2017年までレイシズム差別を受けた人びとには拡張されていなかった、と強調した。今回のキャンプは、革命的な闘争の中で人種の重要性はいつも認識されていたわけではなかった、そして代表団はそれらが代表すると思われる国の人種的多様性の十分な代表では全くなかった、と認めた。

内部民主主義
への強い思い


 残念ながら、閉じた場での鍵となる考えをどんなものでも反映させるための時間が割り当てられた集いは全くなかった。したがって私は、閉じた場のほとんどの中でどんな戦略的な洞察が生まれたかは分からない。しかしながら、女性の場で参加者は、SWP(文脈からは英国の:訳者)内部の性的暴力の歴史について熱心に聞きたがった。諸々のつながりが、また同じ問題に直面したことがある他の極左組織との間に見出され、外に向く時は十分に形成された批判をもちつつも、自ら内部に不健康さと家父長的な権力システムを固めてきた組織構造の説明責任をめぐる諸問題が浮上した。
 説明責任と内部民主主義の諸テーマが1週間にわたるさまざまな討論の中で、左翼グループの内部組織、およびアイデンティティを基礎とした抑圧とともに作用する交叉をめぐるこれらの問題の多少とも継続として、浮上した。政党や政治組織の若者部分は、過去にかれらのグループを傷つけた抑圧的システムと闘う方法として、熱心に説明責任の手続きを前面に置きたがっていたように見える。それは、真剣な考察の価値があると、また左翼の戦略論争の中では伝統的に前面に置かれていないものである外面的な闘争として考察する必要があるとして認められた。この重要性は、各代表がこのキャンプに持ってきた経験が原因とはいえ、辛いながらはっきりしている。たとえばスイスの政党のソリダリティSは先頃、党に対する説明責任を維持することに対する拒絶をめぐる紛争の後、被選出の古参の仲間がソリダリティSからかなりの財政を着服し離脱した、という経験をした。

もうひとつの鍵
ワークショップ


 キャンプのプログラムのもうひとつの鍵になる部分は、毎日のワークショップと代表間会議だった。ワークショップは、各代表団の若い参加者によって先導された、そしてかれらは、かれらの国の流れ全体から特筆できる問題(ストライキ、社会運動、政策変更、その他)を持ち込み、その後これを、かれら自身の全体構図から出てくる相関する問題との比較と討論のために、グループの残りに明らかにすると思われた。
 話題は他の多くのことの中でも、労組の諸闘争、デンマークの深刻にレイシズム的なゲットー化法への抵抗、フロンテックスと要塞の欧州、未登録移民と難民の諸闘争、LGBTI+の闘争、年金改革反対のフランスの抵抗、スイスの義務的徴兵、を含んでいた。また、フェミニストの自衛の構築や治安部隊に対する防衛線の構築をいかに行うか、に関する実践的なワークショップもあった。
 スコットランドの代表団は、英国におけるトランス排撃運動に関するワークショップを先導した。他の代表たちは、かれらが感じたこのワークショップの有益さがどれほどのものかを戻って伝えた。英国のトランス排撃の反動的な運動が他のところの多くのトランス排撃運動よりもはるかに進んでいるからだ。そしてそれは、鍵になる戦略的な教訓がわれわれの経験について聞き取ることから発展させられることも可能と思われる、ということを意味していた。
 フランス代表団のメンバーたちは、「地球の蜂起」(環境運動の共闘組織でつい先頃解散命令を受けた:訳者)と大貯水池反対の闘いに関するワークショップを手配した。それは、欧州中の気候グループが典型的に標的にしている主要化石燃料施設よりも害が少ないように見えることを前提に、標的として大貯水池が選ばれた理由のあらましを明らかにした。それは、運動の戦略とその後の警察の弾圧に関する討論へと進んだ。そこではっきりしたことは、大貯水池が環境的に打撃的であると共に、自然から搾取するアグリビジネス経済の部分であり、そのことがアグリビジネスの外部にある現地農民の95%に基づきこの計画を深く不人気にしていることだ。
 この共有された反対が、現地農民組合と気候運動間で強力な連携の形成を可能にし、3万人を数える抵抗運動を作り上げた。それは、諸決起のこれらの教訓がどのようにわれわれ自身の気候運動に適用可能かに関する会話に導いた。そして、コペンハーゲン近くに新しい島を建設するという、将来の洪水に大きな影響を及ぼしそうだが、まだ現在それにつながる大衆的な反対が全くない正当化不可能な見栄を張った構想に反対する、デンマークの闘いに関する会話に流れ込んだ。
 スイスの代表団は、革命的な展望を発展させる点での政党の重要性に疑問を投げかけるワークショップを先導した。このワークショップには、自律的なグループで活動する者たちから議会の左翼ブロックの中に席を占める革命政党メンバーまでの、幅広い観点と組織的経験を起点とする人びとが参加した。参加者は、国家の公式的権力はそのために争うことが可能か、あるいは政党がひとたぴ政治システムに吸収されてしまえばそれは不可避的に極左の政治の吸収に導くかを論争しつつ、ブルジョア国家内部の議会政治がもつ価値を討論することに熱を入れた。
 このテーマは、何度も何度も――キャンプの内外両者で――再登場している。そして、キャンプに参加した政党/組織のいくつかで先頃経験された分裂によって何度も繰り返された。

代表間会議
には不足も


 代表間会議は、かれらの背景についてもっと多くを学び、比較と不一致点を引き出すためのもうひとつの再編を経験する機会だった。他の代表は、スコットランドの独立運動の現在の状態について、また、英国の気候運動や議会の左翼や極右運動の強さに対する評価について熱心に聞きたがった。極右の台頭は、それらが欧州を貫いて現在提起中の高まる脅威という直感的な印象を前提として、多くの代表間会議を通じて浮上したひとつのテーマだった。
 私は、闘いの多くがどれほど比較可能か、またわれわれの各国が資本の保護という似たような関心に基づいてどのように今行動しているかを思い起こさせるものと向きあうことが十分に感じられた――このような討論のための場を提供することは、反攻のわれわれの経験を比較することと戦略を共有することにとって非常に重要である可能性を意味して――、という、より大きな感覚を携えて離れた。実際問題として、ワークショップでは会話が単一の闘争に焦点が絞られ続け、したがってそれらが十分に検討されるための時間を可能にしたがゆえに、、ワークショップは現に、戦術を比較するより良好な足場を提供した。
 代表間会議はわずか1時間の長さしかなかった。そしてそれは概して、各代表団から来た個々人が関心を寄せた分野について質問をするような、ある種QアンドAの会合の様相がより大きかったことを意味した。他の国の政治的全体構図について、われわれのほとんどは多くを知らなかった。結果として代表間会議は、その国の政治情勢と組織された闘争の役割や強さに関し、かれらの展望から見て似たような政治を抱える者たちに質問する良い機会だったのだ。これらのことを学ぶことは重要だと感じられたがしかし、代表間会議の想定された目的は必ずしも達成されなかったことも意味していた――おそらく、キャンプが1週間よりも2週間の長さだったとしても!――。

闘いを共有する
解放された経験


 まとめれば、このキャンプは、多くの考えが共有され、批判され、発展させられた印象に残る経験だった。それ以上にそれは、われわれが互いに並んで暮らし、闘争や抵抗の経験、戦略を共有し、国境を越えた友情を社会化し築くという機会を得た価値ある場だった。それはわれわれに、キャンプのプログラムと資材手配に参加し、それを維持し、先導し、そして継続的な改善を行うためにキャンプの内部的民主主義の中で活動する中で、意識性を感じて生きるとはどういうことか、についてある種の感覚を与えた。その結果は、明るく解放的であり、それは、新自由主義がわれわれの正常な環境に影響を与えているやり方とは際立つ対照を示している。それは実際に、以前の参加者の言葉を借りれば、われわれに「革命的な優しさ」の形を貫くことを可能にした。(RS21より)

▼筆者はエジンバラのRS21のメンバー。(「インターナショナルビューポイント」2023年9月4日)  

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