米国 子どもの労働が再び問題に

死・酷使・超搾取が増加中

マリク・ミオー

 「米国の諸州が子どもの労働法の諸規制引き下げを狙っている中で、十代が製材事故で死亡」(ウイスコンシン公共ラジオ、2023年7月6日)。
 警察は朝早く、ウィスコンシン州北部のフローレンス・ハードウッヅの製材所での意識不明の十代に関する電話を受け、フローレンス郡保安官事務所に通知した。数人の保安官代理と医療補助員が16歳の少年を現地の病院に移送、その後彼はミルウォーキーの子ども病院に移された。
 保安官事務所によれば、ミカエル・シュルツは、動いているベルトコンベアーに立っていた時、材木が詰まった機械を動くようにしようとしていた。そしてそれが彼を機械の中で動けなくする原因になった。
 シュルツはその負傷が元で2日後死亡した。職業安全衛生局(OSHA)はこの事故について届け出を受け、何が起きたのかを調査中だ。

共和党による
 年後もどり
 諸々の州が、特に労組がないところで超搾取労働を取り入れようと、80年にわたる児童労働保護を緩める中で、十代の死はより普通になろうとしている。これらの子どもは概して貧しい労働者階級家族の子どもであり、そこではその賃金が家計所得を補足している。
 米国内の14州――ウィスコンシン州を含む――が、何十年にもなる児童労働保護を巻き戻す新法を提案済みだ。それを行っているほとんどの州は、反労働者の共和党――知事と州議会議員――によって率いられている。
 ウィスコンシン州は、前回選挙まで共和党の知事と州議会議員を抱えていた。共和党は2015年に反労働者の「働く権利」法を採択し、それは、労組の組織化と公務労働者の保護をさらに困難にした。かれらは児童労働制限変更に向け圧力をかけた。
 2019年に民主党の知事、トニー・エヴァースが選出された。エヴァースは、十代の子どもが働ける時間を制限する現行児童労働法を変えることになると思われた立法に、2022年拒否権を発動した。州議会の共和党は引き続き児童労働法の弱体化を追求している。
 この問題に関する右翼と雇用主に対する押し戻しは、リベラルな被選出公職者を頼りにする形で、この間全体として弱いものだった。必要とされる幅広い基盤を持つ民衆的な押し戻しは起きてこなかった。

圧力の根底には
多産業的広がり
 経済政策研究所によれば、「傾向は、雇用主による低賃金労働利用を拡大し、連邦の保護に反する形で州の児童労働法を弱体化する、という多産業的な協調された圧力を映し出している」。
 労働と人権を専門とするロードアイランド大学教授のスキップ・マークはガーディアン紙(7月6日)に、この国の農業における児童労働の幅広い慣行について語った。雇用主たちの圧力は、多くの形で1800年代後半への回帰だ。
 1870年、米国の国勢調査は、雇用統計の収集を児童労働を含めるように拡張した。15歳に満たない子どもが7万5千人――家族事業や家族農業で「雇用された」者たちを含まない数――働いていることが見出された。
 児童労働の拡張は、産業革命を伴った1870年代に量的に拡大された。子どもたちは、農業内だけではなく、都市地域の新たな製造業工場でも働いた。5歳から14歳の子どもの超搾取、さらに数多くの身体障害の残る負傷や死は、民衆的な抗議に導いた。
 1800年代後半から1930年代まで、労働者たちは鉄道や他の産業で労組の組織化を始めた。組織化を続け、多くの雇用主たちを襲い続けた新たな産業労働組織は、資本家階級をぎょっとさせた。それは民主党大統領のフランクリン・ルーズベルトの政府を導き、いくつかの子どもの保護を含んで、有利な労働法を採択させた。
 「1938年の米国公正労働基準法は、多くの形で児童労働の制限を助けた。しかしながらそれは、農業部門には適用されず、今もそうだ。そしてそこでは、米国内の最大の児童労働、および最大の子どもの負傷が起きている」「児童労働は農業で最も普通で、そこでは子どもたちが障害が残るような負傷を受け、殺され、危険な化学物質にさらされ、低賃金だ。そしてわれわれは、これらの問題を何十年もの間分かっていた」、マークはこう語った。
 彼はさらに「児童労働は評価しにくく、ほとんどの評価は恐るべきものであり、額面どおりに受け取られてはならない。政府は、それがかれらをまずく見せることを理由に、児童労働がどれほど劣悪かを伝えたがらない。業界は、それらが罰金を払わなければならなくなるがゆえに、子どもを雇ったことがあることを報告したがらない。子どもと両親は、かれらが自らを支えるために仕事を必要とし、もし報告されたら仕事を失うと思われるために、児童労働を報告したくない」と付け加えた。
 「労働と公正な経済のためのハーバード・ロースクールセンター」で「州と地方の執行プロジェクト」の代表を務めるテリ・ガースタインは、似たような感慨を繰り返す。ガースタインはガーディアン紙に、「児童労働法違反を止めるために、われわれは、執行、もっと厳しい処罰、さらに主要企業にそれらのサプライチェーンにおける違反に説明責任を負わせるはっきりした達成可能なやり方に向けて、もっと多くの資金を必要としている」と語った。

本格的に必要な
労組の取り組み
 公式の労組連合はいつも、無限定な児童労働に反対してきた。米労働総同盟(AFL)は1881年のその第1回大会で、14歳以下の子どもの「あらゆる有給の雇用」を禁止するよう諸州に求める決議を採択した。
 しかし児童労働保護を弱めようとするもくろみとの闘いは、現代の労働運動の優先課題とはなってこなかった。
 組織された労働者は、リップサービスから行動へと方向を変える必要がある。ほとんどの勤労民衆は児童労働の問題、および労働者階級に対する他の攻撃とのその結びつきに気づいていない。
 ウィスコンシン州と他の諸州におけるティーンエージャーの死は、うまくいけば、この問題に関する新たな気づきをもたらし、幼い子どもの搾取と酷使を止めるために民衆を結集する刺激になるだろう。(アゲンスト・ザ・カレント誌より)

▼筆者は退職航空機関士で、労組と反レイシズムの活動家。アゲンスト・ザ・カレント誌の編集顧問でもある。(「インターナショナルビューポイント」2023年8月5日)

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