ウクライナとロシアの社会主義者がロシア帝国主義への抵抗を語る

アシュリー・スミス/ハンナ・ペレコーダ/イリア・ブドライツキス

 ウクライナでのロシアの戦争は世界政治の中心部にある。ウクライナ連帯ネットワークの後援の下に、米国内での全国講演旅行の途上にある、ウクライナ人社会主義者のハンナ・ペレコーダとロシア人社会主義者のイリア・ブドライツキスが戦争、抵抗、国際連帯について話しをした。

アシュリー・スミス(以下A)―この恐るべき戦争の最中にあるウクライナとロシアで、条件はどのようなものか?

ハンナ・ペレコーダ(以下H)―今日のウクライナですべては、わが国を併合しようとのロシアのもくろみで形作られている。ロシアは今、国中の住居地域を爆撃して市民に対するテロ行為に取りかかっている。人びとは、特に占領された地域で毎日命を落とし続けている。
 ロシア軍はかれらを殺人、レイプ、さらに強制的な立ち退きという状況にさらしている。しかしウクライナ社会のすべては、抵抗に加わっている。この戦争のあらゆる恐怖にもかかわらず、ウクライナ人は圧倒的に国全体の解放を求めて支え合い、組織化している。

イリア・ブドライツキス(以下I)―戦争開始以来、プーチンはロシア内の反対派全部を粉砕し、それを地下や海外に追いやった。彼は上首尾に怖れと服従の空気をつくり出してきた。しかし、戦争を熱を上げて支持する住民は20%にすぎず、一方およそ20%は戦争に反対している。もちろん後者は抑圧されている。社会の残りのほとんどは、受動的で脱政治化され、現状そのままを黙認している。
 そうであっても、プリゴジンのクーデター未遂が明らかにしたように、プーチンの体制は脆弱だ。戦争での何らかの深刻な敗北は、彼の支配を不安定化し、ロシア内部の社会的変化に空間を開く可能性もある。

A―この戦争の根拠は何か?

H―ロシアの戦争はNATOからの客観的な軍事的脅威に対する反応ではなかった。それは、ロシア内部と地域からのプーチン体制に対する想像上の脅威への反応だ。
 彼の独裁は、極度の不平等を監督するものだ。体制はそれを強いるために、本国と海外のあらゆる民主的な傾向を抑圧する。それが、普通のロシア人と深いつながりを抱えているウクライナをプーチンの照準に置いた。
 彼が恐れているのは、ウクライナが自由で民主的で、かつ繁栄する国家となれば、それがロシア人内部に危険な考えを広げることになる、ということだ。それこそが、2014年のウクライナの民衆革命がプーチンにとって悪夢となった理由だ。
 それに対抗して、彼はクリミアとドンバスを奪取して国から資格を奪うために、部隊を送り込んだ。彼は2022年に、ロシアの専制に対する民主的なオルタナティブとしてのウクライナを消し去るために戦争を拡大した。

I―同意見だ。プーチン体制が生き延びるために、彼は、ポストソ連圏の、特にウクライナの民主勢力全部を粉砕することを含めて、ロシア社会に対する全面的な統制を押しつけなければならない。
 彼はこのことを、ロシア帝国と多極的秩序に関する諸々の演説の中で繰り返し正当化してきた。彼は、大民族とその文明的影響圏を支配するための主権的力の必要を強調している。それはサミュエル・ハンチントンのそれのような深く反動的な世界観だ。
 この構想は、独自のものではなく、世界のあちこちにある国の権威主義的傾向の事例だ。それこそが、ウクライナでの戦争があらゆるところでの民主的な、進歩的な、また左翼の運動に大きな懸念になっている理由だ。
 プーチンにとっての勝利は、トランプのような他の反動派また全体としての極右を強化すると思われる。それこそが、われわれがウクライナを支援しなければならない理由だ。その解放は、国際的な進歩的運動にとっての勝利になるだろう。

A―あなたとウクライナ内のあなたの仲間は今何を要求しているのか?

H―ウクライナ人社会主義者としてわれわれは、勝利のためにわれわれに必要な、軍事的、財政的、また外交的援助すべてを今要求している。同時にわれわれは、労働法を解体したり、新自由主義改革を押し通そうとするわれわれ自身の政府のもくろみに反対する組織化も行っている。
 われわれはさらに、戦後の再建が、企業、オリガルヒ、またIMFや世界銀行のような国際金融機関ではなく、労働者と被抑圧民衆の利益に役立つことを確実化するためにも活動中だ。われわれはその一部として、ウクライナの悪質な債務の帳消しを訴えて声を上げている。
 病院から学校まですべての機能を維持し、前線で戦闘中の普通のウクライナ人の必要は、再建の中心に置かれなければならない。解放された国は、公正と民主主義と平等を求める広範な多数の要求を満たさなければならない。

A―国際的な進歩的運動は、助けるために何ができるか?

H―われわれは連帯を求めている。われわれはあなたに、ロシアに制裁を課し、彼のオリガルヒの資産を没収し、勝利し自ら再建するためにウクライナが必要とする援助すべてを提供するよう、あなたの政府に訴えて欲しい。
 われわれは、ウクライナの労組、フェミニストおよび左翼と、ロシア人左翼や反戦運動も含んだ世界中の進歩派との間につながりを築き上げたい。われわれは、われわれもより良い世界を求める国際的な闘争の一部であると信じるがゆえに、これを強く求めている。
 その連帯の一部として、われわれは進歩派に、その多くがウクライナとロシアについてほとんど知らないいわゆる西側の専門家ではなく、ウクライナ民衆の声を主役にするようお願いする。

I―ウクライナ人との連帯は国際的な左翼にとって基本的な問題だ。われわれは、解放のためのウクライナ民衆の闘いを支えるためにわれわれの力でできるあらゆることをやらなければならない。(「ネーション」誌より)

▼イリア・ブドライツキスは第4インターナショナルロシア支部の「プペリョード(前進)」の指導者。
▼アシュリー・スミスは、「スペクター」誌の編集長、かつバーモント州バーリントンの米国民主的社会主義者の1員で、数多くの出版物に記事を書いてきた。
▼ハンナ・ペレコーダは、ドネツク出身でローザンヌ大学の学生。(「インターナショナルビューポイント」2023年9月8日)

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