ボストチヌイでのプーチン大統領と金正恩総書記の会談
ピエール・ルッセ
9月17日にESSF(国境なきヨーロッパ連帯)に掲載されたピエール・ルッセ同志の論評「ボストチヌイでのプーチン大統領と金正恩総書記の会談」を掲載する。ESSFに掲載された際にヨーロッパでは、イギリスの大手一般新聞『The Guardian』にも関連記事がほとんど掲載されておらず、フランスの新聞『ル・モンド』等の少数の新聞のみが取り上げている状態であった。ピエール・ルッセ同志は第四インターナショナルの指導的なメンバーであり、特にアジアとの連帯に携わっている。
ウラジーミル・プーチンと金正恩は9月13日、極東アムール地方のボストチヌイ宇宙基地で会談を行った。
この会談の噂は、金正恩が装甲列車で密かに国境を越える前に確認されることなく、遅れて広まった。2019年以来会っていなかったロシアと朝鮮の首脳間のやりとりの内容は明らかにされていないが、少なくとも部分的な見当はつく。
朝鮮に対する
姿勢変更経て
この会談は、ウクライナ侵攻と核実験・ミサイル発射の結果、両国に課された国際的制裁を回避するため、幅広い問題を網羅し、特に積極的かつ強化された協力関係を結ぶという両国の政権の意欲を示している。
現在表れている親密さは、自明のものではなかった。モスクワと北京にとって、制御不能になりつつある金王朝は北東アジアの不安定要因として歓迎されなかった。ロシアは1990年代、朝鮮の核技術開発を制限する国際的圧力に参加した。中国とともに、朝鮮の核実験を非難する国連安保理決議を長い間支持してきた。しかしロシアと中国は、2017年に立場を変更した。
2016年にオープンしたボストチヌイ宇宙基地の発射基地は、ロシアの技術的な回復力の象徴であると同時に、何十億ドルも費やしたプロジェクトによる膨大な浪費の象徴でもある。国境から1500km離れたこの場所を選んだことは、モスクワが弾道ミサイルと宇宙分野で平壌を支援する用意があることを示唆している。朝鮮は、弾道ミサイル計画においても軍事衛星の打ち上げにおいても限界に達していると言われている。外国の専門知識が必要であり、新しいアンガラ発射台とソユーズ2ロケットの仕組みについて説明を受けたと言われている。
核使用のおどし
への批判も中止
もうひとつのタブーが破られた: ロシア(と中国)は、金正恩の核攻撃の脅威を非難することを中止した。昨年7月、セルゲイ・ショイグ国防相はロシアの代表として初めて、核ミサイルを含む平壌の軍事パレードに出席した。朝鮮が定期的に核ミサイルを発射していることを考えると、多くの近隣諸国の心配を招くだけである。果たしてモスクワは、この分野でどこまで踏み込む用意があるのだろうか。プーチンが金正恩にこれらの分野での大きな進展を実際に許すかどうかは疑わしい。とはいえ、朝鮮の指導者を温かく迎えることは、ソウルにとって、またワシントンが推進する地域同盟の強化にとって脅威である。
朝鮮の人工衛星打ち上げにロシアが協力する可能性について質問されたプーチンは、ロシアの報道機関に次のように回答した: 「そのためにわれわれはここにいる。朝鮮の指導者はロケット技術に非常に興味を持っている。彼らは宇宙開発を進めようとしている」。
北東アジアは
今も熱い前線
もしこの会談が中国との国境にあるシベリアの大国としてのロシアのイメージを高めるとしたら(習近平は気にしていない。なぜなら目下、他に心配すべきことがあるからである)、金正恩の旅を国家的な家族物語の一部と捉えることもできる。金正恩は父親と違って飛行機を利用するのも可能だが、あえて豪華な装甲列車を選択した。これは、故ヒューゴプラットのコミックを彷彿とさせる。
加えて、ロシアは農産物を切実に必要としている朝鮮に農産物を大量に供給し、外貨も供給することが期待されている(国際的な制裁を回避するには、資金が必要である)。朝鮮の労働力は、2019年のコロナ危機前に匹敵する規模で、ロシア領内において大量に復帰することが可能である。特にウクライナ戦線での軍事的損失と新兵の徴兵を考慮すれば、モスクワはこれまで以上に朝鮮の人員を必要としている。この安価な移民労働力にはほとんど権利がない。
モスクワと平壌の「協力強化」は、他にどのような分野で展開されるのだろうか? 技術移転? それともサイバー? 両国ともサイバー戦争とサイバースパイに長けており、重要なインフラを破壊したり、政府の機密情報を盗んだりすることが可能である。朝鮮のハッキンググループであるラザロスは、慎重なプロセス監視によって、総額数千万ドルに上る暗号通貨の盗難に関与していることが確認されている。
ボストチヌイでの会談は、多くの疑問(ロシアへの武器供給、朝鮮の弾道ミサイルと宇宙兵器の近代化など)を提起し、当面は正確な答えが出ないままである。しかし「偉大な地政学的ゲーム」が、ウクライナから朝鮮半島まで、ユーラシア大陸の両端において、自国を敵に回したとしても、引き続き行われていることは確かである。また、北東アジアが依然として熱い「核のフロンティア」であることを裏付けている。
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