スーダン 巨大な悲劇と出口スーダン 

内戦悪化停止は国際社会の責務

軍事勢力と取り引きは無益だ

ジルベール・アシュカル

悪化一途の悲劇
と無関心の同居

 スーダン人の悲劇は悪化し続けている。そして世界は今、ほぼもっぱらウクライナで進行中の戦争に気を取られて、それをほとんど無視している。それはまさに、何十年にもわたってスーダン内とその周辺で起きてきた恐ろしい戦争を、また他のもっと命が無視されているとも言えるサハラ以南のアフリカにおける戦争を 以前に無視したことと同じだ。それはあたかも、国際的な注意の引きつけには民族的なランク付けが、それにしたがって主役の肌が濃くなるにつれ紛争への関心が消えるようなものがあったかのようだ。
 ロシア人、ウクライナ人、そして他の欧州人のような金髪の白人間の紛争が先頭に現れ、それには東アジア人が、その後に徐々に濃い肌をもつ者が続く。すなわち、コーカサス人、レバント人(シリア人が、かれらの国の運命への関心の不足について不平をこぼすのがたとえ正統だとしても、シリアでの戦争は確かにスーダンでの今日の戦争よりもはるかに大きな注意を払われてきた――あらゆるものごとは実際相対的だ)、イエメン人、中央アジア、インド亜大陸、アフリカの角、ブラックアフリカの人びとまでずっと続く。

難民は前から
恐ろしい数に


 スーダン人の悲劇は悪化し続けている。そしてそれは、死者数が5千人を、負傷者数は1万2千人を超えたと報告している国連出先機関に基づけば、すでに巨大な大きさに達している。これは非常に控え目の評価であり、同じ情報源は、実際の数字ははるかに多いと信じている。
 2、3日前、国連の難民機関であるUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は、以下のことを世界に思い起こさせるレポートを出した。つまり、スーダン国軍(SAF)と即応支援部隊(RSF)間の紛争が勃発する前の2022年末に、スーダンは370万人以上の国内避難民を抱え、そのほとんどはダルフールのキャンプで暮らしている、と。
 さらに80万人のスーダン人は、チャド、南スーダン、エジプト、エチオピアといった隣国で難民として暮らしていた。同時にこの国は、他の諸国からの難民100万人以上には収容所だった。そのほとんどは南スーダンから来ていたが、2020年後半以来、北部エチオピアの危機から逃れてきた難民、そしてエリトリア、シリア、中央アフリカ共和国から来た他の難民も加わっていた。
 現在の紛争の最初の5ヵ月で、100万人以上の難民と帰国者がこの国から逃れた。一方、さらに430万人の人々がスーダンの中で居住地から追われ、スーダンを世界で最大数の国内避難民の収容所にした。これに加えて、UNHCRが示してきたような、洪水や干ばつおよび穀物不足や家畜の大量死という形のその結果を含んだ、気候変動関連気象条件の影響がある。そして読者は、スーダンが今日直面している人道的危機の非常な厳しさ――戦争の他の悲劇、特に男によって戦われた戦争では常に最初の犠牲者として、その女性の恐るべき運命は言うまでもなく――を実感しはじめる。
 この恐ろしい背景事情に背を向けて、スーダンにおける国連事務総長特使のフォルカー・ペルセスは、この国の内戦への転落を警告しつつ、2週間近く前辞任を申し出た。真実を言えば、この転落はもっと早い時期に始まり、ダルフールの部族指導者たちがRSF支持を公表し、軍内のかれらの部族仲間にモハムマド・ハムダン・ダガロが率いる部隊の側に付くよう求めた夏の間に度を強めた。スーダンは、SAFが支配する東部地域とRSFが支配する西部地域間に地理的に分割されるようになり、その中で首都のハルツームを含む間の地域は両派による抗争の対象になっている。
 軍を宥めることへのこだわりのゆえに、ペルセス、および彼の背後の米国と欧州諸国がスーダンのこの結果に対し大きな責任を負っている。これが真実だ。2021年秋のアブデル・ファター・アルブルハン指導部下の軍部によって実行されたクーデター拒絶に向け、「抵抗委員会」が率いたスーダンの民主的な諸勢力が取りかかった闘いを支援する代わりに、ペルセスは軍との新たな取引に向け圧力をかけ続け、あたかもアルブルハンが依然として国家の正統なトップであるかのように彼と取引した。これが、アルブルハンが国連総会で先週演説することを許し、スーダンの民主諸勢力から正当な抗議を引き出したものだ。
 それでスーダンはどこに向かっているのだろうか?それは、長期的紛争のあらゆる成分をもつ戦争に入り込んだ。つまり、軍事勢力の2分派間対立の変質へと圧力をかけ続けている地域的、民族的、部族的分割線に沿った内部的分断の存在だけではなく、金銭や兵器形態で対立する2派に戦争の燃料を供給している外部の役者の存在もある。スーダンが隣国のリビアのように、地域的かつ国際的な対立の新たな舞台に変わろうとしていることは何の秘密でもない。リビアのハリファ・ハフタル将軍自身が、RSFに足並みをそろえスーダンに介入している者たちのひとりだ。そしてRSFは、ロシアの「ワグネル」部隊とアラブ首長国連邦から支援され、一方SAFはエジプト、カタール、トルコから、さらにウクライナからまで支援を受けている!

国連指揮下での
国際部隊派遣を


 この悲劇の出口は、戦闘勃発以来情勢がどれほど悪化したかを考えた時、今日想像することも難しい。停戦と戦争中の2派の和解を求める訴えは夢を見ている。2派が同じ国家内で共存することはもはやまったくあり得ないからだ(何らかの政治的解決を伴って両者間で停戦が万が一実現するとしても、それは一時的休戦でしかないと思われる)。
 他方で、SAFがRSFを破りかれらだけの支配下で情勢を安定化させることは、非常に長期の、極度に命を犠牲にした破壊的な対立を経た後を除き、かれらの力を超えたことだ。そしてその破壊後の安定に対しては、ローマの歴史家、タキトゥスの有名な言葉、「かれらは砂漠をつくり、それを平和と呼んでいる」、が当てはまるだろう。
 したがって何が残るだろうか? ダガロが求めた「連邦」的解決はどうだろうか? それは、オマル・アルバシルがRSFのラベルの下に公式の武装部隊へと引き上げた犯罪的なジャンジャウィード民兵に支配された国の南部、そして西部における新しい国家の出現に導くものだ。そのような「解決」は、たとえ現在国中で起きている戦闘を止めることができたとしても、RSFが支配する地域での、特にダルフールでの大虐殺と民族浄化の段階的拡大を暗示すると思われる。
 戦闘の停止を強制し、民主的移行を管理するための国連指揮下の国際部隊による介入以外には、スーダンが内戦にもっと深く沈み込むことを止める方法はもはや全くない。これが真実だ。そしてその移行は、アルブルハンとダガロ両者共従う用意があると主張し、各自ともその受け容れ準備の確認で、他者よりも高く値をつけてさえいる。スーダンの民主的に設立された文民政権は否応なしに、市民のクーデター反対勢力が長い間求めてきた線に沿って、この国の武装勢力全体を再組織することを必要とすると思われる。(2023年9月26日)(「インターナショナルビューポイント」2023年9月30日)

THE YOUTH FRONT(青年戦線)

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