パレスチナ ナクバ第2章とオスロの虚構の間で
シオニストのガザ侵攻執着は
民族浄化の欲求が根本的動機
パレスチナ民衆をガザから一掃する陰謀ノー
ジルベール・アシュカル
現実から裏切られるのを人が望んでいる予想がいくつかある。新たなガザ戦争の4日目に当たる1週間前以下の紙面(「アルアクサの洪水:ガザ一掃の怖れ」、アルクズ・アルアラビ、2023年10月10日)で私が予想したことは、そうした実例のひとつだ。以下が、私が予想したことだ。
民衆一掃の恐るべき破壊が今
イスラエル国家設立以来シオニスト右翼は、ガザ回廊を含んだ、海と川の間にあるパレスチナの全体からの新たなパレスチナ人大量排除という形で、1948年のナクバ完遂を夢見続けてきた。全く疑いのないことだが、かれらは今、この6日に起きたことを、西岸でそれを実行する機会を待ちながら、ガザ回廊でのかれらの夢の実行にむけシオニスト社会の残りをかれらの背後に引きずり込むことをかれらに許すことになるような、ひとつのショックと見ている。
この6日にイスラエルにのしかかった重量は、シオニスト国家と運動間の衝突における以前の回に起きたこととは異なり、ハマスが確保している人質に内包された戦争抑止の役割を引き下げる可能性がある。極めて起こりそうなことだが、今回後者は以下のものより小さなどんなものでも満たされないだろう。それはすなわち、すべてハマスを完璧に根絶するという口実の下に、イスラエルのあり得る人的コストを最低にしてガザを再占領し、その住民ほとんどのエジプト領土への追い出しを引き起こすことを目的に、われわれが現在まで見てきたことすべてを超えるような程度までガザ回廊を破壊することだ。
したがって、大いに恐れられなければならないことは、「アルアクサの洪水」が結局は、自然の洪水が1ヵ月前にリビアのデルナ市を一掃したこととまさに同じく、しかしはるかに大きな規模で、ガザ回廊全体を一掃するだろう、ということだ。
残念ながら、ガザの破壊の光景はすでに、自然の洪水がデルナで一掃したものの光景をまさり始めている。それでも、建物の破壊よりももっと深刻なことは、シオニストの占領軍がガザで実行し始めた新たな虐殺が早くもパレスチナの人びとに降りかかった以前の最大の虐殺を規模で超えたということだ。しかも、イスラエルの攻撃はまだその始まりにすぎず、ガザ内の避難民数は今や、1948年のナクバの時期に追い立てられた人びとの数を超えている。シオニスト軍は本当に今、これまでわれわれが見てきたすべてを超える程度まで、ガザ回廊を破壊中だ。
10月6日反攻を絶好の好機に
その理由は、軍がその人的損失を低く保つことを痛切に求めているからであり、それが、1982年8月のベイルートに侵攻するというもくろみを妨害したものだ。当時アリエル・シャロンは彼の部隊に、包囲されたレバノンの首都を強襲するよう命じたが、抵抗戦士が潜み敵を奇襲するのが容易いような、建て込んだ地域に侵入することの難しさゆえに、かれらが重い損失を負うことになると実感した後、かれらはその作戦停止を強要されたのだった。
その教訓は、シオニストが2009年にガザで地上攻撃に乗り出した時確証された。シオニスト軍は、その経験を繰り返すつもりはなかった。代わりにそれは、対象地域を強襲する序曲として、建て込んだ地域を平らにしようと破壊力における圧倒的な優位を使用中なのだ。
似たような規模の破壊は、1982年のベイルートでも、2009年のガザでも不可能だった。好都合な政治的な条件がなかったためだ(1982年にイスラエルは、大きな国際的な圧力にさらされていた、そしてその社会は、メナヘム・ベギンとアリエル・シャロンの2人組が率いたレバノン侵攻をめぐって深く分裂していた)。
今日、「アルアクサの洪水」作戦――イスラエルが以前に経験してきたことすべてを超えた数で非武装の男と女に対し犯された殺人行為、また世界の親イスラエルメディアにより最も全面的な程度で利用された行為を含んだ――はイスラエルに、ナクバの新しい章の実行を続行する黄金の好機を提供した。それはまさに、2001年のアルカイダの攻撃がジョージ・W・ブッシュ政権に、イラク占領というそのメンバーが長く暖めていた計画を現実のものにする黄金の好機を提供したことと同じだ(かれらは、その何人かがイラクからの開始は世論に売り込むには難しいかもしれないと力説したことを受けて、アフガニスタンから始めることに合意した)。
狙いは「大イスラエル」の夢実現
ガザに加えられた大量破壊は、今回軍事的考慮に限定されてはいない。それはひとつの追加的な目標に役立っている。すなわち、回廊の住民追い払いという目標だ。われわれは、市民には警告を与え、建て込んだ住民密集地域の真ん中に拠点を置いているのだから(あたかも、ハマスがイスラエルの爆撃によってすぐさま破壊されることなく、それらの場所の外部に拠点を置くことが可能であるかのように!)市民の死にはハマスに責任がある、というシオニスト軍の口実にならされてしまっている。
しかしながら今回、逃げるようにという人びとへの呼びかけは、ガザ回廊に対する侵攻の以前の回で見られたことには似ていず、むしろ見え透いた形で、1948年にシオニスト国家に奪われた土地に住んでいたパレスチナ人の80%がそこから追い払われたことと同じやり方で、ガザの住民ほとんどを追い払う計画になっている。
先の運命の年に始められたことの完遂は、ナクバ以来シオニスト極右にとりついてきたひとつの夢だ。その正統な後継者がリクード党であるこの極右は、海と川の間のパレスチナの地すべてに対する占領を完遂する前に休戦を受け容れたことで、その当時の主流シオニスト運動内のダヴィド・ベン=グリオン(初代と第3代のイスラエル首相:訳者)と彼の同僚たちを責めた。思い起こす価値があることだが、シオニストによるパレスチナ乗っ取りに付随した悪逆で最も有名なデイル・ヤシーンの虐殺(1948年4月9日にユダヤ人武装組織が起こした:訳者)を実行し、その住民の避難を引き起こしたのは、その同じ運動だった。
シオニスト極右は、その「大イスラエル」構想の達成への決意をそのまま維持した。こうしてシャロンは党指導者と首相の両者であった2005年に、内部から回廊を支配する重荷を取り除きたいとの軍の切望を満たすためにガザから撤退させると決めた(「一方的解放計画」)時、リクード内の強力な反対に直面した。シャロンが優先したことは確かに、パレスチナ人にかれら自身の国家を認める(たとえイスラエルの厳しい監督下であれ)という口実の下でパレスチナの大義を一掃するために、、オスロⅡに明記されたガザおよびAとB領域をパレスチナ自治政府の支配化にとどめつつ、西岸のほとんどに対するイスラエルの支配を固め、最初の政治的な好機にこれらの領域を公式に併合することだった。
ベンジャミン・ネタニエフは、リクード内で反シャロンキャンペーンを率い、ガザからの撤退に抗議して内閣から辞任することまで行った。シャロンはすぐさま別の党を設立するために離党し、ネタニエフが彼に代わって党の実権を握った。そして今日までこの党を彼が率い続けている。
米国とイスラエルの同床異夢
彼が「アルアクサの洪水」の中に見ているものは、イスラエルの反対派の注意を彼からそらし、またガザ民衆を敵とするシオニストの復讐心のこもった統一を達成する好機だけではなく、1948年のナクバにおけるように、その民衆のほとんどを今回そこから空にしつつ、ガザ回廊を再占領する黄金の好機でもある。1ヵ月にもならない前の国連総会で、「大イスラエル」を示す地図を打ち振ったネタニエフははっきりと、ガザの民衆ほとんどを、エジプトとの国境の先へ、シナイ半島に追い出したがっている。このために彼は、かれらを受け容れるよう米国がこれからエジプト政府を説き伏せることができることを期待している。
他方でワシントンは、シオニスト軍がガザ回廊からハマスを根絶することで「満足する」ことを期待している。その目的は、その後その管理をラマラの自治政府に渡し、こうして、パレスチナ難民問題の大きさをさらに増すと思われる永続的な避難なしにオスロの虚構を再生させることだ。そのわけは、米国が唱えるものが「正常化」プロセスをさらに進ませることを可能にするだろうと信じているのに、ネタニエフが切望するものは、アラブ地域全体を焚きつけ、イスラエルとアラブ諸政権のいくつか間で達成された「正常化」を打ち消すと思われるからだ。
最終的にこれらふたつの選択肢のどちらが達成されることになるのかは、ガザの民衆に今起き続けていることの光景が今後「アルアクサの洪水」の情景を曇らせればそれだけ、段階的に拡大すると思われる国際的な圧力を前に、シオニスト軍がガザ回廊奪取で前進できるスピードで決定されるだろう。(2023年10月17日にアルクズ・アルアラビに掲載されたアラビア語の初出から訳出)(「インターナショナルビューポイント」2023年10月20日)
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