英国 反移民レイシストが党首有力候補に英国
保守党、文化戦争を選挙戦略に
フィル・ハース
英国の与党である保守党は今年次大会を開催中だ。評論家たちはこれを単純に、将来の指導部候補者たちがかれらの立場を提示し、支持を求めて運動するためのフォーラムとして特徴づけてきた。広く予想されていることは、2025年1月までに予定されている次の議会選で保守党は大敗するだろう、そして現指導者で首相のリシ・スナクはその時身を引き指導部選挙を巻き起こすだろう、ということだ(IV編集者)。
反移民レイシズムの新たな旗手
保守党のさらにもっと右翼基盤のかなりの部分は、次期選挙後の党指導部に対する内相のスエラ・ブレーヴァーマンの挑戦を支持するだろう。
1968年、保守党の右翼下院議員、イーノック・パウエルは、非白人の移民が大挙して英国に来るならばとして、民族間戦争を予示する有名な「血の川」演説を行った。米国の右翼シンクタンクにおける内相のスエラ・ブレーヴァーマンの演説は、英国に侵入しようと試みる「真に並外れた」数を予示した。パウエルの1968年の演説は、議会保守党内を含め、政治的主流からの彼の追放という結果になった。1979年にマーガレット・サッチャーが首相になった時までに、パウエルのレイシスト的観点は保守党内で勝利を得ることになった。今やスエラ・ブレーヴァーマンは、はるか先まで進み、難民に関する1951年協定内の英国の立場を疑問に付したいと思っている。
事実、アメリカン・エンタープライズ・インスティチュートでの彼女の演説は、3つのことを行う狙いをもっていた。第1は、保守党右翼の主要スポークスパーソンとしての彼女の立場を強化すること、第2は、保守党が総選挙で敗北する場合彼女自身を党指導部を引き受ける位置に付けること、そして第3は、次期選挙に向けた保守党政綱に関し反移民の重心を明らかにすることだ。
世界の極右反移民論調への同調
保守党のさまざまな分派もまた今、選挙に向けもっと幅広い「反覚醒」の立場を何とかしてひねり出そうとしている。移民を敵視するレイシズムが先頭にあり、次いで気候変動に関する行動への反対、そしてまた保守党右翼にその手段があれば反LGBTの偏見だ。換言すれば、ブレーヴァーマンは保守党を、イタリアのジョルジャ・メローニ、フランスのマリーヌ・ルペン、ドイツのためのアルテルナティフ(AfD)、そして米国共和党の過激な親トランプ右翼の同類に並ぶ線に引き込みたいと思っている。
しかしながらブレーヴァーマンは、現実を明るみに出した。気候変動、戦争、レイシズム、また反ゲイ抑圧からの難民数が増大しそうにある、ということだ。しかし、今動いている短期的な数百万人というディストピア的な彼女の悪夢は間違っている。数百万人は、グローバルサウスに西欧が加えてきた惨害から離れたい思っている。しかしかれらのほとんどには移動する余裕がなく、危険な旅という危険を犯したくなく、彼らの家族やコミュニティを捨てたくもない。今移動中の者たちのごく少数のみが英国に来たいと思っている。
もちろんわれわれは、何千人にもなる難民を安全な合法的なルートで助け続けなければならない。EU諸政府は、これまで何千人という難民が死亡したような、定員オーバーに乗船させた船を提供したならず者に罪をすべて着せたがっている。しかしEU諸政府はそれ自身、地中海と海峡での死に主な責任がある。
各国が難民の一定比率を引き受けるためのEU規模の協定がなければならない。イタリアとギリシャには、EUの他の諸国が難民を国外にとどめようとしているだけである中で、それらが難民の並外れた数を受け容れなければならないことについて不平をこぼす場合、一定の適切さがある。難民はかれらが到達した最初の安全な国にとどまらなければならない、という主張は、時代遅れになっている。各国が難民に対し自らの国境を強化しようとしている中で、EU内の自由な移動を保証するシェンゲン協定は今ずたずたに切り裂かれているのだ。
EUと北米のファシストや準ファシスト右翼すべては、トランスの権利に敵対する立場を保持している。しかしそれらのほとんどはまた、「LGBTロビー」にも敵対している。おそらくこの種の保守主義は、英国ではそれほど十分には受け取られないだろう。ここでは多文化主義が、真に多文化主義的な都市、民族間婚姻やパートナーシップの形態として、また芸術や音楽の伝統として深い塹壕で囲まれている。反レイシズムはパウエルやファシストの国民戦線に反対する中で1970年代に成長した。そして、多文化的なコミュニティから、また多文化的な教室からも、何百万人という人びとの生きた経験に合わせた声を与えた。
ブレーヴァーマンの演説は、反LGBTの立場を含んでいたが、それは幅広く心にとどめられている。つまり彼女は、多くの人々はゲイやトランスであるということだけを根拠に難民を今申請していると主張している。しかしこれは、一連のアフリカ諸国における反ゲイや反トランスの迫害加速の結果であり、そしてそこでは、特に反動的な福音派キリスト教によって油を注がれた反LGBTの偏見に腐敗した支配者たちがおもねっているのだ。
数十のアフリカ諸国ではゲイであることが非合法であり、そこではそれが重刑に、あるいは4ヵ国の場合、死刑になる可能性がある。迫害に直面しているLGBTの人々は、イランや他の中東諸国を含む幅広い範囲の他の国からもやって来る。
気候による惨害移民激増に拍車
グローバルサウスの気候変動による惨害は、欧州や米国への高度に危険な旅に出るよう多くの人々を駆り立てるはずだ。それは、今後の数十年の中心的な問題になろうとしている。ドナルド・トランプ、ジョルジャ・メローニの同類、また多くの他の極右指導者たちは、英国の保守党もそうなるように、反移民の文化戦争を前に進めるだろう。
労働党のキア・スターマーと彼の陰の内相であるイヴェット・クーパーは自ら反移民の敵意に合わせ、レイシストかつ反動的な反移民の立場に異議を突き付けることを根拠とするのではなく、主に難民を国外にとどめる点での不十分性を根拠にのみ保守党を批判している。スエラ・ブレーヴァーマンの演説に対する批判の嵐は、労働運動と急進左翼からのはっきりした親移民の立場に対する潜在的な支持の巨大な井戸があることを示している。(2023年9月29日、アンティカピタリスト・レジスタンス)
▼筆者は「ソーシャリスト・レジスタンス」およびミューティニーのウェブサイトに寄稿している。また『しのびよるファシズム』(2019年)の共著者。(「インターナショナルビューポイント」2023年10月5日)
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