ポーランド 選挙

最大争点は民主主義

ヤン・マレウスキー

 議会選を2週間後に控えた10月1日、ポピュリストの保守派、法と正義党(PiS)政府に反対して、60万人から100万人という人びとがワルシャワでデモを行った。
 このデモは、2022年以後の中絶の権利を求める大規模なフェミニストのデモに次ぐものとして出現し、6月始めの「高い生活費と詐欺と嘘に反対し、民主主義、自由な選挙、そしてEUを支持する」数十万人のデモに続くものだった。以前は10月15日にはPiSが勝利するだろうと予測してきた世論調査は、今や極右(それもまた世論調査で後退中の連合)の支持を得てもPiSは権力の座に8年間とどまった後に議会の過半数を失う可能性もある、と示し始めている(実際にPiSは大幅に後退し、連合と合わせても過半数に届かず、現在野党による連立政権形成に向けた議論が進行中:訳者)。

PiSの家族志向と外国人排撃政策
 PiSは、2015年に権力に到達した時、市民プラットホーム(PO)政府のウルトラ自由主義政策と決裂する一定数の社会政策を取り入れた。つまり子ども向け500ズロチの家族手当(最低賃金2000ズロチに対し)を導入する法、また2012年の退職年齢を67歳に後倒しする法の2016年の無効化などだ。
 ちなみに前者は、当初子どもひとりだけとして給付限定があったが、2019年には子ども一人ひとりに対するものになった。一方後者は、女性に対しては退職年齢を60歳に戻し、男性に対しては65歳に変えた。
 今回PiSはその選挙キャンペーンで、これらの方策を思い起こさせ、あらためて民衆票を買い取ることを期待しつつ、家族手当を来年800ズロチ(174ユーロ)に引き上げると約束している。
 しかしPiS政府は、女性の権利をさらに制限しただけではなく、以下のような方策まで取ってきた。すなわち、外国人排撃とホモ排撃の諸方策、司法を行政に従属させる体制、公共メディアの宣伝機関への転換、教育の破壊、警察の抑圧の拡大だ。その選挙キャンペーンは、ドナルド・トゥスク(POを軸とした市民連合の指導者)は「ドイツ人の諸々の敵」、ロシア、そしてEUの操り人形だと主張し、亡命したウクライナ人の諸権利を終わりにすると公表し、自由主義者が「数千人の中東やアフリカの不法移民」と共にこの国に侵入しようとしている、と主張している。
 選挙と同時に、彼の排外的な愛国主義と反移民選挙キャンペーンをオウム返しにする4つの質問に基づいて、国民投票が押しつけられた。それは、法の支配……に対するひとつの挑戦だ。

反対派と見えない資本主義に対するオルタナティブ
 民主的な反対派はPiSに対抗して3つのリストを今提起している。すなわち、市民連合、第3の声(新自由主義中道派と農地再配分派のPSL党)、そして左翼であり、最後にあげたリストは、親LGBTQ+かつ反聖職者のウィオスナ(春)党と合同したスターリニスト起源の社会自由主義派と反自由主義のラゼム(共に)党からなる連合だ。
 トゥスクは、自由の防衛でキャンペーンを展開中だが、中絶の権利の敵対者を候補者として除外し、左翼や中道派と共に統治したいと公表してきた。彼は、家族手当の即時引き上げを求めることまで行った(彼のグループは2016年にこれには票を投じなかったにもかかわらず)。彼はもはや、大衆動員を躊躇していない。しかし彼は、反動的なPiS政権がPO政権によって実行されたウルトラ自由主義政策の結果だということを理解したのだろうか?
 資本主義に対するオルタナティブというまさにその考えが現れていない。そして、左翼連合の演説の中を別として、1600万人の労働者への言及は全くない。
 民主的な反対派内最左派政党のラゼムの上院議員(現)であるマグダレーナ・ビエジャトの言葉は以下のようなものだ。「われわれは、PiSと連合によりつくられるような政府を受け容れたいだろうか。かれらはわれわれがすでに耐え忍んできた政府よりもっと悪いとさえ言える地獄をわれわれのために組織しようとしているのだ。それともわれわれは、普通の市民がもつ諸々の心配が最終的に考慮されることが可能になるように、左翼と共に作られるこの政府を欲するのだろうか」。これは、極めて限定された社会のビジョン……だ。
 したがって、10月15日の選択は、ますます独裁的になる国家と自由民主主義の保持の間のものになる。(2023年10月13日、「ランティカピタリスト」よりIVが訳出)

▼筆者は、フランスNPAメンバー、インプレコール編集者、かつ第4インターナショナルビューローの1員。(「インターナショナルビューポイント」2023年10月15日)

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