イスラエル ネタニエフは思い上がりの対価を払わざるを得ないだろう

ミシェル・ワルショウスキー

 50年前、イスラエル軍はエジプトとシリアの攻撃に驚かされ、数千人の兵士が犠牲になった。この攻勢を変えるには数週間かかった。しかし1973年の戦争は、今後ある種の敗北として歴史に残るだろう。
 2023年10月7日、イスラエルは再び、ガザから出てきたハマスの戦闘員数千人によって驚かされた。この戦闘員たちは、かれらの領域を囲むフェンスを打ち壊し、イスラエルの領域に侵入、千人以上の死者を残した血にまみれた攻撃を行った。このガザ人たちはまた、数百人の人質を拉致し、彼ら自身の領域に連れ帰ることもできた。この人質はおそらく、将来の政治囚との交換に利用されるだろう。
 上記ふたつのできごとの間にある共通要素には、古代ギリシャ語の名称がある。それは思い上がりであり、すなわち、ありあまる力が、あるいはこれ見よがし力がつくり出した向こう見ずだ。
 1973年の少し前、モーシェ・ダヤン将軍は、「ノー・ウォー、ノー・ピース」(ママ)を今後数百年押しつける手段をイスラエルは自らに備え済みだ、と誇った。50年後、ベンジャミン・ネタニエフと彼の回りのゴロツキどもは、次のように確信していた。つまり、200万人のガザ人は、むしろ原始的と言えるロケット弾を時々発射するだけで、15年以上かれらに押しつけられた包囲を受け容れるだろう、と。今回議性を払っているのは、特にいわゆる「ガザの外皮」と区分されている場所の市民数千人だ。
 しばしば繰り返し言われてきたのは次のことだ。つまり、ガザは、その下でイスラエルの侵略行為の炎が永久的に燃えている圧力鍋であり、ガザは残忍な包囲に絶え続け、そこにエジプト当局が今も参加している、というものだ。その圧力鍋は遅かれ早かれ爆発するだろう。「世界で最も優秀な情報機関」は(われわれは1973年にすでに見たように!)、その到来をまったく感知しなかった。それらもまた思い上がりのワナにとらえられていた。
 思い上がりと腐敗。というのもネタニエフ政権は、政治的に何も見えていないことに加えて、前例のない水準の腐敗をも特徴としているからだ。首相、彼の妻、そして彼のゴロツキ息子(ネタニエフの個人的な安全がこもった急な求めで、大西洋の対岸での贅沢な亡命へと送られた)は、金銭と贅沢が大好きだ。かれらは、もちろん与えられる諸々のサービスと引き換えに、贈り物をかれらにシャワーのように降り注ぐ百万長者たちに取り囲まれている。確固とした政治的支持を引き換えにした、宗教諸政党とそれらの諸機関に向けられた天文学的な予算については言うまでもない。
 そして崩壊。イスラエル人は先頃2回テレビでネタニエフを見て聴くことができた。彼は同じ人間ではないと。イスラエル政治でもっとも目立っていると見られた男は、以前の自身の影、怯えた男だった。全体として十分な情報通の何人かのジャーナリストは、もはやためらうことなく医学的用語を使って話している。
 忘れないようにしよう。この首相は、3件の汚職スキャンダルで告発下にあり、彼のはるか昔の前任者であるエフード・オルメルト(首相、財務相などを歴任、汚職を理由に刑務所に送られた)と同じ運命に苦しむという実体的危険があるのだ。彼の妻のサラとゴロツキからの圧力がもしなかったとすれば、ネタニエフには、軽い刑と政治からの引退を引き換えに罪を認める、という検察との取引を受け容れる用意ができていたように見える。
 ネタニエフが完全に分かっていることは、現在の戦争が終わればすぐ、国家調査委員会の設立が、現在の危機の前彼の汚職に反対して決起した大衆運動の主な要求になるだろう、ということだ。この運動は消えていず、当分の間は、「ガザの外皮」の避難民の世話に自らを転用している。というのも、そこでもまたネタニエフの国家は欠けていて、避難を迫られた何万人という人びとを世話したのは市民社会だったからだ。
 ガザの市民の住民は今、イスラエルの植民地主義に敢えて公然と反抗したことで途方もない犠牲を払い続けている。イスラエル軍がひと月の間犯し続けてきたことは今や、人道に反する罪の類型に入っている。イスラエル国家とその支配者は、ジョー・バイデンからマクロンにいたるかれらの共犯者同様、国際刑事法廷に答えなければならないだろう。
 ガザの民衆の憤りがたとえ多くのイスラエル市民の(したがって無実の)犠牲者を奪ったのだとしても、声高くまた明確に言われなければならないことは、かれらは残忍な包囲によってこの過激な反動に追いやられた、こうして歴史の古い教訓を確証している、ということだ。そしてその教訓とは、抑圧者の残忍さは、多くの場合被抑圧者に影響を与え、そして次にはかれらを残忍にする、というものだ。これはまた、イスラエルの植民地主義的占領者が責められるべきもうひとつの罪だ。(エルサレム、2023年11月1日)

▼筆者は、イスラエル人反シオニスト平和活動家でジャーナリスト。彼はマルクス主義革命的共産主義者同盟(第4インターナショナルイスラエル支部のマッペン)を1990年代にそれが消滅するまで指導し、「オルタナティブ情報センター」を共同で創立した。(「インターナショナルビューポイント」2023年11月3日)

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