債務危機 IMF・世銀年次総会対抗アクション
IMFへの新たな対抗に起点築く
アフリカの対抗主体の印象的登場
エリック・トゥサン
マラケシュでの対抗サミットは南の諸国を脅かしている債務漬けのスパイラルに脚光を浴びせた。グローバルジャスティスを求める運動に目覚ましベルを鳴らして、エリック・トゥサンが以下のように説明する。
陰鬱な見通しの陰の下で、新自由主義に反対する数百人の活動家がマラケシュを離れた。前途に控える数ヵ月は、「新たな債務危機」と呼ばれる可能性しかないもので脅されて、南の数多くの諸国住民にとっては非常な困難を抱える月々になりそうに見える。
これがエリック・トうサンの断言だ。彼は、IMFと世界銀行の年次総会と平行して、約70の組織やネットワークによって協働された対抗サミット呼びかけ人の一人だった。ベルギーの政治学者でエコノミスト、また反債務ネットワークのCADTMの創始者が「ラ・クーリエ」に、資本主義の何度にもなる体系的危機の金融的側面に関する彼の分析を提供した。そしてその危機は、環境的損害や公衆衛生サービスの崩壊のように、もっとも脆弱な人びとに最初に影響を与える。(スイスのジュネーブの日刊紙、「ラ・クーリエ」23年10月17日掲載の記事とトゥサンへのインタビューからCADTMが訳出)
途上国債務
再び危機に
――南のまさに多くの国に今影響を与えつつあるこの新たな債務危機の輪郭はどういうものか?
昨年以来、数を増す諸国が、市場でそれらの債務にあらためて資金の手当てをすることができなくなっているのに気づくことになった。この主な原因は、2008年にEUと北米の金融システムの全体的危機へと転じた、2006年から2007年の米国における住宅危機と銀行危機の後、各中央銀行が取りかかってきた量的緩和政策(QE)の停止だ。その上そこでは、銀行救済のためのドル、ユーロ、ポンドの巨額注入という形で、2021年までに極度の低金利、あるいはゼロ金利の政策があった。
その数十年を通じて、それまでは金融市場に入ることが決してできずにきた諸国は、ルワンダ、エチオピア、のような最貧国ですら突如、ウォールストリートでそれらの債券の引き受け手を見つけた。投資基金や銀行は、フランスやドイツの債券での利益がゼロ近くと見て、金利4%、5%、6%を背景に、南の諸政権に資金を出すことにひとつの関心を見せた。その時これらの政府は、「見ての通りすべてはうまくいっている、通貨市場はわれわれに信をおいている、われわれは価値のある借り手だ」などとそれらの住民に告げつつ、債務漬けとなった。
しかし、西側の中央銀行がインフレを前に突如それらの金利を5%にまで引き上げるや、金融業者は再び北の債券に転じ、南の諸国はもはや9%、12%、あるいは15%であっても、それ以下でかれらの借り入れを借り換えるための資金を見つけることができなかった。
このショックはコロナ危機の成り行きで悪化させられた。諸国は、その支出を、特に公衆衛生に関して引き上げなければならなかった。一方同時に、しばしば天然資源や観光としての世界市場に依存したかれらの歳入は枯渇した。最後にわれわれは、ロシア帝国主義によるウクライナ侵略後の、穀類や原油価格に関する投機にふれなければならない。南の諸国の大多数は、この2産品の純輸入国なのだ。
金融緩和策が
債務漬け促進
――QE政策はおそらく長期的には実行可能ではなかった。しかし物価上昇のなかった10年以上後の突然のインフレ再発を説明するものは何か?
何よりもまずわれわれは、銀行救出政策は良い考えではなかった、ということを思い起こさなければならない。事実それは、北の諸国の債務漬けをも引き起こした。インフレの場合それは、主にそれらの利潤幅を広げるために食品や燃料の大企業が下した諸決定の結果だった。サプライチェーンの途絶や新型コロナ危機や戦争に起因した価格変動を利用する決定だった。
――南では、どの国がこの新たな危機で最弱のつなぎ目か?
それらは多くの場合、新自由主義金融システムによって以前はスター的弟子と見られていた諸国だ。一度もデフォルトしたことがなかった国であるスリランカを考えてみよう。過去この国は、米価規制の取り止めまでも迫られた。以前は自給国だったこの国は、世界市場(ベトナム、タイ、米国)に従属するようになった。そしてスリランカは観光産業に大々的に投資した。しかし新型コロナとウクライナでの戦争によって、観光は停止にいたるまで座礁し、穀類価格は高騰した! コロンボは2022年4月までに、債務返済を凍結し、輸入を停止する以外の選択肢を完全になくした。そしてそれは今度は、社会的不穏の爆発に導いた。
もう一つの例は、「開放度のモデル」と言われたガーナであり、それもまた利払いを凍結しなければならなかった。エジプト、パキスタン、またバングラデシュは、IMFの介入のおかげで、しかしいつもの過酷な条件付き(私有化、緊縮、規制解体)で、辛うじて返済凍結を回避したにすぎない。そしてその条件は、早くも住民にどっとのしかかっている。
社会運動間結合
さらに拡大必要
――マラケシュ後には何が来るのか?
幾分混沌とした組織化とビザを受けなかった何人かの活動家の強いられた不在にもかかわらず、参加者たちは最終日、対抗サミットに対し非常に肯定的な評価を行った。グローバルジャスティスを求める会合は主にアフリカ人の集まりだったが、欧州、アジア、またラテンアメリカの討論参加によって豊かにされた。それはわれわれに、NGO「グレイン」のモニカ・ヴァルガスが指摘したように、そのような直接的意見交換がいかにかけがえがないか、をきづかせた。それは、連帯の網の目を生み出す比類のない機会だった。そして、資金提供者の助けにもふれたCADTMアフリカの常任書記のブロウラヤ・バガヨコが付け加えたように、アフリカの中で旅することがまさに難しい以上、一層それには価値があった。
NGO「アクション・エイド」のオランダのロース・サールブリンクも同意した。彼女は、緊縮計画が原因で苦しんでいるアフリカの女性たちと同行していた中で、公式サミットとオルタナティブの間を行ったり来たり動くうらやましい位置にいた。「われわれは、IMFの約束に対する実際的な分析を聞くために公式の演説から離れることの真価を認めた」、彼女はこう証言した。
エリック・トゥサンは、少し前まで互いに知らなかった社会運動間につくられた新しい結びつきを維持するためだけであっても、マラケシュに対しては確かに今後続きがあると確信している。抵抗の世界的な後退という流れの中で、モロッコで生み出された小さな火花は生き続けさせなければならない。しかしながら、戦闘的活動家は次のように認めている。世界的な規模でのグローバルジャスティスの協働に向けた「枠組みの達成に何らかの希望がなければならないのであれば、いくつかのネットワークが今も周辺にとどまっている以上、もっと多くの勢力が結集させられる必要がある」と。
来年2月15日から同19日にネパールで開催予定の次期世界社会フォーラム(WSF)にCADTMは参加する予定だが、特にヴィア・カンペシーナの不在は、過去WSFに認められてきた代表制を掘り崩すだろう。
構造調整の波へ
対抗準備強化を
――われわれは構造調整政策の新たな波を見ると予測しなければならない。
確かに、この新しい危機はIMFの勝ち誇った回帰を刻み付けている。そしてIMFは南の惨事で常にもっとも良く成長した。われわれは今確かに、返済凍結の全体化ではなく、むしろIMFへの系統的な依存を発生させる諸問題の疾風を見る寸前にいる。この機関は、百件以上の貸し付け協定に署名した。その返済に諸国が困難を抱えれば抱えるほど、緊縮改革はより過酷になり数多くなるだろう。われわれが話しているのは、アルゼンチンに対する数千万ドルから450億ドルに広がる額であり、ウクライナに対する150億ドルだ。あなたは、IMFの手中に置かれている強制力を想像してもよい。
――対抗サミットでの論争は、BRICSが設立した新開発銀行(NDB)がブレトンウッズ諸機関(IMF/世界銀行)へのオルタナティブを提供するかもしれない、との可能性に関する多くの懐疑を表面化させた。なぜか?
私の考えでは、それは絶対にオルタナティブではない。同じ天然資源採掘依存と生産力主義のモデルを基礎にしているからだ。その中で中国が中心的な枠割りを果たしているNDBは、アフリカを単に天然資源採掘の現場、あるいは低賃金労働力の源と見ている。その金利はIMFや世界銀行のそれに似かよっている。主な違いは、それが借り手諸国に経済的な条件や政治的な条件を押しつけていないことだ。それが、アフリカ諸国の関心に刺激を与えているものだ。しかしそれは、この機関を開発銀行にしていない。それは、アフリカが工業化できるようにではなく、天然資源輸出に向けたインフラをつくり出すために、あるいは威信誇示政策実行のために貸し付けている。
――どのようなオルタナティブがあるか? この対抗サミットの中で希望の要素が現れるのをあなたは見たのか?
私は、サブサハラアフリカの社会運動がIMFと世界銀行の諸政策が内包する真の性格を理解しているその深さに心を打たれた。貸し手の約束に関して過去におけるより幻想ははるかにずっと僅かしかない。それらの機関なしの発展を思い描く市民社会の主役たちがますます多くなっている。アフリカ諸国は、代わりになる通貨、財政、さらに司法の諸政策を取り入れることで、それらがなくても永久に運営可能だと思われる。(「インターナショナルビューポイント」2023年10月21日)
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