米国 UAWスト勝利的前進

戦略的部分ストの攻撃的展開がデトロイト・スリー追いつめる

大胆な要求と組合員主導追求が闘いの推力に

ダイアン・フィーリー

 史上初めて米国の3大自動車企業を同時に相手にして45日間続いたストライキが終結した。達した合意はまだ仮協定で全貌の詳細は伝えられていないが、以下でも示されているような大幅賃上げ(4年半で25%)を含むかなりの成果があった模様だ。以下に紹介する論考は、スト継続中に書かれ、フォードとの仮協定合意の時点で書き加えられたもの。成果の一定の内容が分かると共に、このストライキ闘争の戦略とその具体的な展開が解説され、ストライキ闘争組織化のひとつの参考素材にもなっている。また、今回の闘争を推進したUAW新指導部がどのようにして生まれたかの経緯も詳細に明らかにされ、労働運動再生を考える上でも重要な示唆があると思われる。スト終結後に書かれたダン・ラボッツの短評も合わせて紹介する(「かけはし」編集部)

大幅賃上げ、格差縮小、権利前進


 デトロイト・スリー――フォード、GM、ステランティス(かつてはクライスラーとして知られた)――に対するストライキの41日目、全米自動車労組(UAW)は10月26日、フォードとの間で仮協定に達した。この協定は10月29日にUAWのフォード支部の被選出指導部によって討論されるだろう。かれらが投票に向け組合員に送ると票決すれば、この協定はその夜にUAWのウエブサイトに掲載されるだろう。諸々の集会が討論と投票のためにUAW諸支部で日程が設定されるだろう。
 その間フォード労働者は仕事に就くと届け出るだろう。10月26日夜に組合員に送信されたビデオの中で、ショーン・フェインUAW委員長とフォード支部に関する副委員長のチャック・ブローニングは、この協定の2、3の部分を概括した。
 これは完全な報告とはかけ離れていたが、協定は、2009年以来枷(かせ)を外された譲歩的交渉の終わりを印すような、ある種の突破を表している。それは、奪われたものの多くを回復し、しかしまた電気自動車(EVs)に向けて再構築の途上にあり不安定な産業の中でいくつかの職の保証も提供している。
 フォード労働者は、協定が読まれ、討論され、票決にかけられる中で仕事に戻るだろう。その最も収益のある工場、ケンタッキー・トラックが2週間前ストライキに入ったという条件では、これはフォードに対し疑いなく重要なことだ。何しろこの工場は、操業の1分毎に収益で4万8千ドルを生み出しているのだ。それはさらに、それがGMとステランティスに急ぎ解決するよう圧力をかけているがゆえに、UAWにとっても有益だ。
 週ごとにストライキの段階を引き上げるというUAWの「長期持久」戦略の下で、かれらはこの2週間にわたってデトロイト・スリーの最も収益力のある工場を取り出してきた。これにはフォードのケンタッキー・トラック工場、GMのアーリントン組み立て工場、ステランティスのスターリング・ハイツ組み立て工場(SHAP)が含まれている。各々の年間収益は200億ドルから250億ドルになる。
 この協約は4・5年継続し、1年目に11%引き上げを伴う25%賃上げになるだろう。それは、2009年の経済危機の中で――フォードは他のふたつが受け取ったような連邦の国家資金投入を受けなかったとしても――凍結された生計費調整(COLA)を回復するだろう。
 最高賃金を得るための労働者の8年勤続は、3年に縮められるだろう。これは、憎悪の対象だった階層賃金をなくすための決定的な動きだ。とはいえ疑いなく、退職後の医療ケアと年金の完全な回復はありそうにない。
 2009年以後かれらの年金の引き上げを受け取ってこなかったフォードの退職者は、年にひとまとめの額の支払いを受け取るだろう。
 この協定は、デトロイト・スリーのひとつが工場閉鎖に関しUAWがストライキ権を確保することを明記することに合意した初めてのものだ。この合意の前には、フォードの、そうした場合の労働者に対する2年の保証という約束が公表された。ここには、かれらの賃金の一定割合、それに医療ケア補填が含まれると思われる。合弁工場のバッテリー労働者の代表としてUAWを認めるとの、GMの申し出にフォードが同調したかどうかははっきりしない(GMは操業中のひとつの合弁工場、および今年末にラインを動かしはじめる予定のもうひとつを所有しているが、フォードの合弁事業は未だ建設中だ)。
 フェインとブローニングはその発表の中で、次のことを主眼点にした。つまり、このような仮協定を生み出したのは組合員であり、この協定を受け容れるか拒絶するかを決めるのはフォードの組合員4万8千人のやるべきことだ、と。拒絶はありそうではないとしても、そうしたことが起これば、団体交渉が再開されるだろう。
 新指導部がその中で古参幹部と改革派間で厳しい闘いがあったUAW国際執行委員会(IEB)の多数派を勝ち取ったばかりということを前提にした時、ひとつの問題は、譲歩のない協約を勝ち取る統一した運動をその二派が実行できるかどうか、だった。同労組の10項目要求が公表された時、古参幹部の影響下にある多くは、それは現実的でないと語った。それでもこの仮協定に基づく半分以上による堅固な運動がある。フェイン(改革派)とブローニング(長期の機関コーカスメンバー)による共同発表は、その統一を、少なくとも今のところはっきり示した。

10項目要求・資本への真っ向挑戦


 UAWは、この10年を通じて2500億ドルをもかき集めたデトロイト・スリーとの関係で、企業の強欲を世にさらすことを新協約を求める2023年キャンペーンの中心に置いた。この3企業はかれらとして、2023年第1四半期に210億ドルをすでに稼いでいたが、賃金引き上げの準備はできていたものの、電気自動車を市場に持ち込むために必要な再構築は割くカネが僅かしかないことを意味する、と明確にした。
 しかし新選出の改革派指導部は、「記録的な利潤が意味するものは記録に残る協約だ」と宣言し、臆することなく以下の10項目要求をまとめた。
◦階層の廃止――誰であれ労働者を第2階級にすることは間違っている。チムスターはUPSで階層を終わらせた。われわれはビッグスリーでそれらを終わらせようとしている。
◦大幅賃上げ――われわれは2桁の引き上げを要求している。ビッグスリーのCEOはこの4年を通じてかれらの報酬が平均で40%上がるのを経験した。われわれは、わが組合員たちが同じかそれ以上の価値があると分かっている。
◦COLAの復活――COLAは何十年も、労働者階級が元気でいるのを保証した。それは復活されなければならない。
◦全労働者に対する確定された年金給付――すべての労働者はUAW組合員が何世代も確保してきた退職後の社会保障に値する。
◦退職後医療給付の再確立――これは、堅固な年金としてまさに基本になる。
◦工場閉鎖に関するストライキ権――ビッグスリーはこの20年にわたって65の工場を閉鎖してきた。これがわれわれの住み慣れた町を荒廃させてきた。われわれは、われわれのコミュニティを守る権利をもたなければならない。
◦勤労家族保護計画――この計画は、仕事に就いているUAW組合員と工場の成果を維持する。企業が閉鎖を試みるならば、かれらはコミュニティサービスの仕事を行うUAW組合員に賃金を払わなければならないだろう。
◦臨時労働者の酷使を終わらせること――われわれは、臨時労働者の酷使を終わらせるつもりだ。ビッグスリーにおけるわれわれの闘いは、全労働者のための闘いだ。
◦家族と過ごすために賃金を上げて時短を――わが組合員は今、ただ帳尻を合わせるためだけに、週60時間、70時間、あるいは80時間までも働いている。それは暮らしではない。それは長続きせず、終わる必要がある。
◦相当程度の退職金引き上げ――われわれは退職者にすべてのことを負っている。かれらこそがこれらの企業を築き上げ、またわが組合を建設したのだ。

旧指導部の譲歩と腐敗への反攻

 組合員から生まれているこれらの要求は、何年にもわたって協約に入り込んだ職務中の不平等を逆転させるだけではなく、仕事外の生活を確保する自動車労働者の権利をも主張している。はっきりと説明されているわけではないが、賃金が引き上げられ、時間外労働が短縮されるならば、工場閉鎖の怖れも減少する。たとえ工場が閉鎖しても、それで、労働者とコミュニティに対するより大きな企業の責任が終ることにはならない。
 2023年の交渉に向けた準備の中で改革派は、良好な協約を勝ち取るためには組合員が積極的な参加者になる必要がある、と理解した。
 企業は、9~10%だけの引き上げ、しかしそれ以上はほとんどなし、との腹づもりだった。かれらは、10年前以来の労組の大量成果返還を維持すれば大喜びであったが、圧力を受ければ、現在の臨時労働者の一団を期限のない雇用に移す可能性もあった。
 また2番目の理由もあった。機関コーカス支配下の指導部は何年にもわたって、可能なことに対する労働者の期待を低めてきた。そして以下のことが結局明るみに出た。つまり、かれらは自動車労働者が企業の操業を維持するために犠牲にならなければならないと合意したばかりでなく、高位役員の何人か――ふたりの委員長を含んで――が賄賂を受け取り、契約相手からリベートを取り、かれらの生涯をを支えるためにUAW基金から盗み続けていた、ということだ。1ダース以上の役員が刑務所に入り、労組監督のために連邦監視官が指名されている。この腐敗と譲歩的交渉の40年から労組はどうすれば回復するのだろうか?
 改革派は、高位役員たちの大規模な腐敗の発覚がなければ、旧指導部に取って代わっていなかった可能性がある。しかしそれが起きるとすぐ、「民主主義を求める統一全労働者(UAWD)」は直接選挙を求める発言権を獲得し、次いでIEBの半数を勝ち取ろうと進んだ。

「機関コーカス」が進めた路線

 小さなコーカス――UAWD――がどのようにして、直接選挙を規定するようなUAW規約の変更を勝ち取り、最高位役員の座に向けキャンペーンを行い、そして委員長を含め、彼らが支援した7人の候補者全員を勝ち取ったのかには、長い話しがある。古参幹部に取って代わる改革派指導部がなければ、われわれは譲歩の道をもっと続けていたと思われる。
 1940年代にウオルター・ルーサーによって始動させられた機関コーカス(AC)は、最高位レベルから諸支部まで労組の指導部を支配した。UAWの役割について元々は社会民主主義的な概念を保持しつつも、その権威に対するあらゆる挑戦への対処におけるその容赦のなさは、その役割を企業に事業を維持させることと理解した官僚制を築き上げるのを助けた。
 1970年代以後、ACは企業に対する譲歩を含んだ協約を交渉してきた。これは、もっとよい労働条件や賃金や手当を勝ち取るのはしばらく不可能だ、と組合員に弁明することを意味した。何人かの役員は、経済が回復するに応じてこれらの成果返還はなくされるだろうと主張したが、もっと安い労働力を求める資本主義の絶え間ない要求に対するこの誤った評価は、産業の変わることのない再構築、労働強化、そして職の保証のより大きな低下を意味した。
 典型的に、交渉はUAW委員長とデトロイト・スリーのCEOが握手を交わすことで始まった。話し合いが進む中でも、組合員に情報の更新はなかった。やがてUAWはひとつの企業に狙いを定めるだろう。交渉が停滞しストライキになれば、労働者はピケットの任務に着き、そして、交渉を危険にさらす可能性があるとの理由で報道に話さないよう指示された。UAWの報道担当ですら、質問を受けた時には「ノーコメント」と答えるようにとの指令下に置かれてきた。
 その間もUAW内部には常に代わりのビジョンがあった。しかしながらそれは、堅固に防御されたコーカスの権力によって周辺化された。おそらくもっとも成功を見たものは、1980年代と1990年代はじめの「新路線」運動だった。ジェリー・タッカーに率いられたそれは、「規則通りの労働」戦術を使用することで良好な協約を勝ち取ることができた。しかし地域の補佐的指導部の成功は、妥協を受け容れるACの決定を脅かした。そしてかれらはその運動を粉砕するために活動した――そして成功した――。

改革派を勝利に導いた闘い


 生き残った少数の「新路線」活動家は、かれらの部品工場のデトロイト・スリーによる売却に反対して闘った。デトロイト・スリーは、かれらの工場に関するより大きな支配力を獲得することをかれらに許しつつも、その労働力を減らした。製品だけではなく労働力に関しても価格と質の決定を指令することができるデトロイト・スリーは、さらに、労働力の階層化に対する要求にUAW指導部がどのように対応するかを窺うこともできた。
 われわれがほとんど考えなかったことは、最高位のAC指導部が、企業から仕事をもらうだけではなく、かれらには企業経営者のようなライフスタイルを発展させ個人の利益を図ることも可能と決心していた、ということだ。この腐敗が明るみに出た時、これらの指導者たちは何週間も高価なホテルでゴルフに興じ、2千ドルもする葉巻をくゆらせていた。
 企業とUAW最高指導部両者が職を救う方法としてのイエスの投票に向け宣伝することに対し、多くの労働者はしぶしぶイエスに票を投じた。筆者が働いていたアメリカン・アクスル工場(235支部)で、われわれはノーを票決できた。しかしわれわれは、この企業が所有する他の工場の労働者まで達することができなかった。特に原因になったのは、ひそひそ話のキャンペーンが、われわれには保証された職があり、したがって階層賃金システムに反対するのは利己主義、と主張したことだった。
 2009年のGMとクライスラーの破産をめぐって、連邦資金を求める企業の要求をUAW指導部が無条件に支持した決定を軸に、反指導部派潮流が再形成された。このグループは、税金が与えられるとしても諸々条件がなければならない、と要求する記者会見を開くためにワシントンまでのキャラバンを行った。第1は、企業に大量交通機関向けの製造に焦点を絞ることを求めることだった。第2は、労働者が企業の決定策定に何の役割も与えられていなかったという条件の下で、ストライキ権を犠牲にし、あるいはかれらのCOLAを一時停止されなければならないとされたことだった。
 「自動車労働者キャラバン(AWC)」は、交渉され、読まれ、分析された実際の協約を手に入れるために、以前のさまざまなコーカスの伝統を実行し続けた。
 かれらは、UAWの交渉担当が仮協定に達するに応じて、その「再重要点」を概括したブックレットを準備した。その1部として、AWCを含む改革派コーカスは、実際の協約を突き止め、次いで読み込み、その「目立たない点」を概括するリーフレットを準備するだろう。そしてAWCは最終的に、実際の協約をかれらのウェブサイトに掲載できた。UAW指導部はその後になってはじめてついに協約をオンラインに掲載した。
 AWC活動家の何人かが、高位役員を直接選出するよう組合規約を変更することに焦点を当てることを決定した。そしてUAWDが誕生した。かれらは、その規約変更を行う特別大会招集の要件を満たすためにキャンペーンを組織したが、時間が足りなかった。かれらがこのキャンペーンを再始動させようと準備していた中で、連邦検事が数人のUAW役員に対する告発を開始し、汚職調査、および被選出指導者に対する組合員の統制確立の支援、を担当する連邦監視官を受け容れることをIEBは強いられた。UAWDは、IEBの選挙プロセスに関する全組合員投票を要求し、その投票、およびその後の規約変更に対する承認を勝ち取った。
 UAWDは、UAWのIEBの定員半分に挑戦するキャンペーンを組織し、その7人全部に勝利できた。しかしながら、最後に公表された勝者はショーン・フェインであり、彼は僅か600票差で委員長職を勝ち取った。彼は、UAWの交渉大会が始まるまで1週間もない中で任務に着いた。改革派のスローガン――彼らの公約――は「譲歩ノー、腐敗ノー、階層ノー」だった。ひとりの無所属候補者の選出によって、新IEBは彼らの公約を満たすチャンスを確保した。

改革派、異なった戦略を選択

 新たな改革派UAW指導部は、協約交渉の進行を特徴づけていた熱を欠いた動きと離れなければならなかった。それは、協約を求めるキャンペーンを組織し、組合員に運動参加の登録を申し込むよう励ますことで始まった。毎週のテキストメッセージとEメールは、デトロイト・スリーの収益力を強調し、CEOたちがどれほど稼ぎ続けていたかを強調することで始まった。10項目要求が、交渉の基礎として導入され、組合員ができると思われることを強調した。つい先頃のチムスター―UPS協約交渉の中で「民主的労組を求めるチムスター(TDU)」が使用した組織化準備のいくつかを取り入れて、水曜日の赤いTシャツ着用、仲間の労働者との10分集会の組織化、そしてピケ実行、の呼びかけがあった。
 交渉の開始日、フェイン委員長はフォード、GM、ステランティスに向かい、労働者たちと握手を交わした。これは、過去の行為との劇的な決裂だった。それは、交渉が成功するかどうかに組合員が果たす必要がある役割がどれほど重要か、を表していた。
 フェインは毎週、20分のライブ集会を開催した。その中で彼は、猛運動の組織化、および国のあちこちでのさまざまなUAW支部でのストライキについて組合員に情報を更新し、次いでデトロイト・スリーの交渉に焦点を絞るだろう。そして彼は最後の数分で、チャットに組合員が書いたコメントや質問に回答するだろう。ある週にフェインは、ステランティスの提案を報告した。そしてその提案は、協約の期限が過ぎた18ヵ所の工場を閉鎖する権利が会社にあると断言していた。次いで彼はそれをくずかごに投げ捨て、そこが先の提案があるべきところだと所見を述べた。
 この姿勢は、組合の攻撃的戦略を例証していた。フェインは、3企業すべての収益力に光を当て、カネは株買い戻しへと投入され、CEOの報酬一式を40%にも押し上げた、と指摘した。臨時労働者が期限のない雇用になるには6年あるいは8年かかるかもしれない。期限のない労働者になればかれらは、それでも退職後医療ケアや年金を得ることなしに、8年で最高賃金に達するだろう。さらにまた、非常な利益になる市場として企業の部品流通の子会社群があった。そしてそこでの労働者は組み立て工場よりも低い賃金から職歴をはじめている。
 UAW規約は産業別労組として、最低ランク賃金の労働者の賃金をより高い賃金ランクのものにまで持ち上げることを求めている。デトロイト・スリーに2階層賃金が導入される中で、AC指導部に勧告されそれにしぶしぶ票を入れた者たちですら、下位の賃金と僅かの手当の新たに雇用された人びとと並んで働くのは心地好くなかった。その後の各協約に対し労働者たちは、階層を終わらせることが第1の要求と語った。しかし、かれらが一時的譲歩と期待したものは、標準として機能する手続きになった。
 階層化に反対する、かつCOLAの復活や退職者給付の引き上げのような10項目要求のうち5つは、取られたものを取り返そうとする挑戦だ。他の3つの問題――時間外労働、工場閉鎖、レイオフからの防護――は、継続的な労働強化、労働者を置き去りにする産業再構築、に関わっている。労働コストは自動車の総コストの4~5%にしかなっていない(7~8%から下がって)が、それが企業が的を絞っている領域なのだ。企業がバッテリーの研究と技術にカネを注ぎ込む必要があると主張する中で、UAWは今、多くの労働者が一時的「犠牲」と理解した中でとられたものを取り返す権利を主張している。さらにその要求は、不平等を深める経営者の権利に異議を突き付けている。
 結果として、週毎の情報更新は、ただひとつの企業との交渉に限定されなかった。フェインは、交渉の締切が延長されることはないだろうとはっきりさせた。労働者たち、労働関係の分析者たち、そしてメディアは、UAWが全3企業を相手にストに出るのかどうか知りたいと思った。UAWのストライキ基金8億2500万ドルとの関係で、組合には1ヵ月続くストライキを風化させる可能性もあった(500ドルに加え医療補填の資格が与えられている各労働者との関係で)。

スト軸に組合員主役の闘い

 深夜(前協約の有効期限がそこで切れる:訳者)の僅か2時間前、フェインは3企業の各1ヵ所におけるストライキとして創造的な戦略を明らかにした。これは、UAWの財源を浪費しなかっただけではなく、交渉チームにも週毎に組み込まれたストの段階的拡大を提供し、企業にもどの事業所が次にスト対象になる可能性があるか推測させ続けた。
 1万3000人のUAW労働者がストを指令される中で、フェインは、ストライキ中の者と必要となれば業務放棄する用意がある者を統一した、「長期持久」戦略を概括した。仕事にとどまった者たちである満了になった協約下の労働者は、任意の時間外労働を拒否し、規則に違反して変更を設定しようとするかもしれない管理者を監視するよう督励された。まだストライキに入っていない者たちは、組織化を続け、水曜日に赤いTシャツを着用し、仲間の労働者と議論を交わし、そしてスト労働者のピケットラインに加わらなければならない。
 フェインは毎週、交渉がどこの地点にあるかを討論するためにフェースブックのライブレポートを開催した。ひとつの時点でフォードがいくつかの要求に前向きな回答を出した。すなわち、勤続90日後に現在の臨時労働者を期限のない雇用にすることへの同意、COLAの復活、工場が閉鎖され労働者がレイオフされたところでの賃金と手当を2年まで保証すること、だ。この前進を理由に、UAWはストライキをステランティスとGMのさまざまな現場のみにすることを選択した。これら38ヵ所の現場は21の州にまたがり、労働者とコミュニティがそれらのピケットラインに群がることを可能にしている。何人かのスト労働者は自然発生的に、ひとつのスト工場から別のところへのキャラバンを組織した。次の週までに、キャラバンは地域を横断して網の目につながっていた。
 ストライキが3週目に移る中で、ステランティスがひとつの提案を携えて前に進み一定の猶予を得た。ミシガン州ランシングのGM組み立て工場とシカゴ近くのフォード組み立て工場に関しては、ストライキを理由とした数百人のさらなる一時解雇に対し、2万5000人のUAW労働者がストライキ中だった。
 最小の標的から動き始めるというこの戦略は、各企業が各週、対応する必要に迫られ、あるいはそれらの現場が標的にされる、ということを意味している。ストライキがストライキを地理的に拡大するに応じ、より多くの労組とコミュニティ組織が――バイデン大統領も含んで――連帯に加わった。
 バイデンはピケットラインを訪れた最初の大統領として、労働者の要求は公正だ、と告げた。それはまた、バイデン政権がストライキ停止を交渉するための画策はできず、脇にとどまることを迫られた、ということを意味していた。
 トランプがストライキを支持しようと、しかしその指導部には反対しようと試みた時、フェインは、彼はまさにもうひとりの億万長者――労働者の要求に反対した階級――だと所見を述べた。トランプは、ピケットラインで歩くためにミシガンに来る代わりに、労組未組織の部品工場でひとつの集会を行った。そこでは報道が、トランプTシャツを身につけた自動車労働者の中にストライキ労働者をひとりも見つけられなかった。かれらは、ふたりの自動車労働者にたどり着いたが、トランプ支持者のかれらでさえ、UAWのストライキ戦略に関するトランプの観点には同意しなかった。
 デトロイト・スリーでストを打つという戦略は、それらの企業を重い責任を負う立場に置き、UAWの要求に頻繁に回答せざるを得なくした。それはまた、何が交渉中であるか、また何が勝ち取られつつあるかを週毎の情報更新が明らかにしているがゆえに、透明なものでもある。そしてそれは、満了になった協約下で働こうが、視線を経営者やピケットラインに向けていようが、圧力を上げ続けるよう組合員を鼓舞し続けている。
 諸労組、コミュニティ、また政治諸組織が昼も夜も全時間ピケットラインに加わった。それらは食糧、音楽、そして――天候が寒く変わるや――焚き火用の山積みの木材を届けた。特に国中のDSA(アメリカ民主的社会主義者)の諸支部は、定期的にピケットに加わり、物質的援助に貢献した。フォード・ルージュ工場(米国最大の複合製造工場:訳者)でビル・フォード(フォード・モーター創業家出身で、フォード社の代表取締役会長:訳者)がUAW労働者に、この会社の将来、また労働者が未組織の外国所有の会社との競争の中で、かれらの将来をよく考えるよう懇願した時、フェインは、これらの非組合員労働者はわれわれの兄弟姉妹だ――そして組合加入には開かれている――と応じた。フェインはまた、このストライキはUAWだけに関係しているのではなく、不平等を終わらせるもっと幅広い必要の問題だということも主眼点にしている。(2023年10月26日)

▼筆者は、下部組合員コーカスの「自動車労働者キャラバン」で活動している退職した自動車労働者で、「アゲンスト・ザ・カレント」誌の編集者。(「インターナショナルビューポイント」2023年10月27日)

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