スペイン 政治的迷宮への突入

階級矛盾と民族問題の錯綜

マヌエル・ガリ

 7月のスペイン総選挙では、右翼の国民党(PP)が現与党の社会労働党(PSOE)を破り第1党になったものの、極右のVoxと合わせても過半数に達せず、最終的に政府形成に失敗した。これを受けPSOEが政府形成に挑戦し、つい先頃連立政権形成への合意に達した。しかし強力な右翼野党の存在やカタルーニャ問題などの政治的緊張から、その前途には大きな困難が予想されている。以下は、連立政権合意以前に書かれたものだが、スペイン政治の袋小路状況を簡単に説明している。(「かけはし」編集部)
 7月23日の議会選は、スペインの民族主義的右翼ブロックと自称「進歩」ブロック間の制度的な行き詰まりに導いた。
 反動派の国民党(PP)は上院で絶対多数を獲得、下院でもより多くの票を得たが、政府形成には十分でなかった。その指導者、アルベルト・ヌーニェス・フェイホーは、極右ポスト・フランコ派のVox党の支持にもかかわらず政府形成に失敗した。

政治的力関係
一層不安定化
 5月28日、PPは自治体と地域自治コミュニティのいくつかの選挙で、PSOEを犠牲にして大きな前進を勝ち取り、右翼政党とVox間の連合形成に達した。全国的な広がりで反復された怖れが部分的に、左翼票をPSOE支持に動員した。
 15M(怒れる者の運動)から登場した、ポデモスのような「進歩ブロック」政治勢力は、選挙に関し後退した。それらの政治的な適切さの欠如、およびPSOEの支配的影響力にもかかわらずあらゆる犠牲を払っても統治の位置に着くというそれらの選択の破綻が、統一左翼(IU)とポデモスのサンチェス(現首相で、PSOE書記長:訳者)への従属へと、そして両組織の危機へと導いた。ヨランダ・ディアズ(スペイン共産党の指導者で現副首相:訳者)が率いる新しいグループのスマルは、この危機を止めることはなくもっと悪化させるだろう。PSOEとのその日和見主義的仲間づきあいは今、左翼の空間の「復活」に導いてはいないからだ。
 われわれは、ポスト・フランコの移行以来、また1978年の社会的かつ憲法上の協定後、スペイン政治システムを統治してきた二党制形成に戻っている。選挙は、大衆運動の、特に労働運動の底深い動員解除、さらに多くの組織のサンチェス政権を囲む「衛星化」という全体構図の中で行われた。
 インフレと労働者階級の購買力低下、そして銀行とエネルギーや衣料の大企業の記録的な利益という連なりの中で、改良主義左翼は社会的抵抗組織化の途上にはいず、反資本主義左翼はそうするには弱すぎる。カタルーニャの民族主義的な民主運動の敗北とそれに対する抑圧の影響は、今なお感じ続けられている。このすべてが社会的不穏を高めてきたが、PSOE左派は街頭を放棄してきた。そして抗議はますます、右翼と極右のポピュリスト的、新自由主義かつ反動的な意見によって方向付けられている。

衝突激化の中
不確実性進行
 サンチェスは、新自由主義政策に基づいて連立政権を率い、住宅や労働や労組の権利に関する社会的で抑圧的な諸法に立ち向かい、公的な公衆衛生や教育を守るという、重要な選挙公約を放棄した。
 サンチェスは今新しい権限委任を求めて、他の諸政党、つまり小左翼政党、バスクやガリシアやカタルーニャの民族主義者や無所属の戦士、さらにバスク民族主義党、フンツ(カタルーニャの選挙連合)、カタルーニャ共和主義左翼といったブルジョア政党とプチブルジョアジー政党、から十分な票を獲得しようと挑んでいる。ふたつのブロック間の票差は非常に小さい。この連立政権協定の中心には、カタルーニャの独立宣言とその決起に結びついて抑圧された全員に対する恩赦がある。これは、基本的な民主的良識に沿う形で解決される必要がある問題だ。
 この点を、スペインの右翼は受け入れることができない。そしてそれは、フランコ主義から継承された司法システム、また軍や警察やメディアの大きな部分の共感と一体的に全般的な決起に乗り出している。この協定は、問題の政権形成に対する支持という問題と一体的に今論争の渦中にある。
 PSOE本部前では極右とファシスト間の街頭の衝突があった。また、Vox指導者のサンチャゴ・アバスカルからは、不服従とデモ参加者に敵対する行動を行わないようにという、警察に対する呼びかけもあった。PPはどうかと言えば、あらゆる州都における11月12日の決起を呼び掛けた。街頭の右翼、そして市民に秩序と平和を呼び掛ける左翼、最悪と言える光景だ。
 再度スペインの迷宮として、階級的矛盾、および民族問題に関する立場とアイデンティティが絡み合わされている。PSOEがたとえ議会で必要な票を得ることになるとしても、それは高度に対立的で不安定な議会の幕を開くと思われる以上、「平衡への回帰」となることはないだろう。(2023年11月16日、「ランティカピタリスト」よりIVが訳出)

▼筆者はエコノミストで、ビエント・スル誌の編集・顧問評議会のメンバー、およびアンティカピタリスタスの活動家。(「インターナショナルビューポイント」2023年11月15日) 

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