英国 NHS見習い医師、最長スト後も闘い続行

NHS再構築の闘いへ

デイヴ・ケラウェイ

NHSスタッフ
闘い継続を計画

 イングランドでの見習い医師の6日間ストライキ(1月3日午前7時から1月9日午前7時まで)(注)は、国民医療サービス(NHS)史上最長だった。
 これらのインターン生は医学部の5年を終えている。かれらはその後、保護された身分保障と高給をもつ専門医である顧問医になるまで、さらに平均10年耐えている。見習い医師は、それらの訓練すべての後でも、およそ時給14ポンドの条件で病院医として職歴を始める。その時給は公式の最低賃金よりも2、3ポンドしか高くない。かれらは、病院でほぼ1日中仕事を行い、しばしばかれらの正規のシフト以上に数時間働いている。かれらの近頃の行動がつくり出した効果が示しているのは、NHSはかれらの労働と献身なしには適切な運営が不可能、ということだ。
 昨年を通じて、看護士、救急車運転士、顧問医、、また他のNHSスタッフは多くの日をストライキ行動に費やしてきた。保守党首相のリシ・スナクはこの日曜日BBCで、NHSの争議すべてを彼が解決した、と偽って言明した。ストライキ行動を求めるさらなる投票が今、看護士と医師によって計画されているのだ。さらに、係争中の法的な異議申立もある。

100万人の
早過ぎる死が


 見習い医師と他の争議の背後にある基本的な問題は、NHSの厳しい資金不足だ。医療の必要を抱える高齢者の高まる数と新型コロナパンデミックの作用は、NHSには今まで通りであるためだけでもインフレ率を上回る資金増額が必要、ということを意味している。インフレは、英国では欧州の残りよりも高いレベル(11・2%)に達した。今日でもそれはまだ5%以上だ。見習い医師の賃金裁定額は数年にわたって、インフレ率以下となっていた。それが、かれらが今、かつてあったものにかれらの俸給を戻すために35%の賃金調整を要求している理由だ。
 医療ケアを受けたいと思っている人々の観点に立てば、この状況は完全な危機だ。救急車は利用可能なベッドを待つために、病院の外で患者を乗せたまま行列を作らなければならない。患者は、廊下に連れてこられ、そこにとどめられ続けている。英国は、人口ひとり当たりのベッド数がフランスやドイツより少ないのだ。
 病院のベッドはふさがっている――住居や老人ホームに利用できる場所が全くないために病院から安全に退院させることができない高齢者に占拠されて――。高齢者用ケアセンターは―特別な必要を抱えたすべての人向けの居住用収容施設と共に―――今やいっそう私有化され、利潤のために経営されている。ヘッジファンドでさえも今や、地域的にも全国的にも老人ホーム諸グループに投資し続けている。
 ケアシステムは断片化され、何らかの合理的な計画から外れて動いている。質は、TVや新聞で定期的に暴露される虐待スキャンダルに現れているように、非常に不均質だ
 砂糖/塩分がふんだんで極度に加工された食品の生産と配布という形で、食品と調理の業種を切り縮めるという政府の失策もまた、NHSの諸資源に圧力をかけ続けている肥満と糖尿病に力を貸している。
 全体的に、保守党と労働党の両方が、英国での高まり続けている社会的な不平等と貧困に対し、何かを行うことができずにきた。サー・ミカエル・マーモットが主導したロンドン大学医療公平研究所の最新報告は、2010年以降の緊縮政策は少なくとも100万人の不必要で早過ぎる死をつくり出した、と見積もった。

資金充当実現へ
政策抜本転換を


 したがって、見苦しくなく公正な賃金を求める見習い医師の闘いはまた、先の高まる必要すべてに応じることができる、そして目的に適合する、そうしたNHSを建設するもっと全体的な運動の一部でもある。2024年は選挙の年であり、ほぼキア・スターマーの労働党が秋には次の政府になりそうだ。現在770万人というぎょっとするような数になり、まだ高まり続けている選択的ケア(つまり緊急ではない)の待機リストを、労働党は縮めると誓っている。
 NHSの危機は、人々がますます私立の医療ケアに向かい続けていることを意味している。私立ケアは、2020年から2022年までで11%から13%へと増大した。個人的に私は、私立ケアに全面的に反対でありNHSで治療を受けたいと思っているが、しかし金を払うよう強いられ(NHSは原則的に無料:訳者)、そうでなければかれらの苦痛が1年かそれ以上続くことになる、そうした一定数の人々を知っている。
 労働党は公式に、見習い医師の35%回復という要求に応じるつもりはないと言明し、資金手当に関し限定された増額――今ある必要には全面的に不十分な――のみを提案した。スターマーは、彼の影の内閣全員に対し、医療労働者のピケラインに立つことを禁止した。写真で見ることができるように、労組、左翼グループ、また労働党の現場活動家の多くがこの指令をものともしなかった。
 労働党は長い間、NHSの施設の中で活動し、利益になる部分をつまみとっている私的な医療サービスに、積極的に異議を突き付けることを放棄してきた。見習い医師に賃金を払うことができないことは、多くが私立の活動で働くことを選ぶことになる、ということを意味するだろう。
 労働党の影の公衆衛生・社会ケア相は近頃、危険な冬の危機に関するNHS医師から上がる警戒の例年の叫びが本当はオオカミ少年ではないのか、またNHSを「改革すること」に関する内部的な独りよがりはないのか、と疑問を投げかけた。彼はすでに、私立部門の高まる役割は労働党にとって問題ではないだろう、と語ったことがある。
 見習い医師はストライキ参加者を非常に有効に動員してきた。そして、交渉に対する政府の拒絶があろうとも、もっと多くのストライキ行動を計画中だ。見習い医師を支え、再配分的課税によって資金を充当されたはるかにもっと健全なNHSを求めて運動することによってのみ、NHSの危機は解決可能だ。(2024年1月9日)

▼筆者はアンティキャピタリスト・レジスタンス内のソーシャリスト・レジスタンスおよび第4インターナショナル支持者。
(注)NHSは英国内の4ヵ国で違った形で組織されているため、ストライキはイングランド内のものだった。たとえばウェールズの見習い医師は、1月15日から18日のストライキ行動を支持した。(「インターナショナルビューポイント」2024年1月10日)

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