ポーランド 民主的政権の最初の限界
街頭での社会的決起不可欠
ヤン・マレウスキー
至近の諸選挙では保守的右翼が伸長していたが、歴史的投票率(70%)による2023年10月15日のポーランド総選挙は、逆に保守派政権を少数派にした。それ以上のこととして、同時に呼びかけられたレイシズム的移民国民投票には40%の有権者しか参加せず、その結果を無効にした。
しかしながら、新たなポーランドの多数派(注)が新政権を形成でき、その首相のドナルド・トゥスクが12月15日にアンジェイ・ドゥダ大統領によって就任させられたのは、ようやく2ヵ月後のことだった。後者は最初、保守派首相のモラヴィエツキを再指名した。口実は、彼の党が過半数を確保しなかった(定数460の内190)とはいえ、第1党になった(35・58%)ことだった。保守派右翼は、その身内を軍と国家機構のトップに指名し、カネを支出し司法を従属させ続けるために、この余分の2ヵ月を利用した。
司法の独立
とEU援助
トゥスクは首相になってすぐ、EUの援助(国家復興計画からの598億ユーロ、および連帯基金からの765億ユーロ)凍結を解除しようと試みるためにブリュッセルのEU理事会に飛んだ。この国は、司法を従属させる政策の結果として、これらの資金支払いが止められるのを経験してきた。特に、EUは、判事が関係する懲戒事件に対処する独立法廷の指名と懲戒会議の廃止、さらに違法に指名された判事によって言い渡されるような判決を可能にすることの拒絶、を要求中だ。
新司法相のアダム・ボドナー――独立した法学者――は、就任してすぐ規則上の変更を導入した。しかしながら、新しい法の採択には時間がかかるだろう。また、ドゥダ大統領がそれらに副署するのを拒否する場合、議会はそのメンバーの3分の2で票決しなければならない。新しい多数派はそれだけの議席数を確保していない。トゥスクの最初の成功として、EUは、エネルギーシステムの近代化と脱炭素化に向け使用されるものとして、2023年末までの50億ユーロ以上の前払いを保証したばかりだ。
トゥスクは12月11日に議会で演説し、彼の連合が行った選挙の約束は満たされるだろう、と力説した。すなわち、「教員の俸給は1月1日から30%引き上げられるだろう、また公務員すべての俸給は約束通り20%引き上げられるだろう」さらに「われわれはインフレが5%を超えればすぐ、年金の年に2回目の引き上げを直ちに導入するだろう」と。
中絶の権利
今も未解決
「10月15日連合」は選挙におけるその勝利を過半の女性の票に負っているが、トゥスクは「合法的かつ安全な中絶の権利という極めて痛みのある問題」について語った。この連立政権は、中絶の合法化について一致していない。保守的な自作農の党出身の副首相は早くも、1993年の「歩み寄りへの」回帰を欲している、と公表した。ちなみにその歩み寄りは、中絶の権利を、レイプ、女性の命の危険、そして胎児の深刻な障害、という3類型に限っている。
この理由は、2020年に憲法裁判所によって憲法違反と裁定された。しかしながらこの裁判所自体は、正統性がないと広範にみられている。国会議長は、国民投票を求め、中絶合法化には反対している。
結果として、民主的な野党の勝利に導いた主要な問題のひとつは、今も解決されないまま残っている。小さな反資本主義政党のラゼムは正しくも、政府に加わらなかったが、それでもそれを支持する投票を行った。というのも、主な民衆の要求が、何よりも自身の肉体を決定する女性の権利が勝ち取られ得るのは、街頭における社会的決起を通すものだからだ。当面、様子見の姿勢が今なお優勢だ。(2023年12月21日、「ランティカピタリスト」よりIVが訳出)
▼筆者はフランスの反資本主義新党(NAP)メンバー、インプレコール誌編集者、かつ第4インターナショナルのビューローメンバー。
(注)市民連合KO(得票率30・70%、議席数157)、自作農の党PSLとポーランド2050キリスト教民主党からなる「第3の道」(得票率14・40%)、および左翼から構成された。そして左翼は、新左翼(NL、民主的左翼SLD、とウィオスナ党、訳せば春、の合同から形成された)、ポーランド社会党PPS、および反資本主義政党のラゼム(共に)からなる選挙連合で、得票率8・61%、26議席。(「インターナショナルビューポイント」2023年12月23日)
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