米国 11月大統領選

移民と国境が中心テーマに
共和党は暴力的反移民策動

ダン・ラボッツ

 米・メキシコ国境と移民が米大統領選キャンペーンの中心になっている。共和党候補者のドナルド・トランプと共和党は――2016年と同20年に行ったように――、殺人者、レイプ犯、麻薬売人たちが、国民的アイデンティティとこの国自身を危うくするような米国「侵略」を実行中、と主張している。トランプはヒトラーばりのやり方で、移民は「わが国の血を破壊しつつある」と語る。彼は、この国とその遺産を守ることができていないとして、ジョー・バイデンと民主党を責めている。
 それに応じて、2020年には国境でもっと人間的な政策を約束したバイデンは今、下院が彼に権限を与えるならば、国境を閉じ、もっと大きな統制策を定めるつもりだと語り、支持者のある者たちを愕然とさせている。
 昨年夏のピュー世論調査が見いだしたことは、75%の米国人は米政権が国境で貧弱な仕事を行い続けていると信じ、ほぼ半数は不法移民は大きな問題と信じている、ということだった。両党もまた、米国の南国境には一つの危機があり、それは移民政策の維持の点で問題に導いている、と一致している。
 米国は昨年平均より少し多い180万人の合法的移民を受け入れたが、しかしはるかに多いのは不法移民だ。2023年12月に米当局は、公式の入国ゲートの間の国境を越えた不法移民の22万5千人を拘留施設に収容した。そして当局は毎月、公式入国ゲートに現れる別の5万人に関し手順を追って調査している。それは年当たり320万件以上に達する。そのうち約43万人が、かれらの国内での暴力を恐れていることを理由に難民資格を適用されている。これらの移民はますます、ベネズエラや中米出身の子ども連れの家族になっている。
 米国の移民裁判所は、2百万件以上の未決案件によって圧倒されている。国境沿いの巨大な数の移民は時に、現地政府や移民支援組織もまたそれらの能力を超えている国境の都市や町に、大混乱の条件を諸々生み出している。
 テキサス州の共和党知事、グレッグ・アボットは、民主党が統治しているワシントンDC、ニューヨークシティ、シカゴ、またフィラデルフィアのような北部の諸都市に10万人以上の移民を移送して移民問題をめぐる戦闘を先導し、それらのところの住宅、教育、社会福祉の危機に導いてきた。
 2021年以後、アボットは、国境管理が連邦の責任であり州には権限がないにもかかわらず、国境沿いにカミソリワイヤーを設置するよう州兵に命令してきた。バイデン政権はこのワイヤーの撤去を命令し、それは最高裁の5対4という2分的決定によって確認された。テキサス州は裁判所を無視し、州兵と米移民当局間の緊張に導いている。
 フロリダ州知事のロン・デサンティスは、アボットの部隊を支援するためにフロリダ州兵千人を派遣するつもりだ、と語っている。26人の共和党知事のうち25人ほどはアボットを支持している。
 現在下院の共和党の多数は、国境に責任を負っている国土安全保障省トップのアレハンドロ・マヨルカスの弾劾へと動いている。民主党が支配する上院は確実に彼に有罪を宣告しないだろう。これはトランプに支持者を獲得することが狙いの人気取りにすぎない。
 その間、極右の白人クリスチャン民族主義者は先週、「神の軍」という名称のキャラバンを組織した。それは、バージニアからテキサスの国境まで――約1400マイル――「国境を取り戻す」ために旅した。キリストの顔と米国旗で飾られた横断幕を携えて、オルガナイザーたちは国境まで4万人を先導すると約束した。しかし最終的に2、3百人しか旅を行わなかった。多くがメキシコ系米国人であるテキサス国境のコミュニティ指導者たちは、ファシストの車列に開けっぴろげに反対の声をあげた。
 下院での国境と移民の法制定は停滞している。それがトランプのキャンペーンに都合が良いために、共和党がそれを未解決問題のままに残したいと思っていることが理由だ。(2024年2月4日)(「インターナショナルビューポイント」2024年2月4日)

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