サヘル ECOWASの動揺

軍事クーデターが連続

ポール・マーシャル

 西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の経済制裁の対象となったサヘルの3カ国(注)は、それらの住民に対しそれが及ぼす有害な役割を批判しつつ、この経済連合から離れようとしている。
 その見せ場は完璧だった。1月28日同時に、マリ、ニジェール、ブルキナファソの軍事独裁政権は、かれらの国有テレビで、この連合からの離脱を発表する同一の声明を読み上げた。

対抗策発動
制裁と脅迫
 ECOWASは、この地域に単一市場をつくり出すという当初の目的の下に1975年に創立された。その大権は徐々に政治と司法の分野に拡大されてきた。15カ国の中で、ギニアを例外としてフランス語を話す国は同時に西アフリカ経済通貨連合(WAEMU)のメンバーでもあり、そこにはギニアビサウ(元ポルトガル植民地)も加えられた。この組織はその通貨がCFAフラン(旧フランス領アフリカ諸国の共通通貨:訳者)である国を一体に集めている。
 ECOWAS諸国の国民は自由に移動し住むことができ、商品は関税義務には従わない。
 マリ、ニジェール、ブルキナファソのクーデターの中で、ECOWASは特にニジェールに対し厳しい経済制裁を導入した。ニジェールの場合、ECOWASは憲法秩序を再確立するための軍事介入の可能性も持ち出した。

ECOWAS
は信用低下し
 それらの軍事政権は、ECOWAS離脱を正当化するために、深刻なテロ攻撃を前にしたそれらの国に対する連帯と援助の不在を批判した。それらはまた、外国の大国の利益に沿って行動することでそれらの国民主権を踏みつけにしているとして、またその創立の父が支持した汎アフリカ主義を放棄しているとしても、ECOWASを批判した。
 経済制裁がその第1の犠牲者である住民からひどく悪いと受け取られてきたことには何の疑いもない。これらの決定を行ったECOWAS国家首脳がそのほとんどの場合、大規模な不正選挙を通して、あるいは3期目への立候補をかれらに可能とする憲法操作を通して選出されていたからには、なおのことそうなる。
 たとえばトーゴでは、フォール・ニャンベ一族が50年にわたって君臨してきた。コートジボアールのアラカン・クタラは、フランスによる軍事介入の助けで権力に到達し、改憲によって持ちこたえてきた。セネガルに関しては、マッキー・サルは大統領選の戦いからふたりの主な競争相手を排除し、住民の怒りを巻き起こしながら大統領選を12月まで引き延ばしたばかりだ。ECOWASのリーダーたちは民主主義の手本どころではないのだ。

民衆とは無縁に
方向選択を模索
 ECOWAS離脱は即時の効力として公表されたものの、この組織の91条は、1年遅らせることを可能にしている。指導者たちは、2、3カ月前にサヘル国家連合(AES)を形成した3ヵ国との交渉に開かれている、と語ってきた。3ヵ国は陸に囲まれている。そして海へのアクセスは依然必須としてある。マリの場合、それもまたクーデターを理由にECOWASの制裁下にあるギニアがひとつの選択肢だが、ブルキナファソとニジェールの場合、トーゴかベニンを介した海へのアクセスが妥協で解決されている。
 ECOWAS離脱でも、WAEMU地域内での自由移動は依然保証されるだろう。しかしESA諸国がそこで止まるかは確かでない。実際CFAフラン離脱の問題もまた、3ヵ国共通通貨の方を選ぶ形で持ち出されつつある。
 これらの決定は主権獲得を象徴する有益さとして理解される可能性がある。住民が意向を問われ、したがって決定に巻き込まれていたとすれば、これも受け容れられていたかもしれない。しかしこれは、これらサヘル3ヵ国での民主的自由に対する攻撃の繰り返しを前提とすれば、明確に現実ではない。(「ランティカピタリスト」よりIVが訳出)
▼筆者はIV通信員で、「アフリケ・アン・リュッテ」編集者かつフランスの第4インターナショナルの1員。
(注)。マリ、ニジェール、そしてブルキナファソ。とはいえ、生物地理学的なサヘル地域はもっと範囲が広い。(「インターナショナルビューポイント」2024年2月9日)   

週刊かけはし

購読料
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009  新時代社