ポルトガル 国会選挙

公開討論での左翼ブロック

デイヴ・ケラウェイ

 ポルトガルでは3月10日に議会選が行われ、そこにはわれわれの同志も参加している左翼ブロックも挑戦している。以下は、その選挙戦における選挙直前のラジオ討論番組での左翼ブロックの主張を伝えている。本紙が読者に届く時点では結果は判明しているが、社会変革に向かう闘いのあり方を考える素材として紹介する。(「かけはし」編集部)

左翼ブロックの
これまでの闘い


 ブロコ・エスクエルダ(左翼ブロック)は十分な候補者名簿を用意して今立候補している。ブロックは民主的な比例代表制の結果として、1999年から今日まで党形成以来被選出の議員を確保し、さまざまな時期に2%から10%の得票率を獲得し、また2人から19人の議員を抱えてきた。現在同党は議員5人を保持し、アントニオ・コスタの社会民主主義政府に対する野党として議会および議会外闘争で活動している。
 コスタ社会党政府は汚職の告発を受け昨年末に倒れた。左翼ブロックは2015年から2019年、ポルトガル共産党(PCP)と共に、コスタ政権に信任投票を行い、同政府との間で補充の協定を交わした(ゲリンゴンカ)。スペインでのポデモスとは異なり左翼ブロックは政権に加わらず、また閣僚ポストにも着かなかった。労働者階級の必要を無視した2019年予算に対するかれらの原則的反対が、事実上コスタ政権を打ち倒した。
 2023年に崩壊したその後のコスタ政府は、絶対多数を確保し、左翼ブロックやPCPからの外部の支持を全く必要としなかった。左翼ブロック支持に向けた今選挙におけるキャンペーン目的のひとつは、社会党の絶対多数を阻止するに十分な強さになること、そしてそれによって、社会党(PS)との間であらたな文書化された取引を作り上げ、勤労民衆の必要に対し実のある譲歩を強要することだ。
 われわれがEUの他のところであるいは世界でも見てきたように、ここにもこのところ極右のチェガ(たくさんだ)に対する支持の高潮が起きてきた。ちなみにこれはポルトガルでは最近の現象だ。世論調査ではかれらの支持率は17%になっている。他方ブロコの支持率はこれまで4%から7%、PCPは2%から4%となっていた。
 世論調査は、31%の社会党を2%上回る支持率を中道(右派)諸政党に与えている。しかし中道派は、政権を構成するためには、イタリアの保守派諸政党が極右との間で行ったことと似た取引を行う必要があると思われる。
 そのような政権は勤労民衆の暮らしと社会支出に対するもっと大きな攻撃を意味するだろう。さらにまた、女性の権利やLGBT+の権利に対する攻撃もそれに続くだろう。左翼ブロックは、チェガ、およびその中道右派諸政党との潜在的にあり得る連携が意味する危険に対決する、精力的なキャンペーンを行っている最中だ。どの政党も連合も、ポルトガルメディアによれば今のところ、安定した多数を確保できるとは予測されていない。
 以下は、左翼ブロックのウェブサイトからの報告であり、かれらの1位候補者であるマリアナ・モンタグアが参加した最新ラジオ討論に関するものだ。

不可能決めつけ
を許さない闘い


 議会選候補者間で昨日行われたラジオ討論で、ブロコ・エスクエルダ指導者のマリアナ・モンタグアは住宅価格を抑える方策を力説し、2015年選挙の前に既成政治家が「最低賃金引き上げは不可能だ」とも語った、と思い出させた。
 この月曜日のラジオ討論は、チェガ(世論調査で上昇中の極右政党)を除く議会に議席をもつ諸政党の代表者を集めた。ちなみにチェガは出席を拒否した。発言の1巡目では、主題は社会保障制度の将来だった。マリアナ・モンタグアは年金増額、および企業の総付加価値税を通すか、左翼ブロックが提案する大資産への課税を通すかのどちらかによる公的社会保障財源の多様化を擁護した。
 これは、高額資産に対する追加的課税に基づいて現に実現しているものに似ている方策だ。そしてそれは、左翼ブロックが社会党政権の一定の政策を外部から支え、社会党の政権発足を可能にするよう投票した「ゲリンゴンカ」の時期に、左翼ブロックが賛成した提案だ、この税からの歳入は、社会保障資金安定基金に向けられ、1億ユーロ以上に貢献している。
 ブロックのまとめ役の場合、ポルトガルがOECDの中で2番目にもっとも不平等な国であるからには、「貧困と闘いもっと高い経済成長を得る道は、経済的不平等と闘う道だ」。しかし「これは、IL(新自由主義政党のリベラル・イニシアチブ)と右翼が提案するような、最高俸給に対する個人所得税の削減によってはなし得ない」、また社会保障制度への拠出の私有化によっても同様、とモルタグアは続けた。彼女はこの後者を「惨事を呼ぶ」提案とみなした。

貧しい国は
低賃金ゆえ


 「その提案が想定するすべては、全労働者が私的な基金に千ユーロ払い込むことだが、あなたたちは年金支払い基金に1年で17億ユーロもの穴を開けたばかりだ」、とブロックのまとめ役は警告した。そして、「英国を1ヵ月かそこら統治した自由主義の首相がいたが、生み出された金融混乱は年金基金がその価値の40%失うほどのものだった」と思い出させた。換言すれば、「単にひと月だけの英国統治によって金融市場を爆破した無責任な新自由主義の首相がいたためだけで、その時退職し、市場年金に依拠する年金しかもっていなかった全員が、かれらの年金価値の40%を失った」のだ。
 マリアナ・モンタグアはまた、制度の安定性についての「危機の噂流し」を生み出したとしてPSの絶対多数を批判した。それは、「嘘をつき、議会に代わりのデータを送って、13年の社会保障の持続可能性を危険にさらすと思われるとの理由で、PSは法に従うことはできないだろうと語る」ようなことだった。
 討論は、政治的衝撃と司法長官府の諸行為を伴った先頃の事件に関連する司法の主題で続いた。マリアナ・モンタグアは、検事総長が「民衆との対話に向けた資格」を保持する必要、さらに「進行中のプロセスを説明する」必要をも擁護した。しかしながら彼女が強調したことは、これは、「EU内で最高刑を適用する」国であるような、また「裁判前拘留で刑務所収用人口の20%」を抱え、「費用と時間浪費が多すぎる」国であるそのポルトガルでの司法ゆえの問題ではない、ということだった。
 3番目の問題は、統治のために極右の支持が必要になった場合何をやるつもりなのかについて、AD(民主連合、中道右派の選挙連合)指導者のルイス・モンテネグロが再度回答できなかったことに関係する統治能力の問題だった。
 マリアナ・モンタグアはあらためて、左翼の過半数がこの国にとって唯一の安定したシナリオだ、また文書化された協定の利点は「民衆がそれを知るようになることができ」、それを評価のために保持できることだ、と力説した。そして彼女は、3月10日に「絶対多数は生まれていないだろう」と請け合いながら、立法に向けた協定は「われわれに国を点検し、大きな改革を行うことを可能にする」と続けた。
 彼女は、「その多数派にかれらだけでは実現しないと思われる方策」、たとえば「カイクサ(ポルトガルの国営銀行会社:訳者)を通した住宅ローン分割払いの引き下げ」や「非居住者への住宅売却の禁止」を「強制できるのが左翼ブロックの強さだ」と語った。
 そしてそれらの方策は、PSが今日「不可能」と語っているものなのだ。マリアナ・モンタグアは「私は最賃引き上げが不可能で、EUがポルトガルに制裁を課したがっていた当時を思い起こす」と思い出させ、賃金防衛に関しブロックが過去に行ったように「それらの解決策を強制するブロックの強さに」自信を見せた。

防衛政策でも
具体的に論戦


 防衛政策に関しては、マリアナ・モンタグアは「パレスチナに適用されるように自己決定の原則がウクライナに適用される」、そして「ポルトガルは常に」イラク侵略の時に起きたような「戦争主導側とではなく平和主導側との協力という立場に自らを置かなければならない」、と指摘することで始めた。そして彼女は「守られなければならない協力分野は、欧州安全保障協力機構の枠組み内部での欧州の協力分野だ、われわれの軍隊はあらゆる他の部隊に自らを従属させずに、その中で協力しなければならない」と力説した。
 防衛支出の場合彼女は、「それは、国を守ることとわれわれの憲法に従うための必要でなければならない」、そして「外国で生産された技術を輸入することで外国の利益に従う」ために利用されてはならない、と信じている。彼女はまた、2004年におけるPSD/CDS(中道右派政党)政権の選択の事例を示した。その時その政権は、「沿岸を監視し人々を救出するような」幅広い機能を持つことを考慮して多目的船舶を購入する代わりに、「告発を受け買収の有罪判決を宣告されたドイツ企業から潜水艦を買い入れることを決定した」のだ。彼女は、「これはポルトガルの海事産業回復と組みにできるということがもっとも道理にかなっている」と指摘した。
 選挙法に対するあり得る変更に関しては、「民主主義の歪曲となるような、比例代表制の歪曲も単純小選挙区制に扉を開くこともない、ある種の民族的補足枠選挙区の導入は受け容れて良いだろう」、彼女はこう語った。
 この論争で提起された最後の問題は、学校内での携帯電話使用だった。マリアナ・モンタグアは、グラウンド内でのスマートフォン使用を制限するブロックの提案を思い起こさせた。それは「グラウンドは社会的な交わりと遊びのための場でなければならない」との確信によるものだ。「われわれは、パンデミック中とその後に画面とソーシャルネットワークにさらされたことが及ぼした影響を理解しなければならない」、それは「子どもたちの社会的交わりと遊びの減少」に導いた、と。
(冒頭紹介と訳出は、「アンティキャピタリスト・レジスタンス」向けにデイヴ・ケラウェイが行った)

▼デイヴ・ケラウェイはアンティキャピタリスト・レジスタンス内部の、ソーシャリスト・レジスタンスおよび第4インターナショナルの支持者。(「インターナショナルビューポイント」2024年3月1日)  

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