米国 抗議の中の一般教書演説
バイデン、大統領選の運動開始
ダン・ラボッツ
バイデン大統領は、議会に対する最高行政府の年次報告である一般教書演説を、彼の大統領選キャンペーンを発進させるために利用した。それは、抗議に駆けつけた数百人がパレスチナでのイスラエルの戦争の停戦を要求して、ホワイトハウスから議事堂にいたるペンシルバニア通りを封鎖した中でのことだった。
彼の年齢――81歳――を理由に懐疑感に直面してきたバイデンは、エネルギーと熱のこもった1時間の演説を届け、強力な指導者として自身を押し出し、ドナルド・トランプ前大統領を批判し、彼には「私の前任者」としてしか言及しなかった。彼の演説は、彼自身の成功に関する過大視が充満していたが、女性の中絶権を守り、公衆衛生や教育を改善すると思われるような、主として進歩的内政課題設定であるものを提示した。とはいえ、彼の党内の進歩派は、移民に関する、また特にイスラエルの戦争に関する彼の立場を批判していた。
準備された演説と即興的見解の中でバイデンは、二党合意の移民法案を下院で通すよう当然のこととして共和党に要求した。かれらはその法案をトランプの指導性にしたがって採択を拒絶してきたのだ。トランプは、国境および移民の問題をめぐってバイデンを攻撃できることを彼が強く望んでいるために、その通過を望んでいない。しかしこの法案は、米国法と国際法に違反し、難民申請者の米国入国を否認し、国境を軍事化すると思われることを理由に、進歩派から批判されている。
バイデンのイスラエルに対する無条件的支持、および休戦呼び掛けができずにいることへの失望を理由に、州の予備選でバイデンへの投票を拒否した、また代わりに中立に票を入れた数十万人の民主党支持者との関係で、バイデンは、ガザにおけるパレスチナ人の恐ろしい状況を認めるそぶりを示さざるを得なかった。彼は彼の演説の中で、もっと長期の停戦に導く可能性もあるとの期待に基づき、イスラエルの人質を解放させる目的での、「6週間続くと思われる即時停戦」を訴えた。彼はさらに、米国は海を通じてガザに援助を届け始めるつもりだ、と公表した。
バイデンの演説は、彼の党によって全体として好感で受け取られたものの、世論調査によれば、人々を大きく動かしたようには見えなかった。当面、4年間キャンペーンを続けてきたトランプは、戦場になる諸州で世論調査のリードを保っている。しかしバイデンと民主党は、寄付集めと草の根の組織化でははるかに先を行っている。
彼の大衆集会での演説で何度も何度も届けられたトランプの主要なキャンペーンメッセージは、「監獄、刑務所、さらに精神病院」から出た「何百万人」という移民が米国に「侵略し」続けている、というものだ。彼は、バイデンの国境政策は「米国を転覆するひとつの陰謀」に等しい、と語ってきた。
彼は、彼を信じ切っている追随者に向け途方もない主張を行っている。たとえば、移民の高潮が理由で、ニューヨークシティには「もはやリトルリーグは全くない。もはやスポーツもない。ニューヨークにはもはや暮らしがない。そして多くのこれらの都市も同じだ」というような言明だ。そして彼は、「移民は今この国の血を汚染している」とのヒトラーばりの言明を守ってきた。
多くのパレスチナ人やアラブ心やムスリムの有権者、また黒人や若者の有権者は、棄権するかもしれない。互角のバイデンとトランプとの関係で、第三党が選挙を決定する可能性も考えられる。そのスローガンが「左翼でも右翼でなく前進」である「ノー・ラベルズ・パーティー」は、副大統領を民主党員として大統領に共和党員を立候補させることを提案しているが、しかしこれまでのところ候補者を全く確保できていない。
緑の党のジル・ステインは、ミシガンと他の州で、トランプの勝利を確実にするに十分な票を民主党と無党派から勝ち取る可能性もある。急進的な黒人神学者のコーネル・ウェストも似たような影響力をもつ可能性がある。左翼は、トランプを敗北させるためにバイデンに投票するつもりの者と、進歩派のステインやウェストに投票するつもりの者、さらに今回は棄権するつもりの者の間で分裂している。われわれは、11月5日までこのすべてを論争し続けることになる。(2024年3月10日)(「インターナショナルビューポイント」2024年3月10日)
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