アルゼンチン 岐路に立つミレイ政権
根本問題は深い経済危機
社会的爆発の可能性は消えない
マルティン・N
最初の敗北と
政治的孤立化
「改革たばね法」の撤回に関する論争でのミレイの政治的な敗北を受けて、政治的孤立化と連携した知事たちまで含んで中道派との衝突の時期が続いた。政権は、問題の法案承認に対する先の部分からの支持不在に対し、諸州への資金供与カットで、また非常に攻撃的なレトリック(知事どもは裏切り者、議会はネズミの巣窟、あらゆる敵対者は盗人と犯罪者だと)を使って応じた。
3月1日、議会の通常会期開会における彼の演説に基づけば、ミレイは少なくとも中道派との、つまり「友好的な反対派」として知られている部分との関係に関する限り、ものごとを正しく設定したように見える。これは、攻撃的で暴力的ですらある主張を維持しつつも、彼が新しい交渉を提案したことが理由だ。つまり、中央国家と諸州間で5月末までに締結されるべき協定のことだ。
この協定は、全体として彼のウルトラ自由主義の政治路線に基づいているとはいえ、同時に政府が資金を断った後に破綻の瀬戸際にある諸州を助けるための財政協定も伴うと思われる。この理由から知事たちは、「改革たばね法」の承認にミレイがひとつの条件をつけたとしても、先の考えを拒まず、またそれを支持してさえいる。
「改革法案」対
州財政の衝突
これが戦略的変更―より多くは、大統領の取り巻き部分が求め続けているように見えるような、状況に応じた連携者との対話と交渉という方法における―か、それとも政治的な主導権を取り戻し時間を稼ぐための純粋に戦術的な変更かは、時間だけが告げるだろう。交渉が結論に達するのが簡単とは見えない以上、われわれはこれから、交渉がどう進展するかを見ることになるだろう。
一方、何人かの知事と中道派の政治家には、法案がそれに反対するよう彼らを導いたと同じ条件にとどまっていることを条件に、この法案を受け容れる用意があるとは見えない。同様に、現在の条件で5月協定を受け容れることは、先の法案撤回後に築き上げた強さの立場とあらゆる政治的主導性をかれらに失わせる可能性もある。
ミレイが対案を受け容れるかどうかは今後分かることとして残っている。ちなみにその対案は、ミレイ自身のものよりも急進度合いが低いとはいえ、同じ程度でアルゼンチンブルジョアジーを利するだろう。
交渉における中心部分は、諸州向けの資金に関する政府の恫喝が内包する実体的影響になるだろう。3月14日の上院(それは今、後述の指令を拒否するか明確に承認するかを決定しなければならない議員たちだ)による大統領指令に対する拒否は、情勢を変えるようには見えない。交渉は決まった回答がないままであり、口調も相対的に穏健なままだ。
中道派の基盤も
反ミレイに傾斜
あり得る政治的合意は必ずしも、今後政府が障害なく前進できる、ということを意味するわけでない。第1に、中産階級の一定部分は大統領の「スタイル」によってまずます呆れさせられているからだ。つまり、彼の数多い言葉での攻撃やツイッターのトランプばり利用(差別的メッセージや侮辱をツイートしたりリツイートすることによって)はショックを与え、右翼ジャーナリストさえも今異議を唱えている。
同様に彼のいくつかの発言の中で、彼は大統領官邸内の「ウーメンズ・ラウンジ」を、男の肖像写真を飾った「国の英雄ラウンジ」に改名すると決めた。ちなみにその発言があったのは、過去の独裁期に行方不明になった人々の数を疑問視した時であり、彼が「緑のスカーフをまとった殺人者」(中絶の権利を擁護するフェミニストがまとったスカーフに関連して)について語った時であり、果ては、国の様々な街頭で何万人もの女性がデモをしていた3月8日の時だ。中産階級のこの部分は、中道派の社会的基盤の部分であり、政府に余りに好都合な合意の際には、陣形再形成をせき立てる可能性がある。
しかし中心部分は、社会的爆発の可能性になるだろう。購買力への変わることのない攻撃、深刻化一方の貧困、解雇といくつかの大企業の一時閉鎖を前に、労働者の大きな部分の忍耐力は、限界に達するかもしれない。アルゼンチン経済は、政府がたとえ会計を安定させるために時間を稼ぐとしても、労働者と年金生活者の困窮を、したがって政府の選挙基盤部分の困窮を、ただ深刻にするだけになるほどの深い危機にあるのだ。(2024年3月21日、「ランティカピタリスト」よりIVが訳出)
▼筆者は、アルゼンチン出身のNPA活動家。(「インターナショナルビューポイント」2924年3月)
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