米国 テネシー州VW工場

自動車労組が歴史的勝利

ダン・ラボッツ

 UAW(全米自動車労組)が先週、米国で労組の力を回復し始める潜在力をもつような、労働者にとってのすばらしい勝利を収めた。

闘う指導部の
存在が勝利を


 テネシー州チャタヌーガのフォルクスワーゲン(VW)工場の労働者が4月20日、UAWに加わることに圧倒的な票を投じた。これは、1940年代以後では南部のこの産業での労組選挙における初めての勝利であり、歴史的な勝利だ。労組支持には2628票が投じられ、反対は985票、つまり73%が労組を支持した。投票資格のある労働者は総計で4326人、そしてそのおよそ84%が投票した。
 労組委員長のショーン・フェインはこの勝利を祝って労働者たちに「皆さんは労働者階級の者ができるもっとも重要なことをまさにやり終えた、それは堂々と立ち向かうことだ」と語った。
 南部は今まで、経営者たちの、ノンユニオンの未組織労働者を雇用する企業の、拠点となっていた。そしてそこでは、労働者には全く投票権がなく、かれらの職場内でも発言権が全くなかった。この勝利が他のところに達するとすれば、そしてそう期待されるが、それは米国内の企業と労働者階級の力関係を完全に変えるだろう。
 1860年代までは奴隷制に基礎づけられ、1960年代まではジム・クローの隔離や公民権剥奪やリンチ行為に基礎づけられた南部は、この国でもっとも労組が少なく、賃金は最低で、もっとも貧弱な教育レベル、最悪な公衆衛生、そしてもっとも後進的な政治的姿勢を抱える米国の地域としてとどめられてきたのだ。

労組組織化の波
新しい日到来か


 UAWは、何百万ドルも費やしたにもかかわらず、何十年もこの工場や南部の他の工場の組織化に敗北した。この勝利は今なぜなのか? UAW委員長のショーン・フェインの指導性の下に、この労組は昨年、フォード、ステランティス、GMを相手に45日間のストライキを実行し、10月、大幅賃上げ、階層制終了、さらに電気自動車工場におけるいくつかの代表権を含んだ協約を勝ち取った。UAWは、国中でついには5万人を巻き込むような戦略的に選んだ工場のストライキエスカレーションを使って一度に三大企業でのストライキを決行、企業を屈服させた。
 米国は何十年も、このような工業労働者のストライキを指導する労組を見たことはなかった。ノンユニオンのVW工場の労働者は今、闘う意志のある指導部を見、かれらもまたこの労組に加わるべきだと決めたのだ。
 UAWは、そのストライキに勝利したことで、産業のノンユニオン工場組織化に4千万ドルを振り向け、そして今その最初の勝利を得ている。今やVWで勝利し、翌月UAWは、アラバマ州のメルセデス―ベンツ工場で5200人の労働者の票を勝ち取ることに挑むだろう。この産業が電気自動車への移行を行っている中で、UAWの強さは労働者を守る上で必要不可欠になるだろう。
 南部の共和党知事たちは、かれらの地域の労組に対決する強硬な態度をとった。テネシー州知事のビル・リーとテキサス、サウスカロライナ、ミシシッピー、ジョージア、さらにアラバマの知事たちは、共同声明に署名した。それは、労組支持の票は州経済、労働者の職、「われわれがそれによって生きている諸々の価値」を危険にさらす可能性があるだろう、と語っている。そしてこの声明は「かれらは尊大にも自らを民主的社会主義者と名乗り、かれらがすでに代表している工場で削減されつつある自動車労働者の職によりも、バイデン大統領が選出されることを助けることにもっと焦点を絞っているように見える」と語っていた。
 他方バイデンは昨年、ストライキ中のUAW労働者とともにピケットラインを歩くこれまでで初めての大統領になっていた。彼は労働者に祝いの言葉をかけ、「記録的な協約を求めた上首尾の闘いで自動車労働者と並んで立ったことに私は誇りを感じた。そして私は今誇りをもって、かれらがフォルクスワーゲンで成功裏に組織化している中で自動車労働者とともに立っている」と語った。UAWは大統領としてバイデンを承認した。
 われわれは1960
年代以来経験したことがないような労組組織化の波になる可能性もあるものの始まりにいる。労組選挙を求める請願は2024年に、前年比で35%も上昇し、米国人のおよそ67%は今労組支持と語っている。諸労組は今、南部組織化の用意ができている。新しい日が明けつつあるのかもしれない。(2024年4月21日)(「インターナショナルビューポイント」2024年4月21日)

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