EU議会選 極右伸長と中道勢力のもちこたえ
中道右派支配の構造は不変
反社会自由主義左翼停滞の理由の熟考必要
デイヴ・ケラウェイ
EU議会選について一般報道は、極右の伸長と、それがフランスに政治的激震を起こしたことに焦点を当てている。以下は、それらも論じているが、今回選挙の全体的な結果も簡潔にまとめ、一般紙では伝えられていない貴重な情報もあるので紹介する。(「かけはし」編集部)
EU議会選は独特だ。有権者は政権を選択するのではなく、各国出身の閣僚から構成されるEU委員会に政策を提案する諮問的議会を選出する。そしてEU委員会があらゆる決定を行う。驚きではないが、投票率は各国議会選よりもはるかに低い。それは昨日、スペインの30%台からハンガリーの60%以上に広がる形で、平均で約50%だった。
独自の特徴示す
EU議会選の票
EU議会選票は、各国政治とはそれているように見える可能性がある。英国がまだEUの中にいたとき、ファラージの辛辣に反EUの政党は2014年28%の得票率と数十人の議員を獲得した。しかしそれでも、UKIPとして立候補した国会議員はひとりも獲得できなかった。緑の党もウェストミンスターのただひとりの議員よりも多くの議員を獲得した。
EU議会選のある種民主的な比例代表制は、完全小選挙区制や2回投票システムとEU議会選の票の間にある違いを拡大している可能性がある。EU議会選の票が世論調査にもっと似ている限りそれは、各国政権内の危機や不満を指し示している可能性もある。2014年のUKIPの勝利はおそらく、EUのメンバー国に関する国民投票を呼びかけたキャメロンの決定に影響を与えた。
危険を内包した
マクロンの賭け
今日、報道は国民議会の解散と3週間以内の選挙を呼びかけたマクロンの決定で一杯だ。得票率33%によって今回の選挙で議会内最大政党になったポストファシストの国民連合(RN)は、マクロンのルネサンス党の得票の倍になった。エリック・ゼムールの極右の再征服党を含んで極右は40%近くに達している。マクロンはなぜこの劇的な動きを行ったのか?
それは外見ほどの賭けではない。マクロンはこの間、議会で機能する過半数をもたずに、立法を押し通すために大統領制の仕組みを利用してきた。彼は、新たな選挙を通じて新たな過半数をつくり出そうと試みる中に、失うものは何もないと見ている。
フランスでは、選挙区での過半数に届かない場合、1週間後に通常は外された候補者からの支持を当て込んだ2回目の投票がある。ルペンのRNはイタリアのメローニとは異なり連携相手をもたず、彼の2回の大統領選挙の勝利で機能したように、マクロンはもうひとつの反極右の「共和国戦線」が彼を助けるだろうと当然視しているのだ。
左翼の弱さは、議会内での強力な左翼野党の過半数の危険がほとんどないことを意味している。昨日の結果は、メランションの不服従のフランス(LFI)の9%に対する14%という形で、社会自由主義の社会党(SP)が左翼の最大政党として自身を再確立したことを示している。
前回議会選で成功したNUPES(新人民連合・環境・社会)の左翼連合は、SPと共産党の両者がメランションから離れたことで消滅している。ガザ、ウクライナ、またEUに関し分裂がいくつかある。キャンペーンの中でLFIはその名でパレスチナの旗を掲げ、そのEU議会票を増やした。
マクロンは、RNが万が一過半数を獲得することがあるとしても、彼の大統領任期の残り3年の間切り盛りする(共存)こともできるだろうと計算しているかもしれない。RN政府は、資本の諸々の危機を管理しなければならなくなれば、極右からの支持を失い、ルペンの大統領選勝利をもっとありそうになくするかもしれない。
しかしながらこの危険に満ちたゲームは、ルペンを次の大統領に推し進める可能性もあるのだ。フランス資本のいくつかの部分は、マクロンがもはや存続できない場合、ルペンを代わりの者と考えはじめてさえいるかもしれない。
極右諸勢力
各国の結果
極右はEU内で前進した。しかしそれはEU議会内の右派・中道の過半数に取って代わらなかった。後者は、多くの問題に関する中道左派諸グループからの支持から利益を受けている。強硬派右翼はEUの権力や他の問題に関し分裂している。メローニとルペンは別のグループに属している、より多くの議員を確保したことが、資金や資材や制度的な利用権を提供する形で、その勢力発展に向け極右を助けている。
スペインのアンティカピタリスタのミグエル・ウルバンのような革命派議員は、EU議会議席の利点を示している。マドリードでの先頃の十分に宣伝された会議が見せつけたように、極右の国際協力は、より大きなグループの助力によってしばしば左翼のそれをしのいでいる。
何人かの指導者がもつナチスへの共感や移民すべてを国外追放する計画に関する否定的な発覚にもかかわらず、ドイツのAfD(ドイツのためのオルタナティブ)は、3%伸ばした。オーストリア極右の自由党は25・7%で得票首位になった。メローニのイタリアの同胞は2%伸ばし28%になったが、目標の30%には届かなかった。それは、権力での彼女の2年と進行中の生活危機の費用を前提としたとき悩ましい印だ。右翼連合内における彼女の主な競争相手であるサルヴィニのレガは、成果が思わしくなく、彼女の立場を強くしている。
他では、スペインのネオファシストのVox(声)グループが10%近くまで3・5%上昇し、2議席増やした。反腐敗と陰謀論を焦点化したグループのセ・アカバ・ラ・フィエスタ(党は終わった)は、5%近くと3議席を得た。スペインでの低投票率が極右諸政党の成功を説明するかもしれない。ポルトガルでは、チェガ(たくさんだ)が10%近くと2議席に前進した。オランダでは、極右の自由党が17%を得たが、中道左派がかれらを上回った。
緑のグループ
が最大の敗者
これらの選挙では緑の諸政党が後退を喫した。生活危機の犠牲の真ん中で保守党に見られたような右翼の攻勢が、ひとつの損失をもたらしている。ドイツの緑の党は、おそらくはショルツの社会自由主義のSPDとの連合のおかげで、9%沈み込んだ。フランスの緑の党もまた9%失った。イタリアでは、シニストラ・エ・ヴェルディ(左翼と緑)に基づく連合が7%近くに達し、議席獲得のための敷居を越えた。この連合の首位候補者であるイタリア人反ファシストのラリラ・サリスは、反オルバン抗議行動の後現在ブダペストで屋内軟禁下で拘留されているが、イタリアで政治的な興奮を引き起こした。全体として、緑のグループはEU議会で20議席を失った。
反社会自由主義
左翼は突破不発
社会自由主義より左の左翼、元社会民主主義諸政党は1議席を失ったが持ちこたえた。メランションのLFIはその得票率を2019年の6%から9%以上に伸ばしたが、それでもその大統領選や議会選の得票率以下だ。ポルトガルの左翼ブロックと共産党は、約4・5%で議席を維持した。イタリアでは、ジャーナリストのミケレ・サントロが率いた反戦名簿が敷居に達することができなかった。
ドイツの左翼党は3議席獲得したが、2・7%に低落し2議席失った。その初めての選挙登場で6議席と6%を獲得したザーラ・ヴァーゲンクネヒト党の赤/茶分裂が左翼党を傷つけることになった。ギャロウェイ(英国の元労働党議員:訳者)の労働者党に似たこの党は、伝統的な左翼経済政策、「陣営主義的」対外政策、労働者主義的反アイデンティティ政治、さらに反移民的適応を組み合わせている。
われわれは、経済的、社会的、また環境的危機の真ん中で伝統的な改良主義諸政党の左に立つ政党がもっと大きな影響力を作り出すことができなかった理由を、よく考えなければならない。
全体としてEUの政治は、成長中のポストファシズム極右の反動的でレイシスト的立場に合わせている中道右派によって今も支配されている。英国の労働党は、数少ない中道左派政権のひとつとして、来月サンチェスのPSOE政権に加わるだろう。それは、この大陸の危機に対し前向きの出口を提供しそうにない。スターマー政府の慎重さと穏健さは、今回のEU議会選で見られたように、極右のレイシスト勢力により一層支配される反対のことになる可能性もある。(2024年6月10日、「アンティキャピタリスト・レジスタンス」より)
▼筆者は、アンティキャピタリスト・レジスタンス内のソーシャリスト・レジスタンスと第4インターナショナルの支持者。(「インターナショナルビューポイント」2024年6月10日)
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