民族的マイノリティの自決含む民主化要求が鍵

かけはし 第2658号 2021年3月22日

香港 2019年の抵抗運動の歴史的意味
長期的闘いへ始点を刻む
ローカリズムにも進歩的変化の可能性

區 龍宇

 2021年2月19日、流傘(在外香港人左翼のネットワーク:訳者)はソリダリティを含むいくつかの他の組織と共に、區龍宇の著作『反乱する香港、抵抗運動と中国の未来』(Pluto Press、2020)のウェブサイト発刊イベントを開催した。以下は、著者によって僅かばかり校正された冒頭の要点提起。

香港内と他の世界には理解に溝


 この議論の組織化に対し流傘に感謝する。私としては、私の著作が扱おうとした2019年の香港抵抗運動がもつ歴史的意味という主題に関し、7点に分けて考えを説明したいと思う。しかしまず、2019年反乱に関する私の著述と関係する私の経験を皆さんと共有させてほしい。
 私はまさにその始まりからすぐに、英語版と中国語版両方を書く計画を立てた。しかし早々に、異なる版には異なるアプローチが必要と実感した。各読者には見方でそれほどの違いがあるからだ。どうすれば両者を満足させられるだろうか? 
 西側の読者は、たとえば香港の抗議行動参加者が彼ら自身の使用目的でカエルの図象をまねている、という事実に困った思いをもちそうだ。それゆえ彼らは、「彼らは極右ではないのか?」との質問を行った。そして私は、ほとんどの若者たちは単にカエルを滑稽だと考えたにすぎない、彼らは極右ではない、と説明するために、いくらかの時間を費やさなければならなかった。実際に彼らのほとんどは、まさに社会運動の新参者だった。そして香港の例では、ほとんどの者が左右に関しての考えをまったくもっていなかった。
 他方で私は、極右と見られたことで攻撃を受けたと感じた、それらの香港の若い抗議行動参加者に対応しなければならなかった。それから私は次のように説明しなけれならなかった。つまり、確かに君たちはカエルは滑稽と考えたにすぎない、しかし君たちは右と左の普遍的な違いを、あるいは世界の残りがカエルについて考えることを、単純に無視してはいけない、と。君たちが間違ったメッセージを世界に送るならば、君たちは正しい連携者を見つける上で君たち自身を道に迷わせることになる、と。
 したがって私の著作は確かに、英語版と中国語版双方で、香港の抗議行動参加者と英語圏の読者の間にある理解の溝に橋を架けようとするものだ。そのことに私がどれほど成功しているか、それを決めるのはあなたたちだ。

民主主義理念が民衆内部に着床

 そこで7点に移る。
1.昨年の反乱に対する特徴づけ。
それは基本的に、米国や英国が操作したものではなく、民衆的な民主主義運動だった。この運動は、香港の独立をめぐるものでさえなかった。それは、米帝国の介入がなかった、あるいは香港の独立を求めた者が1人もいなかった、ということを意味するわけではない。しかしそれらの者は、運動の勢いや方向に現実に影響を及ぼす上で十分な重要性をもつ、ということからはかけ離れていた。
200万人の抗議行動参加者を結びつけたものは、5つの要求であり、それは、犯罪人送還法案と警察の暴力への反対、および普通選挙をめぐるものだった。これらはすべて正統な要求だ。
昨年の反乱に対してわれわれは、香港の歴史上初めて、民主主義の理念が民衆多数の内部に根を下ろした、と言うことができる。2014年の雨傘運動は、民衆から40%の支持しか受けなかった。それとは対照的に、2019年の反乱は変わることなく、60~70%の支持を得た。この頂点で「1997年世代」の大きな部分が今、民主主義の闘争が成功するためには必ず直接行動が求められる、という考えを理解している。これはそれだけでもすばらしい成功だ。
そしてこれは、1989年以後この国の残りが厳しい抑圧下に置かれてきた中で、北京に対決して立ち上がる十分な大胆さをもつ都市としては中国で香港がただ1つだった、という脈絡の中のことだ。

運動の自立性は最後まで保持

2.外国勢力について。
確かに、親トランプ党派や親独立党派はあった。しかしそれらは完全に小勢力だった。一般論として、香港では政党政治は極めて弱く、断片化している。しかしながらこの弱さは、大手の親トランプタブロイド紙によって埋め合わされている。それには影響力があったが、それでもそれは、その立場を運動に受け入れさせるような何らかの仕掛けをもってはいなかった。全体として運動は指導者不在だった、ということを忘れないようにしよう。確かに、そのような巨大な運動は、対立的な諸傾向の全範囲を抱え込んでいた。
われわれは、しばしば米国国旗を打ち振る抗議行動参加者に焦点を当てた、西側主流メディアが行った高度に選択的な報道にだまされてはならない。実際カタルーニャの闘いを支持する大衆的な集会があった。また諸々のデモの中ではカタルーニャ国旗を打ち振る抗議行動参加者もいたが、その報道は小さかった。
さらに、3000人が加わったカタルーニャ連帯の集会もあったが、親トランプ集会程には大きくなかった。それでもそれは、無視されるべきではない十分な大きさだった。その集会の前に右翼ローカリスト(生粋の香港人以外の排除を主張する潮流:訳者)は、先の集会を行わないよう主催者を説き伏せようとした。 それが彼らの米国の連携者をうんざりさせることになるという理由だが、それにかまわず集会は進行した。
人はまた、香港の外国勢力はいつも現地化されている、という事実をも認めなければならない。それは、一定の左翼が香港の反乱と共に立ち上がることはしないと決めた時に、彼らが無視する方を選ぶものだ。ある程度の政治的かつ経済的影響力を保持し続けるよう米国と英国を助けてきた者は、北京それ自身以外の誰でもないのだ。彼らが制定した香港基本法がそれを公式に認めている。そこには、英国人判事がわれわれの裁判所に雇われることを可能にすることが含まれている。
確かにこれは取り除かれるべき植民地の遺産だ。しかしそれは、もっと悪い何かとではなく、もっと良いもので置き換えられなければならない。英国の慣習法を中国の法制度で置き換えるということは、香港の中国人にとってものごとを今確実に悪くし続けている。

政治的急進性と社会的保守性


3.この大運動の特別な特徴にもわれわれは留意しなければならない。
それは、政治的には急進的だが、同時に社会的には保守的な運動でもあった。それは、北京を標的にし民主主義を求める勇気を持つという意味で、また規模とそれが取り入れた手段という意味でも、政治的に急進的だった。
香港の民主運動はこれまで非常に平和的だった。それは、市民的不服従ですら容認しなかった。このタブーが破られた最初は、2014年の雨傘運動によってのことだった。次いで2019年、それは完全に新しい地平へと高められた。
他方それは、香港が維持している巨大な不平等と並んで自由市場に関するすべてをまったく疑問視しない、そうした社会的な保守主義を示す運動でもあった。運動は、中国共産党(CCP)に反対する者はトランプを含んで誰でもわれわれの友人、を意味した、「北京対香港」の観点で導かれた。われわれは途方もない富の不平等や貧しい者のひどい状況にも気を配らなければならない、との示唆があった時はいつも、これは現在の闘争には当てはまらないと見られ、それゆえ全面的に無視された。
抗議行動参加者のほとんどは、彼らが北京を主敵と見たがゆえに、また反乱は北京に反対する全民衆的な連合を優先しなければならないがゆえに、これには何の考えも向けなかった。しかしまた、極めて強い保守的な声もあった。その声は、民主運動に再配分の公正さという課題を少しでも持ち込むことに原理的に反対すると思われた。
これはここで深く根を張った社会的な保守主義が理由だ、と私は強調する。香港は、一つの自由港植民地、しかも非常に成功したそれであった。そしてある程度までそのままだ。長期の経済的繁栄を経て、人口の半分は政府が補助金を出している住宅などに住み、このすべてが、自由市場イデオロギーに対するあらゆる左翼的批判を古くさいものにしている。労働者階級は、福祉国家という理念には反対しないと思われる。しかしほとんどは、その要求を切迫して感じていないし、その要求に確信ももっていない。

中国に関する戦略的思考の不在


4.これはわれわれを、反乱の第4の特徴、つまりローカリズムに導く。
多くにとっては、ローカリズムとは香港アイデンティティを意味するにすぎない。つまり、ここの人々は彼らの未来を決定する権利に値する、ということだ。しかし、米国の保守的な既成エリートと事実上連携している筋金入りの右翼ローカリズムも存在してきた。彼らは組織的には弱体だが、組織された左翼の不在が、右翼ローカリストに実際の組織的な強さよりはるかに大きな声をもつ余地を与えた。それは、その設定課題、つまり米国政府との連携、あるいは本土中国人に対するレイシスト的な肉体的暴力、に向けて運動全体を操作するに足るほどには強くなかった。しかしそれでもそれは、何千人をも巻き込む行動を行うことができた。これらはトランプに懇願を行い、本土中国人にレイシスト的な言葉の攻撃を行った。
これらの行動はそれ自体では香港の反乱に対し何の重要な結果ももたらさなかったとはいえ、北京に対し、運動を反中国と描く十分な口実を与えた。本土中国人の多くは党の検閲の下にその宣伝を信じた。そして彼らのある者たちは、香港を訪れることを安全と感じなかった。
これは香港の民主運動にも同じく有害だった。また今もそうだ。それは、香港の長期的な成功が中国の民主運動の成功にかかっているからだ。一つの都市での革命は空想的な考えにほかならない。若い活動家たちは多かれ少なかれこれに気づいている。それでもほとんどは、中国の民主運動にではなく、西側に同盟者を求めている。彼らのほとんどは中国人に敵対するレイシストではないが、中国の民主的な将来にいかなる確信も持っていない。香港民衆の、特に中国に関して戦略的に考えることができない現状は、人々を切れ目なく右翼のローカリストの方向に向ける可能性もある。

可能性秘めた労組運動の誕生


5.昨年の反乱に関するもっとも興味深いものごとの1つは新しい労働組合運動だった。
この反乱は、指導者たちや諸組織に敵対的な運動として始まったが、それでもその最後には、若い労働者活動家に率いられた新たな労働組合運動をも生み出した。反乱はまた、民主主義に関するその視界が政治の領分を決して超えない運動として始まった。それでもこの反乱は、運動を政治の領分を超えて広げる、そしてここでの産業の諸関係を揺るがす、そうした潜在力を内包するこの新たな労組運動の引き金を引いた。
ほとんどは小さな組合だったが、大きな組合もある。たとえば、病院公務被雇用者連合(HAEA)は、8万人の被雇用者のうち2万人の組合員を抱えている。それは、コヴィッドウイルス蔓延を止めるために、本土中国人に対し国境を閉じるよう政府に要求し、2020年2月、5日間のストライキを成功裏に始めた。国際的な労働者運動の建設をまじめに考える者は誰でも疑いなく、左翼路線支持の議論を行いつつ、この新しい労組運動を支持するだろう。

民族的マイノリティの自決権を


6.香港でのローカリズムの台頭は、レイシズムと本土中国人嫌悪の右翼的議論を同時に意識的に拒否する限り、進歩的になる可能性もある。
私は香港の自己決定支持の論陣を張っているが、同時にその要求を、全中国の民族的マイノリティの自決権を含む、中国の民主化要求に結びつけてきた。チベット、新疆ウィグル、台湾、また香港のマイノリティ内部に強い分離主義があるとすれば、責められるべきは北京政権なのだ。
ほぼ1世紀前、国民党(KMT)とCCPの両者とも、帝国主義大国による植民地化と占領への対抗として、中国国民の再統一を追い求めた。しかしCCPの行動路線はKMTとは異なっていた。CCPは同じ目標を、あらゆるマイノリティの自決権承認というやり方で達成する綱領を作成した。そしてこれが、当時マイノリティの進歩的な部分を獲得する上でCCPを助け、最終的に権力に到達するようCCPを助けたものだった。
党のその後の、党が破った他の諸々の約束の中でも、自決権綱領の放棄は、党自身の退行を、党が今日官僚資本家の党へと転身を遂げる点に達するまでのそれ、を決定づけた。自決権を基礎とする漢人中国人と他の民族的マイノリティの民主的連合は、今も進歩的な設定課題であり続けているが、これはただ、CCP独裁、あるいはあらゆる1党独裁、がないことではじめて達成の可能性が生まれるだろう。「民族的再統一」を推し進めるためにCCP体制を支持するという陣営論者の議論は、丸を四角にするようなものだ。

長征の新たな出発点が刻まれた


7.昨年の反乱の前衛となった者は、若い世代、あるいはわたしが「1997年世代」と呼ぶものだ。
しかしながら北京は1年も経たないうちに、われわれに国家安全法を課すことで報復した。この2年にわたる闘争の直接的な結果という観点からは、われわれは闘いに敗北した、と人は言うことができるだろう。
現在進行中の過酷な抑圧を考えれば、運動が再び立ち上がるためには長い時間がかかるだろう。本質的に、「1997年世代」の大きな貢献は、われわれに民主主義を与えるよう北京を説き伏せることができるという古い世代のリベラルがもっていた幻想を彼らが投げ捨てることができたこと、それを基礎に彼らが偉大な反乱に乗り出した、ということだった。それが彼らができたことだった。しかし彼らは同時に、力関係と彼ら自身の不十分さを条件に、成功する希望をまったくもっていなかった。
それは私に、1人の少年が「王様は裸だ」と大声を出す、という「王様の新しい服」という物語を思い起こさせる。こうしてその少年は、この王にとっての政治的危機をつくり出したのだが、しかし明らかに彼は、それを解決する地点にはいなかった。同様に若者たちは、北京に対決する偉大な反乱の引き金を引くに十分な勇敢さを示すまでになったが、しかし彼らは、今回それを勝利に導くための政治的装備を欠いていた。
彼らは2019年の反乱を最終決戦と考えた。彼らは間違っていた。それは長期的な闘いのはじめだったにすぎない。そうであっても、「2019年の乱」は、この長征の新たな出発点になっている。そしてこれゆえにわれわれは、若者たちに、彼らの自己犠牲に、感謝しなければならない。(「アゲンスト・ザ・カレント」より)

▼區龍宇は、香港の指導的なグローバル・ジャスティス運動活動家。彼は現在「チャイナ・レイバー・ネット」の編集者、また「インメディア」でコラムを書いている。(「インターナショナルビューポイント」2021年3月号)

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