右翼の前進への民衆的反撃築け

イタリア 民衆的既成政治装置の瓦解を直視し左翼再建への挑戦を貫徹しよう

シニストラ・アンティカピタリスタ(反資本主義左翼)

 過半数政党が生まれなかった三月の総選挙後のすったもんだを経て、イタリアにようやく連立政権が生まれようとしている。一般紙では、できる政権は「EU懐疑派政府になる」として警戒的に報じられ、放漫財政、債務増大の予想と結びつけ、早くも金融不安も頭をもたげている。この動きを理解する一助として、イタリアの同志による選挙に対する総括・評価を紹介する。いずれにしろ、極めて不安定で新たな危機の出現も十分あり得る、との情勢評価が示されている。(「かけはし」編集部)

【解説】イタリアの政治的将来は、総選挙後一ヵ月を経てなおさら不明確になっている。この総選挙は、どのような単一選挙連合や政党に対しても、有効に機能する議会多数派をつくり出すことができなかった。
 とはいえ、三月四日の選挙は、外国人嫌悪の同盟(旧北部同盟)が率いる右翼の政党連合、およびポピュリストの五つ星運動の勝利だった。これらの勢力は各々得票で一位と二位になった。現政権党の民主党は厳しく罰を受け、議会の両院で三〇〇近くの議席を失った。まだ新政府は形成されていないとはいえ、右翼台頭の脅威は三月の選挙から鮮明だった。社会主義グループのシニストラ・アンティカピタリスタ(反資本主義左翼)は、選挙後に出された以下の声明(アントネロ・ゼッカにより英訳された)で、この結果に導いた社会的力学を説明し、前途に控える左翼にとっての任務を議論している。(「インターナショナル・ビューポイント」)

 三月四日の総選挙結果は、がっかりさせられるものであり、イタリアの政治情勢と社会情勢がどれほどまで警戒すべきものとなったかを、はっきり示している。それは、まさに多年続いた緊縮諸政策および労働者階級と社会運動内の分断およびその繰り返された後退を経た後の、諸階級間の好ましくない力関係を示している。

   (1)

 民主党(DP)とその書記長、マッテオ・レンツィは、主には労働者階級の諸権利と公教育システムに敵対した、新自由主義の諸政策を実施してきた後、ひどい敗北を喫した。右に動きつつある有権者から支持を勝ち取ることを目的に、現職首相のパオロ・ジェンティローニと内相のマルロ・ミンニティにより実施された移民敵視の反動的諸政策は、レイシズムと外国人嫌悪をその商標にしてきた右翼の同盟のような他の政党が票を引き寄せることを妨げることなく、むしろ労働者階級の分裂と弱体化に力を貸した。労働者階級の苦しみは移民のせいだとされてきたのだ。
DPの敗北は、現在あるいは過去にこの党と提携したすべての個人と党を弱めた。ピエール・ルイジ・ベルサーニ、マッシモ・ダレーマ、またピエトロ・グラッソ――全員が、DPからの左翼的分裂組織である民主進歩運動(DPM)の指導者――は、あまりに多年の間DPの政策を支えてきた後では、その党に対するオルタナティブと認められる可能性はとうていなかった。
共産主義再建党(PCR)からの右翼的分裂組織である「イタリア左翼」もまた、多くの自治体と地方議会でDPと共に統治にあたり、DPMと連携した選挙連合の「自由と平等」に参加した後では、肯定的な役割を果たすことはできなかった。今後この政治勢力のために待ち構えているものは何もないかもしれない。
ロマノ・プロディ政権〔中道左派政権、名前はその首相に由来、二〇〇六年から二〇〇八年にかけこの政権にはPCRも参加〕に対し起きたような、DPのような政党に対する不信と反感は、この党は今も自身を左翼と称し、またそう見なされているが、自らを類似したものと定義している勢力すべてに否定的な結果を残した。真実の左翼的オルタナティブの再建は、「権力を人民へ」の選挙リストの形成をもって今回の選挙で始められたが、ある程度の時間を必要とするだろう。

   (2)

 五つ星運動(5SM)は、予想を超える地滑り的勝利を得た。有権者内部の怒り、挫折感、そして主流諸政党に対するオルタナティブへの切望が、ベッペ・グリッロ〔イタリアのコメディアンで5SM創立者〕とルイジ・ディマイオ〔現在の党指導者〕の党の中に出口を見出した。5SMはローマやミラノのような大規模な地方議会での統治で困難な時を過ごしてきた。とはいえそれは、大多数の民衆によって特に南部では、またさまざまな社会諸層の中で、急速な政治的変化の達成には最良の道と受け取られている。これは以下の理由があればなおさらそうなる。つまり5SMの矛盾した、また不適切に定義された政治的立場は、社会のまったく異なる諸層にも訴える力をもつ、という理由だ。5SMは、イタリア資本主義の管理における本質的役割に基づいて、決定的プレーヤーだったが、次に起きることの中でもそうであるだろう。
5SMは前進したが、投票率は低いままにとどまり、二〇一三年の水準に近かった。適格と認められた有権者の四分の一以上が、支持できる者を見つけられなかった。票を投じなかった人びとの中で目立つのは、大きな数をなす搾取された者と周辺化された者だ。

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 もっと衝撃的なことは、同盟(指導者はマッテオ・サルヴィニ)のような反動的で外国人嫌悪の政党に対する国民的支持の二桁に上る増大だ。移民に対するサルヴィニの憎悪に基づく、労働者階級のかなりの層に対するこのデマゴーグによる汚染は、連帯と集団的な民主的行動の、将来にとっては深刻な脅威である解体を表している。
中道右翼連合内部では、フォルッツァ・イタリアが同盟に超えられ、そこには元首相のシルヴィオ・ベルルスコーニが光を奪われるかもしれない、との結果が付随している。もう一つの民族主義の、また反動的な政党である「イタリアの同胞」の成功に留意し、世論と因習的な政治的な知恵において、過ぎ去ったものへの移行がどれほどまで深いか、を認識することも重要だ。
重要なこととして、右翼連合は、それだけで政府形成を可能にする四〇%という閾値に達することに、失敗した。しかしその選挙における好成績は、それが現在の政治的環境の中で中心的な政治勢力になるだろう、ということを示している。そしてその成功はそれ以前の諸々の中道左翼政権の惨めな破綻の証拠だ。
イタリアの二つの主なファシズム運動であるカサ・ポウンドとフォルツァ・ヌオヴァの両者共、不幸なことに選挙不適格を逃れることに成功し、全国規模の聴衆を新たに得ていることをも、心にとどめなければならない。
この選挙の結果は、三つの連合/政党のどれも絶対多数に達しなかった以上、そしてこのどれもが何らかの種類の大連立に参加する意志があるとは見えない以上、矛盾した制度的状況を生み出している。これは、異質的で弱体な諸勢力間の連合の、普通ではない詰め合わせに導く可能性がある。そしてそれは、支配階級が操作する上で難しいものになる可能性がある。さらにまた、政治危機が新たな総選挙を強いる可能性もあろう。
この情勢は、右翼へのさらなる移行に対する唯一の解毒剤が労働者階級自身の活動力であることをはっきりさせている。そしてこの労働者階級の自立的活動能力は今やかつて以上に急を要するものになっている。

   (4)

 労働者階級の運動にとっての今回の選挙が示した後退、そして選挙における労働者階級のオルタナティブの分解については、その責任が最大の労働組合の指導部にあることをはっきりさせなければならない。彼らは、中道左派の政治指導部によって指揮された緊縮諸政策にこれまで同意してきたのであり、諸々の条件が熟し、労働者からの強い要求があった時であっても、それらと対決して闘っていた労働者に反対してきたのだ。
労組の指導者たちは、労働協約交渉で譲歩を内容とする合意に署名したことで、なおのことはるかに責任がある。経営者たちはその合意を、労働者階級の運動がもっと強力であった時代に彼らが合意を強いられたものを取り戻すために、利用してきたのだ。たとえば、二月末の雇用主並びに彼らの団体(イタリア産業総連合)との協定は、労働者に対するいわば拘束衣として作用するだろう。
CGIL(イタリア労働総同盟)、CISL(イタリア労働者組合同盟)、UIL(イタリア労働連合)――イタリアの三つの主要労働組合組織――は、労働者にとってそれが最良との名目で譲歩を交渉することで、彼らの諸機構と政治的役割を保持したいと思っている。われわれは二つの惨事を前にしようとしている。つまり一方には選挙での右翼の勝利があり、他方には、大労組組織の側に完全に成熟した階級協調があるのだ。
われわれが労働者階級の目下の要求を基礎にした労働組合の組織化と社会的闘争から始めなければ、われわれは、新自由主義に異議を突き付ける左翼を建設することは――まして資本主義に異議を突き付ける左翼の建設はなおのこと――できない。これこそが、草の根のあらゆる労組活動家およびCGIL〔最大の労組組織の中ではもっとも左翼的〕内左翼反対派を巻き込む統一戦線の建設が必要だ、とわれわれが考える理由だ。そして先の左翼反対派は、今年の組合大会にそのメッセージを届けるという挑戦に敢然と立ち向かうだろう。

   (5)

 左翼のポテレ・アル・ポポロ(権力を人民へ、PtP)の選挙結果は、現在の政治的環境の下で期待されたかもしれないものではなかった。しかしそれを過小評価してはならない。この連合が大きな障害に直面してきたことを考えれば、それは良好な出発点だ。
左翼の強力な極の再建は、政治的諸組織と社会運動の散在状況に抵抗することを介して達成されなければならないだろう。しかしこのことは、選挙を前にしたこの三ヵ月の厳しい政治的な奮闘でまさに始まったのだ。前向きなこととして、この奮闘は左翼の新たな層と古い層の再活性化を巻き込んだ。われわれが社会的抵抗と大衆運動を建設する歩みを始めることを願うのであれば、先のことはそうする意味のある方法であるように思われる。
PtPの外観は、議会にその代表を得るほどに強力なものではなかった――とはいえ、地方議会ではいくつかの突破があった――。しかしそれでもそれは、われわれがある種の政治的な危機状況にあるということを前提とした場合なおのこと、出発するための良好な基礎だ。その危機状況はそれ以前に、自身を左翼と称する多様な諸勢力を一掃していたのだ。支配階級が資本主義システムの利害に沿って、またEUの新自由主義的枠組みに沿って政府に要求する攻撃に、闘いを挑むための決起を再建するという目的に基づき、選挙キャンペーンから日々の活動に進むという任務は、PtPを支持する者たちがやるべきことになっている。
シニストラ・アンティカピタリスタもまた、その候補者とその政治的メッセージを支持するための共同活動をもって、発端からPtPを建設し続けてきた。その困難な任務に取り組んだ、また複雑な情勢にもかかわらず、将来に確実に役に立つはずの何らかの政治的、組織的な突破の達成を助けた、すべての同志たちに心から感謝する。
シニストラ・アンティカピタリスタは、三月四日が確実に幕を開けた新しい時期における主要な政治的主体の一つとなるという任務にPtPが耐えるものになるよう、それをもっと大きくし政治的な諸論争を発展させるという目的に基づいて、PtPを創立させた諸勢力の統一行動と集合の打ち固めに対し、その献身を新たにする。(二〇一八年四月一六日)

▼シニストラ・アンティカピタリスタは、イタリアにおける第四インターナショナルの一組織。(「インターナショナルビューポイント」二〇一八年四月号)

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