活力ある闘争の中で左翼再建を
イタリア サルヴィニは押し戻されたが、極右はなお強力
イワシに背を向けてはならない
デイヴ・ケラウェイ
本紙で以前紹介したイタリアの「イワシ」運動が、先頃行われたイタリア地方選で極右に一定の足踏みを強要する上でかなりの力を発揮したことが判明した。以下はその実情を伝えると共に、極右と本格的に対決するためにはまだ多くの闘いが残っていることを明らかにしている。(「かけはし」編集部)
極右のもくろみ
はひとまず頓挫
イタリアの二地域、エミリア・ロマーニャ州とカラブリア州で一月二六日に地方選が行われた。それらは、サルヴィニのレガ(同盟、元の北部同盟)が勝利した場合、政府に対する大きな試練を提起すると見られていた。
エミリア・ロマーニャ州での選挙闘争における最後の数日では、サルヴィニと彼の大騒ぎするメディアの取り巻きが、町の一ブロックでインターホーンの前に集まった。彼は、彼のレガ支持者の一人がチュニジア人の麻薬売人が住んでいると語っていたある階のボタンを押した。サルヴィニはそれから、父親が労災で負傷したその若者に、麻薬売人と言われていることについて長々と説教をした。
サルヴィニの悪ふざけにあまりに慣らされどん底状態にあるイタリアのマスメディアでさえ、このファシストの自警団的シナリオには小さな衝撃を受けた。しかしそれは、サルヴィニの攻撃扇動的なレイシズム政治の二側面――移民と犯罪――を一体的に見せつけた。
サルヴィニは、歴史的にイタリア共産党の当時の戦時レジスタンス拠点であった、またその後の中道左翼勢力の拠点であり続けた地域を「解放」しようとしている、と語ってきた。しかし結果判明以前にその後勝者になったPD(民主党)のボナッシニが冷淡に述べたように、この地域の人々は、七〇年近く前にファシストから解放されたのだ。
極右レガの指導者は、この地域におけるEU議会選でこの党が勝ち取った第一位を再現しようと、選挙キャンペーンでは彼の個人的な政治的資本を大量に投入してきた。しかし最終的に彼の連合は八ポイントの差で敗北した(五一%対四三%)。世論調査はこの連合を、昨年一一月にはレガ優勢と、また投票一週間前には、五分五分としていたのだった。
普通ではない好転が一つあったがそれは、投票率の六七%に達する三〇%上昇だった。PDの親緊縮諸政策に幻滅した多くの左翼と進歩的有権者が投票所に戻ったのだ。この中心的な理由こそ、「イワシ」が率いた反レガというシングルイッシューの決起だった。
イワシ運動が
進歩的動力に
もう一つの伝統的左翼を形成するアンブレラの敗北の後、昨年一一月、三〇代の四人からなる一つのグループが、レガの台頭として抵抗しがたいように見えたものに関して何かをやろうと決めた。彼らはソーシャルメディアに向かい、人々にボローニャの中心広場で街頭に出るよう呼びかけた。そして五〇〇〇人が繰り出し、同日のレガ集会を小さく見せた。それらの想像力に富む介入は、レガの怪物に対抗するために、イワシが群れを作るというアイデアを利用した。それにはまた、アドリア海沿岸にあるミラノ・マリッティマのような人気リゾート地の浜辺に出入りするというサルヴィニの強い好みも理由になって、一定の共鳴作用も働いた。
人々はそのイメージをボール紙を切って作り、またもっと芸術的なものまでつくった。そしてそれらは都市から都市へと繰り返され、一〇万人以上になるローマの大デモで頂点に達した。
エミリア・ロマーニャ州での投票に先立つ日曜日には、彼らはボローニャの中心的広場に四万人を結集した。イワシ運動は、地方のデモ組織者を結集する全国会議を開き、レガと闘う必要に単純に焦点を絞った。またそれだけではなく、右翼ポピュリズムの憎悪満載に反対する、もっと道義的で「教育された」政治を求める一つの声明を送り出した。
理論的には、彼らは民衆と政治家間の建設的な仲介プロセスと諸構造の再建について話していた。彼らはまた、コンテが率いた第一次政権から八月に去る以前にサルヴィニが後押しした抑圧的な反移民法の無効化をも求めた。諸々の集会は幅広い基盤という方法で組織され、政党が発言のために招かれることはなく、それらの横断幕を持ち込むことも認められなかった。
イワシとの協力
急進左翼に必須
急進左翼のある者たちは、イワシの「表面上の行儀の良さ」を、また運動が本当のところ民主的な構造をもっていないというやり方を、批判してきた。愛と親切であることという話は、階級闘争の現実の中ではある程度必要な階級的憎悪を消し去っている。教育されていることについて高い土台を求めることは(「エジュカト」―これにはイタリアではよいふるまいの意味もある)、右翼ポピュリストに常に不利に作用するわけではない。彼らは、大学を卒業していない勤労民衆内部で大量の支持を確保している。それは、お高くとまっていると見られ得るのだ――ブレグジット支持者の「愚かさ」を強く非難した一定の中間階級残留派が犯した過ちに似て――。
左翼のある者たちが行ってきた別の批判は、意識的ではないとしても客観的には、イワシは主としてPD勢力を押し上げ続けている、というものだ。そして何といっても、政府内でのこの党の緊縮諸政策が、レガが今日これほどまでの強さをもっている理由のまさに一つなのだ。
実際PD指導者のツィンガレッティは、一月二六日の勝利後イワシに感謝する一大ショーを演じた。とはいえイワシは、反レガの投票を呼びかけたものの、PD候補者名簿への投票という特別な呼びかけはまったく行わなかった。彼らの指導者は、個人的には中道左翼の文化に共鳴している、と語ってきた。
イタリアの今日における労働現場の闘争あるいは社会運動の極度の低水準を前提としたとき、より明白な左翼的キャンペーンがサルヴィニを巻き戻すようになる、ということは極めて難しい。選挙に挑戦したポテレ・アル・ポポロ(人民に権力を)のようなPDの左翼に位置するグループは、約一%の得票率しか獲得できなかった。基本的にPDの衛星政党であったエコロジスト候補者名簿も、三・三%しか獲得しなかったのだ。
選択肢が極右を止めること以上、そして次いでEUが強いる緊縮政策を受け容れている中道政府に我慢すること以上、のことであるべきだとすれば、活力ある闘争の中でより統一した反資本主義戦線を再建する任務が依然として基本になる。イワシの肯定的な影響力に敬意を払うこと、その幅広い基盤、反極右の枠組みを尊重すること、しかしその枠組み内でまたそれと並んで、たとえば現政府に確実に移民の諸権利を守らせるために活動すること、が戦術的には正しいように思える。
多くの若者たちを含んで、これらの政治への新しい参加者のある者たちはおそらく、急進左翼が彼らのキャンペーンの中で彼らに話しかけ続け、彼らの声を十分に聞き続けるならば、より明らかな反資本主義政治に獲得可能だ。左翼がイワシがあたかも問題あるいは障害であるかのように行動すれば、上のようなことはできないだろう。イワシは三月にナポリで、次の歩みを計画するための全国会議を開こうとしている。繊細なやり方で提起される価値のある一つの課題は、このような運動の組織化のあり方だ。
右翼連合内部で
極右が力を強化
レガはエミリア・ロマーニャ州では巻き戻されたものの、党としての得票率は三〇%までの三%低下にとどまり、右翼連合はカラブリア州のもう一つの地方選挙で簡単に勝利を収めた。そこでは、投票に対するイワシの影響はまったくなかった。投票率は極度に低く、組織犯罪と腐敗が今なお強い地域で、勤労民衆がどれほど士気を砕かれ、方向感覚を失わされているかを示した。
ネオファシストのメロニが率いるフラテッリ・ディ・イタリア(イタリアの兄弟たち)は、エミリアで得票を倍化し八・三%にし、カラブリアでは一一%近くを獲得、その上にいるPDとの差は四%でしかなかった。他方ベルルスコーニのフォルツァ・イタリア(進めイタリア)は、エミリアでは三%以下しか受け取らず、カラブリアでは首班を勝ち取ったものの、党の名簿は約一二%しか得票できなかった。
したがって右翼内部の力関係は変化を遂げた。サルヴィニとレガはメロニと共にヘゲモニー勢力になり、フォルツァ・イタリアを引き継ぎ始めている。レガの指導者は今も、次の全国選挙で単独で最大政党になる上で十分な位置を占めている。
PD/M5S
政府弱体化へ
第二次コンテ政権は、エミリアでのレガ敗北を受けて当面は安全だ。サルヴィニのゲームプランは、そこを勝ち取り、政府はもはや国で多数を確保していない、と宣言することだったのだ。
しかしながら、政権は急速に爆発中の五つ星運動(M5S)によって弱体化させられている。すでにその議員の二〇人以上が別の結集に向けて船を捨てている。そしてディ・マイオは先週指導者を辞任した。エミリアでのその結果は一〇%近く下落の三%であり、カラブリアではここの地方議会議席獲得要件である八%を超えることができなかった。
二年前の総選挙で三三%近くに達し単独の最大政党だったことを前提としたとき、先のことは信じ難い。短期的にこれが意味することは、PDが連合内部でより多くの影響力を求めて圧力をかけることになる、ということだ。それが二党システム――有識者たちが当座の大きな政策に関しもったいぶって話し続けているもの――を再創出できなければ、そしてもっと重要なことに、その結果を有利にする新たな選挙法を通すことができなければ、その時PDは明白な連立相手に不足するのだ。
M5Sの後退はあらためて政府へのサルヴィニの復帰に力を与えている。M5Sは潜在的には常に、右でも左でもないとの位置取りに関し不安定だった。それは一時、PDを見放した進歩的有権者の多くと右翼からのそれよりはるかに少ない数の者たちが抱いた怒りの波に乗った。しかし、現場に自らを根付かせる点での失敗、あるいは中央集権化されたインターネットモデルが理由で民主的構造を生み出す点でのその失敗が、またそれが地方政府を勝ち取ったところでの無能力が、この危機へと導いた。
これからの時期主要野党としてのサルヴィニのレガは、不平等と生活水準が勤労民衆にとってEUでも最悪部類の中にあり続ける以上、この政権に対する大量の怒りに水路を与えることができ続けるだろう。同時にPDは、そのむしろ瀕死の状態にある隊列を再活性化する目的で、イワシの決起を彼らができる限り最大限まで統合しようと挑むだろう。
反資本主義左翼はイワシのこの前向きな高揚に関わるだろうが、しかしまた、反資本主義的反対勢力を辛抱強く築き上げることにも挑戦するだろう。この間には、シニストラ・アンティカピタリスタ(反資本主義左翼、イタリアにおける第四インターナショナルの一組織)、リフォンダツィオーネ(共産主義再建党)、その他を巻き込んだ全国会議を通して、そこに向けた小さいが前向きな歩みがいくつか生まれてきている。(二〇二〇年一月二九日、「ソーシャリスト・レジスタンス」より)
▼筆者は第四インターナショナルとの協力関係にある英国の「ソーシャリスト・レジスタンス」の支持者。(「インターナショナルビューポイント」二〇二〇年二月号)
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