スリランカ 「レフト・ボイス」による報道発表

大統領と政府こそ責任とれ
コロンボ、二〇一九年四月二六日

 スリランカで多数の民衆に犠牲を生んだ爆弾テロが起きた。このテロ攻撃に対し、同国で活動している第四インターナショナル支持組織である「レフト・ボイス」が、責任は政府にある、とする声明を公表している。以下に紹介する。(「かけはし」編集部)

 大統領と政府は、復活祭における大虐殺の責任をとらなければならない
 スリランカの三つの教会および三つの豪華ホテルにおいて、宗教的過激主義者が復活祭におこなった自爆攻撃によって、少なくとも二五三人が殺害され、五〇〇人が負傷した。労働組合と人民の闘いの中にいる社会主義活動家組織であるレフト・ボイスは、無条件にこの野蛮な襲撃を非難する。
 われわれは、被害者の家族に対して、われわれの深い悲しみを表明する。この攻撃はスリランカに基盤を置く「ナショナル・タウヒード・ジャマア」によって引き起こされたと公表されている。その一方で、イスラム国(ISIS)がこの残虐行為を実行したと主張した。
 この悲劇的暴力による人命と財産への打撃についての全責任は、スリランカ政府が負わなければならない。政府は、爆弾を爆発させた個人名までもが特定された情報を四月四日に警察から受け取っていたにもかかわらず、この恐るべき脅威について人々に知らせなかったし、この惨事を食い止めるための何らの予防的手段も取らなかった。国防長官(人々の怒りの前に辞任した)はこの情報を知っていたが、それは誇張されたものだと信じて、何の行動も取らなかったことを認めた。
 人々がその犯罪的な無責任さゆえに、政府全体を正しくも批判している一方で、大統領と首相は、お互いを含めて他人に責任を転嫁している。スリランカが爆弾の国になってしまう機会が、両方の指導者に責任がある不安定な政治状況によって作り出されてしまった。
 ムスリムの若者たちの間で、この種の過激主義が広まっていることの社会的経済的な根拠を理解することが必要である。二〇〇九年にLTTE(タミール・イーラム解放のトラ)が軍事的敗北を喫したあと、勢力を伸ばしたシンハラ人排外主義者勢力は、国内のムスリム社会を次の標的とみなしてきた。
 ムスリム社会は、とりわけ東部州において、経済的に不利な立場にある。ハラール・フード(訳注:イスラム教の戒律によって食べることが許された食べ物)証明書や牛の屠殺に対する内戦終了後のキャンペーンは、実際にはムスリムの商業的利益に対するキャンペーンだった。内戦中の国防大臣(であり、前大統領の兄弟でもある)ゴタバヤ・ラジャパスカは、レイシスト・キャンペーンを主導していたボドゥ・バラ・セーナ(「仏教徒武装部隊」)運動を保護していた。彼は、それらの勢力の支援を受けて次期大統領の座を狙っている。
 コロンボのムスリム実業家は、シンハラ人のレイシストたちからの脅威にさらされている。レイシストはムスリム実業家を攻撃するだけでなく、ムスリム商店のボイコットを組織しているが、前政権と現政権のどちらからも、何の保護も受けていない。自爆者の何人かは、教育を受けた富裕な実業家の子どもたちのようである。反ムスリム・レイシズムとムスリム嫌悪という状況が、ISISや他の反動的グループがスリランカのムスリム社会に浸透することを明らかに助けてきたのだ。
 現在の反対派指導者で前大統領のマヒンダ・ラジャパクセは、自分もテロ攻撃の可能性について知っていたと述べた。彼は、現政権が自分の政権時代に拉致や失踪に関与した情報機関員を逮捕したことで、こんな状況を可能にしたのだと不満げに述べた。三つの政党、つまり大統領派(訳注:シリセーナ大統領が率いる統一人民自由同盟)、首相派(訳注:ウィクラマシンハ首相が率いる統一国民戦線)、反対派(訳注:ラジャパクセ前大統領が率いるスリランカ人民戦線)のすべてが、あらたな弾圧法案を導入することによって、治安機関と警察を強化しようとしている。大統領は国家非常事態宣言を公布した。これは民主主義的な権利を侵害するものである。そのほかにも、ソーシャルメディアへのアクセス遮断や次週のメーデー・デモの禁止といった強権的な手段が取られている。
 危険な変化として、政府が自爆攻撃を国際的テロリストの攻撃だとして、アメリカ合衆国のような帝国主義諸国の支援を要請したことがある。この瞬間にも、FBIとスコットランド・ヤードの捜査官がスリランカで活動している。われわれは、テロリズム撲滅の名目での帝国主義的介入の可能性を排除すべきではない。
 もっとも危険な状況は、レイシスト集団による全島でのムスリムへの攻撃の可能性である。左翼勢力は、こうした状況を回避するために、リーダーシップを取らなければならない。そうした行動への重要な一歩は、国による禁止にもかかわらず、メーデーを開催することである。さらに、進歩勢力は、政府が外国の介入を公然と呼び込むことを阻止するために行動すべきである。

THE YOUTH FRONT(青年戦線)

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