2005年アピール

小泉の戦争国家に向かう暴走への反戦・反基地・反グローバリズムの大衆的抵抗をつくりだそう!

日本共産青年同盟

「少数のエリートによる強大な国家」にNO!
「未来ビジョン」をさし示す左翼の社会的登場をめざす「政治勢力」化を!

●「戦後60年の8.15」の靖国の風景

 今年四月、韓国と、とりわけ中国各地において「反日デモ」が燃え上がった。デモのスローガンは主に「日本の国連常任理事国入り反対」「歴史歪曲教科書反対」「釣魚台(尖閣諸島)領有権主張反対」そして「小泉の靖国参拝反対」という日本帝国主義の戦争犯罪を追及し、新たな右傾化に抗議する正当なものだった。日本のメディアは「政府が扇動する官製デモ」といった側面や、一部の暴力的事例や「来るべき中日戦争に備えよ」といった突拍子もないスローガンを過剰にとり上げて、「反日デモ」が提起した「日本の排外主義化と軍事大国化へのアジア民衆の抱く危機感の表れ」という側面はほとんど無視された。

 「反日デモ」は中国共産党官僚に押さえ込まれる形で急速に収束していったが、そこで提起された「靖国」がにわかにクローズアップされ、「小泉が8月15日に靖国参拝をするのか」ということが一つの「国民的関心」として連日「靖国」の持つ意味や歴史、参拝の是非がメディアをにぎわせることになった。経済界や日本遺族会の中からも強力な「参拝反対」論も飛び出し、世論調査は「靖国問題は『国内問題』であり中国・韓国の内政干渉反対」と「アジアの人々を傷つける靖国参拝反対」という意見にほぼ集約・二分され、拮抗する。私たちは、このような「新自由主義派の分岐(アジア外交重視か、国家主義の突出か)」と「世論」の流れに注目していくなかで、私たちの主張を持って介入していかなければならない。

 8月15日当日の靖国神社は、にわかに高まった「靖国」への関心の反映か、20万人以上の人々が、この侵略神社を訪れたと伝えられる。靖国神社とその外郭団体が「靖国二十万人参拝運動」を提起し実現した、とされているが、当日は「靖国」に批判的な人々や「いったいどんな場所なのか」という興味本位で訪れた人々も多く訪れていたように思える。それでも「靖国勢力」にとって「二十万人」という数字は成功なのだろう。

 この日の靖国は、これまでと違って、右翼暴力団の街宣車を周辺から排除していた。そして、「靖国」への抗議行動とそれへの暴力的敵対などによって、左翼6人、右翼2人の計8人が逮捕された。これは「左翼のシュプレヒコール」も「右翼暴力団の街宣車の騒音」も排し、「靖国」を「誰でも来れる中立で静寂な追悼の場=聖地」としてつくり直していこうという(産経新聞8月1日社説)という意思を国家権力が持っていることの表れなのだろう。

 しかし、「静寂で中立な聖地」の境内は、右翼暴力団や戦争そのものを懐かしむ者たちによる軍服による行進、「日本会議」などが主催する集会において石原慎太郎や西村信吾らの「『郵政』を優先して8月15日に参拝しない小泉」への非難や「反中国」の絶叫、7月の「天皇サイパン慰霊」に随行したという若者たち、そして「反欧米アジア解放戦争の一環としての大東亜戦争」という「純然たる右翼思想」を提示する遊就館。そこには「静寂」も「中立」もなく、「大日本帝国の夢よもう一度」というノスタルジーがあるのみだった。

 夕刻、150人のデモが右翼の妨害をはね返して、「侵略戦争賛美反対」「天皇制の戦争責任を追及するぞ」と靖国神社に向けてシュプレヒコールをあげた。連日メディアで「靖国」が取り上げられ、また排外主義と国家主義の暴風が吹き荒れ、すでに戦場に自衛隊を送る「戦争当事国」となった日本での取り組みとしては、状況を動かす力とは言いがたい。私たちには、「靖国勢力」に勝り上回る「大衆運動的飛躍」が求められるだろう。

 「靖国勢力」は「靖国は『国内問題』」と言う。その通りだ。私たちは、「国内問題=日本人自身としての怒り」として、天皇制の戦争犯罪を追及し、日本帝国主義に殺されていったものたちの無念に応えようとしなければならない。「天皇制への復讐」を多くの人々と共有することで、真にアジアの民衆とつながることができる。

 「靖国問題」に、「A級戦犯分祀」や「国立戦没者追悼墓地」などの解決はそもそもありえない。靖国神社は撤去しかない。二十万人が怒りに燃えて「靖国」を包囲する日を夢見よう。そして、それを実現するための「靖国思想」を解体する日常的努力を追求していこう。

 ●総選挙-小泉の「大勝」と私たちの課題

 8月8日、「郵政民営化法案」を参院で否決された小泉は、即座に衆院を解散した。当初は「小泉のヤケッパチ自爆解散」などとも揶揄されたが、大メディアの「郵政民営化に反対するのは守旧派」という大キャンペーンを追い風に、「郵政」のみの一点突破選挙を小泉は強気に有利に展開していった。それは、「新自由主義的改革派」として、とりわけ都市部で連戦連勝を重ねてきた民主党の票を、もぎ取る形で小泉の思惑は成功した。結果は小泉自民党が296議席を獲得するという、中曽根政権下の86年衆院選での「自民党304議席」を彷彿とさせる「大勝」だった。今回の解散は充分な根回しと分析を持ったシナリオに沿った、小泉の『計画的犯行』であるのはあきらかだ。

 しかし、ほんとうに小泉は「大勝」したのか?小泉はこの総選挙を「郵政法案の国民投票」と位置づけたが、小選挙区の票をみれば「郵政法案」に賛成の候補は3388万、反対の候補は3419万で「国民投票」なら否決されている。また、比例区でみても自公の与党で55%であるのに対し、野党は45%の得票、「23対1」と「自民圧勝」の象徴的な事例とされた東京小選挙区でも、得票率は自民50%、民主36%である。産経から朝日、テレビなど大メディアの「郵政民営化に反対するのは守旧派」という大キャンペーンに関わらず、どこにも「有権者が小泉に圧倒的な信任を与えた」という事実などなく、あるのは「小選挙区制のマジック」なのである。また、公明党・創価学会との強力な「選挙ブロック=一体化」なくして、小泉自民党政治はたち行かない表れでもあり、弱点を抱えたままの「大勝」なのである。私たちは「小泉ファシズムのはじまり」などと、この選挙結果にたちすくむ理由などまったくない。

 しかしまた、「風」はたしかに小泉に吹いたのであり、その「有権者意識」まで否定するのも誤りである。89年の土井社会党ブームから、90年代の日本新党や青島幸男や石原慎太郎を都知事に押し上げたものは、つねに「変化」や「改革」、現状の閉塞状況打破を求める「気分」が表現された結果だった。この総選挙では、小泉が「改革」の旗を民主党から奪い取ることで、この「気分」の受け皿となった。そして、党内守旧派を切り捨てる「無慈悲さ」こそが、小泉の「改革への本気度の表れ」として「公務員バッシング」と、とりわけ都市中高所得層の「能力あるものが支配する社会」を求める(「ホリエモン」に代表される)意識に支持される要因になったことも見過ごせない。そして、明日切り捨てられるのは、働くものの権利と生活であり、市民の人間らしく生活する最低限の権利=「福祉」と公共サービスである。

 「古い自民党」はたしかに淘汰された。民主党は、旧社会党的要素や労組の影響力から脱する形で、ますます新自由主義と「改憲=改革」を小泉自民党と競っていくだろう。社民党は、「反自民・非民主」の票の一定の受け皿となり微増、共産党は旧来のコアな支持層を総力で固めて現状維持という結果だった。この情勢で「健闘」とも言われるが、縮小再生産過程から脱せず、新たな支持層の掘り起しには成功していない。「郵政民営化の是非」に正面から論陣を張ることができず、「旧態依然」としか受け取られようのない「護憲平和主義」は、とりわけ青年層には魅力ないものに映っている結果だ。小泉ら「戦争のできる普通の国=少数のエリートによる強大な国家に守られた国民生活」という右派のビジョンに、何を対置するのか。それは私たち自身の課題でもある。

この選挙は、たしかに「未来ビジョン」をさし示せない勢力に未来はないことを示した。小泉は数の暴力で、今後「郵政」のみならず、共謀罪や教育基本法改悪などの成立から、国民投票法案の成立を通じて、「憲法」(とりわけ9条)への着手へと登りつめていこうとするだろう。それに対して、私たちは「人権、民主主義、環境、平和とアジア・世界との連帯」を価値とする意識を運動によってつくり出そうとするだろう。そのたたかいのなかから、「民衆の新たな選択肢=第三勢力」としての新たな政治勢力化と社会的登場を展望する。革命とは「価値観」と「制度」を変革するたたかいのことなのである。

 ●反戦・反基地・反グローバリゼーションのさらなるたたかいの嵐を

 ATTAC-Japanや郵政労働者ユニオンをはじめとした郵政民営化反対の行動は、連日の国会前座り込みや議員会館でのポスティングなどを通じて、敵の矛盾を拡大し、「郵政民営化は労働者・市民の問題」であることを広く意識させることに成功した。少数のたたかいであったとしても、どのように現実政治に介入していくのかを示す、意義のあるたたかいをつくりだした。

 そして9月11日、投票日とされたこの日にWORLD PEACE NOWは「自衛隊のイラク撤兵」を訴えるパレードを行った。落雷と豪雨、嵐の中で、千人以上の人々が意気高く歩いた。WORLD PEACE NOWは、総選挙に際して昨年の参院選に引き続き、「VOTE forPEACE=平和のための投票を」を訴え、また「郵政民営化はアメリカの要請であり、イラク戦争につながる問題」としてキャンペーンを行った。このように、「現実政治」にコミットしようとする姿勢を示し、本気で社会を変える意思を示すことが、本気で社会を変えたいと願う人々を結集させる。嵐の中を意気高く歩いた姿は、今後の私たちの姿かもしれない。しかし、終わらない嵐はない。そして、次に嵐を巻き起こすのは私たちでなければならない。

 アメリカ南部を襲ったハリケーン「カトリーナ」は、ブッシュ政権の不作為と弱者切り捨ての実態を浮き彫りにし、新自由主義と戦争優先の国家・社会がどのようなものになるのかをあきらかにした。そして、9月24日のイラク反戦世界行動デーでは、ワシントンに30万人が結集するという、2003年のイラク開戦前夜とひけをとらない参加を勝ちとった。日本でもWORLD PEACE NOWが、9月11日から間もないこの日に、400名の参加で、この世界の動きにつながった。

 ブッシュ政権は「イラク政策」の軌道修正を余儀なくされるだろう。ブッシュは、11月に韓国・プサンで開催されるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)において、「イラク復興」の名による「占領協力」を各国に求め、人も金も出させようとするだろう。とりわけ選挙で「大勝」した「小泉の日本」には、大きな圧力を加えていくだろう。また、9月のAPEC高級実務者会議では、「11月の会議で次回WTO(世界貿易機関)香港閣僚会議に向けて力強いメッセージを発する」としている。APECでは、他にもアメリカの力を背景にして各国間FTA(自由貿易協定)締結の推進から、東アジア米軍再編、「北朝鮮問題」を焦点とした核不拡散、またアメリカを仲介人にして「靖国問題」などを不問にする形で中韓-日本の関係改善などをテーマにするだろう。

 私たちは、韓国・アジアの人々とともに、このAPECを包囲する大行動にかかわっていく。「イラク占領NO!戦争でつくりかえられる世界はゴメンだ」「WTO/FTAにNO!グローバル企業に支配される生活はゴメンだ」「米軍は再編でなく東アジアから出て行け」「核不拡散でなく核廃絶を」「日本の軍事大国化NO!」のスローガンをもって「権力者の祭典」を包囲し、反APECを社会的・世界的インパクトのある行動として成功させよう。11月APECの成功を12月WTOの「最終的地ならし」にしようという目論見を破綻させ、11月反APECの勝利から12月WTOを99年シアトル、03年カンクンに引き続き失敗に追い込もう。そうしてブッシュ・小泉の思惑を一つ一つ破綻させていくたたかいが求められている。

 それは、宗教的原理主義にひきつけられるイラク・中東の民衆、金正日政権の圧制とその結果による飢餓に虐げられる北朝鮮民衆、そして中国共産党の官僚支配と一体となった新自由主義グローバリゼーションの進行に抵抗する中国の労働者・農民などの「希望なき世界」に生きる人々に届くものとしてたたかわれなければならない。「反日デモ」が行われている数十キロ先では、土地収用に抵抗する中国農民が虐殺されていた。「反日デモ」そのものも厳罰をもって、官僚当局に鎮圧されてしまった。私たちは、あの「反日デモ」のパワーと、私たちの「反戦・反グローバリゼーション」のたたかいが真につながったときにこそ、東アジアの情勢を動かすものとなる、と考える。そういうたたかいをつくりだしていこう。

 沖縄名護では、辺野古住民と幅広い支援人々のたたかいによって、当初の「海上基地辺野古沖建設案」を事実上、政府・米軍当局に見送らせるにいたった。これは96年の「基地建設を問う名護市民投票」の勝利から、普天間・嘉手納などで繰り広げられた包囲行動、沖縄と連帯した「本土」での各種の連帯の行動の勝利の地平であることはあきらかだ。

 日本政府とアメリカ政府は「キャンプ・シュワブ内の陸上建設案」か「規模を縮小してもあくまで海上建設案」をめぐって新たな綱引きを開始している。また「辺野古沖案」の断念は、沖縄県行政が求める「使用期限20年」の要求の白紙化も意味している。私たちは「東アジアからの米軍の撤退」とその環としての沖縄米軍基地撤去を要求する。「基地はどこにもいらない」「普天間基地即時返還・撤去」「名護にもどこにも代替基地はつくらせない」。そして、神奈川座間・相模原などの行政をも巻き込んで新たに高揚する全国の反基地闘争と、沖縄・アジア・イラクを結びつけて「基地のない東アジア」を具体的に実現するたたかいを巻き起こしていこう。

 そして、12月の自衛隊イラク派兵期限切れ撤退のキャンペーンと大行動に登りつめていこう。政府も、日本に生きる私たちも、結局は「世界の流れ」の脈絡のなかに規定される。「大勝」した小泉のブッシュ追随政策を許して反戦運動に追い詰められつつあるブッシュを危機から助け上げるのか、「イラク撤退」の国際的すう勢と反戦運動の新たな高まりを日本でもつくりだして「自衛隊イラク撤退」を実現させるのか。世界を変えるたたかいはこれからであり、その可能性は私たちの意志と意欲そのものにあるのである。「運動のための運動」ではない、「本気のたたかい」をつくりだしていこう。

THE YOUTH FRONT(青年戦線)

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