「会計年度任用職員」を問う
現場無視の不合理な制度
反貧困集会で全国から批判
【東京】9月23日、東京・中央区の日本図書協会会議室で「第17回 なくそう!官製ワーキングプア集会 反貧困集会2025」が開催された。この日の主題を「会計年度任用制度 すすむ! 首都圏の任用上限撤廃」と掲げ、会場とオンラインの参加で、各地の取り組みの報告や成果などが詳細に検討された。
労働現場の切実な声
午後1時。主催者の開会あいさつの後、第一部が始まった。司会を東京公務公共一般労組の松崎真介さんが務めた。
瀬山紀子さんは、「はむねっと」(公務非正規女性全国ネット)が今年5─6月に調査した、2025度の非正規公務労働者の現状を冊子にまとめ紹介した。対象者のうち484人が回答した。今年で5度目の調査だ。
調査は新設した質問も含め21項目。「職種、人事評価、休暇、雇止めへの不安、病休制度、差別的な呼称」などがある。結果の概要は、全体の9割越えが女性からの回答。司書からの回答が5割を超えた。年齢は50歳代が最も多い。
退職理由は『雇い止め』が最も多い。非常勤といえども常勤の補助にとどまらない仕事、あるいは常勤の新人への指導もある。人事評価の有無や結果が本人に知らされず、苦情相談窓口も周知されていない。さらに「勤勉手当が支給されるようになったが、その分月収が減らされている」など、理不尽かつ違法のものが目立つ。「女性は主たる生計維持者ではないという差別意識にさらされている。不可解に給与が減らされている。改善に向け、動いていく人を増やしたい」と、瀬山さんは力を込めた。
大量離職を把握せず
渡辺百合子さん(はむねっと)は、首都圏の106自治体に対する大量離職状況(2024年度)情報公開請求について報告をした。労働施策総合推進法27条と関連法令は、「30人以上の離職者が発生する場合」には、一月以上前に関係各所に通知する義務を記している。この通知書提出の効果について、雇い止めを行なう自治体に対し、雇用主の責任を自覚させる手段として、集会実行委は情報公開請求を行なっている。
雇用した労働者が辞めていくことは、雇う側には不名誉な事実だが、官民問わずその理由には「自己都合」が多く、退職に追い込まれるような真実が隠されている。調査は2023年に開始し、首都圏の人口10万人以上の106自治体が対象。結果は総務省や厚労省に提供している。
調査で分かったことは、離職率を集約する自治体が増えたこと。会計年度任用職員(会年)は常勤職員に比べて「公募、選考、採用」について各課任せであり、人事担当部署が杜撰な扱いをしていること。「そもそも、『いること』じたいが把握されていない、見えない存在になっているのでは」と渡辺さんは指摘した。
各地の取り組みの報告が始まった。越谷市職労書記長の千葉伸次さんが演台に立った。2020年の「地公法改正」は非正規公務員に対する70年ぶりの改定であり、自治体における臨時職員の雇用や処遇に大きな影響を与えた。同市における03年からの、非常勤職員の雇用安定のための独自の制度が、会年制度移行後に、「現行以下に後退させないこと」などを求めて当局と交渉を続けてきた。とりわけ、次年度も雇用される職員(年度超)と年度内に限る職員(年度内)の、曖昧だった労働条件の明確化や、雇用安定のための「定数化」を要求してきた。
指名ストで雇用継続
港区、杉並区と報告を受けた後、公務公共一般労組の原田仁希書記長が発言した。「雇い止めと闘うことで組合員から信頼される。文京区では今年3月、指名ストを構えて職場復帰を実現させた。スト直前に区側から解決に向けた姿勢が示され、提案通りの受験で合格・採用された。このことは当該の雇い止めが正当でなかったこと、本人の能力実証を否定できないことの証明だ」。
学労川崎の伊藤拓也さんは、臨時学校事務職員の雇用継続への取り組みと情宣の報告をした。
「ユニオン習志野」からの報告があった。「フルタイム会年職員」の勤務時間が「7時間パート」に変更された問題が、9月の市議会で質問された。「時短労働」となっても残業が増えれば同じこと。常勤との夏休日数の格差、「フルタイム勤務に戻せ」という切実なアンケート結果を紹介した。
休憩後の第2部は、コール佐藤さん(立教大学特任非常勤教員)のコンサートで幕を開けた。佐藤さんは「特任とは名ばかりで待遇は同じ」と自身の経歴を振り返り、定番の持ち歌「非常勤ブルース」、新曲「特任エイリアン」を披露した。
次に、「争議・裁判で闘う仲間たち」から報告があった。
ALT(外国語指導助手)は「特別職非常勤職員」から、会年制度導入により、「労働組合法の適用がない」会年職員に突然切り替えられた。山本志津弁護士が当該組合員らによる訴訟について報告した。
本件は、都立高校で長年ALTとして働いてきた労働者2名の、雇用継続・労働条件等に関する事案。「全国一般東京ゼネラルユニオン(東ゼン労組)」ALT支部が、東京都教育委員会に団体交渉を求めたが拒否され、都労委に救済を求めたが申立てを却下された。原告らは却下決定取消しを訴えている。当該らはこれまで「特別職非常勤職員」として地方公務員法の適用除外であり、団結・団交・争議権の行使ができた。しかし2020年の「会計年度任用職員制度」の導入と共に、何の説明も受けずに一般職の会年職員に切り替えられたうえに、「労働組合法適用除外」として団交を拒否された。都労委に救済を求めたが都労委は都の決定を追認した。
勤務評定無視の人事
公共一般の原田仁希さんは、都立学校のスクールカウンセラー(SC)の雇い止め問題について語った。会年制度の大きな欠陥である「5年雇い止め」によって250人ものSCが23年度末で解雇された。昨年10月、10人が原告となり東京都を相手取って東京地裁に提訴した。現場の働きぶりでは管理職の評価が高くても、都教委はそれを知らずか無視してか、お構いなしに首を切ってくる。過去の勤務評価が反映されていない。
SCは子供そして親との、長い信頼関係によって成り立つ仕事である。「次年度も働ける」という期待が、上司や当局から何の説明もなしに突然打ち砕かれる。裁判に勝利すれば、不条理な会年制度そのものが根本的に見直される可能性が出てくる。
第3部では、「私たちが目指す制度」と題して、全国からライブで問題提起があった。
立憲民主党前福岡市議の成瀬えみさんは、児童相談所の問題を語った。北海学園大学の川村雅則さんは自著「おとなりの非正規公務員」(北海道新聞社)を紹介した。全統一千葉市非常勤組合、名古屋、大阪、鳥取、自治労連東京都江東支部などがそれぞれ発言した。
午後1時から4時半までの長丁場。会場参加は75人。「会計年度任用制度」という不完全で不合理な制度による雇い止め・雇用不安が、当事者らによって繰り返しあぶりだされた。毎年参加しているが、東京の会場と全国各地を結ぶ通信技術の進歩には目を見張る。熟練の報道スタッフの入念な準備で、会場に居ながらにして、各地の取り組みの状況が伝わってくる。感動的ですらある。 (佐藤隆)

週刊かけはし
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009 新時代社


