首相、高市の火遊び

コラム「架橋」

 11月8日の各紙朝刊は、「高市首相が7日の予算委員会で台湾有事に関し、戦艦を使って、武力行使を伴うものであれば存立危機事態と答弁した」と一斉に報じた。
 従来、政府は武力行使ができる存立危機事態に関して「一概に述べることはできない」として、態度をあいまいにしてきた。しかし、高市首相は台湾有事を明確に規定し、集団的自衛権によって自衛隊が武力介入できると明言したわけである。
 新聞各社はこの重大な発言を予算委員会の報道の中に紛れ込ませ、「台湾有事 発言踏み込む」「武力行使あれば存立危機事態に」(以上、毎日の見出し)とし、自衛隊の武力行使という表現を避けた。
 高市はこの答弁をなしたとき、軍事介入によって日本国民が被る被害、とりわけ八重山諸島から九州にかけて軍事拠点とされた島々にもたらされる被害に思いを致したのだろうか。
 どうして台湾有事が日本の存立危機事態になるのか。台湾は日本の領土ではないし、植民地でもない。日本政府もアメリカ政府も「一つの中国」を認めている。この立場からすれば台湾の中国への統合は中国の国内問題であり、台湾有事への自衛隊派遣は中国の内政問題への日本の軍事介入に他ならない。ここに、中国が日本の武力介入に対して、日本の領土を攻撃する正当性が生じる。
 そもそも、中国は台湾を武力統一しようとしているのか。アジアでの軍事的覇権を守るために日本の軍事力を利用したいアメリカの思惑と、その尻馬に乗ってアジアの軍事大国になりたい日本の思惑の一致が、台湾有事を作り出したのだと思う。
 そして、小情況的には右翼政治家として、強い日本、強い首相を演出したい高市の軍事的火遊びのように見えてならない。原子力空母「ジョージ・ワシントン」での高市のハシャギぶりはその象徴だと思う。近い将来、「高市首相の火遊びの代償」というコラムを書くことにならないように願うばかりである。
(O)