全三労の不当処分に直面し、民主的労働組合運動の原則を再考する

イ・ヨンドク

 明らかな誤り

 全国サムスン電子労働組合(以下、「全三労」)執行部は、3月7日、組合員との賃金交渉とは別に、前任者の待遇改善につき口頭で合意した。これは、組合員平均を上回る昇給率を含み、組合員の賛否投票や書面合意を経ず、事前通知もなかった。さらに、執行部はこの裏合意を批判した幹部を除名している。これらの行動は、全三労執行部の非民主的、官僚的、かつ抑圧的な体質を示している。
 5月15日、除名処分を受けたハン・ギパク器興支部長とウ・ハギョン代議員の再審が開かれたが、初審どおり除名と3年間の被選挙権の制限が維持された。ハン・ギパク支部長の除名理由には、昨年の労使協定の賛否投票の動議を否決したことが含まれ、ウ・ハギョン代議員の除名理由には、今回の別途合意に関する組合員懇談会の映像を組合内に公開したことが含まれている。まったく筋の通らない懲罰理由である。
 金属労組法律事務所の弁護士が懲戒対象者に意見書を作成させ、その意見書が懲戒委員会に提出されたが、全三労執行部は、この意見書までも問題視し、金属労組委員長、法律事務所長などに抗議の公文書を送った。
 その後、4000人以上の組合員が脱退した。労働者を統制し、競争させる考課制度によって多くの労働者が苦しんでいるのに、前任者にのみ別の賃金上昇率を適用する合意が、知らない間に結ばれていたからだ。労働者たちは、全組合員の権利よりも執行部の待遇改善を優先すると判断し、執行部の不透明な姿勢に失望した。
 全三労執行部は遅ればせながら謝罪したが、問題を提起した代議員を除名するという矛盾した行動は止めていない。裏合意でも何でもない、大したことでもないのに、問題を提起した者たちのために組合員が脱退したと責任転嫁している。

 誰と協力すべきか?

 金属労組は2021年から全三労と連帯しており、全三労との連帯事業を重要な組織化事業だと述べてきた。この連帯自体には何の問題もない。全三労が民主労総に組織され、巨大グローバル資本であるサムスンとしっかりと闘うことができるなら、それは民主労組運動と韓国社会に多大な影響を与えるだろう。
 しかし、真の連帯と闘争は、単なる組織形態の変化からは生まれない。時間がかかっても、民主的な労働組合としての内容の裏付けと整備が必要である。組合員が団結と連帯の必要性を切実に感じ、金属労組への移行のために大小さまざまな行動を起こしてこそ、真の意味での組織移行が可能になる。さらに、全三労は3万人以上の組合員を擁する巨大労働組合である。真の変化には時間がかかる。看板を替えるだけでは、砂上の楼閣を築くようなものである。
 今回の事態が発生した際に金属労組内では、裏合意はない、深刻な問題ではないといった意見も飛び出した。民主労組運動の原則が至る所で崩壊しているとはいえ、このような明らかな誤りを隠蔽したり、軽視したりする姿勢は、多くの活動家に衝撃を与えた。
 幸い、多くの活動家が強く問題を提起し、金属労組内部でも原則を整理して、遅ればせながら金属労組は立場を発表した「全三労の待遇改善合意の過程には明らかな過ちがあり、懲罰は民主的な労働組合の運営の原則に反する。全三労が熟考と反省を行い、民主的な労働組合を志向する労働組合として生まれ変わることを期待する」という内容の回答を全三労に送った。
 最初から全三労執行部の誤りを正しく批判し、是正するための評価を適切に行なっていれば、状況はここまで悪化することはなかっただろう。過ちをきちんと認めず、内部批判の声を抑え込もうとする執行部ではなく、勇気を持って問題を提起した労働者の手を握り、民主的な討論と組織運営のために全力を尽くすべきだった。執行部との関係を断絶するよりも、民主性、自主性、闘争性という民主労組運動の原則の方が、何百万倍も重要だからだ。この原則以外には、民主的な労組運動を前進させる方法はない。

 下からの活動

 いたる所で官僚主義が横行し、闘争者が孤立し、組合員が組合に背を向ける事態が起こっている。このような時こそ、下からの活動がより重要になる。
 今回の全三労事態は、現場の労働大衆から切り離され、労働組合幹部との接触やその影響力行使にとどまる活動が、必然的に招く危険性を考えさせる。労働組合幹部への影響力が、組合全体や組合員への影響力と同等になることはあり得ない。しかし、一部の活動家は、幹部への影響力を組合員全体への影響力と誤解し、その幹部たちの力だけで組合を変革できると考えているのである。
 もし、ある活動家が一般労働者に自らの考えを明らかにして活動を行わず、少数の組合幹部にのみ排他的に注意を向けている場合、その活動家は瞬く間に孤立してしまう。関係を持ってきた組合幹部が、何らかの理由で心変わりしたり、変質したりすると、すべての影響力を失ってしまう。つまり、活動の歴史的な成果が、数人の幹部の去就によって失われてしまうことになる。
 民主的労働組合運動が危機から脱却できない重要な理由も、現場の日常活動があまりにも弱体化しているためである。一般労働者の関心、彼らの悩み、意識レベルを綿密に考慮した活動、その労働者たちと日常的かつ定期的、あるいは緊密な関係を築こうとする努力がなければ、労働組合の運命はごく一部の幹部に依存することになってしまう。平組合員の参加はますます失われていく。非常に大変で、すぐに成果が見えない場合でも、現場の労働者の変化を望む、下からの活動が必要なのはそのためだ。
 官僚主義と闘うには、組合員一人ひとりが自分の意見を持ち、それを表明し、最終的には自ら意思決定を行う、そうしたより積極的な一般組合員の力を生み出すことが最も重要だ。

闘争する労働者を守ろう!

 昨年の強力なストライキでサムスンと世間を驚かせたが、全三労は民主的労働組合の道、本格的な闘争の道へ、まだ数歩を踏み出したに過ぎない。この組合が、何の過ちも失敗もせずに、まっすぐに成長できると誰も考えていない。しかし、出発点から、官僚主義と組合主義が深刻に表れていることも明らかだ。この問題を是正していかねば、闘争の道は開けないだろう。
 ハン・ギパク支部長とウ・ハギョン代議員は、現場の内外で不当な処分撤回を求める署名運動を組織し、連帯を呼びかけている。1,800人以上が署名に参加し、現場の関心も少しずつ高まっている。これらの仲間たちを守り抜かなければ、民主的な労働組合を立て直す力は成長しないだろう。
 半導体神話の裏で、サムスン労働者の苦しみは増え続けている。今後も資本の危機を労働者に押し付けようとする攻撃が繰り広げられるだろう。労働者は再び闘争を組織できるだろう。さまざまな可能性が官僚主義に侵食されて沈静化してしまうという悲劇が起こらないよう、闘争する労働者を守り、あらゆる場所、あらゆる形態の官僚主義に対抗すべきである。
5月17日
(「社会主義に向けた前進」より)

朝鮮半島通信

▲党中央軍事委員会第8期第8回拡大会議が5月28日に招集された。
▲朝鮮人民軍大連合部隊は5月29日、砲射撃競技を行なった。
▲金正恩総書記は6月2日、江東郡病院と総合奉仕所の建設現場を視察した。
▲6月3日に行われた韓国の大統領選挙の結果、李在明氏が新大統領に就任した。

The KAKEHASHI

購読料
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009  新時代社