地代追求資本主義は労働者大衆の生活を破壊する(下)

ペク・ジョンソン

 チョンセ詐欺事態の根本的な責任は国家にある。国家は良質な賃貸住宅を供給するどころか、住宅市場に賃貸住宅供給を委ねた。無住宅民衆の居住需要は多住宅所有者の「ギャップ投機」と結びつき、国家はこれを容認しながら不動産市場を押し上げた。そして金利上昇期が到来するとチョンセ詐欺被害が急増した。賃貸詐欺事態の前にも後にも、国家責任による賃貸住宅供給はなかった。そして不安な民衆が月極賃貸に方向転換すると、大資本が住宅賃貸市場を狙って急速に参入した。
 今後私たちが住む家の主人は、金融資本、巨大不動産資本になるかもしれない。これは、労働者大衆に対する地主・資本家階級の収奪を強化するとともに、労働者大衆の地主・資本家階級に対する抵抗を結集・拡大する効果も持つ可能性が高い。それは、賃貸資本という「敵」が以前より可視化されるためだ。数年前にドイツ・ベルリンで起きたドイチェボーネン没収国有化運動の事例を少し見てみよう。

ドイチェ・ヴォーネン没収国有化運動の意味と限界

 住宅を公共所有へ転換しようとする企みは、想像や理論の可能性に留まらない。代表的事例が、大資本主導の家賃暴騰に対抗してドイツ・ベルリンで展開された「ドイチェ・ヴォーネン及びその他不動産企業没収運動(Deutsche Wohnen & Co Entelgnen,DWE)」である。この運動は巨大不動産企業が所有する大規模賃貸住宅を都市が買収し公営化しようという要求で、2018年に市民キャンペーンとして出発し、2021年の住民投票で頂点に達した。住民投票の質問は「ベルリン市内に住宅3000以上を所有する不動産企業の住宅資産を、ベルリン州政府が買収することに賛成するか」というものだった。この要件に該当する不動産企業は12社、対象住宅は約24万3千戸で、ベルリン全体の賃貸住宅150万戸の16%に達した。12社の不動産企業の中には、この運動の名前の由来となった「ドイチェ・ボーネンゲゼルシャフト」やドイツ最大の賃貸会社「ボノビア(Vonovia)」などが含まれていた。
 2021年9月26日に行われた住民投票では賛成56・4%(約103万6千票)、反対は39%に過ぎなかった。ベルリンの民衆の多数が、大型賃貸資本家が所有する住宅を公的所有に転換すべきだという急進的主張に同意したのである。もちろん有償没収ではあるが、その意味は大きい。
 しかし投票後の過程は平坦ではなかった。投票が法的拘束力のない「勧告」であったが、それは労働者大衆の怒りを代弁していたことは明らかだった。しかし同日に行われたベルリン州議会選挙で第1党を占めた社会民主党(SPD)と左翼党・緑の党の連立政府は、没収を保留し専門家委員会による慎重な検討を経る方針を表明した。社会民主党は明確に没収に反対した。左翼党と緑の党は表向きには没収を支持したものの、社会民主党との連立維持を優先することで、没収運動に冷水を浴びせる結果となったのである。これにより2022年初頭、12人の専門家委員会が発足し、住宅社会化の法的妥当性と財政的可能性を検討することとなった。しかしこれは遅延戦術に過ぎず、ドイチェボーネン没収運動側は住民投票を無力化しようとする企みだと批判した。2023年6月、専門家委員会は150ページに及ぶ報告書を発行し、「憲法第15条に基づき大規模住宅所有者を社会化することが可能であり、補償金は時価より低い水準で設定できる」との結論を示した。
 ドイツ基本法第15条(社会化条項)の条文は以下の通り。「土地、天然資源及び生産手段は、社会化を目的として、補償の種類と程度を規定する法律により、公有財産または共同管理経済の他の形態へ転換され得る。その補償には第14条第3項第3文及び第4文を準用する」。同条項が実際に適用された事例はない。
 一方で住民投票から既に2年の時間が経過し、資本と国有化反対陣営は没収阻止に全力を尽くした。これに加え、2023年2月のベルリン州再選挙(既存選挙の不正により再実施)の結果、キリスト教民主同盟(CDU)主導の保守大連立政権が誕生した。これに対し、ドイチェボーネン没収運動陣営は2023年9月26日、すなわち最初の住民投票2周年記念日に、第二の住民投票運動を開始すると発表した。法的拘束力のある住民発議立法投票で没収を強制する計画である。2021年の住民投票実施までに要した時間を考慮すると、ベルリン賃貸資本没収運動は依然として進行中の闘争と言える。
 ベルリンでの運動の事例は、極端な家賃上昇の中で大衆が怒っていること、また急進的な代案が大衆的支持を得ることを証明した。有償没収ではあるが、非現実的と見られていた「没収」が多数の同意を得たことは、住宅価格暴騰と居住二極化に苦しむ韓国社会にも示唆するところが多い。
 しかしその限界も明らかになった。住民投票で賃貸資本に対する強い怒りが確認されたが、投票だけでは何も変わらなかった。ベルリン州政府は民衆の意志を踏みにじり、資本家の所有権保護のために策を巡らした。大衆の怒りを鎮めようと「専門家」たちが召集され、1年後に発行された報告書の結論はドイツ基本法第15条を再確認するに過ぎなかった。いかに多数の意思を民主的に表明しようとも、その要求が支配階級の利益を侵害するなら、国家は支配階級のために大衆の要求を制限し、要求履行を遅延させ、ついには無力化する。

労働者大衆に降りかかった総体的危機の前で、没収国有化は必要であり可能だ

 資本家・地主階級は賃貸収入という非生産的な富の蓄積を全面化しており、国家はこれを奨励している。しかし住宅を個人所有の対象とする限り、家は絶えず投機の対象となり、労働者は「マイホーム取得」のために生涯をローンと借金に縛られて生きねばならない。歴代政府はほぼ同様に自己所有促進本を展開してきた。公共賃貸住宅の場合も、名ばかりの賃貸住宅で実態は分譲転換型住宅供給が中心であり、李在明政権も同様だ。
 7月10日、政府は「持分積立型公共住宅」を提示し、8月には持分積立型公共住宅拡大案を発表した。いわゆる「積立住宅」で、分譲を受けた者が住宅分譲価格の一部(10~25%)のみを支払い持分として入居した後、20~30年間居住しながら残りの持分を分割取得する方式である。持分積立型公共住宅は名ばかりの「公共」であり、実質的には労働者に長期分割払いを強いる別の形態の住宅担保ローンである。この制度は住宅不平等の解消ではなく、住宅の市場依存を深化させる。
 必要なのは、土地と住宅を私有財産の対象ではなく、社会的な再生産の基盤へと転換することである。公共賃貸の大幅拡充、1世帯1住宅を超える住宅に対する没収措置が必要である。ローンと家賃に生涯を抵当に入れられた労働者大衆の出産放棄が一般化している今、資本主義体制が強要する限界を超えて進まねばならない。すでにドイツ労働者大衆が賃貸資本没収運動で証明した可能性を拡大すべきである。
 2023年基準の韓国住宅普及率は102・5%に達する。住宅普及率が100%を超えているにもかかわらず住宅が不足する理由は、多くの住宅を所有する人々、多住宅所有によって労働者大衆を収奪する人々が存在するからだ。必要なのは「所有者から収奪し、住宅を持たない労働者や現在過密住宅に住む労働者をこの家屋に移住させる」ことである。
 19世紀英国の急速な産業化過程で引き起こされた都市労働者階級の悲惨な生活と住宅問題について、エンゲルスは当時の社会改革論者たちの「自己所有」推進という応急処置を批判し、住宅問題の根本的解法は革命である点、ただし即時的措置として「大都市には現在すでに住宅が十分に存在するため、これらの建物を合理的利用」して住宅難を即座に緩和できると論じた。
 大都市には現在すでに住宅が十分に存在するため、これらの建物を合理的に利用する場合、実際の「住宅難」を直ちに緩和することができる。もちろんこれは、現在の所有者から収奪し、家を持たない労働者や現在過密住宅に住む労働者をこれらの家屋に移住させる方法によってのみ実現可能である。そしてプロレタリアートが政権を獲得するやいなや、公共福祉の命令に基づくこのような方策は、現存国家によるその他の収奪及び住宅占有と同様に、極めて容易に実現されるであろう。(フリードリヒ・エンゲルス『住宅問題』)
 エンゲルスが指摘したように、必要なのは存在する住宅を合理的に分配する措置、労働者大衆を収奪してきた地主・資本家階級を社会的必要に従って収奪する措置である。公共賃貸の大幅な拡大、さらに賃貸資本と一世帯一住宅超過分に対する没収のみが無住宅大衆の生存を保障できる。ベルリン・ドイチェボーネン没収運動が示したように、多数の大衆はすでに急進的な代案に同意する準備ができている。家は投機手段ではなく、生活を支える権利だ。労働者大衆の生活を破壊する資本主義住宅体制を超え、住居を基本権として取り戻す闘争は、もはや先送りできない時代の課題である。
8月27日
(「社会主義に向けた前進」より)
【おわり】

朝鮮半島通信

▲金正恩総書記は9月8日、ミサイル総局が実施した炭素繊維固体燃料エンジンの地上噴射試験を視察した。
▲金正恩総書記は9月9日、朝鮮民主主義人民共和国創建77周年に際して開かれた国旗掲揚式および中央宣誓会で演説を行った。
▲韓国の国会本会議で9月11日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)から違法な政治資金を受け取った容疑で逮捕状が請求された野党「国民の力」の重鎮、権性東国会議員の逮捕同意案が可決された。

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