臨時国会 このまま許すな! ガソリン暫定率の廃止
 10月21日、第219臨時国会が召集され、自民党の高市総裁が第104代首相に選出された。公明党の連立離脱を受け、日本維新の会の閣外協力による自維連立政権の枠組みができた。真っ先に行おうとしているのはガソリン税暫定税率の廃止である。
 朝日新聞社は「内閣制度が創設された1885年以来、初の女性首相で、女性の昇進を阻む見えない障壁〝ガラスの天井〟を打ち破った」、「日本初の女性首相のもとで、ジェンダー平等の実現に向けた施策がどう進展するかが注目される」(23日デジタル配信)とまで持ち上げている。同社が25日と26日に行った全国世論調査では、高市内閣への支持が58%で、2001年の小泉内閣の78%、09年の鳩山内閣71%に次ぐ高支持率であった。また、現時点での衆院選の投票先は「自民増32%」「維新増」で「国民は減」と報じている。
 この間の国政選挙ばかりではなく兵庫県知事選や宮城県知事選、東京都議選で示されたSNS、動画共有サイトなどでのネット選挙運動の隆盛に対して、全国紙による報道がまだまだ世論を動かせると誇示をしているかのようだ。
 自維連立政権が、真っ先に行おうとしているのはガソリン税暫定税率の廃止である。
「ガソリン暫定税率廃止法案」とは
 ガソリン税は195
0年に道路整備の財源確保のために揮発油税、地方揮発油税として導入、74年に暫定税率を追加、2009年に道路特定財源制度が廃止され一般財源化されている。1リットルあたり、国税の揮発油税が48・6円、地方揮発油税が5・2円で合計53・8円、うち暫定分が25・1円を占める。
 昨年来、自公連立政権が衆参で少数与党化する。24年12月、自公国3党が暫定税率の廃止に合意。25年6月には、野党7党が共同で「ガソリン暫定税率廃止法案」を提出、衆院本会議で可決されたものの、参議院財政金融委員会では採決に至らず、法案は実質的に廃案となった。
 参院選後の8月1日、立民、維新、国民、共産、参政、保守、社民の野党7党は「ガソリン暫定税率廃止法案」を共同で衆院に再提出した。れいわ新撰組は再提出に加わらなかった理由を「6月提出の法案で完成している」「国民の期待は消費税減税」「衆参の与党が過半数割れの余熱だけで法案は通る」などと述べている。
緑の党グリーンズジャパンの批判
 こうした国会での動きに対し、地方議員らで構成する緑の党グリーンズジャパンは8月12日に「【声明】ガソリン税暫定税率廃止問題―深刻な気候危機と未来への責任を踏まえた議論を」を発している。「国・自治体の財政に影響を与えるだけでなく、気候危機対策の点でも大きな問題」だと次のような根拠を示している。
 ―暫定税率を廃止した場合、CO2排出量は1年間だけで1500~1600万トン増えると試算され、カーボンニュートラル目標の達成を阻害し、気候対策に明らかに逆行する(環境省「税制全体のグリーン化推進検討会」2017年12月)。また、富裕層にも恩恵が行き渡り、本当に必要としている低所得者への支援としては限界があり、環境に配慮する生活をする人ほど恩恵が小さくなるため、社会的公正にも反する。
 ―日本のガソリン価格は、OECD35カ国中、アメリカに次いで2番目に低くガソリンの税負担額も8番目に低い率(財務省「OECD加盟国(38カ国)におけるガソリン1ℓ当たりの価格と税の比較」)だ。
 また、国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは9月3日に声明を発表。「8月末には、国立環境研究所がガソリンおよび軽油の暫定税率が廃止された場合、2030年までに国内の二酸化炭素排出が約610万トン増加する、という試算」を紹介し、「現在世界で進む化石燃料からの脱却と逆行することに他なりません。環境省がこの試算結果を受けてパリ協定の採択国として求められている排出削減計画の数値との整合性を求めている」と政府内部の不一致を指摘している。
 国立環境研究所は環境省の所管だ。「2つのジャパン」が取り上げた環境省データには時期と数値の違いがあったので元の情報を調べてみた。7月2日に開催された税制全体のグリーン化推進検討会―神野直彦東京大学名誉教授を座長とする委員10名(いずれも男性)で構成―では、資料「揮発油税等の当分の間税率の廃止の影響試算について」が追加で当日配布され質疑・確認したようだ。
 追加資料では、「仮に2026年に廃止された場合」と「当分の間税率が継続された場合」との排出量の差分から、税率廃止の影響を評価。「揮発油税等の当分の間税率の廃止による輸送用燃料の価格下落に伴い、輸送用燃料の需要が増加」「減税によりエネルギー価格が下落し、燃料購入への支出が減少し、それ以外の製品・サービスの支出や生産量が増加し、全体の活動量が増加」と2つの増加の根拠を示している。
 そして「現行の地球温暖化対策計画に位置付けられているあらゆる対策・施策を講じたとしても、当分の間税率を廃止した場合には、2030年に610万トンCO2の排出量増加」「当分の間税率の廃止は我が国の排出削減目標の達成に大きな影響を与え得ることから、その廃止に当たっては、同等以上の環境保全効果を確保するための所要の措置を検討する必要がある」と論じている。
 いずれにせよ、この間の与野党合意や野党7党での法案は環境省の検討会での審議から離れた内容で進められてきた内容であることがわかる。「2つのジャパン」の連携する、多くのグリーン、グリーンズが合流した運動が必要だ。トランプ政権の2度目のパリ協定を追うような自維連立政権によるガソリン税暫定税率の廃止をくいとめねばならない。
   (10月27日 KJ)
週刊かけはし
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009 新時代社


