10・26VFPのスピーキングツアー集会
米原子力空母GWに向けて海上と地上から抗議の声
【神奈川】10月26日、非核市民宣言運動・ヨコスカ、ヨコスカ平和船団よびかけ主催でヴェテラン・フォー・ピース(VFP)のスピーキングツアー集会が開かれた。
VFPは元軍人などが反戦を訴えるNGОで、設立40年を迎えた。横須賀へ来る直前は、沖縄で交流している。 この日も、午前中はVFP一行も平和船団とともに、海上から米海軍基地を視察している。28日には訪日したトランプと首相高市が訪れて、海軍兵士を相手に訓示をたれにきたことは大きく報じられた。原子力空母「ジョージ・ワシントン」はそのためだけに横須賀へ戻り、付近上空には2人を運ぶヘリコプター「マリーン・ワン」や様々な艦載機の騒音がまき散らされた。ヨコスカ平和船団は船2隻を出し、海上から抗議し、陸上でも参加者50人らがシュプレヒコールをあげている。
ジョン・メツラーさん
(空軍士官学校を卒業)
集会のスピーカーは3人いて、一人目はジョン・メツラーさんだった。空軍士官学校を卒業し、2023年に除隊した若い人だ。ガザ攻撃への米軍・米政府による加担に耐えられず、今もハンストなどの活動をおこなっている。ガザの虐殺以外に、6月のロサンゼルスを皮切りに移民排除を理由にした州兵派遣すなわち市民に銃を向けることにたえられないと感じている兵士が多いという。嫌な任務が続いても、わかりやすく拒否を表明したり、すんなり除隊したりすることは困難だが、若い「良心的」除隊者(任務拒否者)が増えていることは確かだという。例えば空軍輸送部隊にいてイスラエル軍への弾薬等輸送の内幕を知って任務継続をできなくなった人などを身近に知っているという。
ケム・ハンターさん
(元米海軍兵士)
もう一人は、米海軍兵士としてベトナム戦に2度出征したケム・ハンターさんである。精神の疲弊により除隊し、シアトルで消防士をつとめ、退職後は家族と日本に滞在した。日本語を話す。「軍隊、戦争は必要悪であって、賞賛すべきものではない」とするアイゼンハワーを評価している点は記憶に残った。
元兵士2人の証言に共通するのは、戦争が軍産複合体の利益のみに直結している、という確信である。それは医療、福祉、住宅政策へ回るべき予算の削減でしかないという点でも一致している。反戦、反軍を掲げていない分、軍任務の極端な荒廃、個々の兵士の精神的限界への言及が説得力を持つ部分はあるだろう。
ついで、海上自衛隊で30年ほど従事した形川健一さんが発言した。今回のツアーでは裏方のような役割を担って装備を運ぶ車を長距離運転しているそうだ。形川さんの話で興味深かったのは、今回の高市の「先制的」対米防衛協力申し出、安倍晋三路線を引き継ぐ米国製兵器「爆買い」申し出に対する感想である。正面装備を買う約束ばかりしても、メンテナンス、つまり人的装備が整わなければ意味がない、というのである。 例えば哨戒機であれば、P3Cが退役してP1へと移行していく中で予算が減っていくのが自然なわけで、供給者である川崎重工との関係で自衛隊の装備係のほうから予算維持をお願いするというのが従来の構図だ。そうではなく、自衛官が政治家(=国民)に対して予算を維持してほしいと出す要求の部分を、政治家のほうから約束してしまうというあり方を、形川さんは「逆シビリアンコントロール」という言葉で表現していた。
トマホークを海上自衛隊に
配備するな
集会の後は月例のデモ(毎月最終週の日曜日)に参加した。15年以上ずっと参加しなかったが、2026年1月には、デモ開始から50年の節目を迎えるという。コールはせず、よろずピースバンドがおなじみの替え歌を流しながら、市街を練り歩き、ときに停泊中の軍艦の解説なども交える。
今回は手前に見えた駆逐艦「ラファエル・ペラルタ」の話をしていた。アステカの軍神の印を、他の兵士を守るために身をとして殉職したメキシコ出身の兵士の名前にちなんだ軍艦だということなど。この駆逐艦の名前は何度か石垣島への寄港を巡って聞かされていた。2024年3月には同意なく寄港することについて沖縄全港湾がストを決行した。
もちろん軍事基地推進派の中山市長は政治的主張、市民生活へ支障が出るなどと組合を批判して、自身の迎合姿勢を棚にあげていた。
また、自衛隊基地に停留する護衛艦「もがみ」にも触れていた。このもがみ型護衛艦の多機能性、高速化、自動化・省人化、建造コスト、納期への信頼などに着目してオーストラリア政府が次期汎用フリゲート艦に選定したと、8月に発表し話題になったところだ。
デモ参加者は自衛隊総監部の門前と、米軍基地ゲート前とで、それぞれアピールを読み上げる。自衛隊門前では25日に護衛艦「くまの」に乗り込むなどして「私が育った横須賀は防衛の街」などと発言する小泉進次郎の防衛大臣就任も念頭に、自衛隊の災害救助隊への移行を展望するような申し出文を形川さんが読み上げていた。
米軍基地前では、VFPの2人が米軍のおこないを戒め、引き返すべきだという内容の申し入れを英語で伝えた。日本語でのシュプレヒコールを響かせるのと違う緊張がゲート前に漂ったような気がする。
このツアーで通訳を担ったレイチェル・クラークさんは、ツアーの運営を主導する人のようだが、発言は印象に残った。「米軍は日本の皆さんを守りません、米国市民の私が言うから間違いありません」という言葉の説得力もしかり、「日本の狭い国土にあまりに多くの軍事基地と、あまりに多い原発が存在すること」の危険性を訴えるときの順序だった話し方である。また、トマホークを海上自衛隊に配備しないように求める署名活動の様子なども紹介された。
トランプ来日を通して米・自衛隊基地の一体的強化へ
トランプ来日に対しても、日米の軍事連携についても、不断の活動ができていないわけだが、もっと怒りを表現しなければならない(と自分に言い聞かせている)。トランプが保守リベラルさえ乗り越えたとんでもない人格、災害のようなものと評価する傾向に慣れつつある中で、彼の出現は、これまでの米国保守政権の専横が招いた帰結とみることが今こそ必要のように思える。トランプはいきなり中東にミサイルを飛ばしたりして、散発的な軍事力行使を国内での権力基盤維持に用いるが、米国内でも戦争権限行使と議会承認の関係で批判が強い。
1973年戦争権限法については、日本国憲法9条をどう守るのかという議論にもかかわってくるかもしれない。もちろん州兵動員についても、州兵制度という米国の市民自治観念と結びついた意識をくつがえすトランプの手法に対する批判、軍隊内の矛盾の深化というものを元兵士の発言で実感できた。
米軍はアジアでもそうだが、南米カリブ海でも、麻薬取引撲滅の名のもとにベネズエラの船などを襲撃し、数十人をすでに殺害しているが、さらに最新鋭、最大規模の空母「ジェラルド・R・フォード」を展開すると宣言して、より「私兵」的に軍事を運用している。こういった状況と今回のトランプ来日時のふるまいを重ね合わせながら、横須賀などの米軍基地、自衛隊基地への監視を強め、高市政権による軍事費の増額に歯止めをかけなければならない。 (海田 昇)

月例デモで反戦・反基地をアピール(10.26)

ケム・ハンターさん(左)、ジョン・メツラーさん(真ん中)(10.26)
退役軍人ら、イスラエルによるガザ停戦違反を非難 イスラエルへの米国の武器輸送への抵抗を呼びかける
ベテランズ・フォー・ピース(VFP)は、イスラエルによるガザ停戦の重大な違反を断固として非難します。トランプ政権に対し、イスラエルに対し停戦合意を遵守するよう圧力をかけるよう求めます。【VFPのHPから】
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