寄稿 原発の安全性を無視する中電は原発を運転する資格なし
沖 基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク事務局長)
本年1月5日、中部電力(以下、中電)が浜岡原発の再稼働に向けた審査の中で、意図的に基準地震動を低く策定していたことが明らかになった。審査では、20組の地震動から平均に最も近い波を代表波に選定すると説明していたが、数千の計算結果から意図的に代表波を選んでいた。基準地震動は、原子炉建屋など施設の耐震性を評価する前提となるもので審査の最重要項目である。
揺れを小さく見積もれば、必要な安全対策が減りコストも下がるが、その一方、実際に地震が発生した時には事故のリスクが高まることになる。この不正操作は、原発の安全性を軽視した行為で、原子力規制委員会(以下、規制委)を騙すことを目的とした犯罪的行為と言えるものである。
2011年5月、福島第一原発事故を受け、当時の菅直人政権の「浜岡原発は安全対策として中電が計画している新たな防波壁が完成するまで全号機運転停止」という政治要請を中電が受諾した。その要請理由は、南海トラフ巨大地震の震源域の真上に位置するという立地条件から、世界で一番危険な原発といわれ、その立地場所も首都圏、中京圏の真ん中に位置し、万一の事故が起きれば、日本が立ち直れないほどのダメージが予想されたからである。中電も浜岡原発の危険性を理解したからこそ菅直人政権の要請を受諾したのである。
2014年2月、中電は再稼働に向けた審査を申請、その自然条件から審査は難航した。申請から10年を経た2024年11月、林社長は記者会見で、地震津波審査が終わり、施設・プラント審査に移行すると発表し、「2年以内での審査終了を目指す」と強気の発言をした。だがその矢先に内部告発がされたのであった。
規制委の機能不全と能力不足
本年1月、「データ捏造で安全規制に対する暴挙!」と山中伸介規制委員長が激怒し、審査は中断・白紙になり、規制庁による中電本社立ち入り検査が行われるなど重大な事態になっている。遡ること11ヶ月、2025年2月に、このデータ捏造、改ざん問題が規制委へ外部通報(公益通報)されていた。一年も前に情報を得ながら規制委は隠蔽していた。この隠蔽は、柏崎刈羽原発の再稼働(11月に新潟県知事が容認)や泊原発の再稼働(12月に北海道知事が容認)を巡る攻防への悪影響を避けるためであったと考えられる。
この不祥事で改めて明確になったのが規制委の機能不全と能力不足である。規制委は、浜岡原発の基準地震動について、2023年9月に中電が示した基準地震動(3・4号機は1200ガル、5号機は2094ガル)を「おおむね妥当」と判断を下し、審査済みとした。その後、その数値で揺さぶられても原発施設の安全が確保されるか詳細な審査が続いていた。浜岡原発には、南海トラフ地震発生時に巨大津波が襲来すると想定され、津波対策として巨大な防波壁が設けられており、当然この防波壁にも十分な耐震性が求められるところである。それが誤った基準地震動をもとに設計されていたということである。
現行の規制審査において、規制委が審査するのは、事業者が策定した基準地震動の評価結果とその説明資料のみである。事業者が評価に用いた過去の地震観測記録など基礎データを開示させる仕組みはなく、第三者機関によるダブルチェックも行われていない。事業者は不正をしないという性善説で成り立つ制度、このような審査の枠組みこそが安全規制の欠陥で、不正の温床となっていると考えられる。
他社の原発に同様の不正は確認されていないので再調査の必要性はないと規制委員長は発言しているが、規制委の審査能力の欠如が判明した以上、これまで「適合」とされた他の原発についても、直ちに運転を停止し、厳格な審査をやり直す必要がある。今回の浜岡原発を巡る問題を、中電の不正や一企業の技術力の問題にしてはならない。
中電は2014年2月の審査申請以降、津波対策の防波壁建設や安全対策工事に約4600億円をかけてきた。規制委の審査会合も150回以上開かれ、人件費など膨大な行政資源が費やされてきた。これらの費用は電力消費者や国民の負担となることを忘れてはならない。
再稼働は許されない
地域経済の活性化のためを考えて原発を受け入れてきた立地市の原発推進派も、中電のデータ捏造は断じて許されるものではない、裏切り行為であると抗議の声を上げている。しかし残念ながら重大性を理解していないのか、浜岡原発の再稼動に反対する世論の高揚にはつながっていない。住民の安全を軽視した中電の企業体質は許されるものではないことを認識するべきである。
再稼働に対して地元同意の権限を持つ静岡県知事は、国に対し厳正な措置を要求するのみで、県民の命と安全を守る政治姿勢は感じられない。地元推進派の多くが適合性審査の合格を得ることで原発の安全性が確認された(ちなみに規制委は、審査合格は安全性を確認するものではないと言明している)として再稼働を容認するが、その前提が揺らぐような事態が発生した以上、経済優先で原発推進を進めることには無理があり、原発依存の体質が地域発展の限界を招いていることを理解すべきである。
地震列島に原発はいらない
今回の不正操作は、地震のリスクが世界一大きい浜岡原発の再稼働は、犯罪的なデータ捏造をしなければ不可能だということを原発事業者自身が認めたことになる。これは、地震対策の観点から見れば、浜岡原発の立地そのものが誤りであったことの証左である。浜岡原発の安全性に関わるデータを捏造する中電には、原発を運転する「技術的能力」も「資質」もないことが明らかになったことから、規制委は浜岡原発の審査を単に中断するのではなく、直ちに申請を却下し、廃炉を決定するべきである。中電の林社長はメディアに対し「原子力部門の解体的な再構築を視野に入れて覚悟を持って取り組む」と発表し、何が何でも再稼働するぞという決意を示しているが、自らの不正を認めた以上、自社の安全文化の欠落を認め、再稼働を諦めるべきである。
政府・規制委・電力会社が如何に申し開きしようとも安全な原発は何処にも存在しない。
日本では、ほぼ毎日、どこかで地震が起きている、まさしく地震列島である。地震に打ち勝つ原発施設をつくるために、どれだけの労力と金を費やすのか、地震はとめられない、原発はとめられる、「地震国では原発は無理」というスローガンをいま改めて訴えたい。
(見出しは編集部)

浜岡原発再稼働をやめろ!
週刊かけはし
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009 新時代社


