10・11三里塚フィールドワーク 環境・人権破壊をやめろ横堀農業研修センター裁判勝利
10月11日、横堀農業研修センター裁判を支える会と一般社団法人三里塚大地共有運動の会は、「見て 聞いて 学んで バスで行く 三里塚フィールドワーク 成田空港反対運動の今」を行った。参加者は、33人で初めて三里塚に行く人は半数以上だった。
政府と成田空港会社は、環境破壊・人権無視の空港機能強化を押し進めている。成田空港会社は横堀農業研修センター(旧労農合宿所)破壊に向けて千葉地裁に提訴(23年8月2日)し、不当判決(6月13日/控訴中)が出ている。
千葉地裁(斎藤顕裁判長)は、成田国際空港会社による柳川秀夫さんら共有者4人と三里塚芝山連合空港反対同盟(柳川秀夫代表世話人)を被告とする(「横堀農業研修センター」(旧・労農合宿所)の破壊に向けて)「所有権確認、持分全部移転登記手続き、共有分割、建物等収去土地明渡請求事件」の提訴に対して①空港会社の土地の所有権を認める ②登記名義の回復を原因とする各持分全部移転登記手続きをせよ ③建物等収去土地明渡請求に向けた仮執行宣言は判決が確定するまでは認めなかった。
空港会社の主張を追認する千葉地裁
判決は、90年代のシンポ・円卓会議で合意してきた「あらゆる意味での強制的手段はとらない」の「あらゆる意味」に対して、空港会社の全面的価格賠償の適用(民事訴訟手続き)による土地強奪は含まれないなどという空港会社のねじまげた解釈を追認した。
さらに横堀農業研修センターは、反対同盟・田んぼくらぶ・支援によって維持管理され、農作業・集会等のたびに使われている。一方的に破壊するのは、「共有者間の実質的公平を害しないこと」に反しており、全面的価格賠償を適用するための前提が成立していないにもかかわらず歴史の偽造、成田空港会社支持の立場を押し出した。
このような不当判決に対して被告と弁護団は、横堀農業研修センター破壊の強行を阻止するために控訴(8月12日)した。
こうした緊迫した中、「ストップ!温暖化 成田空港はまだ田畑山林(東京ディズニーランド20コ分!)をつぶすのか」のスローガンを掲げ、横堀農業研修センターを軸にした壁画運動など拠点を守り抜く取り組みが行われている。
フィールドワークもその一環として2023年の取り組みから3回目だ。フィールドワークのコースは、①横堀地区─横堀農業研修センター、横堀鉄塔、案山子亭 ②木の根地区─木の根ペンションで昼食(ヴィーガン弁当) ③芝山町菱田地区─第3滑走路建設地 ④騒音地域の現地調査だった。
横堀鉄塔下には「抗議する農民」像、案山子亭

横堀鉄塔下にある「抗議する農民」像
当初の横風用滑走路予定地の真ん中にある横堀団結小屋。1977年、要塞建設のため穴堀りを始めるが用地内のため中止。要塞はB滑走路アプローチエリアに移して建設され開港阻止闘争では激しい攻防が行われた。1986年二期工事監視用塔として反対同盟が鉄塔を建設。高さ30メートルあったが、安全のため2017年に上部を撤去した。
案山子亭(かかしてい)は、農作業の休憩場所として1988年に建てられた。鉄塔下にあるのは、沖縄の彫刻家、金城実さんが作った「抗議する農民」像。岩山大鉄塔、労農合宿所を経て、横堀鉄塔に置かれた。管制塔占拠闘争で逮捕され、長期拘留による精神的苦痛を受け、1982年自死した原勲さんの墓があり、毎年4月には墓参と花見が行われている。
横堀農業研修センター
横堀地区は、明治末期に開墾が始まった高台の集落。移転した農家跡の共有地に1977年5月、三里塚闘争連帯労農合宿所が開設され多くの団体、個人により活用されてきた。1989年火災で焼失するが、反対同盟は1日でプレハブ小屋を再建。翌日、土地を囲い込もうとする空港公団・機動隊を反対同盟は撃退した。1997年労農合宿所は閉所し、その後は横堀農業研修センターとして、反対同盟旗開きや田んぼくらぶ、ジャガイモ運動の拠点として活用されている。周辺の竹やぶは春になるとタケノコ掘りが行われている。研修センターと案山子亭の看板は、横堀の熱田一さんが書いた。
第三滑走路計画では誘導路にかかる。成田空港会社による横堀農業研修センター破壊に向けて、千葉地裁に提訴(23年8月2日)し、不当判決(25年6月16日)が出ている。現在、控訴(8月12日)し裁判闘争を継続中。
フィールドワークのスケジュールとして佐藤幸子さん(元常駐者/横堀農業研修センター裁判被告)、平野識靖さん(三里塚歴史考証室)の「お話」を聞いた。
佐藤さんは、「先日ひどい判決が出た。高裁に移るが、正直言って絶対勝てるとは言えない。守るべきものを守っていきたいという思いが、裁判で逆に強くなってきている。時代は動いているが、きちんと自分をもっていきたい。今日はしっかりと勉強していってください」と述べた。
平野さんは、横堀農業研修センター裁判の経過、ポイントについて報告し、「裁判での私の務めはシンポジウム・円卓会議について。隅谷調査団が『あらゆる意味で強制的手段をとらない』という最終所見を出したので熱田派反対同盟は受け入れた。話し合いが頓挫した場合でも強制的手段をとってはならない。裁判では、裁判所が民事裁判は強制的手段でないと出してきた」と批判した。

控訴審勝利に向けて決意表明する佐藤幸子さん(被告)
木の根ペンション・プール
木の根地区は、下総御料牧場用地が払い下げられ、1946年に入植・開墾が始まった。反対同盟が結成され、1967年住民により木の根団結小屋が建てられる。団結小屋は1989年、木の根ペンションとして生まれ変わる。2000年、芝山鉄道ルートにかかり撤去を求められるが、曳屋により現在の場所に移転。
自力で畑にかんがい設備を作る運動が1979年に起こされた。風車は地下水を汲み上げる動力として、プールは水を溜めるため池として作られた。風車は故障続きだったが反対闘争のシンボルとして残った。ため池は「闘争には楽しみも必要」という小川源さんの発案でこどもたちのプールになった。
このプールで遊んでいた大森武徳さんが2010年から清掃を開始、2011年にプール復活。2022年にはクラウドファンディングにより補修を行った。木の根プール復活後は、『生産者と消費者を繋ぐ場』『農村と都市部の交流の場』というコンセプトが、新たな形となって活性化され、音楽イベントなど様々なジャンルのイベントを通して、世代を超えた交流の場所として多くの人々に愛されている。
農的生活の発信
昼食はペンションの2階で談笑しながら食べた。
大森武徳さん(続木の根物語プロジェクト/一般社団法人三里塚大地共有運動の会理事)が参加し、「2010年から、子供のころ泳いでたプールの再開に取り組み、2011年20年ぶりにプール開き。その後、プールの中と庭を使って、盆踊り、イベントを行ってきた。音楽イベントには300人集まったことがある。文化的厚みを持たせたい。空港と鉄板1枚隔てた農的生活を体現し、発信していきたい」と発言した。
柳川秀夫さん宅

柳川秀夫さん(被告)
三里塚芝山連合空港反対同盟代表世話人。青年行動隊として空港反対運動に参加。東峰十字路裁判では最も重い求刑を受けた。円卓会議では「地球的課題解決のための実験村」構想を提案。腹八文目という新しい物差しで人間も社会も経済も考える。
無農薬、有機農業の畑はとても美しい。だが芝山町は、柳川さんの住まいや畑を含む芝山千代田駅周辺を「スカイゲート拠点」と名付け、商業施設や空港移転者や空港従業員向けの住宅地など市街化を計画している。
柳川さんは、「滑走路を新しく造るというが、買収もまだできていないということで、私が生きている間はおそらくできない。環境が大変な状況になっている。森・田んばを空港で壊そうとしている。これは環境に影響があるだろう。昔は御料牧場で木がたくさんあり、毎日霧が出たが、滑走路になって環境が変わった。夏前からほとんど雨が降らず、作物が作れない状況だった。滑走路で環境が変わって、ますます人が住みづらくなり、影響を与える。今は反対運動も力関係を変えるのは難しいが、ダメなものはダメと。研修センター裁判をやっているが、力関係の中で最終的にいい状況にならないかもしれないが、やれることをやる。がんばっていきたい」と決意を述べた。
菱田地区(第3滑走路建設地)
A滑走路とB滑走路の航路に挟まれた地区では、騒音が70デシベルを超えることも多い。C滑走路は集落の目の前に作られ、騒音は一層ひどくなる。
樋ケ守男さん(成田空港会社と国を相手取り、夜間の飛行差し止めと損害賠償を求める訴訟の原告)は、「以前の空港建設では騒音地域で買うのは家屋だけだったが、今回は田畑も全部買って滑走路計画に賛成してほしい。滑走路認可の時、95%の地権者が買収に同意しているとされた。かつての空港建設の時は空港公団が移転地を用意したが、今回は自分で見つけてくださいとなっている。そのため買収交渉が進んでない。3月時点で民有地では70%しか買収できてない。空港会社は滑走路を造ることだけ一生懸命」。
「いまB滑走路は1時間34回離発着。C滑走路ができれば、合わせて倍。全体で年間50万回。計画では飛行機が飛ばないのは午前1時から5時。空港圏全体が不眠になる計画。5%が最初から買収に同視してない。一度移転した中郷、加茂はC滑走路で再移転になる」と説明した。
参加者は、「騒音体験」によって厳しい環境状況にあることを実感し、環境破壊・人権無視の成田空港拡張建設に反対していくことを確認した。
帰りの車中、空港周囲を走りながら成田空港全体像を掌握しながら参加者は、感想などを出し合った。 (Y)

航空機騒音に抗議する樋ケ守男さん
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