12.13「クーデターから5年目のミャンマー」

軍政が強行する総選挙、それを認めない人々の抵抗

講師:根本敬さん(上智大名誉教授、ビルマ近現代史)

 【東京】12月13日、東京・立川市女性総合センターで、「クーデターから5年目のミャンマー」~軍政が強行する総選挙、それを認めない人々の抵抗~、と題して講演会が行われた。講師は根本敬さん(上智大名誉教授、ビルマ近現代史)。
 主催者の立川自衛隊監視テント村の代表をやっている大洞さんが「ミャンマーでも困難な中、戦い続けている人たちがいる。それに応えて私たちの方でもこの問題については取り組むべきではないかと、今日まで学習会を継続してきた」と活動を紹介し、「病院が空爆され、30人くらいの死傷者が出ている。ミャンマー軍による民衆虐殺が依然続いている。12月28日に、総選挙が予定されているが、この問題もちゃんと考えて批判していく必要がある」と発言し、根本さんの講演が始まった。

根本さんの講演要旨。
 これまでのミャンマーでの総選挙について歴史的経緯を説明した。そして今回の選挙が①国土の半分以上で「民主派勢力」による抵抗が続き、選挙の安定実施は困難②国軍による空爆などにより、国内避難民だけで350万人③徴兵という名目で、若者の誘拐を続けている現状から逃れる海外移住者が増加している④アウンサンスーチーさんとNLDの参加を拒否して実施しようとしている。
 国軍の権力維持を目的とした形式的な総選挙の強行に正統性は全く見いだせない。多くのミャンマー人は今、「ゆがめられない民意」「つぶされない民意」を獲得するために、「軍政による総選挙を認めない」と叫び、民主主義回復への強い思いを世界へ訴えている。
 私たちはそのことを忘れてはならないし、同時に彼らから学ぶことによって、日本における「法の支配」と「自由で公正な選挙」を守り、強化し続ける責任がある。     (M)
 
 質疑応答

 講演の後に、質疑応答があった。
 
 質問 アメリカで、帰国困難なミャンマー人に対し「特定活動」という在留資格を認める緊急避難措置をなくすという動きがあるようだが。
 答え アメリカの大統領がダメだといえば即実行されるが、日本の場合は官僚主導で制度化しているので簡単にはなくせない。アメリカが在留を認めないとなっても日本側が審査の上、受け入れる方にいくだろうと思う。

 質問 国際刑事裁判所がミャンマーの戦争犯罪について、動きはあるのか。
 答え ロヒンギャ問題に関しては、一応ミン・アウン・フラインに対して、逮捕状を出すという状況にあるが、それ以上の動きはない。

中国の軍政への支援はなぜか

 質問 中国がこの1年前から軍政に対して、全面的な支援をしているがどうしてそうなったのか。
 答え 中国の基本姿勢はミャンマーを通して、インド洋に繋がりたい。中東から運ばれてきた石油その他の資源をミャンマーで陸揚げし、パイプラインや道路でそれを雲南に運び、そこから中国のあちこちにという、そのルートがある。そのルートをどうやって安定的に確保しさらに拡大するかということがある。そのためにはミャンマーで安定して政権がないと困る。中国との関係を維持強化する政権がいないと困る。
 実はアウンサンスーチー政権の5年間、中国との関係を緊密にし、彼女自身北京を訪問した。中国の要人が何度もミャンマーを訪問している。それで中国としてはエネルギー政策はアウンサンスーチー政権で良いのではないかと、そういうふうに態度を変えた。ところがそれを軍事政権側は快く思わなかった。アウンサンスーチー政権が出来るまでは中国問題は常に国軍が対応し、中国と交渉してきた。中国のミャンマーでの活動を一定程度認める、国軍が役に立つ分だけ受け入れた。
 アウンサンスーチーと中国が仲良くしだすのもクーデターの一因だった。クーデター直後は、中国側も混乱した。なぜ倒されたのか様子見に入った。半年ほど軍事政権側と抵抗する様々な組織と両方と等距離に付き合った。2021年クーデターが起きた年のこと。
 2022年になると、中国側は民主派勢力に見切りをつける。徐々に軍政の方に力を入れる。軍政の方がミャンマーを安定させ、中国との利権を維持してくれるのではないかと判断した。2023年に入ると、国境で起きた詐欺事件の被害者が圧倒的に中国人だ。これを何とかしろと軍政に圧力をかけたが、ミャンマーの軍政が動かなかったので、中国が不満を募らせる時があった。国境の少数民族が詐欺拠点をつぶせば、中国側が武装して軍政を倒す動きを支援してくれるのではないかと判断し、2023年10月に三つの主要な武装組織が一斉蜂起した。
 これまで分捕られることのなかった重要な基地までとった。中国はそれをほおっておくないしはバックアップした。その詐欺拠点の問題が世界的にニュースになると今度はミャンマーの軍事政権も詐欺拠点をつぶすという方向に姿勢を変えた。
 中国は今度はまた武装勢力とは距離をおいた。2024年、今度は武装勢力に対して、国軍の基地をぶんどったのであれば、返してあげなさいと圧力をかけ返させていく。それが今年に入っても続いて、武装勢力は非常に不満だけども、武器の供与がなくなってしまう、中国との貿易が止まってしまえば元も子もないので、中国の言いなりにならざるをえない。それで一番困っているのが、平野部で戦っているビルマ民族・多数民族の武装勢力。なんで奪った基地を返していくのかと。それが今日に至っている。
 中国は介入の口実がなくなるからミャンマー政権が本当に安定したら困る。中国が善意の第三者のふりをして介入できる。現在の段階で中国は民主化勢力は切り捨てた。

抵抗派の武装闘争について
 
 質問 アウサンスーチーさんは非暴力の闘いをやってきていたが、軍政の弾圧の中で、市民たちが武器を取って、少数民族と共に戦うようになった。アウサンスーチーさんがもし釈放されて、武装抵抗闘争でなくて、非暴力でやりましょうと言っても、この人たちはそれをのまないでしょう。そのへんの格闘について分かりますか。
 答え アウサンスーチーさんの非暴力主義について。ガンディーはあらゆる政治闘争における暴力を拒否した。アウサンスーチーさんの非暴力主義は暴力で戦って勝てる可能性と非暴力で戦って勝てる可能性を比較した時に、もし非暴力で勝てるのなら、絶対にそっちだ。
 それから常に現実を見て判断する。その事例として、南アフリカ共和国のマンデラを出してくる。最初はアフリカ民族会議の一員として、白人政権に対して非暴力闘争だったが白人政権の黒人に対するいじめが余りにもひどいので途中から暴力闘争になった。当局に捕まり、20数年独房に入れられた。それから冷戦が終わり、白人政権側から話し合いを持ちかけられたので、マンデラは暴力闘争を捨てて、非暴力闘争に戻り、交渉を通じて最終的には黒人政権が成立するように持っていった。
 それをスーチーさんは非常に評価していた。1988年から彼女が解放される2011年までのミャンマーにおいては平野部においては非暴力で戦うほうが勝てる可能性が高いし、犠牲者も少なくてすむと考えた。
 しかし、国境や山の中で武器を持って戦っている闘い方を批判しませんと、当時から言っている。山の方で戦っている人たちは日々国軍の砲撃にさらされていて、自分たちの身を自分たちで守る必要がある。その場合武器を持って抵抗するしかない。そうであれば、私がそれを止めろとか、非暴力で戦わなければならないとダメだという資格がない。
 従って2021年のクーデター以後を見れば、彼女はおそらくPDF(国民防衛隊)を認めるだろう。もし非暴力で戦い続けたら一方的に殺されていくわけだから、それに対して武器を持って抵抗するのは現実的であると判断すると思う。
 もう一つ考えたいのは、CDMという武器を持たない抵抗運動があった。それと武器を持った市民は対立しているかというと、全然対立していない。タイとミャンマーの国境地帯に両者がいるが、CDMやっている人たちにPDFをどう思うかと質問すると、私たちが武器を持って、戦っている人たちと違うと思うんですかと逆に質問される。武器を持って戦っている人も、私たちのように武器を持たずに戦っている人も同じであって、やり方は違うが心は一つ。CDMやっている人が自分は武器を持たないが、寄付をPDFにするとか、さまざまな教育をするとかは一般的なことだ。両者は闘い方の違いであって、両者にみぞはない。
 日本人の中で、ミャンマー人に同情して寄付をしたいという人が一杯いるが、その中で自分がする寄付がCDMにいくならいいが、PDFにいくならいやだ。武装闘争の支援ではないと確認してくるような人がいる。私はおかしいと思う。
 ミャンマー人の中に、ガンジーのような人がいて、非暴力だというならそれは意義があるかもしれないし認める。日本のような安全地帯にいる人間がガンジーの思想を振りかざして、武器持つなという権利はありますか。彼らはやむなく、武器を持って自分や友人家族を守るために戦っている。

質問 総選挙を軍がやろうとしているが、総選挙後何か変化が起きるのだろうか。
答え まずないでしょう。あるとすれば軍政側がわれわれは民主的政府に生まれ変わったんだと、言うだけだ。それに拍手するのは中国、ロシア、インド、ベラルーシとASEANの中のいくつかの国だ。それが軍政にとって、有利になるかどうかは疑問だ。抵抗する側の戦い方は一切変わらないだろう。
(発言要旨、文責編集部)

軍政が強行しようとする総選挙について歴史的経緯を含めて、問題点を明らかにした根本敬さん(12.13)

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