12・19リニア中央新幹線工事差し止め訴訟
静岡県リニア工事差止訴訟証人尋問の内容について(概要)
芳賀直哉(差止訴訟の会事務局長)
12月19日にリニア中央新幹線工事差し止め訴訟の第20回口頭弁論が開かれました。トンネル技術者である大塚正幸氏と4人の原告の証人尋問について差し止め訴訟の会の事務局長である芳賀直哉さんに報告を書いていただきました。(S)
12月19日(金)10時30分から静岡地裁前でミニ集会を行った。この日は、トンネル技術者と4人の原告に対する証人尋問のため、久ぶりに約60人の方が傍聴のために集まり、全員が法廷に入った。
証人尋問の概要
1 大塚証人に対する主尋問
午前11時から、大塚正幸証人の主尋問が原告代理人西ヶ谷弁護士の質問によって始まった。職歴等の経歴について確認した後、核心のトンネル工事に因る湧水問題に関して以下のやりとりが行われた。
Q:山体内地下水がひとたび抜けてしまった場合、その後に再び地下水が貯留されて元に戻るということは考えられますか?
A:トンネル工事中に河川の流量低下が生じた事例で、工事完了後に元に戻った事例はない。
Q:意見書において「トンネル内に高圧での湧水が発生する」と言われるその理由は?
A:南アルプスは過去最大の土被り、断層破砕帯の存在から、高圧突発湧水が懸念される。
・南アルプストンネルの水圧は50気圧以上となる。
これは飛騨トンネルの事例(土被り1000メートルで水圧55気圧)からの推計である。
・水が節理(岩が冷えて縮む場合にできる割れ目のこと)に貯まっているのか断層破砕帯に貯まっているのかで水の出方が異なる。
・断層破砕帯に貯まっている場合、大量の水が溜まっていて、一気に抜けていく。
・節理に貯まっている場合には、節理は岩の中に自然に生ずる独立した小さなひび割れのため、なかなか水が抜けない。
・被告作成の地下水位予測低下量図について、工事1年後から20年後まで、トンネルが掘削される範囲の地下水位低下が著しい。
・トンネルがある限り地下水は流出し続けるので、再度地下水が貯留することはあり得ない。
Q:JR東海作成の「トンネル湧水と地下水の概念図」は、地下水低下の経過を断面的に示したものだが、トンネルの上方の部分が地下水位の低下が著しいことを示している。この点については?
A:地下水位の低下が真っ先に生ずるのは「源頭」である。源頭とは地下水湧出部のうち一番高いところに位置するもの。概念図では源頭が低下している。つまり源頭が枯れて、下がった地下水位が源頭となり、さらに地下水位が下がることで源頭が枯れて、源頭がまた下がるという現象が生ずる。
・源頭が下がることによって沢が枯れることもあり、全体として表流水の減少をきたす。
・トンネル湧水の量は、長期的には減ってくる。大雨が降っても一時的なもので、地下水位が回復することはない。
・他方で降雨の占める割合が高くなり、降雨の影響を受けることから、雨季ではなく渇水期に問題が生ずる。肝心なのは渇水期に水を戻すことであり、時期を考えずにポンプアップしても意味がない。
Q:被告は薬液注入〈プレグラウト(掘削前の注入)、ポストグラウト(掘削後の注入)﹀により湧水が止まると主張するが、この点についてはどうか?
A:プレグラウトの成功例は24気圧の湧水圧であった青函トンネルであるが、南アルプスの50気圧以上の湧水圧のグラウトとは条件が異なる。
・南アルプスでのプレグラウトの問題点は、かつてないほどの高い湧水圧と地質が異なること。
・青函トンネルのポンプは70~80気圧の能力だったことからみて注入には水圧の2~3倍の圧力のポンプが必要となるが、150気圧の注入能力をもったポンプで薬液が注入されたという例は聞いたことがない。
Q:ポストグラウトを実施した実施北薩トンネルが崩落したことからどんなことが予測されるか?
A:南アルプスの場合、トンネル周囲の水圧が高いことからトンネルの破壊が懸念される。
・水圧を下げてからグラウトをするというのは、そもそも水抜きとグラウトは相反する工法だから意味がない。
・北薩トンネルが崩落した原因としては、均等な注入が難しく、生じたクラックから偏った圧力が働いたこと(トンネルはアーチに均等な圧力がかかっている限りは丈夫だが、偏圧には弱い)。
Q:岐阜県瑞浪市大湫(おおくて)で起こった水位低下についてはどう思うか?
A:大湫町の水位低下は事前の地質調査の不十分さが主な原因だが、調査をしたとしても注入をすべきと判断した時期の誤りと考えられる。
・大湫町の地下水位低下をポストグラウトで止めることは、北薩トンネルの例があったことから難しいという判断になったと思われる。
Q:被告は、吹付けコンクリート、覆工コンクリート、防水シートにより、湧水を止めるとも主張しているが、この点については?
A:吹付けコンクリートは、地山に生のコンクリートを吹き付けるもので、その目的はトンネルを一時的に安定させるため。しかし、クラックを避けることができないことから、湧水を止めることはできない。覆工コンクリート、防水シートが湧水軽減に役立つなどという話は聞いたことがない。
・水抜きやボーリングを実施して、トンネルは水を枯らしてから掘るのが原則である。
(主尋問終わり。13:30から被告の反対尋問で再開)
2 被告反対尋問
Q:旭航洋を退職後はトンネル工事の現場での業務には従事していないのか?
A:コンサルとしてかかわっている。清水建設からの依頼で岩盤の放射性廃棄物の処理に関して深層処分の適地調査として難工事所在地の研究を引き続き行っていた。論文の発表も行っている。
Q:大井川のトンネル湧水の全量を戻したとしても河川流量は戻らないと述べているが?
A:戻る見通しはない。
Q:自分自身で河川流量の変化についてシミュレーションを行ったか?
A:できるわけがない。
(反対尋問終了)
3 原告から再尋問
Q:被告からの質問は、山体から出てくる水が減り、トンネル湧水として流れてくるのであれば、それを戻せば大井川の水の量は減らないのではないかという意味だと思う。意見書の中では、山体から減った水全部がトンネル湧水になるわけではないと書かれているが、それはどういう意味か?
A:山体内の水は重力によって流れるので、すべての水がトンネルに流れるという保証はない。また、トンネルの掘削によってクラックができ、新たな水路(みずみち)ができることで、水がそちらに流れてしまうということもある。
(以上で大塚証人への尋問は終了。)
4 続いて、原告4人に対する質問がそれぞれに対して別の代理人弁護士からが行われた。
3人は、島田市、牧之原市、藤枝市において米や野菜を中心とした農業従事者で、大井川の水を農業用水として利用している。また、有機農法を採用している点でも共通点がある。4人目の原告は防鹿柵の設置ボランティアとして長年活動してきた方である。
農業従事者に対しては経歴や大井川用水使用料など共通した質問をしたうえで、最後に以下の同じ質問で終えた。
Q:トンネル工事によって、大井川の水が減少するとどのような影響があるとお考えですか?
A:取水制限が増えて農業が続けられなくなる。
・牧之原市には水源がないので、飲料水も農業用水も大井川に頼っている。その水が減ると継続的に農業ができなくなってしまう。
・必要な水量が確保できくなれば農業を続けられなくなる。被告はトンネル湧水をポンプアップして大井川に戻すと言っているが、未来永劫それを行う保証はない。
2)防鹿柵の設置ボランティアの方に対する質問
Q:あなたはこの裁判にどういった立場で参加しておられますか?
A:長年高山植物保護の活動に参加してきた経過から、リニア建設により被害が生じないか不安になり、建設に疑問を持つからです。
Q:あなたは、リニア工事が進行することについて、どういった懸念を持っておられますか。
A:水の流失に伴い山全体が枯れ、高山植物にも影響がでないか、山頂部の崩落が多く、拍車がかからないか心配です。
弁論終了後に行われた「進行協議」において、原告・被告ともに最終準備書面を3月末までに提出して6月5日の次回期日において「結審」とする意向が裁判長から示された。(判決期日は6月5日に決まると思われる)

トンネル技術者の大塚正幸さん(12.19裁判終了後の報告会)
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